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HRカンファレンス2011特別講演より

事業のサステナビリティを高める次世代リーダー選抜・育成

  • 公開日:2011/07/11
  • 更新日:2024/04/11
事業のサステナビリティを高める次世代リーダー選抜・育成

弊社が昨年実施した「人材マネジメント実態調査2010」において、実に8割以上の企業が、「次世代経営人材の育成・登用」は、現在および5年後における人材マネジメント課題であると回答しています。一方、別の機関が実施した調査(※)によると、リーダーの成長を促す上で、非常に重要な要素である「困難な業務への意図的な配置」が「上手くできている」、「ある程度上手くできている」と回答した企業の割合は、約1割にすぎません。昨今、リーダーシップ開発において、「実際の経験を通じた学習」の重要性がクローズアップされていますが、経験の付与そのものが、リーダー選抜・育成のボトルネックとなっている状況がうかがわれます。

5月25日に開催された「HRカンファレンス2011(日本の人事部主催)」 (※)において、弊社は「事業のサステナビリティを高める次世代リーダー選抜・育成」という演題で、このテーマを取り上げた講演を行いました。今回は、その講演内容のダイジェスト版をご紹介します。

※(出所)「2009年度 当面する企業経営課題に関する調査(社団法人 日本能率協会)」
※「HRカンファレンス2011(日本の人事部主催)」URL:http://jinjibu.jp/hrc07/index.html

目次
リーダー選抜・育成の理想とありがちな現実
全ての鍵を握る「ラインと人事部門の建設的な協働」
変化する人事部門の役割
リーダー選抜・育成を支えるタレントマネジメントシステム
さいごに~講演を終えて~

リーダー選抜・育成の理想とありがちな現実

1)思うように進まない「経験」のアサイン
弊社が実施した「人材マネジメント実態調査2010」では、「次世代経営人材の育成・登用」が、現在および5年後における人材マネジメント課題であると回答した企業が8割を超えました。一方で企業経営課題に関する別の調査では、次世代経営人材の育成についてポジティブな回答をした企業は、約1/3に留まっています。またプロセスに注目すると、「研修実施後の困難な業務への意図的な配置」ができているという回答は、1割強と極めて厳しい結果となっています。
「リーダー選抜・育成」は極めてポピュラーで、かつ重要な人材マネジメント課題でありながら、大半の企業が思うように対応できていないテーマだといえるでしょう。

2)リーダー選抜・育成における3つの壁
「70_20_10」という数字をご存じでしょうか?リーダーシップ育成機関として有名な米国のロミンガー社が、経営幹部として成功しているリーダーにインタビューを実施し、「リーダーとして成長するための学びをどこから得たのか」をレポートしたのですが、その結果は「業務での経験」が70%、「他者からのフィードバック」が20%、「研修」が10%というものでした。

リーダー育成において、実際の経験からの学びがいかに重要なのかを示唆するレポートですが、現実には先にご紹介した調査結果が示すように、「困難な業務への意図的な配置」ができている企業は、ごく少数です。その背景には、「組織の壁」、「マッチングの壁」、「共通言語の壁」という、リーダー育成が思うように進まない企業に共通した問題が存在します。

「組織の壁」とは、中長期的な視点から候補者の成長を考える人事部門と、目の前の事業推進を優先したいラインとの間で発生する、協働を阻害する壁を指します。「マッチングの壁」とは、リーダー育成の機会として望ましい「困難な業務」やポジションが整理できておらず、候補者の育成が場当たり的になることです。

最後に「共通言語の壁」とは、次世代リーダーの要件に関する「共通のモノサシ」に関する課題です。「共通のモノサシ」がなければ、組織横断で候補者を比較することができず、育成における課題設定もバラバラになりがちです。
この3つの壁をクリアし、リーダー育成において最も大きなウエイトを占める「経験の付与」を意図的にアサインできている状況を作り出さない限り、企業にとって最大の人材マネジメント課題である「リーダー選抜・育成」は難航し、事業そのもののサステナビリティを脅かすことになります。

