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チームについて考える概念的枠組み

チームの効果性を高める要因とは何か

  • 公開日:2020/01/06
  • 更新日:2024/03/25
チームの効果性を高める要因とは何か

チームの効果性に影響を及ぼす要因として、チームのタイプ、メンバーのダイバーシティ、能力・性格特性などのメンバーの特徴、チームプロセスという4つの観点を取り上げて、先行研究を紹介したい。

目次
米国でも注目されているチーム研究
チームとチームの効果性
(1)チームのタイプ
(2)チームのダイバーシティ
(3)メンバーの能力とチームの能力の関係
(4)チームに関するメンバーの認知

米国でも注目されているチーム研究

近年、多くの米国企業が「チーム」という形態を採用し始めている。その理由として、ビジネス環境の変化に素早く対応するための組織の形として妥当であるとの議論がなされている*1。チーム研究の第一人者であるSalas et al.(2008)は、エラーが許されない場合、仕事の複雑性が個人の能力を超える場合、環境が不明確でストレスが大きい場合、複数の素早い意思決定が必要な場合、集合的な洞察に人命が左右されるような場合などに、チームは活用されるのだと述べている*2。米国では職務が明確に定義され、個人で仕事を進める方が一般的であったためか、実務でのチーム活用が増えた1990年頃からチーム研究が多く行われてきた。研究の対象としては、企業組織内チームに加えて、医療チームや軍隊、宇宙飛行士など、専門性をもった人間が特定のミッションのもと、限定された期間に活動するチームが多く扱われている。

一方、日本の組織では、ある種当然のように仕事は集団で責任をもち、役割分担をしながら進めてきた。研究対象のチームと日本の職場集団にはどのような違いがあるのかを考慮しながら、今後の働く環境の変化に対応するためのヒントを、研究知見から得ることが期待される。

チームとチームの効果性

最初に「チーム」と「チームの効果性(effectiveness)」について定義する。いずれの用語についてもいくつかの定義があるが、さまざまな定義に共通する要素を網羅している点で、Kozlowski & Bell(2003)によってまとめられた次の定義をここでは用いる*1。

「仕事のチーム」とは、(a)2名かそれ以上の個人からなり、(b)所属組織に関連するタスクを行うために存在し、(c)1つか複数の目標を共有し、(d)社会的な交流を行い、(e)タスクには相互依存性があり、(f)外との境界を維持・管理し、(g)組織の文脈のなかに存在する。

また、「チームの効果性」は、複数の側面から構成されるが、それらはメンバーの満足度や将来の成長可能性のような内的基準と、生産性や成果のような外的基準がある。どのような効果性を測定しているかが、研究結果の解釈に影響を及ぼすことがあるため、注意が必要である。

これまで多くの研究レビューが行われているが、ここでは、Kozlowski & Ilgen(2006)が用いたモデルを参考に、チームの効果性に影響を及ぼす観点を4つ取り上げてレビューを行う(図表1)*3。より網羅的にチームに関する研究知見をまとめたものとしては、山口(2008)を参照いただきたい*4。

図表1 本レビューで取り上げる内容

(1)チームのタイプ

チームのタイプ化や分類を試みた論文は複数ある。それらは、学術的な意味は大きいが、現場で使いやすいとはいえない。チームの特徴があまりにも多岐にわたっているにもかかわらず、それらを網羅し、まとめることを目指すからである。

ここでは学術的な分類ではなく、一般的に企業におけるチームを考える際に、分かりやすい分類として、チームの規模、チームの継続期間、チームのタスクを取り上げる。

チームの規模は、2、3人の小規模チームから、100名を超えるチームまで存在する。後者は、チームというよりも組織のレベルともいえるが、前述の定義からするとこれもチームに含まれる。

チームの継続期間は、イベントスタッフなど、数時間で終わるものもあれば、品質管理工場のように、人が入れ替わりながらずっと継続するようなチームもある。

チームのタスクについては、例えば診断・モニタリング、企画・開発、実行、生産、サービス・サポート、マネジメントなどである。

これら3つの要素は明示的であり、どのチームを見ても特徴理解が可能である。そして、これらの要素は外的な条件によって決まることが多い。研究の際には背景情報となり、チームのパフォーマンスとの関連が検討されることはあまりない。ただし、これらの要素は、以降で紹介するチームの効果性に影響を及ぼす他の視点と関連する可能性が高く、念頭に置く必要がある。

