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グローバル展開を進める多く企業が直面する課題

なぜ海外現地化は進まない?

  • 公開日:2013/01/07
  • 更新日:2024/04/11
なぜ海外現地化は進まない?

小社では2013年2月7日(木)、「グローバル競争力再考~現地マネジメントの視点から~」をテーマとしたセミナー「RMSmessageライブ 2013」を開催いたしました。
このテーマの背景にある問題意識を、小社組織行動研究所所長 古野庸一よりご紹介いたします。

目次
20年前から続く、日系企業の課題
現地化を阻む「負のスパイラル」とは?
「それは現地に任せています」
現地トップの合言葉は「OKY」?
あくまで「現地化」は手段

20年前から続く、日系企業の課題

「経営の現地化が進まない」

事業のグローバル展開を進める企業の方々が、よく挙げられる課題です。
実態はどうなのでしょうか? 現地化の進行を測る指標の一つとして、現地法人の経営者が現地人であるかが挙げられます。ある調査(※)によると、日系企業の海外現地法人における日本人取締役の比率は、実に78.9%を占めます。これに対して、欧州企業では本国出身者は約5割、北米企業に至っては約3割といわれています。

2011年に、私は韓国、中国、シンガポールの日系企業のべ24社を訪ねました。そこでも「現地化が課題」という話をよく聞きましたが、同時に違和感も抱きました。例えば韓国、中国への本格的な参入は各社ともこの10年のことです。日本人中心で立ち上げ、今後、現地人に任せていくという観点で、「現地化」というキーワードは納得できる話でした。

一方で、シンガポールへの進出は、多くの企業で70年代に始まっており、既に30年以上の進出の歴史がある企業においても、「現地化が課題」と言っているということをどう理解すればいいのだろうかと、しばらく考え込みました。詳細に話を伺ったところ、「現地化」という課題は、多くの企業で20年前からのものだと判明しました。つまり、20年間、この課題は解決されていないということなのです。

日系企業の海外現地法人では、なぜこれほどまでに「現地化」が進まないのでしょうか?

※ 出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第4回 日系グローバル企業の人材マネジメント調査結果」2006年10月

現地化を阻む「負のスパイラル」とは?

アジア諸国における急速な経済成長に伴い、各社は生産だけでなく、開発、販売も含めた事業そのものを各国もしくは地域で行おうとしています。各国の価値観や慣習に合わせた販売促進や営業活動で勝つためには、競合よりも優秀な現地の人材(以下、タレント)が必要になってきます。 

商品開発も同様です。ある精密機械メーカーの担当者は、「日本の仕様だと、東南アジアでは湿気で動かない。インドでは埃で動かない。本気で売ろうと思えば、こちらで、こちらの人材で開発することが必要」と、おっしゃっていました。

商品開発、販売促進、営業活動、アフターサービス、いずれの観点でも、現地のタレントが必要になってきますが、なかなかそれが実現できないのは「現地化できない構造」に原因があります。

「現地化できない構造」とは、言い換えれば「負のスパイラル」です。(図表.1参照)

図表.1 「現地化できない構造」

図表.1 「現地化できない構造」

「タレントが採れない」から「タレントが育たない」。だから、「現地人材に任せられない」。任せられないと「主要ポストを日本人ばかりが占める」ことになります。その結果、「グラスシーリング(キャリアアップを阻む「見えない天井」)を感じ」て、「採用ブランドが低下」し、「タレントが採れない」という事態に陥ります。

仮に「タレントが採れた」としても、「グラスシーリングを感じ」て「離職する」ということもよくあります。そうすると、すぐに辞めるリスクがある人には、「教育投資ができない」ということになります。「教育投資をしてくれない」会社は、タレントにとって魅力的でなく、「採用ブランドの低下」につながり、結果的に「タレントが採れない」というスパイラルになります。

また、日本本社のグローバル化がなかなか進まない現状では、現地トップは日本本国と日本語で密なコミュニケーションをとることが必要となります。そこで、日系企業は「日本語ができるタレント」を求めますが、現地ではそのようなタレントは豊富ではありません。それゆえに、「タレントが採れない」という結果に至ってしまいます。

いずれにせよ、現地でタレントを採用、育成できず、主要ポストは日本からの派遣に頼るという構造から抜け出せず、「経営の現地化ができない」という状況が生まれているのです。

「それは現地に任せています」

この課題の難しさは、現地のことであるにも関わらず、現地だけで解決できないところにあります。
「現地化」の解決のためには、タレントを採用し、リテンションし、育成していく必要があります。それを実現するには、採用ブランドを上げることも必要ですが、給料、昇進可能性、職場からの刺激、成長実感、企業理念や会社が行っていることへの共感、そして日本本社と連携してサポートを取り付けることまで考慮しなければなりません。