【リーダー選抜・育成における3つの壁】

【リーダー選抜・育成における3つの壁】

全ての鍵を握る「ラインと人事部門の建設的な協働」

1)リーダー人材を輩出する企業の特徴
欧米企業においても、次世代リーダー選抜・育成は、極めてクリティカルな人材マネジメント課題であり、タレントマネジメントの実践を試みる最大の目的でもあります。米国ではベビーブーマー世代のリタイアが今後20年間で最大4600万人に上るともいわれており、企業間でのリーダー候補人材の獲得競争、いわゆる「War for Talent」が今後ますます加熱すると予測されています。

このような状況においても、リーダー候補人材を豊富に育成し、自社のみならず他社へもリーダー人材を輩出している企業が存在するのですが、それらの企業に共通して見られる特徴として、以下の4項目を挙げることができます。
それは、1)経営層のコミットメント、2)ラインと人事部門の緊密な協働、3)候補人材の選抜・育成状況の徹底した可視化、4)コアな人事施策との統合です。
中でも強調したいのが、2)のラインと人事部門の緊密な協働で、リーダー選抜・育成におけるお互いの役割や責任を明確にし、協働の成果であるリーダー候補人材の育成状況を可視化/数値化しながら、最終責任者であるTOPや経営陣にレポートしています。

2)建設的な協働を実現するポイント
候補者が所属するラインの積極的な協力がなければ、適切な候補者を選抜することも、困難な業務の意図的な付与によって、候補者の成長を促すこともできません。建設的な協働を実現するためには、いくつかのポイントが挙げられます。

■事業部トップを育成のゴールとして設定
ラインと人事部門の双方がコミットできる共通のゴールとして、「各事業の次代を担うリーダー候補人材の選抜・育成」を設定します。

■選抜・育成の主体はライン、共通言語の設定と全体調整、サポートを人事部門が担当
候補者に関する情報を豊富に持ち、困難な業務の内容を理解しているのはラインです。候補者の選抜や困難業務の意図的なアサインについては、ライン主導で行い、人事部門がサポートするという関係がベストでしょう。もちろん、ラインはその権限に伴う説明責任を人事部門や経営層に対して果たさなくてはなりません。

■候補人材の本籍はラインにおいたまま、組織を超えたアサインを断行
時には人事部門がコーディネートし、組織を超えた異動を行うことも必要です。その場合でも候補者の本籍は元の事業部から動かさず、異動先でのミッション設定や評価結果、能力開発テーマの設定状況を本籍事業部サイドもモニタリングできるようにします。

【ラインが担うべき説明責任の例】

【ラインが担うべき説明責任の例】

変化する人事部門の役割

1)コーポレート人事部門が担うべき役割
ラインとの協働を進めるにおいて、人事部門の役割も自ずと変化します。ライン主導での運用を支援しつつ、全体としての整合性を担保するため、統一の基準やインフラを提供し、専門家としての助言を提供しながら、組織間の調整を担当。またKPIを設定してラインの取り組みをモニタリングし、経営にレポートします。加えて、選抜型研修の開催や経営TOPとの接点作りなど、ラインでは実施困難な育成の機会を提供することも重要な役割となります。

■コーポレート人事部門が担うべき役割
1.リーダー選抜・育成のための共通言語の提供
リーダーに求められる人材要件、人材要件に沿ったアセスメントツール、望ましい経験の類型化などを整備し、全社の共通言語として活用を促します。また運用の手順を構築し、共通ルールを整備します。

2.選抜・育成状況の可視化と事業サポート
選抜・育成状況を可視化できる仕組みを整え、事業部サイドや経営層と進捗を共有します。候補人材の育成が最大化されるよう、事業部の枠を超えたアサインを調整します。

3.KPIの設定と経営へのレポート
後継者候補が指名されているキーポジションの比率、ハイポテンシャル人材のリテンション状況など、プログラムの進捗をモニタリングするKPIを設定し、経営にレポートします。

