特集
売れ続ける法人営業の『秘訣』とは
不況だからこそ鍛えられる!
- 公開日:2010/03/08
- 更新日:2024/04/11

2008年9月のリーマンショック以降、経費の大幅な削減、市場の縮小により、他力本願の受身の仕事だけでは、期待している業績が挙げられなくなり、SEのフロント化、外販シフトなど、能動的に市場を開拓していく「仕掛ける営業力」を強化したいというご相談が大変多くなってきています。
各社がサービス領域を互いに広げ、新規顧客・新規領域へのアプローチを積極的に開始し始めたことで、これまでの業種・業界の垣根を越えた顧客の獲得競争が起こっています。
そして、その担い手となる営業担当は、数年前までの好景気時に採用したローキャリアが中心です。昨今の若手は、豊かな時代に育ち、入社前に困難や葛藤を乗り越えた経験が不足気味です。入社後も受身で仕事がやってくる時代の営業スタイルが染み付いており、求められる行動とのギャップが大きくなっています。また、金銭・評価・報酬による従来型の外的動機には昔ほど響かなくなっており、「価値のある仕事をしたい」「どこでも通用するようになりたい」「社会に貢献したい」など内的動機を求める傾向にあります。自分の仕事が「価値がない・悪いことをしている」と感じると、すぐ足が止まったり、つぶれてしまう傾向があります。要望をくれるお客様の期待に応える=善、相談もされていないのにこちらの都合で売りにいく=悪と短絡的に捉える若手も少なくありません。
この環境下で、競合との競争に打ち勝ち、限られた顧客の予算を獲得し得る「真の課題解決」を、「能動的」に仕掛けて実現していくためには、高度な営業スキルと強いモチベーションが必要となります。それを実現することは容易なことではなく、抜本的な営業教育体系の見直しと、個人力だけに頼らない強い組織づくりの両面が今後のV字回復の鍵となると考えています。
今回は、そのような厳しい環境下にある「法人営業」にターゲットを絞り、不況下だからこそ鍛えられる、売れ続ける法人営業の『秘訣』をご紹介させていただきます。
「売れる営業組織」をつくるための3つの秘訣
不況下で業績を上げ続ける法人営業組織の秘訣は、「顧客価値の最大化」、「チーム力」、「壁を突破する原動力」の3つだと考えています。
【図表1 業績を上げ続ける法人営業組織の3つの『秘訣』】

次ページから、この3つの『秘訣』について具体的にご紹介していきます。
顧客価値の最大化とは
最初に、「顧客価値の最大化」についてご紹介いたします。 弊社では、「顧客価値の最大化」とは、お客様の成果を最大化すること(=真の課題解決)と位置づけています。それは同時に、自社の業績の最大化を意味し、Win-Winの概念として捉えています。
顧客価値を最大化するためには、大きく分けて以下2つの知識・専門性を強化する必要があります。(図表2)
(1)顧客課題の知見 ex)業界知識・専門分野知識 ○○の業界、○○の分野ではこういう課題がよくある
(2)解決策の知見 ex)商品・サービスの機能・活用方法 ソリューション事例を豊富に知っている
「お客様の課題を広く・深く知ること」「活用できる解決策の知見を豊富に持つこと」、この2つの接点を広げていくことが「顧客価値の最大化」のベースとなります。
この両面の知見と接点を組織的に高めていくことが重要です。
そのためには机上の知識学習だけでなく、「顧客価値の最大化」に向けた「仮設検証サイクル」に組織的に取り組むことが必要です。「仮説検証サイクル」には、以下の2つがあります。
(1)”マーケットごと“の仮説検証サイクル
(2)”担当顧客ごと“の仮説検証サイクル
“マーケットごと”の仮説検証サイクルについては12月の特集でご紹介させていただきましたので、今回は“担当顧客ごと”の仮説検証サイクルについてご紹介させていただきます。

