ミドルマネジャーを育てるために リーダークラスの時期に必要なこと

「マネジャー候補が育たない」「専門職志向が強く、マネジャーになりたがらない人が増えてきている」「新任マネジャーが潰れてしまう」「マネジャーが職場をまとめられない」――近年、このような話題を耳にすることが多くなりました。 終身雇用・年功的人事制度に守られ、組織にも階層が保たれていたかつての日本的経営の組織においては、マネジャーになることは多くの企業人にとって目標でした。 さらに主任・係長の時期にメンバーをまとめ、育てるという経験を培っていることで、特別な施策を打たなくてもマネジャー候補が育ったものでした。 しかしこの10〜15年、成果主義の導入により、個人業績を追うばかりになり、組織のフラット化も影響して、マネジャーになる以前に人をまとめたり育てたりという経験が少なくなったと言われています。 また、複線型人事制度の導入や転職市場の活性化により、多様なキャリア選択が可能になり、かつてのようにマネジャーを目指す人ばかりではなくなってきました。 このような状況の中で、企業はミドルマネジャーをどのように育てていけばよいのでしょうか。

我々は、「マネジャーになる手前のリーダークラスの時期にどのような経験をするか」にその鍵があると考え、調査を行うことにしました。 今回は、調査結果に見られるリーダークラスの経験やキャリア観から、彼・彼女らがミドルマネジャーに育っていく過程において影響を与える要因について考察します。


調査概要

なお、管理職手前であるリーダークラスには、若手からベテランまで幅広い世代が含まれます。本稿では、これから数年のうちに管理職になっていくであろう世代(以下G3〜G5世代:入社年次1989〜2002年)を中心に考察を進めていきます。

※入社年次の分類およびグループ名は、リクルートワークス研究所の分類をもとに一部加筆

育成した経験と育成された経験

人を育てる経験が少なくなったと言われるようになっていますが、実態はどうなのでしょうか。ここでは後輩の育成経験を取り上げてみます。「社会人になってからこれまでに、後輩を育成した経験はありますか」に対する回答を世代別に見てみましょう。

一定のサンプル数が確保されている世代G1〜G5を見てみると、若い世代になるほど、後輩の育成経験が少なくなってきており、G3以降(89年入社以降)は半分以上が後輩を育成した経験があまりない/ほとんどないということが分かります。

この理由のひとつとして、バブル崩壊以降の採用抑制、いわゆる就職氷河期が考えられます。バブル崩壊以降、企業は新卒者の採用を抑制し厳選採用を進めてきました。年度によっては新卒採用を行わないなど、バブル期に入社したG3世代以降の人は、自職場に数年間にわたって後輩が配属されないという状況も起きていました。

一方、自分が育成をされたという被育成経験に関する質問「社会人になってからこれまでに、『この人には育ててもらった』という人はいますか」に対する回答は、世代によって差はあるものの、どの世代でも「はい」という回答が60%以上となりました。その相手は「上司」「先輩」の順となっています。

これらのことから、自身が育成された経験はあっても、後輩・新人などの育成経験を持つことは少ないままマネジャーになることが多くなってきている、と言えるのではないでしょうか。

リーダークラスのキャリア観

リーダークラスは一般に主任・係長格にあたり、数年間の経験の後、マネジャー(管理職)に昇格することが多いようです。では、リーダークラスは今後のキャリアにおいてマネジャーというポジションに就くことを、どうとらえているのでしょうか。「あなたは現在お勤めの会社でマネジャー(管理職)になりたいですか」に対するG2〜G5世代の回答を見てみましょう。

G3世代以降、各世代ともできるだけ上のポジションを目指そうというのは40%前後となっています。マネジャーにはなりたいが、それ以上にはなりたくないという人も合わせると、「現在の会社でマネジャーになりたい人」は各世代ともおよそ60%程度であると言えます。逆に、残りの40%の人はマネジャーにはなりたくない、と回答しています。

では、マネジャーになりたい・なりたくない、それぞれの理由について、自由記述の内容を見ていきましょう。

マネジャーになりたい理由については、積極的な内容の回答では「人と関わって、その成長に携わることが好きだから」「より上の役割で自分の力を試してみたい。メンバーをマネジメントして成果をあげることに興味がある」「高いやりがいと給料が得られる」「ポジションが上がれば、より難易度の高い仕事にめぐり合える」などの回答が得られました。大まかに分類すると、「メンバーの成長に価値を感じる」「マネジメントの経験が将来自分のためになる」「より大きな仕事ができ、自分の裁量で進められる」という内容が多く見られます。しかし、若い世代には積極的ではない内容の回答も多く、「どうせならマネジャーにはなりたい」「(サラリーマンとして)やっていくからには」「なんとなく」といった、意思を伴わない回答も多く見られます。

