新任管理職の『今』と『これから』 新任管理職を取りまく環境と現実

「中間管理職が今、おかしい」「現場のマネジャーが悲鳴を上げている」――こういうことが近年、話題になっています。 そんな中、企業はこれからの現場を担う新任の管理職を、どのように育てていったらよいのでしょうか。


はじめに:管理職の育成・強化は緊急×重要テーマ

弊社の2006年度の顧客満足度調査では、人材育成テーマとして「ミドルマネジメント強化」が、「教育体系の整備」に次いで2番目に重視されている、という結果が出ています。 しかし、「何を」「どうする」ことが「ミドルマネジメント強化」につながることなのか、まだまだ手探りの状態が続いている企業が多いのではないでしょうか。

特に、これから現場を長期に担ってもらう新任管理職を、「今」そして「これから」の環境の中で、どのように育てていけばよいのでしょうか。 「管理職になりたくない・専門職を志向する若手が増えている」「管理職のメンタルヘルス問題の増大」「管理職からプレイヤーに戻ることを希望する人が年々増えている」という中で、 企業は管理職を長期にわたって育成し、活躍してもらうためのグランドデザインを描き直す時期に来ています。

このグランドデザインを描く際に重要なポイントは、
【1】今〜これからの新任管理職が直面する「現実」「職務環境」「職場環境」、そしてそれらの変化について把握すること
【2】そして、その現実や変化に対処でき、一人前の「プロフェッショナル・マネジャー」へと脱皮していく道筋を明確にしていくこと
【3】その道筋に沿って、具体的な支援施策を実践していくこと

この3つになります。
今回は特に、【1】のテーマについて掘り下げて考えていきます。

プレイヤーから管理職になることで起こる変化

そもそも、プレイヤーから管理職になること自体が、時代にかかわらず大きな変化であり、本人にとっても大きなキャリアの節目です。 というのも、このタイミングで以下にあげるような「仕事の中身・役割」の変化が一気に訪れるからです。

新任管理職の一人ひとりが、まずはこの変化にきちんと対応し、管理職として新たなキャリアを築いていくことができるのか、そのための支援にはどのようなことがありうるのかを考えていくことがポイントであると言えましょう。

これからの新任管理職が直面する「現実」を予測する

しかし、これからの新任管理職が直面する変化はこれだけではありません。 彼らが今後直面する「現実」には、どのようなものがあるのでしょうか。 いくつかのデータから、その予想イメージを膨らませていくことにしましょう。

現実1:部下の半分は、年長者である

リクルートのワークス研究所が2005年に労働市場の今後の状況を予測したデータによると、「2015年には労働者の64%が40代以上」となるそうです(図表02)。

単純に職場も同じ年齢分布になると仮定すると、30代後半から40代前半の新任管理職の下に、半数以上の年上の部下がつくことも珍しくない、という状況になってくるでしょう。 そして、中にはかつて自分の先輩や上司だった人もいることでしょう。 自分よりも経験があるメンバーを多く抱えながら、マネジメントしていかなければならない――これが予想される最初の現実です。

データ出典:リクルート ワークス研究所発刊 『人材マーケット予測 2015 ――2015年予測。どうなる、人材マーケット。こうなる。――』 掲載データをグラフ化

現実2:部下の半分は、非正社員である

同じくワークス研究所の予測によると、2015年には正社員比率は45.2%まで減少します(注1)。 1982年には83.1%を占めた正社員は、今は「パート」「アルバイト」「契約社員」「業務委託」「派遣社員」などの雇用形態に変化しています。

また、転職も増えこそすれ減らない状況であると予想できます。となると、正社員の中でも中途社員が増大することも考えられます。 場合によっては、正社員の部下の過半数が中途社員である、というケースも増えてくるでしょう。

わかりやすくするために、2015年の職場の平均的な状況を、予測データを元に図表化してみました。

現実3:マネジメントしなければならない領域・業務量は日々増大する

ここ数年だけでも、管理職に課せられたテーマは増大し続けています。 「MBO(目標管理制度)をベースとしたマネジメントサイクルの実践」「コンプライアンス」「個人情報管理」 「セクシュアルハラスメント」「パワーハラスメント」「メンタルヘルス」「IT情報管理」「多様な雇用形態の管理」 「タレントマネジメント」「モチベーションマネジメント」・・・・・・など、あげていけばきりがないくらいです。

新任管理職はこれらのテーマについて、任用されるやいなや責任者として取り組むことが求められます。 多様な領域の大量の知識をインプットしなければなりませんし、時にはこれらのテーマから発生するさまざまなトラブルや問題に対し、 前面に立って攻撃に身をさらされつつ解決しなければならない――いきなりそういう場面に出くわすこともあるでしょう。 こういったハードなマネジメント・テーマは今後も増え続けることが予想されます。

