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弊社の新人受け入れ事例からご紹介

テレワークでの新人育成、変わるものと変わらないものとは

  • 公開日:2020/07/06
  • 更新日:2024/03/25
テレワークでの新人育成、変わるものと変わらないものとは

2020年4月、弊社リクルートマネジメントソリューションズでは、9名の新入社員を迎えました。
その直後、緊急事態宣言が発令され、全社員は原則在宅勤務に移行。新人たちも、入社5日目にして在宅での業務開始となりました。
弊社では、以前より本社でのフリーアドレス制や、在宅勤務制度を導入していましたが、新人はその対象ではなく、経営・人事にとっても想定外の出来事でした。人材育成や組織開発を目的としたサービスを提供する弊社にとっても、初めての事態で、試行錯誤しながら新人育成を行っている、というのが正直なところです。

しかし、もともと在宅勤務のシステム・ルールがなかった企業や、対面でなければサービスを提供できない業界では、もっと深刻な問題になっていることでしょう。弊社でも多くのお客様からお問い合わせをいただいています。

そこで、弊社における今年の新人育成の取り組みをご紹介いたします。あくまで一例ではありますが、参考情報として、ご笑覧ください。

育成風土の土台となる共通言語、それが新人育成ポリシー
在宅勤務になった新人が感じる不安と寂しさ
会社に貢献できていないという焦り
テレワーク下での新人育成だからこそ、本当の「ミッション」を
ミッションを経験した新人の変化
新人育成において前向きな機会と捉えられることもある
最後に

育成風土の土台となる共通言語、それが新人育成ポリシー

弊社では例年、新人は6月中旬まで人事で預かり、その後に本配属としています。
配属前に、土台となる仕事の基本や社会人としての姿勢を身に付けてもらうこと、また、配属後に悩んだ時、辛い時に相談できる存在として、同期や人事との距離を近づけておくことが目的です。
図表1は、弊社の新人育成ポリシーです。

図表1 弊社の新人育成ポリシー

新人が目指す人材像を「『信頼されるビジネスパーソン』=周囲から信頼され、困難な環境でも自分から動いて成長できる人」と設定し、そのための9つの行動と、6つのスタンスを定めています。育成期間中に人事からフィードバックをする時にも、この観点でできていたか/いなかったか、を伝えています。
また新人育成は、人事だけの仕事ではありません。配属先の先輩や上司はもちろんのこと、会社全体で関心を払い推進していくものであり、それが「人を育てる企業風土」になっていくのです。全員が同じ方向を向き、同じ視点で新人に関わるためにも、育成ポリシーを明確にして共通言語化しておく必要があります。
実はこの共通言語があることは、テレワーク中のコミュニケーションでもとても役立ちました。

在宅勤務になった新人が感じる不安と寂しさ

人事が心配したのは、新人たちの能力面だけではなく、メンタル面での落ち込みでした。一人暮らしの社員、なかにはこの春から上京した社員もおり、元気に生活できているのか、どのような顔色で過ごしているのか気になります。
テレワークであっても、孤独を感じず、メンタルを健全に保つためには、何気ない会話や雑談を心掛けることが大切ですが、弊社が3月に行った調査でも、テレワーク環境において「雑談や思いつきレベルのアイディアの共有」は減るという結果(※)が出ています。

※参考記事
温かく明快なコミュニケーションで、誰も孤立させないテレワークを

ましてや社会人になったばかりの新人にとって、まだ直接会ったこともない先輩に、しかもリモートで、自分から雑談を持ちかけるというのは、かなり難しいことです。
実際、「オフィスで何気ない会話で先輩と仲良くなり、ランチや飲みに行けるだろうと楽しみにしていたので、寂しい」という声も上がっていました。

そこで弊社では、在宅勤務になった翌日から、始業時にチェックインを、終業時にチェックアウトを行うことにしました。新人全員と人事が、オンラインで顔を合わせることで、悩みや心配も含め、感情を共有できる場としたのです。
新人が共有している日報に、毎日人事がコメントを入れることに加え、人事以外の人たちにもできるだけコメントを入れたり声をかけたりしてもらおうと協力を呼びかけ、当番表も作成しました。
新人と人事、他の有志も参加したオンライン飲み会も開催しました。

会社に貢献できていないという焦り

このように、新人と会話をしたり、日誌を読んだりして気づいたのは、彼・彼女らが「自分は社会人として今のような状態でいいのか」という不安を抱えていたことです。
入社前に先輩から聞いていた話と比較し、「自分はきちんと経験が積めるのか」「例年の新人に比べて出遅れてしまうのではないか」という焦りを感じていました。
リモートで初任給授与式を行った際には、「本当に自分が(お給料を)もらってよいのかと思う」という発言もあり、もどかしさが伝わってきました。

