特集
先入観というメガネをはずして
理解することから始める新入社員育成
- 公開日:2009/04/10
- 更新日:2024/04/11

近年、多くの企業で新入社員育成についての問題がクローズアップされています。新入社員を取り巻く仕事・職場環境の変化や、新入社員が「ゆとり世代」と称される世代であることが背景にあるようです。
例えば、企業の人事担当の方や現場で新入社員を育成するマネジャーの方から、次のようなことをよく伺います。
「新入社員が元気をなくしてしまう」「新入社員の離職がとまらない」「数年たつと小粒になってしまう」「最近の新入社員は、打たれ弱い」
そして、これらの問題に対して、「最近の新入社員は……」「ゆとり世代はやっぱり……」と、問題の原因を新入社員の側に求めてしまうことも多いようです。
しかし、本当に新入社員だけに問題があるのでしょうか?もしも新入社員に問題があったとしても、新入社員の側に問題の原因を見出しだだけでは、解決にはつながりません。
ではどうすればよいのでしょうか?
今回は、会社や仕事の見方・感じ方に関する新入社員への調査・インタビュー結果を確認しながら、新入社員への関わり方のヒントをご紹介したいと思います。
- 目次
- 定量データから見る新入社員 ~求めるのは「成長」「貢献」~
- 新入社員『本音』インタビュー ~会社・仕事って ~
- 置かれている環境の整理 ~成果の出にくい時代~
- 新入社員育成のヒント
- 折れない新人の育て方
定量データから見る新入社員 ~求めるのは「成長」「貢献」~
まずは、2009年新卒入社予定の学生に対する調査を元に、新入社員の仕事・組織に対する志向・価値観を見てみましょう。
以下は、「働く上で大切にしたい価値観」「働く上で重視したい社風」についての調査結果です。この2つのデータから皆さんは、新入社員に対してどのようなイメージを持ちますか? 皆さんの抱く新入社員イメージと重なる点・異なる点がそれぞれあるのではないでしょうか。
働く上で最も大切にしている価値観は「成長」、次いで「貢献」です。仕事を通じた効力感を重視する近年の特徴的な傾向といえます。また、専門性獲得への意欲も、景況を反映した今日的な傾向といえるでしょう。一方で、周囲からの注目や他者との競争はあまり重視しない様子がうかがえます。(図表1)
重視されている社風は、「オープンなコミュニケーション」「相互の思いやりとあたたかさ」「強い連帯感とチームワーク」。競争や自立を求める社風は避けられる傾向が強く、和気あいあいとした職場を望んでいることがうかがえます。また、「自由と個性の尊重」の重視度も高く、自分自身の個性を活かせる社風・職場を求めていることが読み取れます。(図表2)