また、これらのことはITのツールとセットで制度化・仕組み化されることが多く、複雑な複数のシステムへのアクセス、 データの入力、閲覧、承認、修正などが管理職の日々の業務として上乗せされていく傾向があります。 マネジメントの定常業務は「増え続ける」のが現実です。

現実4:情報の流通ルートの複雑化&仕事のシステムの複雑化

「情報をつかむ者がビジネスを制する」ことは今も昔も変わりません。 管理職の役割で言い換えると、「自分のチームの仕事に必要な情報のインプット・アウトプットをマネジメントする」ことが大事な役割となります。 内部コミュニケーションを活性化すること、外部とのコミュニケーションのルートを開き維持すること、などが具体的な行為となります。

IT導入以前のコミュニケーションは、書類や会議、電話、職場での会話で行われるのが普通でした。 外部とのコミュニケーションルートも今に比べると数が少なく、管理者は情報の質や量、コミュニケーションの状態について比較的容易につかむことができ、マネジメントしやすい環境であったといえます。

ところが今の職場では、多くの情報流通ルートがIT化され、そのほとんどがメールやデータベース、システムに乗り、24時間365日、大量に流通しています。 内外のコミュニケーションルートの数、流通している情報量、ストックされている情報量はものすごい勢いで増大しています。 管理職がそこで交わされている情報やコミュニケーションをそれぞれ的確に把握し、マネジメントしていくことが、格段に難しくなったといえましょう。

また、情報量が増えたことは、それぞれのメンバーの問題意識が多様化していくことも意味しています(図表04)。

ある人はAという情報を得てaという問題を管理職に提起する、別の人はBという情報を得てbという問題を提起する、 また別の人はCという情報を得てcという情報を問題提起する――そんなことをしているうちにA’という情報が入ってきてa’の問題に変わりました――こういった環境で管理者は適切な判断や意思決定を行い、 それぞれ問題意識が多様化しているメンバーと合意し、指示命令をしていかなければなりません。

昨今増えているプロジェクト型の組織やフリーアドレス型オフィスは、さらにこういった環境の複雑さに拍車をかけることになるでしょう。 うまく処理できなければ、多様な情報の渦に巻き込まれ、おぼれてしまうことになりかねません。

現実5:部下が日本人とは限らない&職場が日本とは限らない

昨今、特に大手メーカーを中心に、売上の海外比率が国内比率を上回ったという報道が多数聞かれるようになりました。 このことと連動し、経済産業省の「海外事業活動基本調査」2005年の速報によると、2005年度に海外現地法人で働いている従業者数は436万人で、前年度比5.2%増と4年連続増加し、過去最高を記録しています。

これらの傾向が続くとなると、今後、多くの企業で管理職のフィールドは確実に海外に広がっていくことが予想されます。場合によっては、新任でいきなりマネジメントの不確実性が高い海外の現地法人に管理職として派遣される人さえ出てくるでしょう。

仮に自分が海外赴任されなかったとしても、「海外の企業と取引をしなければならない」「海外にいる部門と連携して仕事を進めなければならない」「部下が海外に常駐している」「部下は現地の外国人である」というケースは増えてきています。 当然、そういった環境下でもマネジメントできる、新たな能力開発が必要となることが予想されます。

これらのことを総合していくと、そもそも「新任で管理職になる」という困難に加え、管理職の前に立ちはだかるマネジメント環境が今後ますます厳しいものとなっていくことが見えてきます。

新任管理職の育成に変革が求められている

これらの状況を踏まえていくと、かつてのマネジメントの環境前提やパラダイムで行われていた育成メニューだけでは、到底現場で対応しきれない!という結論が見えてくると思います。 新任管理職の育成ということについて、変革が求められているのです。

では、これからの環境で通用する管理職とは、どのような姿なのか? どんな存在で、どんな能力を身につけ、発揮していけば、長期に成果を上げ続けられるのか? これらの問いについて、私たちは、新たな答えを模索しなければならない時代に来ているといえましょう。

(注1)正社員比率については、昨今「増加」する短期的傾向も見られています。特に流通・小売業界を中心に、定着をねらって販売員などの役職を中心に、正社員化への切り替えに踏み切る企業が増えてきています。また、景気回復や2007年問題を背景に、企業の新卒採用も活発化してきており、新卒の正社員も増大傾向が見られます。
とはいえ、一方で退職する人、退職後に再雇用されたとしても業務委託契約に移行する人などもいます。また、正社員が仮に100万人増えたとしても、日本の総労働者数比率では約1.6%の上昇にとどまり、全体としての「非正社員化」トレンドは変わらないとも考えられます。いずれにせよ、新任管理職が多様な雇用形態の部下をマネジメントしなければならない現実は、変えようがないようです。

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