特集
最新調査の結果と考察
企業内のイノベーターの実態とは?
- 公開日:2014/10/22
- 更新日:2024/04/11

日本では以前からイノベーションの必要性が叫ばれて、近年では政府も成長戦略の中核として「イノベーション」を掲げています。一方で、「そうはいっても、イノベーションが起こらない/起こせない」というのが、多くの日本企業に共通した悩みではないでしょうか?
今月の特集では、「企業の中でイノベーションを起こしている/起こそうとしている人」に着目した人材マネジメントの観点での調査をもとに、考察をお届けします。
- 目次
- イノベーターを対象とした最新調査
- 働く時間の10%は「市場や現場の観察」
- 多様な経験が、イノベーションの「タネ」
- 安定志向と役割意識の強い企業内のイノベーター
- 失敗を許容する文化と経営陣の本気を切望
イノベーターを対象とした最新調査
多くの企業が、新たな成長領域を求めて、「イノベーション」に注目しています。イノベーションは「事業戦略」「研究開発」におけるテーマである一方で、「人材マネジメント」のテーマでもあるといえます。
なぜなら、企業内でイノベーションを起こそうとすると、従来の組織慣行から抜け出して、新たな成長領域に挑戦する人材や組織をいかにして作り出すかという問題に直面するからです。
そこで、弊社では「企業のなかからイノベーションを生み出す個人=イノベーター」の実態を明らかにするために、アンケート調査(図表.1)を行いました。

今回の特集では、その結果をご紹介しながら、イノベーション創造に向けた人材マネジメントへのヒントを考えていきたいと思います。
働く時間の10%は「市場や現場の観察」
最初に、働く時間の割合に着目しました。(図表.2)
働く時間の割合は、社内:社外=7:3であることが分かります。とりわけ、「商品・サービス企画者」は、社内業務のなかでも、単独・自部署内で完結するものは約46%と半数に満たないことが分かりました。このことから、外(=職場外・社外)に対して時間を使っている様子がうかがえます。
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特に注目したいのは、「市場や現場の観察」に、働く時間の約10%を割いていることです。観察行為そのものは成果に直接的につながるものではありませんが、市場や現場に身を置くことに「週のうち半日程度」を費やしているのです。新たな商品・サービスのアイデアを思いつくために、時間を確保していると推察されます。
日常業務に忙しく追われる日々のなかで、「週のうち半日程度」を確保することは容易ではありません。イノベーターから、業務の活動デザイン、タイムマネジメントの工夫を学ぶことができるかもしれません。
では、彼ら・彼女らは、どのような経験を経て、新商品・サービスの創造に従事するようになったのでしょうか?
多様な経験が、イノベーションの「タネ」
図表.3の上位項目をみると、イノベーターは未知の課題に取り組んだり、新たな人間関係を築いたりするような仕事を経験してきたことがうかがえます。ゼロベースで取り組む仕事をどれだけ数多く経験できるかが問われているといえそうです。

想定外だったのは、「闇研究(非公式の研究)・自主的な企画活動」が少ないことです。
かつては、「新商品・サービスは闇研究から生まれる」といわれた時代もありましたが、最近は、目標管理制度の浸透や残業規制の強化などの影響のためか、そうした自主的な活動を後押しする風土が薄れてきているのかもしれません。
多様な経験を積むなかで成果を上げて頭角を現した人材に対して、企業は新商品・サービスの創造を期待していることがうかがえます。
では、当の本人の主体性やモチベーションについては、どうでしょうか?
安定志向と役割意識の強い企業内のイノベーター
イノベーターのモチベーションについて見てみましょう。(図表.4)
意外なことに、商品・サービス企画者の3割近い人は、いまだに「自ら積極的に関与したいと思ったことはない」ことが分かりました。役割意識に基づいて淡々と従事している人も少なからず存在しているようです。
また、今の企業で働き続けている理由についても、予想と反して総じて「安定志向が強い」ことが分かりました。特に、大企業になるほど、「自社で働くことが好き」という理由の割合が減っていき、「処遇の安定」という理由の割合が増えていきます。(図表.5)

これらのデータから、「リスクを避けて、処遇の安定を望む従業員」に対して、イノベーションに向けての動機付けを高めていくことの難しさがうかがえます。
このような組織においては、「堅実に成果を上げる」ことだけでなく、「チャレンジする行為」そのものが評価されるような人材マネジメントが求められると思われます。あるいは、そうした「チャレンジ」を妨げないための配慮も必要になるでしょう。
では、イノベーター本人は、自組織に関してどのように捉えているのでしょうか?
失敗を許容する文化と経営陣の本気を切望
図表.6は、自組織の条件について、「(組織に対する)期待」「(自組織)の現状」を示しています。組織に対する期待と現状の観点から、イノベーターの本音を見ていきましょう。

期待・現状がともに高く、充足しているものとして、 “経営陣の高い要望”と“開放的な職場風土”が挙げられました。具体的には次の3つです(表中A=期待:5.0以上、現状:4.6以上)。
・「経営陣は、従業員に対して、部門や職種を越えて協働するように要望している」
・「経営陣は、従業員に対して、主体的に考え、行動するように要望している」
・「自社には、自分の考えやアイデアを率直に話せる風土がある」
一方で、期待は高いが現状は低く、イノベーターが不満に感じているのは、“経営陣のコミットメント”と“チャレンジした結果としての失敗を許容する職場風土”であると分かりました。具体的には次の3つです(表中B=期待:5.0以上、現状:4.3以下)。
・「経営陣は、新事業に対する戦略を具体的に説明している」
・「自社には、従業員の失敗を許容し、学習につなげようとする風土がある」
・「自社では、新事業の創造・推進を後押しする予算が十分についている」
また、イノベーションを生み出すための業務プロセスや役割分担の規定の整備については、相対的には求めていないということも分かりました。具体的には次の3つです(表中C=期待:4.7以下)。
・「自社には、新事業を創造し推進するための、業務プロセスの規定がある」
・「自社には、新事業を創造し推進するための、役割分担の規定がある」
・「自社には、新事業を創造し推進するための、人材要件(知識・スキル・態度)の規定がある」
人材マネジメントは、規定や制度・仕組みの整備というハード面のアプローチをとることが多いものですが、それには限界もあります。イノベーションを創造するために、経営陣の思いを現場につなげていくソフト面のアプローチも求められているのです。
従来の、成果主義を中心とする人材マネジメントの多くは、短期的で堅実な成果への誘因となる一方で、中長期にわたる挑戦やそのプロセスで起こる失敗に対して寛容になりきれないという逆機能の側面ももっています。「イノベーション」が経営課題となってきている今日、その逆機能を補うための人材マネジメントもまた求められる状況になってきているといえるでしょう。
自社の人材マネジメントについて、「短期⇔中長期」「堅実⇔挑戦」「成果⇔学習」「既存事業⇔新規事業」のバランスを、改めて見つめ直そうとする際、先行者としてのイノベーターの実態を把握することはその第一歩になるでしょう。本調査の結果を、その参考にしていただけますと幸いです。
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