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特集

今求められる「突破力のある現場リーダー」

厳しい環境を乗り越えるためのリーダーシップ強化策を考える

  • 公開日:2009/10/09
  • 更新日:2024/04/11
厳しい環境を乗り越えるためのリーダーシップ強化策を考える

今、各企業の関心が高い教育テーマとは何でしょうか。

2009年7月開催の「RMSフォーラム2009」にご来場いただきましたお客様に、今関心の高いテーマを伺ったところ、「リーダーシップ」に関するものが上位3位までを占めました。昨今の厳しい環境下では、予算の制約もある中、より効果的な投資が求められています。そのため、事業を推進していく中核であるリーダー層への育成強化に関心が集まるのは、当然のことといえます。(図表1)

では、リーダー層は今どのような環境に置かれているのでしょうか。

・『現実要請への徹底した対応(業績の確保やコストダウンなどの目の前の危機を乗り切るための対応)』
・『新価値創造へのチャレンジ(新製品開発などの将来を創るために新たな価値創造を試みる動き)』

この2つの同時実現を求めている企業が多いようです。『現実要請への徹底した対応』だけでも大変な中、『新価値創造へのチャレンジ』の同時実現を求められ、実現の見通しが立てられず右往左往している現場のリーダーも少なくないようです。

今月の特集は、昨今の厳しい環境を突破するリーダーに求められる動きと、その育成につながる研修企画時のポイントについてお伝えします。

厳しい環境でも成長できる企業の組織能力とリーダーシップとは?
「リーダーシップ強化」のポイントは突破力を身につけさせること
厳しい状況を突破できるリーダーづくりに向けたアプローチ
ある現場リーダーの取り組み
人事教育担当者に求められる現場リーダーの「行動変容」支援力

厳しい環境でも成長できる企業の組織能力とリーダーシップとは?

●厳しい環境でも持続的に成長できる企業の組織能力とは?
まず、厳しい環境でも持続的に成長できる企業の組織能力について考えていきます。
図表2は弊社にて実施した「業績を高める組織能力と組織人材マネジメント調査2009」の結果の抜粋です。

図表1 RMSフォーラム2009関心テーマアンケート集計結果/図表2 業績と組織能力の関係/図表3 「実行変革力」に影響を及ぼしている項目

業績向上に直接関係している組織能力は「実行変革力」であり、この「実行変革力」とは「実行力=現実要請への徹底した対応」「変革力=新たな価値創造へのチャレンジ」ととらえることができます。まさに「現実要請への徹底した対応」を行いつつ、「新たな価値創造へのチャレンジ」を進することができる企業が、中長期的に成長可能な企業といえます。

●現場リーダーに求められる動きとは?

では、「実行変革力」のある組織になるために、現場リーダーに求められる具体的な動きとは何でしょうか?
先ほどの調査で「実行変革力」に強く影響を及ぼしている項目は図表3のとおりでした。

これらの行動を全て実行するのは、日々の業務に忙殺される現場リーダーにとって「言うは易く行うは難し」、求めるだけでは中々動きには繋がらないのが現実ではないでしょうか。では、このような動きができるリーダーを育てるには、どのようにアプローチしたら良いのでしょうか?

「リーダーシップ強化」のポイントは突破力を身につけさせること

「現実要請への徹底した対応」と「新たな試みへのチャレンジ」を両立できる現場リーダー育成施策を検討するうえでのポイントは、困難な状況でも戦略実現に向けて一歩踏み出すことのできる力をいかに身につけさせるかです。
この力を現場リーダーに身につけさせるには図表4の3つのステップで考えることが有効です。

図4 「突破力」のある現場リーダー育成施策検討のステップ/図表5 弊社研修受講者からよく聞かれる悩み

●ステップ1:現場リーダーの置かれた状況・悩みを把握する
まずは、現場リーダーが「どんな状況に置かれ、どんなことに悩んでいるのか」を把握することが重要です。
それは、課せられたミッションは同じでも、リーダーの経験・習熟度や、組織特性・メンバー特性など、置かれた状況によって、現場リーダーが抱える悩みは異なるためです。「育成に対する意識が弱い」「部分最適の思考に陥っており、連携力が弱い」といったように第三者的・客観的に現場リーダーの課題を分析するのではなく、研修企画者自身が、現場リーダー自身の立場になりきって、「自分が彼・彼女らの立場だったら、どんなことに悩むか?」を当事者として感じることが重要になります。ちなみに弊社研修受講者からは図表5のような悩みがよく聞かれます。

●ステップ2:戦略実現に向けた理想の状態を描く
次に、戦略実現に向けた「理想の状態」を描きます。置かれた状況が厳しい中でも、リーダー自身あるいは、職場やメンバーがどんな状態なら、「現実要請への徹底した対応」と「新たな価値創造へのチャレンジ」の双方を実現することに向かって動きそうか?このような観点で、理想の状態を描いていきます。
重要なのは、あくまでも戦略と結びついた“具体的”な「理想の状態」を描くことです。