そこで、4月中旬には人事が社内広報と協働して、デジタル社内報の記事の企画~執筆まで、新人に、任せました。新人の現状を社内に伝えること、また先輩方が顧客と新人育成について会話する際の材料としてナレッジ発信すること、それによって新人たちが貢献している実感を持つこと……など、さまざまな目的がありました。
記事は「新人たちの今」が伝わる内容として、好評を博しました。新人たちは、企画ミーティングで発言できず受け身になってしまったり、逆に自分が発言しすぎたりする難しさや、うまく記事を書くことができなかった、という苦い経験も味わいました。人事や社内広報は、誤字・脱字以外のフィードバックはあえて必要最低限にとどめました。

テレワーク下での新人育成だからこそ、本当の「ミッション」を

このような環境のなかでも、社会人になりたての、この貴重な期間を、新人の効果的な成長の機会とするよう、育成に取り組んでいます。

人事がこだわっているのは、この育成期間を「インプットのみのお勉強をする時間」ではなく、「仕事の基礎・学びを得るための時間」として使ってもらうことです。そのために、実際の業務の一部を「ミッション」として任せました。リモートだからこそ手ごたえを感じやすい、実際の仕事を経験してほしいと考えたのです。

具体的には、新人は、来年度の新卒採用業務の一部を担当しています。4月後半からは、対面イベントが実施できなくなった採用活動において、代替イベントの企画と実行を行ってもらいました。
採用活動業務を新人が担当すること自体は、例年の取り組みですが、人事の先輩も対面イベントが実施できないのは初めての事態です。一番学生に近い立場の新人だからこそ、思い切って企画検討から任せ、持っている肌感覚を生かして、成果にもコミットしてもらうことを期待しました。

仕事を任せる際に意識しているのは、「経験のバリエーション」を増やすことです。
採用イベントの企画・実行を通して、「全体でコンセンサスを取る」「企画したことを、実行まで責任を持って進める」ことを経験できます。また、配属後の仕事を意識して、一度に複数のタスクを進める「マルチタスク」「パラレルタスク」の状態をつくるようにしました。限られた時間でアウトプットを出すことを、早いうちに学んでもらうというのは、これまでも大切にしてきたことです。

仕事の進捗へのフィードバックは、育成ポリシーに沿って行います。例えば、順調に進んでいる仕事でも「目的は理解しているか」「目的が説明されていないと受け身・他責ではなく、自分で聞きに行くことを怠っていないか」などということを確認していきます。
もし、営業に配属されたとして、お客様自ら、検討している施策の目的を話してくれることは少ないでしょう。配属前に、自ら積極的に情報を取りに行く姿勢を身に付けておくことは必要です。

ミッションを経験した新人の変化

実際の業務を担当させることが成長につながると思っていますが、当然ながら不安はあります。リモートでコミュニケーションが取りづらいなかで仕事を任され、「早く成果を出さなきゃ」「失敗したらどうしよう」というプレッシャーや焦りが生じていないか、ということです。
しかし、結果として、実際の仕事を進める経験は、新人の自信につながっていたようです。「自分は会社に貢献できていないのではないか」という声は聞かれなくなりました。

もちろん、新人たちはまだ多くの不安を抱えています。今後再開される職場への出社や(※)、配属後の仕事など、まだイメージがつかないことばかりです。

5月の末時点で新人からは、次のような声が聞かれるようになりました。
「採用に関わってから、モチベーションが高くなった。自分たちが企画して、その向こうに相手(学生)がいる。インプットだけをしていた時はモチベーションが低かった」
「2~4年目の先輩が、オンライン飲み会を開いてくれた。同期・人事以外の人と話せたことでものすごくモチベーションが高まって、安心した。こちらからはなかなか声をかけられないので、ラフな会があってよかった」
「研修中とはいえ、何もできていないと申し訳なく思ってしまう。貢献できていると実感できるのはありがたい。ただ、4日間だけの出社だったので、緊急事態宣言解除後に出社できるか不安」
「来年入社する後輩に追い抜かれてしまうのではないか、と不安に思ってしまう」
「このオンラインのやり取りを見て、配属先が決まるのか?と思うと正直不安」
「普通とされているオフィスでの人間関係や、働く職場のイメージがまだ湧かない」

新人育成において前向きな機会と捉えられることもある

ここまで弊社における新人育成の取り組みをご紹介してきました。
弊社では、新人育成の研修やコンサルティングなどのサービスも提供しています。これまで、数多くの企業の新人育成をお手伝いし、長年、新人・若手社員の研究を行ってきた桑原正義の情報をもとに、今年の新人育成のポイントをご紹介します。

4月の入社直後から在宅勤務を続けてきた新人も、6月から徐々に出社が始まっています。しかしながら、会社生活がいつ以前のように戻るのかも分からなければ、完全に戻ることはないともいわれています。このような状況における新人育成では、気を付けることと、前向きな機会として捉えられることがあります。