(2)チームのダイバーシティ

今日のチーム研究の主要な関心事の1つはダイバーシティである。この分野で多くの研究が行われてきた米国では、差別に対する法規制も厳しく、常に人事の重要課題である。日本でも、人口減少などの事情により、多様な人々と働く機会が増えたことで、ダイバーシティへの関心は高まっている。

ダイバーシティ研究では、例えば人種や性別といった属性の違いによる表層的ダイバーシティの影響に関する研究が多く行われてきた。近年は、価値観やスキルなどの深層ダイバーシティと呼ばれるものに着目した研究も増えている。

ダイバーシティ研究は、大きな組織を対象にしたものと、チームを対象にしたものがあるが、特に10名程度のチームを想定した際には、何による違いかよりも、違いによってどのような影響が対人関係に生じるのかがより重要になる。人間関係に及ぼす影響を想定して、ダイバーシティの概念を分類したのが、Harrison & Klein(2007)である*5。彼らによればダイバーシティは、分離(separation)、多様(variety)、格差(disparity)の3種類からなる(図表2)。

図表2 3種類のグループ内ダイバーシティとその程度のイメージ図

「分離」は価値観や意見による違いによって生じる。特に、チームでの判断やゴール設定に際して生じると、チームのなかの対立を招いたり、チームの凝集性(後出)が低下したりする危険性がある。ダイバーシティ研究の多くは、「分離」を扱っている。例えば、Harrison et al.(2002)は、メンバー間の価値観や性格特性の違いが大きいと、チームタスクの意義や結果の重要性の認知が低下することを示した*6。

「多様」は、主に機能的に異なる能力やスキルを有するメンバーがいることが、創造性を高めると期待される状態である。そのベースにあるのは、多様なメンバーがいることで、多様な情報活用が可能になることである。機能的ダイバーシティ(functional diversity)と呼ばれることもあり、Drach-Zahavy & Somech(2001)は、学校にある教師やスタッフなどから構成されるチームで、職業背景の違いによる機能的ダイバーシティが、チームのイノベーションを促進したことを示している*7。

「格差」は、収入の多寡や立場の強弱などの違いが認識される状態で、チーム内での不公平感を招く。また単に不公平感だけでなく、チームの意思決定における影響度に違いが生じるなど、チームのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性がある。Siegel & Hambrick(2005)は、経営ボードメンバー内での報酬の違いが、特に情報共有を必要とされる企業において、それを阻害することでパフォーマンスを低下させることを報告している*8。

現実場面のチームを考えると、異なる種類のダイバーシティが混在することが想像できる。例えばある新商品企画チームがあったとして、そこに開発と営業と企画の人間がアサインされたときは、機能的に「多様」にすることで、創造的な新商品開発が期待されている。ところが、顧客視点の営業と、ビジネス視点の企画と見れば、そこには「分離」が生じる可能性がある。また、属する企業組織の価値観によっては、技術視点の開発の発言力が大きいとすると、「格差」の状態になることも考えられる。チームを編成したり、チームタスクの進捗をモニタリングする際には、ダイバーシティの種類の枠組みを参考にできる。

これらのダイバーシティの影響は、前述のとおり、チームの規模や継続期間、チームタスクによっても異なるかもしれない。例えばチームの規模が大きくなるほど、意思決定ルールの公式化などが必要になり、内部の力関係を意識することで「格差」が生じる可能性が高くなる。生産チームのように、ゴールと期間が明確なチームタスクの場合は、「分離」は生じにくいといったことが考えられる。残念ながらこのような仮説を検証した研究はまだ見当たらないため、今後の研究に期待したい。

(3)メンバーの能力とチームの能力の関係

チームに期待されるタスクがあり、通常はそのタスクを行うために必要な能力やスキルを備えたメンバーが集められる。ただし、能力の高いメンバーを集めたからといって、常にチームとしてのパフォーマンスが高いわけではない。

