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若手・中堅と管理職育成の一石二鳥をねらって

カウンセリング技術を活用した三者面談

  • 公開日:2010/05/26
  • 更新日:2024/03/27
カウンセリング技術を活用した三者面談

ここ数年、カウンセリング技術を活用して、一対一の個別面談だけでなく、カウンセラーが上司とメンバーの面談に介在することによって二者のコミュニケーションを促進させる「三者面談」をお手伝いする機会が増えています。

・環境変化のスピードUP、仕事の複雑性UP、業績重視の流れを受け、長期的な視点での育成まで手が回らない ・また、育成経験が浅い上司が増えてきている(組織のフラット化、採用ストップ) ・以前は飲み会などで上司からの「思い」「経験」の伝承があったが、現在はそのような機会が減ってきている ・加えて、ITの進化によりコミュニケーションの質が変化し、オフィシャルな場で互いの考えていることや本音を知る機会も減ってきている

以上のような状況の中で、若手社員の適応をどう促進させればよいのか、どのようにしたら中堅社員が自立的に仕事に取り組んでくれるようになるのか、また上司がメンバーとどうコミュニケーションをとればよいのか、上司の育成マインド・育成力をどう醸成すればよいのか、といった育成の課題は多くの企業にとって共通の課題ではないでしょうか。

三者面談がスタートした背景
中堅社員への適用
A社での実践結果
三者面談の効果について

三者面談がスタートした背景

弊社がこのサービスの提供を開始したのは、あるSI系企業との共同作業の中からでした。その企業で当時人材育成の中心を担っていた方は、自らキャリアカウンセラーとして、どのように若手育成と上司の育成マインド・育成力を強化していったらよいかという課題を感じていました。

そういった状況において、人事として上司とメンバーの面談に介在することによってコミュニケーションを促進させ、双方の意識のずれを修正したり、メンバー本人がなかなか上司に面と向かって言い出せないといった課題を取り除いたりできないかという目的で考案された施策が、三者面談の発端となりました。

導入当初はその人事の方がご自身で実施されていたのですが、なにぶんメンバーの数だけでも相当数に上るため、同様のコミュニケーションの促進ができることを企図して、弊社のカウンセラーもその機能を担うことになりました。

当初の目的は若手の育成に主眼が置かれ、1年目から4年目までを育成期間とし、毎年上司とメンバーの面談にカウンセラーが介在する三者面談を実施することとなりました。導入して数年が経ち、この三者面談は制度として定着し、上司の育成力・育成マインドの強化と若手育成に有効な手段と位置づけられています。

今回はその三者面談の中で、実際にどのようなコミュニケーションが行われ、どのような効果を生み出しているか、その一部をご紹介します。

中堅社員への適用

A社では、中堅社員の研修を継続して実施していましたが、研修で学んだことと職場での実践との接続に課題を感じていました。メンバーが研修で行動計画を立てるのですが、それが実際の職場のパフォーマンスにつながっているのかどうかが見えないというのが施策上での課題でした。

そこで、研修後にカウンセラーが介在して上司とメンバーとの三者面談を行い、その後の行動フォローアップでカウンセラーによるコーチングセッションを導入することとなりました。

図表 三者面談を通じた研修後のフォローアップの流れ

図表 三者面談を通じた研修後のフォローアップの流れ

A社での実践結果

この施策はA社でも初めての試みとなり、事業所ごとに、上司とメンバーの面談にカウンセラーが介在する三者面談および個別のフォロー面談(2回)がアレンジされました。研修の実施からフォロー面談が終了するまで数カ月を要しましたが、一連のフォロー面談を行うことで、今回A社が期待していた“受講者が研修で立てた行動計画を上司とじっくり見つめ直し、実効性の高い計画へと書き換えていく”という場面が多く見られました。

その一連の施策における三者面談で、カウンセラーはつぎのような役割を担い、時間としては90分ほどかけて行いました。
1.“メンバー自身が描く自分の将来像”と“上司の育成計画”の背景にある各自の考え・思いを引き出す
2.現在の状況(育成計画実施状況、成長点、強みなど)を各自がどう認識しているか、互いに明確に共有できるようサポートする
3.相互理解を促進し、上司・メンバー間のつながりを深める

実際に受講したメンバーがどのように感じたか、感想のいくつかをご紹介しましょう。

<メンバーからのコメント>
・三者面談が設定されたことで、1時間半という時間をとって上司とじっくり話をすることができた(普段はそこまで時間をもてない)。

・研修を通して考えた内容を言語化したシートを間に置いて話をすることで、話題が拡散せず、自身の考えをまとまって話すことができた。

・自分の思いや考えをうまく伝えきれなかった時には、カウンセラーが補うような質問や言い換えをしてくれたため、自分のことを上司に理解されることにつながった。

・上司の期待を具体的な言葉で聞くことで、自分の役割を再考するきっかけになったり、行動計画がより実践的になったりしていった。自分の役割を限定的あるいは短期的に考える方が比較的多かったため、上司の期待を受けて、もう一段高い視点での役割や中期的視点での役割を考え直すことにつながった。

