特集
「管理職≠組織長」時代の管理職とは?
事例から読み解く、今の時代に求められる管理職の役割
- 公開日:2009/02/09
- 更新日:2024/04/11
日本企業の人事制度は、職能資格制度を中心とし、単線・複線型など幾つかのバリエーションがあるものの、制度の根幹は大きく変化していません。しかし、その運用実態に焦点を当ててみると、環境に合わせて変化を遂げており、これまでとは違う様子が見えてきます。
象徴的な事実は、「管理職=組織長」という公式が当てはまらなくなってることです。つまり、管理職昇進時に、部下を持たない管理職が増加しているということです。
管理職への昇進は、職業人生において大きな転換点でもあり、多くの企業がその重要性を認識しています。しかし、組織長とは限らない彼らに、企業は何を期待し、何を求めているのでしょうか。
弊社では「管理職=組織長」ではない、「これからの時代における管理職」について新たに定義をし、新任管理職研修を通して支援をしております。
今月の特集では、事例を材料にしながら、今の時代に求められる管理職の役割、そして役割を発揮してもらうためのポイントについて考えてみたいと思います。
- 目次
- 管理職になることは3つの意識転換をすること
- 現実と役割定義の乖離で意識転換は困難
- 非組織長の意識転換に成功した事例
- 意識転換に必要な3ステップ
- 組織長にも求められる意識転換
- これからの時代の管理職に必要なこと
管理職になることは3つの意識転換をすること
管理職になることは、どのようなことなのでしょうか。
昇進者である本人にとっては、処遇が変わり、会社に認められたことを実感する、職業人生における重要なトランジッション(転換点)です。もちろん、企業側でも、組織長であれ、非組織長であれ、管理職となることは大きなトランジッションであると位置づけています。それは、昇進試験において、筆記試験や面接などのプロセスを経た上で、選抜された者のみが管理職に昇進できる事実からも見て取れます。
図表1は企業の人事担当の方々とディスカッションを行いながら、管理職に対して求めることについて、主任・係長層との違いを整理したものです。
【図表1】管理職とは ~主任・係長層と管理職との違い~
| 主任・係長 | 管理職 |
---|---|---|
業務遂行の範囲 | 自部署内で完結 | 他部署・上位経営層も巻き込んで遂行・完結 |
仕事の仕方 | これまでの延長で成果を積み上げる | これまでの延長とは異なる新しい価値を創造する |
影響力の発揮 | 上司を巻き込み、周囲を動かす | 自部署代表として、対外折衝を進める |
業務遂行のあり方 | 確実に責任をもって業務を完遂できる | 大きな成果だけでなく自社らしさ(会社の理念、大事な価値、強み)を体現し、中堅層の見本・手本になる |
成果を見る視界 | 自部署、部分成果 | 全社最適、全体最適、業界・マーケットにおける成果 |
意識の持ち方 | 自部門の担当職務の意味・価値を理解し、その基準に沿った仕事をする | 自事業や企業の社会的な意味・価値を理解し、その基準をつくる、見直す |
成果のレベル | プレイヤーの中でも相対的に高い成果を上げる | 圧倒的に高い成果を挙げる継続的に成果を挙げる、次の時代に繋がる仕事の成果を挙げる、新商品開発や戦略テーマで成果を挙げる |
図表1の主任・係長層と管理職の違いは、大きく次の3つの意識の転換をすることに集約できます。
・「経営資源として活用される」から「経営資源を責任を持って活用する」
・「与えられた仕事を完遂する」から「自ら仕事を創り出す」
・「環境の変化に適応している」から「自らを変え、環境を変える」
つまり、管理職とは「自らの意思と責任で、現場を改革・成長させて全社的な業績・価値創造に貢献する」存在であるといえます。
現実と役割定義の乖離で意識転換は困難
前頁で示したように、管理職になるということは3つの意識転換をするということであり、それに応じて期待や求める役割を定義して人事制度を各企業ごとに運用している状況です。ところが、管理職がこれまでと同様の行動をしており、何も変わっていないという声を多くの企業の人事担当の方から聞きます。
では、管理職自身はどう感じているのでしょうか。
新任管理者へのインタビューを行ない、代表的な声を図表2に整理しました。
【図表2】管理職昇進者の声
組織長 | 非組織長 |
---|---|
部下育成をしなくてはならないが、自らもプレイヤーとしての高い業績目標を抱え、その中に埋没してしまい、他のことが手につかない状況に陥っている | 仕事内容が変化せず、異動や配置換えもなく、そのまま以前と同じ仕事を続けており、組織長のように部下をもつ、評価権が与えられるなどの変化がほとんどない |
部下育成は大事だとは思っているし、頭ではわかっているものの、目先の業務に追われ、後回しにせざるを得なくなってしまう | どこかで変わらなくてはいけないのではないかという漠然とした不安を抱えつつも、日常の仕事に忙殺され、いつの間にか時間ばかりが過ぎている |
