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セミナー報告 RMSmessageライブ2011

グローバル競争力再考 〜人・組織の視点から〜

  • 公開日:2011/12/21
  • 更新日:2024/03/21
グローバル競争力再考 〜人・組織の視点から〜

2011年12月1日(木)、組織行動研究所主催のセミナー「RMSmessageライブ2011 グローバル競争力再考 ~人・組織の視点から~」を開催し、人事役職者を中心とした約110名の方々にご参加いただきました。本セミナーは、弊社機関誌『RMSmessage』との連動企画として、昨年より年に1度実施しております。2回目となる今回は、上誌24号(8月発行)、25号(11月発行)にわたって特集した「グローバル競争力」について議論を深めました。

「RMSmessageライブ2011 グローバル競争力再考 ~人・組織の視点から~」 開催概要

開催日時:2011年12月1日(木)
場  所:リクルートGINZA8ビル 11階ホール
プログラム:
<第一部>
○セッション1:「グローバル競争力」を考えるための環境認識と問題提起
○セッション2:企業の事例共有 (伊藤忠商事株式会社、株式会社NTTデータ、株式会社資生堂)
<第二部>
○パネルディスカッション
  ファシリテーター:野田 稔 氏(明治大学大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授)
  パネリスト:垣見 俊之 氏(伊藤忠商事株式会社 人事・総務部 グローバル人材戦略室長)
        家田 武文 氏(株式会社NTTデータ 人事部 人財開発担当 部長)
        上野 邦教 氏(株式会社資生堂 人事部 グローバル人事グループ 課長)

日本のグローバルHRMを考える上での4つの問い
グローバル人材マネジメントの歩み 3社の様相
和魂洋才の取り組みを 本気の腹括りとスピードで

日本のグローバルHRMを考える上での4つの問い

第一部では、まず小所の所長である古野より、議論の前提整理と問題提起を行いました。
『グローバル人材マネジメント実態調査2011』(弊社実施)の結果やその他の統計情報などを元に、日本企業がグローバル展開を進めている一方、国際競争力が低下している実態を提示し、4つの問題提起を行いました。

グローバル人材マネジメントを検討する上での4つの視点

【1】 現地化問題にどう向かうか
【2】 グローバル人材は育っているか
【3】 日本の本社はグローバル化すべきか
【4】 「経営理念、バリュー共有」は何を意味しているか

【1】現地化問題については、他国と比較しても、日本企業の経営人材の現地化が進んでいない事実を各種調査より確認しました。そして、長年言及されているにも関わらず、現地化が未だ進展していないことに対して、構造的な問題があることを指摘し、また現地化が進まない理由や、現地化を進めることのメリットだけでなくデメリットも提示しながら、やるのであれば本気でやらなければ実現できない問題ではないか、と投げかけを行いました。

【2】グローバル人材育成については、グローバル人材と一口に言ってもたとえばカントリーマネジャー、市場開拓者、専門技術者、バリューの伝道師など、様々なタイプがありえるなか、どのような人材を必要とし、育成していくのかを明らかにする必要があるという点、また日本人の派遣者育成においては、海外売上比率が高まるにつれ、異文化を理解するだけでなく、異文化でも通じるコミュニケーションスキル(特にロジカルシンキング、コンセプチュアルシンキング、英語力)が求められるようになる点を、調査結果などを用いて提示しました。

【3】日本本社のグローバル化の必要性については、内閣府の報告書より、海外売上比率に比例して外国人社員の必要性が高まる傾向が見られた一方、外国人(特に上位役職者)登用の壁となるのが日本人の語学力であることも指摘し、英語力を少しでも早く身につけるために、習得のメカニズムを理解した上で効率的に学習していく必要があるのではないか、と投げかけを行いました。

【4】経営理念、バリューの共有についても、弊社調査結果より、やはり海外売上比率が高まるにつれて、なんらかの取り組みが実施される傾向があることを確認しました。しかし同時に、企業の強みを具現化するための理念・バリュー・ポリシーが、海外の現場の慣習や価値観と必ずしもフィットせず、コンフリクトが起こりえることも指摘しました。そのようななかで、浸透させようとしている理念・バリュー・ポリシーが、現地の慣習・価値観に反してでも貫くべきものなのか、または、改めて世界の目線で考えた場合に、本当に現在の内容でよいのかを再考しながら、グローバル統合とローカル適合を繰り返していくことで、組織能力は高まっていくのではないか、と提案いたしました。