Bell(2007)は、チームメンバーの特徴(性格特性、価値観、能力)とチームの効果性の関連性について行われた過去の研究を用いて、メタ分析を行った*9。チームメンバーの特徴をチーム単位で集約する際には、最も特徴の強いメンバーや弱いメンバーの値を代表値としたり、メンバー間のばらつきの指標を使うこともあり、Bellはその検討も行っている。ここでは最も使われることの多い、メンバーの特徴(性格特性、能力)について、和か平均値を用いた結果の一部を紹介する(図表3)。

図表3 チームの特徴とチームの効果性の相関メタ分析結果(抜粋)

実験室での研究において、チームの効果性には一般知的能力が比較的強く影響を及ぼしていた。これは実験室で行う課題は一般知的能力を必要とするものがほとんどで、相対的に能力が高いメンバーが多い方が有利なことを示唆している。一方で、実際の仕事場面での研究になると、一般知的能力の影響は少し弱まり、実験室の研究では有意とならなかった誠実性や協調性など性格特性の影響が顕著であった。また、図表では紹介していないが、集団主義といった価値観についても、実際の仕事場面での研究においてのみ、有意な関係性が確認された。仕事場面では、チームタスクに必要な能力をもったメンバーが集められることから、能力の点ではあまり差がつかず、チームワークを円滑にとれるかどうかに関わる性格特性や価値観の影響が確認されたと考えられる。

Morgan et al.(1986)は、チームでのタスク遂行は、コアになる仕事そのものを進めるタスクワークとそれ以外の相互モニタリングや、支援、調整、それらを円滑に進めるためのメンバー間の社会的・心理的な相互作用などを含むチームワークからなっており、その両方が必要だとしている*10。特に、医療チームや探検チーム、宇宙船の乗組員など、柔軟な状況対応が必要だったり、強いストレス下でのタスク遂行が求められるようなチームにおいては、チームワークの重要性が指摘されているが、上記の研究結果からは一般的な仕事場面でのチームにおいても、チームワークがそれなりに重要であることが示唆される。

チームメンバーの特徴がどのようにチームの特徴に影響するかを考える際に重要になるのが、相互依存性(interdependence)である。チームメンバー間の相互依存性が、チームを単なる集団と異なるものにしているとする考え方もある*1。ただし、適切な相互依存性の程度が一意に決められるわけではなく、チームタスクによってその程度が決まると考えられる。

Stewart & Barrick(2000)は、工場の生産チームを対象として、メンバー間の相互依存性とチームの効果性の関連性を検討した。実行に多くの時間を費やすチームを行動的なタスクチームとし、企画や計画を立てたり、意思決定に多くの時間を費やしているチームを知的なタスクチームとした*11。行動的なタスクチームの場合は、中程度の相互依存性があるときに最も効果性が高く、知的なタスクチームの場合は、相互依存性が低い、あるいは高いときに、効果性が高いという結果になった。なぜこうなるかについては十分な説明は行われていないが、チームタスクのタイプによって、メンバー間の相互依存性の程度だけではなく、相互依存性の内容が異なる可能性も残されていることから、その点も考慮した検討が必要だろう。

(4)チームに関するメンバーの認知

チームプロセスの研究では、メンバーの認知を通して、チームの状態を表す概念が用いられる。弊社機関誌 RMS Message vol.48(2017)で取り上げた心理的安全性も、その1つである(「心理的安全性の要因と効用」)。ここでは、よく用いられる概念で、効果性の検証が多く行われているものに絞って紹介する。

チームの効力感(team efficacy)は、チームメンバーで共有された自分のチームに関する一般的な能力の見立てである(Guzzo et al., 1993)*12。

チーム凝集性(team cohesion)は、チームメンバーがチームの他のメンバーやチームのタスクに魅力を感じることで、チームに引き付けられる状態を指す(Zaccaro, 1991)*13。

チームメンタルモデル(team mental model)は、チームメンバーによって共有されたチームやチームタスクに関する中心的な知識の表象である(Klimoski & Mohammed, 1994)*14。

