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特集

教育体系を見直しを考える人事へ

教育体系(再)構築について

  • 公開日:2004/12/01
  • 更新日:2024/04/11

最近、人事の方から、「教育体系をみなおしたいのだが」というご質問やご依頼が増えています。そこで今回の特集では、教育体系の構築、あるいは再構築の背景とその際のポイントを簡単にまとめてみます。

目次
教育体系構築の背景(1)
教育体系構築の背景(2)
教育体系構築の背景(3)
教育体系構築の方法(1)
教育体系構築の方法(2)
教育体系構築の方法(3)
教育体系構築の方法(4)
従業員意識調査

教育体系構築の背景(1)

企業内教育の現状

まずはじめに、企業の教育方針の変化を、厚生労働省の調査の「能力基本調査」(平成15年度)から見てみましょう。教育体系構築に関連してくる項目を整理すると、

  • 次世代リーダー研修などの選抜型教育が注目されていますが、「全体的な底上げ教育」重視の企業が6割近く(58.2%)を占め、今後もむしろ「全体的な底上げ教育」を重視する企業が増えています。
  • 能力開発の「ライン化」が言われていますが、現状は「本社主導」企業が6割近く(56.9%)を占めています。しかし「今後は事業部・事業所主導」(48.5%)と変化してきています。
  • 能力開発を「社内で実施」する企業は6割弱(56.2%)を占めましたが、今後は「外部委託を進める」企業が41.7%に上り、アウトソーシングの増加傾向が見られます。
  • 能力開発の個人責任が言われてきていますが、「企業責任」とする企業が8割弱(76.0%)を占めました。しかし今後は「従業員個人の責任」も23.5%と方針転換企業も増加してきています。
  • 能力開発について「積極的である」と答えた企業の割合(43.9%)と企業の売上高には相関関係が見られました。

などの特徴があることが分かりました。
なお、従業員が階層別・部門別に受講すべき教育訓練の全体像を示した教育訓練(研修)体系を作成している企業は31.8%にすぎず、加えて4割強の会社が教育訓練体系を従業員に公開していないという結果がでています。(平成13年度の同調査結果)

教育体系構築の背景(2)

構築、再構築ニーズの高まり

経営環境が大きく変わる中で、顧客も競合も変わり、経営の再構築、例えば戦略やビジネスモデルの再構築、組織構造や意思決定スタイルの変革、人事制度の改定などが行われてきました。これらの「緊急性の高い」テーマが一段楽してきた現在、「緊急」ではないが「重要」な社員教育が注目されてきたようです。

また同時に、従業員の価値観の変化・多様化も大きく進んでおり、従業員サイドからキャリア開発の視点に立った能力開発を考えていかなければならないという状況になってきているようです。厚生労働省のホワイトカラーの職種別キャリア開発体系、経済産業省が後押ししている高度IT技術者の育成・活用のためのITSS、プロジェクトマネジャーなど新たな職種の資格や専門教育体系の登場が、この問題を複雑・多様なものにしてきています。

今回は、この中でも階層別教育体系に焦点を絞ってご説明します。職種別の知識・スキルも欠かせない要素ですが、コンピュータソフトに例えるなら、職種別教育はアプリケーションソフトに、階層別教育は、オペレーションソフトに該当すると考えられます。つまり、階層別教育は、すべての職種に共通な、あるいはそれぞれの職種に必要な知識・専門スキルがうまく学習され、機能するために不可欠な基礎となるものだということです。

【教育体系(再)構築ニーズの背景】

教育体系(再)構築ニーズの背景

【階層別教育はOS(オペレーションソフト)】

階層別教育はOS(オペレーションソフト)

教育体系構築の背景(3)

教育体系に求められること

今回のテーマである教育体系は、以下の3つの要件を満たしていることが必要だと考えます。

  • 経営方針やHRM戦略に基づいていること
  • 一時的・個別の施策ではなく、長期的・体系的なものであること
  • 組織のニーズだけでなく、個人のニーズをも実現するものであること

そして、これらのことから考えられる教育体系構築の意義は、以下の3点です。

  • HRM戦略における有効なサブシステムとして機能すること(図1参照)
  • ビジョン・戦略に基づいて、最終的に企業の業績向上につながること(図2参照)
  • 知的資本を充実し、企業価値を高めること(図3参照)