マネジャーになりたくない理由については、「人をまとめて方向性を決めるより、その業務の中心の実作業をしている方が達成感がある」「気苦労が多い」「責任の重さとメリットがリンクしていない」「管理より技術のステップアップを重視しているので」「マネジャーを見ていて大変そうだから」などの回答が得られました。こちらも分類すると、「人と関わって・人をまとめて仕事をすることに前向きでない」「責任の重さなどからくる精神的プレッシャーが強い」「実務や技術のスキルアップを志向する」という内容が多く見られます。

これらを見ると、さまざまな理由はあるものの、「メンバーと関わりながら、組織として成果をあげることや人の成長に価値を置けるかどうか」という点に大きな違いがあるように感じられます。

キャリア観としてもうひとつ、転職志向についても見ておきます。「あなたは将来転職をしたいと思いますか」に対するG2〜G5世代の回答は以下のようになりました。

若い世代になるほど転職志向が高いと言えます。また、どの世代でも約半数が「どちらともいえない」と回答しています。

以上のことから、リーダークラスの以下のような像が見えてきます。

【1】半数以上の人が現在の会社でマネジャーになりたいとは思っているものの、積極的にマネジャーになりたいという人は多くはない

【2】転職という選択肢も十分にありえ、今後のキャリアをどうしていくかを決めきれず、あいまいな状態にある

マネジャー志向に影響を与える要因

前述したとおり、マネジャー志向について、「メンバーとの関わり」「組織の成果の追求」「人の成長」といったキーワードで語ることができると述べてきました。このようなことを、マネジャーになる前、つまりリーダークラスの時期に経験・実感でき、価値を見出せれば、マネジャーになることにポジティブなイメージを持つことができると想像できます。

今回、リーダーとしての満足度に関する項目として、3つの質問「リーダーをやっていてよかったと思いますか」「あなたはリーダーとしてのやりがいを感じていますか」「あなたはリーダーとして、ご自分の能力を発揮できていると思いますか」という質問を設定し、「1:そう思わない」〜「5:そう思う」の5段階で回答していただきました。

これら3つの回答は、それぞれ高い相関が見られました。ここでは、そのうち「リーダーをやっていてよかったと思いますか」に対する回答と、マネジャー志向の回答のクロス集計の結果を見てみます。

「リーダーをやっていてよかったと思いますか」という質問に対して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の4人のうち3人以上は、何らかの形でマネジャーになりたいと答えています。一方、「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」と回答した人は、半数以上が「現在の会社でも、他の会社でも、マネジャー(管理職)にはなりたくない」と回答しています。

リーダーとしてやっていてよかったという実感を持てないと、マネジャーやさらにその上のポジションに上がっていこうという気持ちを持ちにくいことや、マネジャーになることに対しての拒絶感すら生じてしまうことが推測されます。

このことから、リーダークラスの時期に何を経験してリーダーとしての満足感を感じられるかが、マネジャー志向を持つかどうかにとって、いかに重要であるかわかります。その手がかりとして、3つの質問と 「育成した経験と育成された経験」で述べた「後輩の育成経験(「社会人になってからこれまでに、後輩を育成した経験はありますか」)」との関係を見てみましょう。

その結果、3つの質問すべてにおいて、育成経験が多い人ほどリーダーとしての満足感や効力感が高いという結果になりました。後輩の育成経験を持ち、人を育てることを通じて得た喜びや楽しさ、その経験を通じて得られた能力がリーダーとしての満足度や効力感に影響するひとつの要因であると考えられるのではないでしょうか。

計画的にマネジャー人材を育成する

以上、リーダークラスの実態について述べてきました。今回の調査から見えてくることをまとめると、マネジャー志向には、リーダークラスの時期での経験にリーダーとしての満足感・効力感を感じられるかどうかが強く影響すること、そしてその満足感は後輩の育成経験の豊富さと関連があること、しかし後輩の育成経験は近年少なくなってしまってきている、ということを述べてきました。

このことから、リーダークラスに意図的・計画的に後輩の育成経験を持たせることで、彼・彼女らがリーダーとしての満足感を持ち、それがマネジャー志向へとつながっていくのではないかという仮説を立てることができます。

バブル崩壊以降、日本企業はITの進歩と共に事業・業務の合理化と効率化を進め、短期業績を上げることに注力してきました。しかしそれは、自分の課題をいかに効率的にこなすかという業務遂行の力ばかりを強化してきたのかもしれません。人をまとめ、育成していく経験から学び成長することの重要性に、あらためて注目する必要があるのではないでしょうか。

リーダークラスは、数年後にミドルマネジャーになっていく大事な準備期間と考えられます。新任マネジャーや既任マネジャーへのマネジメント力強化施策も大切ですが、それ以前のリーダークラス、ひいてはもっと早い段階から意図的・計画的にマネジャーを育成していく必要があるようです。

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