コンプライアンス、メンタルヘルスなどを意識して、部下を叱れない、要望ができずに自分で仕事を抱えてしまい、仕事に忙殺され、自分自身が何を実現したかったのかを見失ってしまう | 制度上の役割定義を読んではみるものの、それが日常場面で、何をどのようにすることなのか、何を大切にして何を実現していけばよいのか、ということを実感できていない |
つまり、組織長、非組織長にかかわらず、現実と役割定義との乖離が大きく、企業側が役割定義を示すだけでは実際に動けない、何をどのように行動することになるのかがわからない、という状況がうかがえます。
組織長、非組織長を含めて「管理職」としての役割意識の転換を実現するためには、実際の職場において、どのように動いていくことになるのか、というイメージまでを伴った自覚を促すことが必要だと考えられます。
それでは、具体的にどのように意識転換を実現すればよいのか、事例を通してポイントを見ていきます。
非組織長の意識転換に成功した事例
まずは、非組織長である管理職の意識転換に成功した会社の事例を見てみましょう。
図表3:非組織長の意識転換事例 ~非組織長が置かれた状況~
図表3の管理職の状況は、部下を持たない非組織長のため、仕事や環境が変らず、組織から管理職への強い事業要請を認識できておりません。そこで、非組織長である管理職の意識転換を目的に弊社管理職研修を実施しました。受講後の受講者の代表的な声を図表4にまとめ、整理しました。
図表4:受講者の声
受講者の声からは、管理職として必要とされる視野・視界を持ち、自らの意思と責任を持って現場改革を進めていく存在になることを決意したことがわかります。研修を通じて、何がこのような意識転換を起こしているのでしょうか。 次のページでは、意識転換を起こすためのポイントをご紹介します。
意識転換に必要な3ステップ
図表5:意識転換の3つのステップ
STEP1意識転換の必要性を認識する
昇進をしても非組織長である場合は、意識転換の必要性を感じることが難しい状況です。受講者の置かれている身近な現実の中にも、小さな変化や彼らに対する期待があり、それらを集約していけば、期待役割につながっていることを感じてもらい、意識転換の必要性を認識します。
STEP2意識転換に必要なことを学習する
意識転換の必要性を感じたとしても、自分の置かれた現実環境では実行は難しいと感じる場合があります。ケースシミュレーションを通じて、これから起こりうる状況を疑似体験することにより、どのように意識を転換して動いていくことが必要になるのかを学習します。
STEP3意識転換を決意し、実践する
ケースを通じて必要なことの確認はできても、実践できなければ意味がありません。周囲との相互学習を通じ、自己のものの見方や考え方の特徴、大事にしている考えなどを自覚し、受講者相互の支援を最大化して取り組むテーマへの決意をし、職場実践を促します。
上述の3ステップは、一人で考えるのではなく、研修という場で同じ立場の受講者が集まるからこそ、実現が可能なステップでもあります。このステップを2日間で実施することにより、管理職への意識転換を実現することができます。
また、非組織長の場合は、特にSTEP1の意識転換の必要性を感じる機会がほとんどないことが、意識転換を困難にしている要因でもあります。
組織長にも求められる意識転換
非組織長の場合は、意識転換の必要性を感じる機会がほとんどないことが、意識転換を困難にしている要因であるとわかりました。では、必要に迫られているはずの組織長の場合はどうでしょうか。組織長の意識転換事例を見てみましょう。
図表6:組織長の意識転換事例 ~組織長が置かれた状況~
事例にある組織長の状況は、プレイヤーとしての業績を求められ、コンプライアンスやメンタルヘルス、時間管理などの制約の中で忙しさに埋没し、どうしていいのかわからない。また、次から次
へとくる業務に押しつぶされないように、守りの姿勢に入ってしまうという状況であることがわかります。
組織長のこの状況は、「部下育成」などいやでも直面する変化は認識しているものの、組織からの強い事業要請でもある「管理職として必要とされる視野・視界を持ち、自らの意思と責任を持って現場改革を進めていく存在になる」ことの必要性は認識できない状況に陥っているのです。
つまり、意識転換の必要性は組織長にも求められているのです。
これからの時代の管理職に必要なこと
組織長であれ、非組織長であれ、この厳しい経営環境の中で、ますます管理職への意識転換の重要性が増しています。現在、もしくはこれから起こりうる状況を実感することを通じて自分の現状を自覚し、覚悟を持って今後の管理職へのスタートを切ることが、彼らの実践支援にほかならないのです。
管理職としてこれから起こりうる世界である、「自分の発言の影響範囲や責任の重さを自覚する」「意志を持って判断したり、決めたりすることを体感する」ことを通じ、その状況において、自分の成し遂げたいことに意志を込めて、全社的な業績・価値創造に貢献できるテーマを今後の指針として決めてもらう。
それが出来たときに、初めて新しい管理職というステージに入ることが出来るに違いありません。
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