グローバル人材マネジメントの歩み 3社の様相

次に、事例共有として、上記3社の現在の市場環境や企業戦略を共有いただき、グローバル人材マネジメントに関するこれまでの取り組みと今後の課題について、概要をご紹介いただきました。以下一部をご紹介します。

■伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社

同社は、海外進出の歴史は長いものの、日本の人材が海外に派遣されるのが主で、外国人材を十分に活用しきれずにいました。そこで同社は、2007年より世界人材・開発センターを設立し、人材戦略における統括機能の強化とグローバルベースの全体最適施策の推進を行ってきました。2010年には、特に個別のタレントマネジメントの強化等を行い、この3年間で、海外優秀人材の把握や、人材の活用・流動化が促進されてきています。その上で、改めてグローバル人材戦略を推進するポイントとしては、グローバル人材戦略は「人事」だけの問題ではなく「経営」の問題であるため、経営企画と協働できるかが鍵であること、そして人材戦略はビジネスモデル・戦略に資するべきである、との旨を語られていました。

■株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ

同社は、海外企業とのM&Aを繰り返すことで、この10年で外国人材が約200名から約24,000名へと急増しました。さらに総合的なサービス型モデルへとビジネスモデルの転換もあるなかで、ガバナンスの強化がますます重要になってきているという現状を共有いただきました。その上で人材育成については、実際にグローバルビジネスを体験する機会が増加しているため、実務中心の育成を基本とした、海外での職務経験を増やすための取り組み事例をご紹介いただきました。そして最後に家田氏個人の見解として、今、まさに一足飛びのグローバル化が急務である以上、人事部やスタッフ部門は、もっと腹を括り、世界と現場を知るべきではないか、そして、環境が変化してなお勝ち続けられる真の競争力をつけるためには、目標・業務遂行・達成のマネジメントといったような、基礎力・原理原則こそが大切ではないか、等といった力強い投げかけをされました。

■株式会社資生堂

株式会社資生堂

同社は、国内市場が飽和するなか、全世界85カ国・地域に進出し、22カ国に現地販売子会社を有しています。そして、2017年までに、「“日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー”を目指す」という目標を掲げ、グローバル人材育成に取り組んできました。その第一段階として、2008年よりグローバル共通の人事基盤を整備し、2010年からはその基盤を利用した人材活用を行っていることを共有いただきました。しかし、グローバルレベルでの配置・異動の推進は2010年より開始されたばかりであり、今後は、特に幹部ポストについてタレントレビューの実施に基づく、発掘/選抜、育成、評価/登用のサイクルを確立していくことが課題であると発表いただきました。

和魂洋才の取り組みを 本気の腹括りとスピードで

第二部では、明治大学大学院教授野田先生のファシリテーションによる、事例発表者3名のパネルディスカッションを行い、論点をもう一段掘り下げた議論が展開されました。その一部をご紹介します。

まず、グローバルでのタレントマネジメントの制度をどのように構築するか、という問いについては、「まずはやってみないと進まない」という意見が出され、公平性を重視し制度を完璧に作りこむことにこだわりすぎるよりも、スピード感をもって実際に運用を進めながら改善を行っていくべきではないか、という意見が提示されました。また、そのスピード感については、終身雇用をベースとしない成長プランを求めるような海外人材の採用やリテンションにおいても重要なポイントになるとも語られました。
しかし一方で、日本には日本の良さもあり、必要以上に卑下することはなく、たとえば「年功序列」についても、年齢主義に陥らずに本来のやり方を実現できれば、良い面も大いにあるといった例も話され、日本のやり方、海外のやり方という考えを越えて、本当の意味でのエクセレンスを追求するために、今一度議論する必要があるのではないかという見解が共有されました。