・職場実践を進めていく上で、上司がサポートしてくれるという約束をとりつけることができた。

メンバーの中には、研修の際に、このように期待されているだろうなと想像した上で行動計画を考えたものの、実際に三者面談をしてみると、上司は自分が思っていた以上に自分の強みと課題を押さえていて、想像以上の期待をもっていたことがわかり、行動計画をもう一度見つめ直さざるを得ないという方もいました。これは研修後にこのような形のフォローがあるがゆえにできたことでしょう。

またこの施策は上司にもさまざまなインパクトを与えました。上司からのコメントもいくつかご紹介しましょう。

<上司からのコメント>
・行動計画を確認することで、メンバーの思い・考えをまとめて知ることができた。

・あらためてメンバーとじっくり向かい合うことにより、普段わかっているようでわかっていなかったメンバーの考えや仕事の進め方などメンバーの現実を確認する場となり、メンバーが成長してくためには何が課題となっているかを理解できた。

・カウンセラーという第三者がいることにより、通常の面談よりも客観的な判断や発言につながっていた方が多かった。

また今回の施策の副産物といえるかもしれませんが、カウンセラーのコミュニケーション(引き出し方・まとめ方など)を今後の自身の面談に取り入れようという方もおられました。また、メンバーだけでなく、上司自身も個別のフォローがほしいという方も見受けられました。

研修後に上司と(二者で)面談を行うことにより、職場実践にあたっての具体化につなげるという一定の効果が検証できたとともに、その面談に専門技術をもつカウンセラーが介在することによって、上司・メンバー間の相互理解を促進し、それぞれが置かれている状況に応じた課題設定を行うことを支援できたといえるでしょう。

三者面談の効果について

このような三者面談を各社に提供してきて、各社の事例から改めて三者面談の効果を考えた場合に、以下のような成果を提供できていると考えています

■メンバーに対して

(1)上司・メンバー間のコミュニケーション促進。自己理解と相互理解を深める。
 -上司・メンバー二者の面談では話さないことまでカウンセラーが引き出すことで、上司との相互理解が深まり、上司とのコミュニケーションがとりやすくなる
 -今後の目標について上司との共有が促進されることで、コミュニケーションのきっかけができる(意見・アドバイスがもらいやすくなる)

(2)仕事に対する意味づけが深まることで、成長のきっかけをつかめる。
 -今後の仕事の方向性や上司からの期待を確認でき、上司の期待とメンバーの思いがずれているような場合でも、カウンセラーが介在することにより、再度お互いに吟味できることから、前向きに仕事に取り組める
 -上司の経験や思いをカウンセラーが引き出すことで、メンバーが少し広い視野で物事を見ることができるようになる

■上司に対して

(1)上司・メンバー間のコミュニケーション促進。自己理解と相互理解を深める。
 -共通言語化された目標を設定することで、コミュニケーションのきっかけをもち、変化の兆しに気づきやすくなる
 -メンバーへの視点提供のためにカウンセラーが上司本人の経験談について引き出す中で、上司が自分自身のキャリアについても振り返ることとなり、自分自身もキャリアの意味づけができる

(2)上司の育成マインド(かかわり方を学ぶ、関心をもつ)の醸成。
 -カウンセラーの支援によって相互理解が深まることで、メンバーについての興味・関心が高くなる
 -育成経験の浅い上司でも、カウンセラーの支援によってメンバーにかかわることによる成果を実感しやすくなり、育成に関する自信をもつきっかけとなる
 -カウンセラーの「引き出す」コミュニケーションやかかわりが学ぶ機会となり、上司の不足している育成経験を補うことができる

さらには、この施策を継続することによって、組織に対しても、育成のPDCAサイクルを回すことや、上司からの思い・経験の伝承育成といった文化が醸成される効果を提供できるといえるでしょう。

一方、この施策を導入する場合には継続性が非常に重要な要素となる(単年度だけの施策では次年度以降効果が薄まってしまう)ために、導入する側の本気度も問われる施策といえます。導入にあたって、第三者が面談に入ることに上司側が抵抗を示すケースもあります。ただ、一度第三者を面談に入れると、カウンセラーがコミュニケーションの促進を支援してくれることによって、一人でメンバーに対峙するより安心して面談に取り組めることを実感するため、むしろ次回からの三者面談に上司が協力的になることが多くなるのも、この施策の面白いところだとの評価もいただいています。

メンバーの育成と上司の育成マインド醸成、ひいては育成マインドの組織的開発に関心をもたれる方には参考になるソリューション手法ではないでしょうか。

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