【図1 HRM戦略を機能させる6領域】

図1 HRM戦略を機能させる6領域

【図2 業績向上につながるHRMモデル】
リクルートWORKS研究所のHRMモデルより

図2 業績向上につながるHRMモデル

【図3 企業価値、知的資本を向上とHRM(人材育成)】

図3 企業価値、知的資本を向上とHRM(人材育成)

教育体系構築の方法(1)

教育体系(再)構築のゴールとステップ

教育体系構築のゴールは、以下4つの状態になることです。

  • 人材育成方針が明らかになっている:
    人材育成方針とは、自社にとっての“育成”の意義や自社の育成に対する基本的な考え方やスタンス
  • 期待人材像が共有されている:
    期待人材像とは、職掌や責任・権限などのセグメントごとに定義された、求められる役割機能・能力要件などで、組織構成員に共有・イメージ可能なもの
  • 様々な育成施策が、整理・体系化され実行の優先順位などが決まっている:
    育成施策とは、自社の育成方針-期待人材像に基づいて考えられた、教育研修にとどまらない、各種のHRM施策(評価・異動・コミュニケーション施策など)を指す
  • 育成施策が、具体化されPDSサイクルに入っている:
    セグメントごとの期待人材像に必要な能力要件などが明示され、対応する研修プログラムなどの具体策が計画・実施され、効果検証のサイクルが回っている状態

図は、弊社の教育体系構築コンサルティングの基本ステップです。自社で取り組まれる場合も基本的には同じですから、以下、流れにそってポイントを説明いたします。

【教育体系構築コンサルテーションの5ステップ】

教育体系構築コンサルテーションの5ステップ

教育体系構築の方法(2)

現状把握と方針策定

現状把握

事業戦略の方向性、現在の人的資源がどのようになっているのか、育成に関する制度・仕組み自体がどのような状態になっているのか等を様々な角度から情報収集し、その現状を把握します。情報収集にあたっては、対象(経営者~一般社員、顧客・協力会社)と適切な手法(インタビューやアンケート、アセスメントなど)を組み合わせることが効果的です。

方針策定

まず、“ビジネスの観点”から、事業戦略や自社の今後の競争優位性(自社の独自能力)や大事にすべき価値観(バリュー)を明らかにします。その上で、それらを維持・強化していくために必要な人材を育成することを目的とおいたときの、現行の人材育成施策の強み・弱みを明らかにします。
そして、忘れてはならないのが、“モチベーションの観点”です。つまり、現従業員のモチベーションリソースや育成施策への要望を踏まえ、それらを維持・強化していく上での現状の人材育成施策の強み・弱みを明らかにすることです。

この二つのステップで、企業・人材の両面から現状を把握、人材育成の方向性を固めてゆきます。それらをベースに、現在の育成体系とを照らしあわせ、育成に関する課題の抽出と解決の優先順位を明らかにします。

育成方針を定めるにあたっては、自社にとっての“育成の意義・目的”は何か、いつまでにどのような対象(全従業員/ある特定階層など)に、どのように育って欲しいか、そして育成施策のスタンス(一定階層は会社責任/基本は自己責任など)はどうするかなどの基本的な事項をおさえておくことが重要です。
定まった育成方針と現状を照らし、手を打つべき課題の優先順位をつけ、短期的に何を行っていくべきか?中長期的にはどうか?等を明らかにしてゆきます。

【現状把握すべき領域】

現状把握すべき領域

【方針と課題抽出】

方針と課題抽出

教育体系構築の方法(3)

期待人材像の明確化

育成方針に沿った具体的施策を検討する方法はいくつかありますが、ここでは人事処遇制度との連動しやすい、職掌や責任・権限などのセグメントに分けて考えてゆきます。具体的には、以下のように進めます。

  • 人材セグメント毎に期待人材像を明確化する
  • 人材セグメント毎の育成課題を明確化する
  • 人材セグメント毎の施策を明確化する

さて、期待人材像を明確にする単位は、職掌や責任・権限などのセグメントです。これは、職能資格や職務等級、また職群・職責、役職(部長・課長・主任など)などの階層、(横)で区分しますが、事業部門や職種別など(縦)の区分を置く場合もあります。