厳しい状況を突破できるリーダーづくりに向けたアプローチ

●ステップ3:状況を突破するきっかけ「5つの重点ポイントとは?」
課せられたミッションが急激に軽くなったり、人員が潤沢に補充されたり、ある日突然メンバーがスキルアップしたり、そんな劇的な状況の好転は考えにくいため、ステップⅠで把握した厳しい状況を抜本的に解決・解消することは難しいといえます。そうなると、置かれた状況は前提として受け容れた上で、どうすればステップⅡの状態に近づくことができるかを考えることが不可欠です。
状況を突破するきっかけのバリエーションには以下の5つがあります。

【図表6 状況を突破するけっかけのバリエーション】

図表6 状況を突破するきっかけのバリエーション

この5つの重点ポイントは、同じような厳しい状況に置かれても、その状況を突破できるリーダーと立ち往生するリーダーの違いをつぶさに見て、導き出したポイントです。
そして、これをきっかけにして、具体的にどんな一歩を踏み出して欲しいのかを描きます。例え現状を突破出来たとしても、一足飛びに理想の状態までいくのは難しいため、その一歩は「ここからならやれそうだ」と思える具体的でかつ実行しやすいものであることが重要です。

自らが置かれた状況を「5つの重点ポイント」のように捉えることに加え、強い思い・決意があれば理想の状態へ近づく可能性はぐっと高くなります。きっかけを掴んで戦略を推進する行動をとったとしても、新たな困難・悩みに陥ることは容易に考えられます。そのような状況でも戦略を推進する行動をとり続けられるかどうかは、この思い・決意の大きさ・深さの違いが大きな影響を与えています。

こうした強い思いを喚起するためには、まずリーダーが自らの置かれた状況を改めて捉え直すことで「このままではまずい、なんとかしたい」と感じ、次に理想の状態を描くことによって「大変だけれども、こうなりたい」という気持ちを抱くことが重要です。さらに、状況の突破口を見出すことで「ここからならやれそうだ」と感じることが必要になります。思い・決意を喚起し、リーダー自身が状況を突破できる一歩を描く支援をすることこそ、研修に求められる要素となるのです。
ではこの5つの重点ポイントを掴むことで、具体的にどのような変化が起こるのか、事例でご紹介いたします。

ある現場リーダーの取り組み

ここでは、厳しい状況を突破し、戦略実現への動きを進めていった現場リーダーについてご紹介いたします。

マネジャーAは、ある自動車部品メーカーの設計開発部門に在籍し、大手自動車メーカー向けのエレクトロニクス製品の設計開発を担当する組織をマネジメントしています。マネジャーAの置かれた状況は以下のようなものでした。(図表7)

まさに、あれもこれもの厳しい状況に翻弄されていました。この八方塞がりに見える状況の中、マネジャーAは何をきっかけにして突破していったのでしょうか。

図表7 マネジャーAの置かれた状況/図表8 厳しい状況を突破したものの捉え方

マネジャーAはすべきことが山積する中で、置かれた状況やメンバーの状態を捉えなおし、「B社の新製品開発」という機会を【一点突破の対象の明確化】し、取り組んでいきました。

●その後の組織の状態
当初は、「なぜみんなで取り組むんですか?」「忙しいのに、会議ですか?」といった声もありましたが、次第にメンバーが持っていた好奇心が刺激され、B社の新製品開発に向けてさまざまな視点から意見が出てくるようになりました。
当初は狙っていませんでしたが、先輩から後輩に対する良い育成機会ともなり、皆が顧客との会話の中で感度高く、次の商品開発につながる情報をスピーディーに共有することを意識するようになりました。結果的に、「目の前のコストダウンや商品数削減」といった他の取り組みでも、メンバーにとって「単に辛いこと」から、「辛いが将来につながること」と捉え直すことができ、疲弊感も少しずつではありますが解消されてきました。

このように、八方塞がりな状況を突破する可能性を感じる動きが出てきました。マネジャーAの取り組み自体は小さな一歩かもしれませんが、その動きがチームを良い回転につなげていく価値ある一歩となっていったのです。

人事教育担当者に求められる現場リーダーの「行動変容」支援力

先行き不透明な厳しい状況の中で、現場リーダーが常に「突破口はないか?」と見ているかどうかが組織のパフォーマンスを左右します。事例のマネジャーAは、圧倒的に違う行動を取っているわけではありません。しかしながら、状況を一歩一歩改善に導けているのは、置かれた状況の捉え方とその動きにあります。

ただ、先程ご紹介したような状況に忙殺されている中、自らきっかけを掴むことは非常に困難です。そんな中、日常から離れ、同じ現場リーダーの集まる教育研修は、意識と行動を変える絶好の機会といえます。

「打ち手の小槌」のような抜本的な解決策はありません。着実に手を打ち続けることで、困難な状況からの打開策は見えてきます。その打開策を見つけて一歩動き出せる現場リーダーを育成していくことが、企業の成長を支える礎となる訳です。

人事教育担当が、こうしたリーダーの行動変容支援をサポートしていくことが、今こそ必要となっているのではないでしょうか?

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