これらの概念はいずれもチームメンバーが自分のチームやチームタスクをどのように認識しているかがベースとなっている。したがって、同じチームにいたとしても、チームを取り巻く環境やメンバー間の関係性が時間の経過と共に変化し得るため、プロセスをモニタリングする概念としては有効だと考えられる。それぞれの概念に紐づく下位概念と、これまでの研究知見の主なものを図表4にまとめた。

図表4 チームプロセスに関連する概念と主な研究結果

以上はごく一部の研究の紹介だが、すでに仕事のチームに関する研究を量的、質的にまとめた論文も数多く発表されており、今回取り上げた図表1の(1)から(4)の視点それぞれにおいては、かなりのことが明らかになっている。ところが残念ながら、視点間の関連については、あまり研究がない。チームタスクの違いによって、凝集性の影響がどのように異なるかを検討したChiocchio & Essiembre(2009)も、そのような研究の必要性を論じている*15。知見の活用のためにも、例えばチームのサイズ、チームタスク、ダイバーシティの3変数間の関係性のモデル化や、実証研究などが今後行われることを期待する。

*1 Kozlowski, S. W. J. & Bell, B. S. (2003). Work groups and teams in organizations. InW. C.
*2 Salas, E., Cooke, N. J. & Rosen, M. A. (2008). On teams, teamwork, and team performance: Discoveries and developments. Human factors, 50(3), 540-547.
*3 Kozlowski, S. W. & Ilgen, D. R. (2006). Enhancing the effectiveness of work groups and teams. Psychological science in the public interest, 7(3), 77-124.
*4 山口裕幸(2008)「チームワークの心理学―よりよい集団づくりをめざして―」(サイエンス社)
*5 Harrison, D. A. & Klein, K. J. (2007). What's the difference? Diversity constructs as separation, variety, or disparity in organizations. Academy of management review, 32(4), 1199-1228.
*6 Harrison, D. A., Price, K. H., Gavin, J. H. & Florey, A. T. (2002). Time, teams, and task performance: Changing effects of surface-and deep-level diversity on group functioning. Academy of management journal, 45(5), 1029-1045.
*7 Drach-Zahavy, A. & Somech, A. (2001). Understanding team innovation: The role of team processes and structures. Group Dynamics: Theory, Research, and Practice, 5(2), 111.
*8 Siegel, P. A. & Hambrick, D. C. (2005). Pay disparities within top management groups: Evidence of harmful effects on performance of high-technology firms. Organization Science, 16(3), 259-274.
*9 Bell, S. T. (2007). Deep-level composition variables as predictors of team performance: a meta-analysis. Journal of applied psychology, 92(3), 595.
*10 Morgan, B. B. Jr., Glickman, A. S., Woodward, E. A., Blaiwes, A. S. & Salas, E. (1986). Measurement of team behaviors in a Navy environment. Rep. No. 86-014. Orlando, FL: Naval Training Systems Center.
*11 Stewart, G. L. & Barrick, M. R. (2000). Team structure and performance: Assessing the mediating role of intrateam process and the moderating role of task type. Academy of management Journal, 43(2), 135-148.
*12 Guzzo, R. A., Yost, P. R., Campbell, R. J. & Shea, G. P. (1993). Potency in groups: Articulating a construct. British journal of social psychology, 32(1), 87-106.
*13 Zaccaro, S. J. (1991). Nonequivalent associations between forms of cohesivness and group related outcomes: Evidence for multidimensionality. Journal of Social Psychology, 131(3), 387-399.
*14 Klimoski, R. & Mohammed, S. (1994). Team mental model: Construct or metaphor? Journal of management, 20(2), 403-437.
*15 Chiocchio, F. & Essiembre, H. (2009). Cohesion and performance: A meta-analytic review of disparities between project teams, production teams, and service teams. Small group research, 40(4), 382-420.

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.56 特集1「多様性を生かすチーム」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

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技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
主幹研究員

今城 志保

1988年リクルート入社。ニューヨーク大学で産業組織心理学を学び修士を取得。研究開発部門で、能力や個人特性のアセスメント開発や構造化面接の設計・研究に携わる。2013年、東京大学から社会心理学で博士号を取得。現在は面接評価などの個人のアセスメントのほか、経験学習、高齢者就労、職場の心理的安全性など、多岐にわたる研究に従事。

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