和魂洋才の取り組みを 本気の腹括りとスピードで1

また、理念共有は国内よりも、海外での組織運営で重要になるのではないか、という問いかけについては、3者より肯定的な意見が述べられました。M&Aを積極的に進められているNTTデータや、理念・フィロソフィーにのっとった顧客接点での「マニュアルにない対応」が優位性となる資生堂では、特に大切になるポイントとなるとのことでした。 伊藤忠商事では、2009年に改めてミッション・バリューを作成した上で評価・採用要件などにまで徹底して反映させたところ、海外で積極的に受け入れられたという経緯がありました。しかし、実は同社で1992年に実施したクレドの取り組みは形骸化させてしまった経験があり、NTTデータでも7年前に行ったカルチャー改革では、経営者のスポンサーシップと事務局のオーナーシップが問われたというエピソードを共有いただき、いずれにせよ「本気でやるのか」という覚悟が問われるものでもあることが強調されました。

会場の参加者からの質問では、「グローバルで活躍できる人は?」という問いかけがありました。それに対して、「最後までやりぬく意志をもち、つたなくても自分の考えを相手に伝え説得できること」(垣見氏)、「受容性が高く、思いをきちんともっている、思いを共感させるコミュニケーション能力がある」(家田氏)、「何事もあきらめずにやり遂げる。それができれば異文化理解も語学も克服できる」(上野氏)と3者のご意見を頂戴し、「意志」「思い」をもち、それを伝える「コミュニケーション」能力があり、そして、「あきらめずにやりぬく」力が重要であることが共有されました。

和魂洋才の取り組みを 本気の腹括りとスピードで2

こうして1時間におよぶパネルディスカッションを行い、最後に古野より、日本企業の競争力を考えたとき、日本らしさはまさに「和魂洋才」ではないか、日本企業が真の強い企業となるために、今改めて、海外の良い部分をまず学ぶこと、そして日本の良い部分とうまく混ぜ合わせながら発展していくことが求められているのではないか、と投げかけて、全体の締めくくりとさせていただきました。

最後に、参加された方のご感想を掲載いたします。

参加された方のご感想 ~印象に残った点~ (抜粋)

■経営戦略との連動
・人事単体の問題ではなく経営課題であるという点。
・人事戦略に経営企画を加える点。
■施策は一律ではない
・海外展開の状況と併せてHRM施策の説明があったので非常に参考になった。
・企業によりグローバルの捉え方が実は大きく異なり、そのため取り組み方針も様々であると感じた。
・グローバル化の進行状況が多様な各社それぞれの話を聞けてよかった。
■日本に対する危機感
・四半世紀が経っても日本のグローバル化は進んでいない。
・日本は世界の国々に比べるとグローバル化ができてないことを感じた。
・日本企業の衰退。
・日本企業の弱さの認識(すべて日本人社員でグローバル化対応しようとしている点等)。
■日本らしさ
・単なる欧米追従ではなく、日本流の人材育成、経営の良さもあるのではという問題提起は全くその通りだと思った。
・日本の良さ・残すべきところと変えるべきところの「和魂洋才」。
・日本の良さを認識すること。
・拾うものと捨てるものの見極め。
■日本とグローバルでのスピード感の違い
・優秀人材を活かしきれないのは日本企業のスピード感がグローバル企業と比べて遅い。
・日本と海外のスピード感の違いを意識すべきと改めて感じた。
■理念共有の重要性
・理念浸透の大切さと難しさ。
・理念浸透の大切さと日本とグローバルでの考え方の違い。
・海外の人のほうが理念を欲している。
・ビジョン、理念の国内外の浸透が総合力となる。
■完璧さよりも実行・スピード
・完璧主義の日本的人事の進め方では多様性の受容やスピード感に追いつけないことを強く感じた。
・理念浸透の浸透度に完璧を求めない。
・グローバルの標準化にこだわらない。
・仕組みを作るのに構えすぎない。
・とにかくやってみることとスピード感が大切。
・スキームや理論よりもまず実行。
・まずやってみること。
■本気でやる
・本気でグローバル化に取り組まなければならないという点。
・本気でやるかどうか、腹を括れという言葉が2社の事例から出たこと。

組織行動研究所では、今後も様々なテーマを設定し、セミナーを開催してまいります。ぜひご期待ください。

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