弊社でもそうであったように、新人は、例年以上に不安を抱えています。また、新人を受け入れる上司や先輩、人事も不安と焦りを抱えていることでしょう。

しかし、そうした焦りを新人にそのままぶつけてしまったり、出社しないことで身に付けることが難しいマナーや基本行動にばかり言及してしまったりすることは、お勧めできません。
まずは、何でも相談しやすい心理的安全性の高い場づくりを進めてください。この時点で、新人が「やっぱり自分たちは出遅れてしまった」という気持ちを持つことは、今後の成長にも大きなマイナスとなるからです。また、オンラインでのコミュニケーションは、まだ世間共通の基準がなく、世代間の当たり前も違うので、基本ルールを決めて共有しておくとスムーズです(朝と夕に状況報告を入れる、軽い相談や急ぎ返事がいるものはチャット、調整が必要な場合は電話、ビデオ会議がのぞましい、など)。
そして、先輩・上司や人事から、積極的な声掛けをしてほしいと思います。

一方、今回の状況が新人育成という観点において、実はチャンスとして捉えられる側面もあるのです。3つの観点でご紹介します。

(1)VUCA環境での動き方
変化が激しく不確実で正解のない、昨今のビジネス環境を「VUCA(※)」と呼ぶようになってしばらく経ちます。しかし、それがここまで顕著に現れ、私たちの働き方にダイレクトに影響を与えたことはなかったように思います。今年の新人は、まさにその環境のなかに飛び込むこととなりました。
先輩・上司や人事に限らず、経営層さえも、今の環境に対する「正解」は持っていません。全面オンラインで仕事をするという状況も、皆が同じように初めての経験です。
通常は先輩・上司から「教えられる」ことの多い新人ですが、だれもやり方(How)の正解を持たないなかで、自ら試行錯誤し、「Try & Learn!」を実践できるのは、今年ならではの経験だと思います。

(2)共創・コラボ型での仕事の仕方、学び合うチームへの進化
オンラインでの働き方は、これまでに比べて不便なことがいろいろありますが、移動しなくてもすぐコミュニケーションが取れ、チャットでは立場や年代を超えてフラットに会話しやすいという利点もあります。対面の会議だと発言できなくても、チャットだと比較的気軽にコメントできたりしますよね。

弊社が提供する新人研修でも、今年初めてオンライン開催を行いました。
研修冒頭、トレーナーが「自分も経験ないので、何が起こるか分かりません。その時はみんな助けてください。一緒に学び合っていきましょう」と伝えたところ、受講者である新人が、オンラインツールの便利な使い方をチャットで教えてくれました。例年以上に当事者意識が高まり、相互の学び合いが進みました。

組織や立場、年代を超えて、共創が進みやすく、新人でも参加できるのはオンラインの大きなメリットです。

(3)新人の感性や価値観は新時代のビジネスのヒント
今は、ミレニアル世代(2000年代に成人・社会人となる世代)が消費の中心となる時代です。若い世代の声には、ビジネス、商品、働き方など、消費者のニーズによりフィットしエンゲージメントも高まるやり方を考えるヒントがあります。
今までは、分かっていても積極的に新人の声を拾っていく機会を持てなかったとしたら、今回はチャンスです。
オンラインという働き方やコミュニケーションの取り方により、フラットに彼・彼女らの声を取り入れやすくなりましたし、従来のやり方を変えざるを得ないという状況で、変化を起こしやすい環境にもなっているからです。

今年の新人との関わりにおいては、メンタル面などケアしなければいけないことも多いですが、上記のような機会を捉えて攻めに転じる、ということも考えていけるとよさそうです。

※ 「Volatility(激動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をつないだ今日的環境を形容する言葉。

最後に

この緊急事態宣言により、在宅勤務や分散出社、事業への深刻な影響など、各社によって違いはありますが、多くの企業が何かしらの影響を受けたことは確かです。現状と先行きに不安と負担を感じるのは、新人だけではないでしょう。

2020年度新入社員一同と弊社代表取締役社長 藤島敬太郎(緊急事態宣言発令前のオフィスにて撮影)

しかし、新人育成の本質そのものは変わりません。企業・職場ぐるみの育成風土を根付かせるため、育成ポリシーを共有し、多くの人を巻き込む仕組みを作る。本音を話せる安心・安全の土壌を作り、その上で実際の業務を任せ、事業の醍醐味や達成感を感じてもらう。
また現状は、これまで叫ばれていた働き方改革や、世代や立場を超えた共創を、一気に推進せざるを得なくなった機会であることも確かです。時代や環境に翻弄されるのではなく、機会として変えていくべきこと、変えずに守っていくべきこと……会社としてきちんと見極める必要がありそうです。

本稿は、あくまで弊社の新人育成の一事例ではありますが、今年の新人育成に頭を抱える企業や人事の皆様の一助となればと思います。

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