4.相互触発の機会の提供
リーダー候補同士が相互に触発されるような、選抜研修などのリアルな場、また企業内SNSのようなバーチャルな機会を提供します。

2)成長を促す経験の与え方
リーダーは主に経験から学ぶことがわかっていますが、全ての経験が有効というわけではありません。「ひと皮むける経験」もあれば、「何も教えてくれない経験」もあります。
「リーダーの成長を促す経験」とするためには、経験そのものに「アセスメント」「チャレンジ」「サポート」の3つの要素を持たせることが重要です。各要素の詳細については、当HPの5月の特集をご覧ください。
経験をアサインするタイミングとしては、「トランジション」と呼ばれる、キャリア上の変化の節目が、経験を通じた成長にとって非常に効果的なタイミングであることがわかっています。新しい役割や仕事に就いた最初の1年は、意識・行動の変容を求められることが多く、それ以降の時期よりも大きく成長できる可能性が高まります。
その上で、候補者に深い内省を促す機会も不可欠です。多忙な日常の中では、自分の経験を振り返り、そこから教訓を引き出す機会を見つけることが困難で、何らかの非日常的な機会を設定することが必要となります。内省の材料として、360°レビュー結果を本人にフィードバックすることも、自分自身に向き合う機会として非常に有効です。

【リーダーの成長を促す効果的な経験の与え方】

【リーダーの成長を促す効果的な経験の与え方】

リーダー選抜・育成を支えるタレントマネジメントシステム

1)タレントマネジメントの2つのキーワード
タレントマネジメントは、人材マネジメントにおける世界最大のコンベンションの一つであるASTD国際会議において2005年からセッションカテゴリーの一つとして取り上げられるなど、ここ10年の人材マネジメントを代表するキーワードとなっています。
タレントマネジメントは非常に幅広い概念で、従来のヒューマンリソースマネジメントとの違いがわかりにくいのですが、最大の特徴は「人事戦略と事業との整合性を確保する」というコンセプトであり、事業戦略と社員の目標を連鎖させる(Alignment)、さまざまな人事施策を統合的に展開する(Integration)ことが大きなポイントとなっています。
リーダー選抜・育成というテーマにおいても、中長期の事業戦略からどのようなリーダー像が求められるようになるのかを検討する、事業推進上、どのようなポジションがコアとなるのかを明らかにし、その後継人材をハイポテンシャル人材プールから指名する、また評価や報酬などのコアとなる人事施策とリーダーシップ開発を統合させる、などが重要な施策として注目されています。

2)グローバル/大手企業での導入が進むタレントマネジメントシステム
ラインと人事部門が緊密に連携し、リーダー選抜・育成を中心としたタレントマネジメントの実践を進めるためのインフラとして注目され、欧米企業を中心に積極的に導入されているのが、クラウド型のタレントマネジメントシステムです。クラウドコンピューティング技術の進歩によって、豊富な機能を統合的に提供することが可能となり、タレントマネジメントを実践するためのハードルを引き下げました。
弊社でも米国のSuccessfactors社と提携し、タレントマネジメントシステムを日本の企業にご紹介しています。最大34言語に対応し、WEBを通じて組織や地域を超えた利用が可能なことから、グループ共通の人材マネジメントインフラとして、またグローバル人材マネジメントのツールとして、タレントマネジメントシステムの導入を検討する企業が増えています。

リーダー選抜・育成を支えるタレントマネジメントシステム

さいごに~講演を終えて~

リーダー選抜・育成は、企業にとって極めて重要でありながら、思うように進まない課題であること、そして「成長を促す困難な業務への意図的な配置」がポイントであると認識しながら、大半の企業がそれを実践できていないことを見てきました。
実践できない要因は多様で、全ての企業に有効な万能薬がないことも事実です。しかしながら、解決の糸口は、「ラインと人事部門が建設的に協働できる体制をいかに構築し、実践するか」にあると考えています。自社にとっての最良な協働パターンを検討し、リーダー選抜・育成におけるラインと人事部門の役割をゼロベースで検討する時期が来ているのではないでしょうか。
やや唐突な提案ではありますが、まず最初の一歩として各事業部の責任者の方と、事業の将来を託せる後継者として期待できる社員について話し合う機会を持ってみてはいかがでしょう。事業部の責任者の皆さんが、ご自身の後継人材の選抜や育成について、どのようなことに取り組みたいとお考えなのか、何を課題として感じていらっしゃるのかをお伺いする中で、人事部門として今後サポートすべき取り組みが見えてくるかもしれません。
またタレントマネジメントシステムは、欧米のグローバル企業の利用を通じて毎年その機能を強化し、磨かれているシステムでもあります。いわば汎用化されたベストプラクティスでもありますので、デモをご覧いただくことで、何かしらのヒントをつかんでいただけるのではないでしょうか。

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