では、組織・仕事に対してこのような志向・価値観を持った新人は、入社後、現実の組織・仕事に対してどのように感じるのでしょうか?
新入社員『本音』インタビュー ~会社・仕事って ~
就職活動時に前頁のような志向・価値観を持っていた新入社員は入社後どのようなことを感じるのでしょうか?
入社後の仕事や組織の捉え方について、2009年4月現在に社会人2年目を迎えた社員にグループインタビューを実施しました。
インタビューのテーマは次の2つです。
テーマ【1】 会社・所属組織・仕事についてどう感じているか?
テーマ【2】 世間からの一般的な新入社員像(例えば、協力や連携が苦手など)について、どう感じているのか?
インタビューでの新入社員の声
テーマ【1】:会社・所属組織・仕事についてどう感じているか?
Q.会社や所属組織、あるいは仕事について、素朴にどんなことを感じているのか?
・ 1年目にここまで行けばよいという、1年目としてのあるべき姿が見えないんです。
・ あるべき姿が見えないまま時間だけが過ぎていくと、ハムスターがひたすら回し車を回しているように思えてくるのです。
・ しかし、会社として1年目のあるべき姿を作るのは難しいのではないか。
・ 周りからは「ここまでできたじゃないか!」と言われて、うれしいけれど、実は実感が持てません。
自分の納得のいく、明確なゴールが設定できないことに関して不満・不安に感じているようです。
ゴール設定に関してさらに話を聞いてみました。
Q.明確なゴール設定は、現実には難しいとわかっているのに、なぜゴールにこだわるのか?
・ 私は周りから認められたいという気持ちが強いと思います。
・ 成長っていうのは、あくまで認めてもらうための手段だと思っているんです。
・ 私の場合は、役に立った上で認められたいという感じです。
・ 入社すると自分が何もできないことがわかって、成長したいという気持ちが折られる感じでした。
Q.明確なゴールが持てない中、頑張ってこられたのは何が支えになったのか?
・ 同期がみんな同じ状態だったから、自分だけではないと思えていました。
・ やはり、自分でこの会社を選んだというのが大きいと思います。
・ 自分の志望動機や自分自身を会社に見抜いてもらって入社しましたから、恩を返したいし貢献したいという気持ちがあります。
テーマ【2】:一般的な新入社員像(例えば、協力や連携が苦手など)について、どう感じているのか?
Q.「最近の新入社員は○○だ」という一般化した評価についてどう思いますか?
・ そういう自覚はないわけじゃないです。でも正直に言うとなりたくてなったわけじゃないんだけどなという気持ちもあります。
強い成長意欲を持った新入社員が、なかなか成長感を感じられずに苦労している様子が感じられるのではないでしょうか?
置かれている環境の整理 ~成果の出にくい時代~
新入社員の志向・価値観や、入社後の会社・仕事の捉え方について見てきましたが、どのような印象を持たれたでしょうか?
このように新人が悩むのは、新入社員の志向・価値観に原因があるのでしょうか?
小社では、新入社員を取り巻く現在の仕事・職場状況の影響が大きいと考えています。
新入社員を取り巻く仕事・職場状況について、下図のとおり俯瞰してみましょう。
【図表3 新入社員が置かれている環境】

新入社員は上記のような厳しい環境に置かれており、なかなか目に見える成果をあげることは難しく、成長感を感じにくくなっています。その結果、成長意欲の高い新人は、自信を持つことができない状態になり、「新入社員が元気をなくしてしまう」「新入社員の離職がとまらない」「数年たつと小粒になってしまう」「最近の新入社員は、打たれ弱い」などという印象になってしまうと考えています。
新入社員育成のヒント
新人の志向・価値観が以前と変化しているのは事実です。しかし、前頁にもあったように、新入社員の志向・価値観によるものというよりは、置かれている環境による影響が大きそうです。
新入社員が置かれた環境をきちんと理解したうえで、一人ひとりと向き合えば、新入社員それぞれが持っている可能性を見つけ、育成のためのヒントを得ることができるのではないでしょうか。
例えば、今回のインタビュー内容から捉えられる「育成のためのヒント」は以下のようなことです。
・ 気持ちがくじけそうなときも、なんとか踏ん張ろうとしている
・ 周りからの期待に応えたいと思っている
・ 「一人前になりたい、一人前として認められたい」と思っている
彼・彼女ら各々の志向や価値観を知ることで、それらを力点に評価したり叱咤激励したりすることができます。
時にはそうした「育成のためのヒント」を見つけづらい場合もありますが、それでも必ずあると思って見続けることが大事です。見つけるための切り口はいくつもあります。
例えば、次のような観点について新入社員と話したことがありますか?
・「入社動機」:この会社・仕事を選んだ理由は? 何に興味を持ったのか? 何を実現したいと思ったのか?
・ 「将来の夢」:この会社に入社して身に着けたいと思っていることは何か? 将来どうなりたいのか?
・ 「拠り所になっている体験」:どんな成功体験か?夢中になってやりきったことは?
・ 「喜怒哀楽」:どんなことに喜怒哀楽を感じるのか? そこで喜怒哀楽を感じるのはどんな思いがあるからか?
新入社員を相対的に評価する前に、「ここは素晴らしい」「ここは興味深い」「ここは自分と似ている(あるいは違っている)」といったように、ひとりの人間として新入社員に向き合ってみてはいかがでしょうか。きっと「育成のためのヒント」が見えてくることでしょう。
折れない新人の育て方
近年、「最近の若者」について、各種メディアが多数取り上げるようになっており、皆さんも新入社員を「最近の若者」と一括りにして捉えがちになってはいないでしょうか?
問題を新入社員の中に見出しただけでは、問題は解決されません。新入社員一人ひとりをじっくり理解すれば、必ず「育成のためのヒント」はあるはずです。
この特集が新入社員育成に少しでもお役に立てれば幸いです。
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