●担当顧客ごとの仮説検証サイクル(図表3)
【STEP1 訪問前仮説】
まずは過去の取引やホームページなど、訪問前でもつかめる情報から、なるべく事実ベースでお客様の情報を押さえ、お客様のニーズを想定します。ここはあくまでも訪問前に描ける範囲で構いません。
【STEP2 アプローチ計画】
次に大切なことは、「誰にどのようにアプローチするか」です。営業担当はついつい会いやすい人に会ってしまうものですが、必ずしもその人がキーパーソンというわけではありません。想定されるニーズや、営業シナリオによって会うべき人は変わってきます。そこを目的と意思を持って描いていく力((1)営業計画スキル)が必要です。
【STEP3 商談コミュニケーション】
そして、一番重要なのが商談時のコミュニケーションです。ここでありがちなのは、営業担当者が不安に耐えられず、商品・サービスや予め用意した仮説など、自分にとって都合の良い話に終始して帰ってくるケースです。
「○○の商談になりそうです」という営業担当の言葉を信じて同行してみるとお客様の真の課題は全然違うところにあったということも少なくありません。この状況から、お客様の心を開き、本音で悩みやニーズを開示していただくための商談コミュニケーションの強化は、昔からもっとも多くご相談いただく課題の一つです((2)商談コミュニケーションスキル)。
【STEP4 問題分析・課題設定】
昔はお客様の心を開き、提案の前提となる情報を引き出せれば、解決策は概ね決まっていましたが、昨今はお客様自身もニーズを整理できていないケースが多く、課題が複雑になっています。人によっても言うことがバラバラだったり、ニーズが異なっている場合も多いのです。問題をどこに置くかによって課題の設定も異なり、提案も変わってきます。((3)問題分析・課題設定スキル)
この【STEP1】~【STEP4】の『仮説検証サイクル』を回し、顧客課題の仮説を真の課題に置き換えていく技術を習得すれば、商談化する確率は自ずと高まってきます。
チーム力とは
次に、営業組織として欠かせない要素が「チーム力」です。
昨今の厳しい環境下で、ローキャリアの営業担当の個人力だけで高い業績を上げ続けることは大変困難です。
特に法人営業は、顧客も組織体のため、購入の意思決定をするまでの関係者も多く、ニーズも複雑になりがちです。このような顧客に対応していく上で、知識・スキルの不足を補うだけでなく、モチベーションを維持していく上でも、「チーム力」が大きな要素となってきます。
では業績を上げ続ける営業チームとはどのようなチームなのでしょうか。これまで弊社が携わってきた業績を上げ続けている営業チームを分析すると、下記の5つの要件が共通して備わっていることが分かりました。
【図表4 業績を上げ続けている営業チームの5要件】

こうした強い営業チームの要件は自然に備わるものではなく、営業マネジャーが意図的にメンバーに働きかけ、チームをつくっていくことが求められます。 もし、貴社の営業マネジャーが、プレイヤーとして営業に出るなど、現場の営業担当に関わる時間が少ないのであれば、マネジャーにばかりチームづくりを任せるのは難しいといえます。このような場合は、組織全体として営業を強化していくための仕組みづくりが必要になります。例えば、個人レベルの営業ノウハウを組織全体で共有するために営業活動の見える化や営業マネジメント手法の強化を行うなど、さまざまな施策を用いていくことで、より高い業績が得られる営業組織へと転換することが出来るのです。
壁を突破する原動力とは
3つ目の秘訣は、「壁を突破する原動力」です。
営業は、決して楽な仕事ではありません。営業経験者であれば、お客様へアプローチしても相手にしていただけなかった経験や競合に負けて悔しかった経験などがあるでしょう。
特に不況になると、お客様から依頼がかかることも少なくなり、新しい提案機会を自らつくり出す必要が出てくるため、厳しい営業活動が続くこともあるでしょう。
そういった環境下で営業活動を持続させるには、厳しい環境に立ち向かうために活動を起こす源泉となる 「原動力」が必要になります。
営業が必要な原動力には、「顧客」・「組織」・「自己」から発生する3つの原動力があると考えています。
この3つが密接に結合し、高いモチベーションを生み出すことで、困難な状況に立ち向かうことができるようになるのです。
【図表5 3つの原動力とは】

不況下に強い営業組織は、意図的に原動力をつくり出す施策を行っているため、営業組織全体が常に活気づいているのです。自社の商品知識や営業スキルを高めることも重要な業績向上施策の一つですが、全ての基礎である高いモチベーションをつくり出す「原動力」の強化施策へ着手することも重要だといえます。
秘訣を後押しする経営層のリーダーシップ
最後に、3つの秘訣を後押しする経営層の存在の重要性について触れておきましょう。
不況下でも業績を上げ続ける営業組織は、トップが意志を持ち、前述のような営業組織の強化を継続して行っています。これは、最初に営業力強化を実施する号令をかけるということではなく、定期的に現場の状況を把握しながら、施策の方向性を決めて進めるということです。
このようなトップの意志や継続的な施策への関わりにより、現場の営業までその方針が浸透し、営業組織が活性化していきます。結果、業績が一過性ではなく、継続的に向上していくのです。
ぜひ営業力強化を行う際には、経営層の皆様がリーダーシップを発揮し、強い意志を持って継続的に進めていただきたいと思います。
ここまで、不況下でも業績を上げ続ける法人営業組織について、「顧客価値の最大化」「チーム力」「壁を突破する原動力」の3つのテーマで「秘訣」をお伝えしてまいりました。この秘訣を取り入れ、業績を上げ続ける力をつけるには、不況である今が絶好の機会です。
この時期に身につけた力は、近い将来必ずや業績となって返ってくることでしょう。皆様の組織でも将来を見据えた営業組織力の強化に取り組んでみてはいかがでしょうか?
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