ここで各セグメントごとに、求められる役割機能や能力要件、コンピテンシーを定義していきます。これは、組織構成員が容易にイメージでき、なおかつ共有できるものである必要があります。このプロセスは、人事制度を設計する際の人材要件定義や、人材採用時の人材要件明確化で行うことと近いものになります。したがって、最近、人事制度を改定されたような場合には、(その内容にもよりますが)定義された内容を、再編集して活用することも可能かもしれません。

【人材セグメント毎の期待人材像(例)】

人材セグメント毎の期待人材像(例)

教育体系構築の方法(4)

育成課題の明確化

次に、人材セグメント毎に育成上の課題や開発すべき能力要件を抽出します。 その基本的な手法は、人材セグメント毎の期待人材像(役割機能・能力要件)と、実際にそこに所属する人材の現状、またはそのセグメントの初任者(エントリー段階にある人材)の想定される状況とのギャップ(すなわち問題)を発見し、課題化(解決の可否判断と取り組みの優先順位付け)することです。

人材セグメント毎の人的資源の現状を正確に把握するためには、人事アセスメントなどの調査を実施することが有効です。また、運用段階では個別の人事評価が活用されます。
また、知識・スキルなどの能力面のギャップは、比較的はっきりと分かり課題として認識されやすいのですが、姿勢・スタンスあるいはモチベーションなどのギャップについては、重大な問題、あるいは問題の真因であるにもかかわらず、見落とされたり、無視されてしまいがちです。

さらに、現在の職場職種における短期的な成果(教育効果)を追求しがちであったり、長期的な育成(配置転換などを含む)や個人側からのキャリア開発ニーズへの施策が不足することにも留意しなければなりません。

いずれにしても、企業のビジョンや戦略、他のHRM施策との関係、そして経営(者)の人材(育成・成長)観が具体的にはっきりと現れる部分ですので、じっくりと取り組むべきステップとなります。

【課題を見つける基本手法】

課題を見つける基本手法

【育成課題を考えるための能力モデル(例)】

育成課題を考えるための能力モデル(例)

【人材セグメント毎の育成課題(例)】

人材セグメント毎の育成課題(例)

従業員意識調査

育成施策の明確化

育成施策の具体策を考えるにあたって、今回は人材セグメント毎に期待人材像を定義し、育成課題を明確化するというアプローチでまとめてきました。しかし、先のページでも述べたように、教育体系には、中長期的な人材育成視点や、働く個人のキャリア開発という視点を忘れてはなりません。下図は、この視点から育成施策を考えるための人材育成・成長サイクルのモデルですので、参考にしてください。

また、職群ごと・個人ごとに行う育成施策なのか、職場や全社で段階的に行った方がより効果的な施策なのかなどを整理する必要があります。加えて、能力などの習得時期(開発のタイミング)も重要です。(知識スキルの開発が先か、姿勢・スタンスあるいはモチベーションへのアプローチが先か?など)そして、いよいよ具体的な育成施策の選定となります。

具体的な育成施策としては、研修等のOff-JTやeラーニングなどの自己啓発、職場におけるOJTなどが想起されることと思います。弊社でも、さまざまな育成課題にお応えするトレーニングやアセスメント・サーベイをご提供させていただいておりますので、ご関心をお持ちいただいた場合には、お問い合わせいただければ幸いです。

しかし、育成施策は、研修プログラムだけではありません。人が学び、成長するためには、チャレンジングな仕事のアサインや異動を伴う配置・昇進など実践の場で試され、鍛えられるという経験が有効であり、不可欠ともいえます。また、MBOや人事評価を通じて人材育成につなげて行くことも欠かせません。つまりこれらのHRM施策を、教育体系の構築と並行して、意図的、総合的に組み込んでゆくことで、人材育成はより高い成果を上げ、業績の向上につながると同時に個人のキャリア開発ニーズにも応え、究極的にはビジョン・戦略の実現、あるいは知的資本の充実による企業価値の向上へとつながってゆくのです。

【育成施策を考えるための人材成長・育成サイクルモデル】

育成施策を考えるための人材成長・育成サイクルモデル
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