では実際はどうでしょうか。本社の人に、現地の採用に関する話を伺うと、「それは現地に任せています」と答えられることが少なくありません。今後のアジアの発展性、その企業の事業展開スピードを考慮する必要がありますが、一般論で考えると、現地だけで解決できる課題ではないといえます。(図表.2参照)

図表.2 海外現地法人におけるグローバル人材マネジメント課題

図表.2 海外現地法人におけるグローバル人材マネジメント課題

現地での採用に関して、足元の人材補充のみが目的であれば、現地だけでも解決できるかもしれません。しかし、将来の現地での発展を考えれば、本社からの支援が不可欠です。事業サイドからの短期的な収益プレッシャーがあれば、長期間かけて人を採用して育成していくというインセンティブは働きにくいのが常です。
そのような状況でも、優秀なカントリーマネジャーは、そこまで考慮して本社とかけあい、予算やHR人材を獲得していきます。さらには、現地に合わせて、報酬制度、昇進昇格制度をつくり、タレントを成長させるためのケアを行います。タレントのリテンションを考慮すると、メンター制度や育成制度も大事ですが、日常で成長を感じさせられるジョブアサインメントも必要になってきます。

ここまでのことに取り組むには、現地の予算や人だけでは限界があります。多くの企業では、現地だけではそこまで手が回らず、結果「タレントが辞めていく」という構図に陥りがちです。

現地トップの合言葉は「OKY」?

「現地化」から派生する問題として、「現地と日本本社のコミュニケーション」があります。

現地幹部は、説明責任、ナレッジトランスファー、コラボレーションという観点で、本社と密なコミュニケーションをとる必要があります。そうなると、現地幹部が日本語を理解できるか、本社側が現地語を理解することが必要になってきます。
前述のように、現地タレントに日本語を求めると、タレントの量と質に限界が出てきてしまいます。ゆえに、タレントを採用し、リテンションするためには、日本本社側が現地語能力(多くの場合、英語)を高くしておく必要が出てきます。

つまり、「現地化」を進めるためには、本社からの金銭的支援、人的支援が必要であるとともに、本社のコミュニケーション能力向上が必須になるのです。(図表.3参照)

図表3. 本社におけるグローバル人材マネジメント課題

図表3. 本社におけるグローバル人材マネジメント課題

実際、グローバルで成長している企業は、「現地化」を本社の課題ととらえて支援しており、現地タレントを活かすマネジメントを行っています。言い換えれば、現地での出来事を本社側が自分事として捉える「グローバルマインド」を持っているのです。

インタビューの中で聞いた話ですが、ある国の日系企業のトップの集まりでは、「OKY」という略語が合言葉になっているそうです。「(O)お前が(K)こっちに来て(Y)やってみろ」の略だそうです。本社と現地の距離感を象徴する言葉であり、似たような話をいたるところで耳にします。

「立ち上げ期にも関わらず、本社に説明するために、月のうち半分は日本に戻っている。これでは立ち上がるものも立ち上がらないし、競合に置いていかれてしまう」
「日本のコンプラ基準では、現地のほとんどのビルが当てはらまない。当てはまるビルは家賃が高い。けど、利益を出せと言う。ちゃんと現地を見に来て判断してほしい」
「日本の人事制度は、他の国から見ると、非常識。同じ考え方では、優秀な人は採れないし、採れても辞めてしまう」

嗜好、文化、風習、価値観、制度、慣習、そして言葉など、あらゆる違いに関して、本社側が常に意識していなければ、本社と現地社員の間にいる現地幹部は、板ばさみ状態になってしまいます。その現地幹部が、現地人であろうと、日本人であろうと、実は関係がありません。なぜならば、本社と現地の間の信頼関係やコミュニケーションの問題であり、本社側のグローバルマインドセットの問題であるからです。

あくまで「現地化」は手段

その後、のべ7カ国、60社強の企業を訪問しました。日系だけではなく、在アジアの欧米企業も訪ねました。改めて感じたことは、「現地化」は手段であり、本質は「ローカルでいかにパフォーマンスを上げられるか」であるということです。

グローバル展開に成功している企業では、現地人、本国出身者、そして第三国出身者が、現地トップを担っています。つまり、グローバルに人材を採用、配置し、そして、最もふさわしいタレントを現地トップに配置しているのです。
タレントは、日本だけではなく、中国、インドをはじめとして、東南アジアなどさまざまな国にいます。しかしながら、ほとんどの日系企業は、欧米企業や韓国企業、中国企業と比べて、十分な採用活動を行えているとはいえません。

「現地のことは現地で」という本社側のマインドセットを変えなければ、今後、十分に戦っていけるタレントが揃わない状態での競争を強いられることになってしまうのです。それでは、グローバルを舞台に勝つことはできません。この状態を打破するためにはどうすればよいのか、考えて実行するのは今、待ったなしの状況に来ているのです。

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