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特集

外見や言動をまねることで学習し成長をとげる

「まねび」から始める 新人育成OJT実践のポイント

  • 公開日:2008/01/11
  • 更新日:2024/04/11
「まねび」から始める 新人育成OJT実践のポイント

先日、故勝新太郎氏の映画「座頭市」を久しぶりに鑑賞しました。デジタルリマスター版ではありましたが、画面をはみ出さんばかりの迫力は相変わらず。いつの間にかその世界に惹きこまれていました。

生前の勝氏は、「演じる役によって性格がかわる」といわれるほど徹底した役作りで有名でした。
身に着けるものはもちろん、立ち姿から口ぶりまでいっさいを「まねび」、役の醸し出す空気を演出したといいます。

学習心理学では、こうした「まねび」のことを「モデリング」といいます。何がしかのお手本(モデル)の外見や言動をまねることで、人は学習し成長をとげる。 「まねび」は「学び」にほかならないと考える理論です。

この「まねび=学び」というコンセプト、実は新人育成OJT(On-the Job-Training)のしかけとして、近年積極的 に取り入れられています。ブラザーシスター制度、メンター制度、OJTリーダー制度など、呼称はさまざまですが、いずれもお手本となりうる先輩社員をあてがい、新人の定着や戦力化を促すことがねらいです。

各企業はなぜ、「まねび」を新人のOJTに取り入れつつあるのでしょうか。そして、上手に活用するためのポイントとは何でしょうか。本特集は、新人育成OJTの背景と現状を俯瞰した上で、その実践のポイントと、弊社の支援サービスをご紹介します。

OJT見直しの背景と取り組み・運用の課題
現場のマネジャーをしっかりと育成に巻きこむ
自ら中心となって指導を進めるOJT担当を育てる
育成計画の策定と目線あわせ
新人育成OJTの実践支援サービス

OJT見直しの背景と取り組み・運用の課題

新人育成OJT見直しの背景
●新卒採用と職場をとりまく変化

新人育成OJT見直しの背景には、新卒採用と新人を受け入れる職場、それぞれの変化があります。団塊世代の大量退職や労働人口の減少を見越して、各企業は新人の採用数を拡大しつづけています。しかし、売り手市場の厳しい採用競争を勝ちぬき、せっかく新人を採用したにも関わらず、その指導や育成に十分な時間と人を割けていないのが現状です。
日々の指導・育成による底上げが手薄になることで、本人の資質や、アサインされた仕事、配属先の人・風土といった偶然のめぐりあわせによって、新人の成長は左右されやすくなります。順調に成長してくれれば問題ありませんが、伸び悩み、最悪のばあい早期離職に至ることもあるでしょう。こうした背景から、新人育成OJTの見直しは数多くの企業で喫緊の課題ととらえられ始めているのです。
そんな中、職場の中堅社員を新人のOJT担当に任命した上で(=OJT担当制度の導入)、新人の指導・育成、不安や悩みの解消を図る企業が増えています。

【新卒採用をとりまく変化】
・求人意欲の回復による入社者の増大
・転職志向の高まりによる早期離職リスクの増大 etc.
【職場をとりまく変化】
・マネジャーのプレイヤー化
・新人が担当する業務の高度化による、指導難易度の高まり
・膨大な業務量や高い成果圧力による、コミュニケーション不足 etc.

各社の取り組みと運用上の課題
●OJT担当制度の概要

では、各社が導入を進めているOJT担当制度を概観してみましょう。
導入企業によってその呼称はさまざまですが、概ね下記の表のように整理できます。新人の定着と戦力化や早期離職の防止はもちろん、OJT担 当を担う若手~中堅社員やマネジャーの育成、ともに学ぶ育成風土の醸成など、いくつかの目的を包含して導入されることが一般的です。

制度運用にあたっては、年間の育成計画の作成や、育成の進捗を確認するためのシート類の整備、OJT担当間の意見交換会の設定など、育成に関する情報をどう還流させるかに各社とも力を入れています。 自社のOJTの状況にもよりますが、これまで新人を受け入れたことがなく、育成のノウハウが蓄積されていない職場が多くなっている現状を考えると、 基本設計から運用設計まで、人事セクションが中心となって進めることが制度のスムーズな立ち上がりや浸透には不可欠といえるでしょう(図表1)。

OJT見直しの背景と取り組み・運用の課題

●運用上の問題

しかし、他の人事諸制度と同様、制度設計が終わったからといって、そう簡単に「やれやれ一安心……」というわけにはいきません。

・「担当を入れたとたん、マネジャーが育成を丸投げするようになった」
・「OJT担当が育成に前向きでなく、結局、誰も新人に関われていない」
・「指導が人によってまちまちで、新人が戸惑っている」

など、現場での制度運用がうまくいかないことも少なくないからです。(図表2)
「導入したけど実態は……」ということにならないよう、導入した制度を現場が上手に活用し、新人育成を進めるにはどうすればいいのか。 次節からは、そのポイントをみていきます。

現場のマネジャーをしっかりと育成に巻きこむ

最初のポイントは、「現場のマネジャーをしっかりと育成に巻きこむ」ことです。「当たり前では?」と思われるかもしれませんが、実はそう簡単にはいかないのがこの上司の巻きこみです。

●新人育成を任された上司の状態

日々、大小さまざまな問題に取り組む多忙なマネジャーにとって、新人育成は一見するといくつかあるテーマの一つと捉えられがちです。最近では、若手のころに育てられた経験のないマネジャーも多く、「部下育成を行う意味が分からない」と話す方も少なくありません。そういった現場のマネジャーから、新人育成への関与を引き出すことは実はとても難しく、各企業とも苦慮しているのが実情です。

●マネジャーの関与なくして、OJTの実践はありえない

しかし、現場のマネジャーの関与なくして、OJTの実践はありえません。OJTとは、「育成を念頭に業務を与え、実際に取り組ませることで、本人の能力を開発すること」であり、「業務のわりあて=OJTの根幹」を担う、マネジャーの役割が非常に大きいからです。
また、新人のお手本となるOJT担当といえども、マネジャーに比べて業務経験は浅く、後輩の指導経験がないこともあるでしょう。したがって、OJT担当が日々の育成に悩んだときに、遠慮なくマネジャーに支援を求められるよう態勢をつくっておくことは、とても重要なのです。

●現場のマネジャーを巻きこむポイント

現場のマネジャーを育成に巻きこむにはおもに3つのポイントがあります。これらをしっかりと実践することが、上司によるOJTの土台づくりを可能にするのです。

現場のマネジャーをしっかりと育成に巻きこむ

上司によるOJTの土台づくり

上司による育成目標・計画の設定・新人の担当業務の設計

OJT担当の任命

OJTリーダーとの日々の連携

OJTの実践

自ら中心となって指導を進めるOJT担当を育てる

2つめのポイントは「自ら中心となって指導を進めるOJT担当を育てる」ことです。

●マネジャーとOJT担当の役割分担

膨大な業務量や高い成果圧力にさらされているマネジャーにとって、 日頃から新人に関わり、丁寧に指導を進めることは容易ではありません。したがって、日常の場面ではOJT担当中心に指導を進めてもらい、進捗報告を踏まえて必要に応じて支援する、という役割分担が必要となります。
新人の動きや気持ちに関心を払いながら、日々中心となって指導していくのは、任命されたOJT担当の役割なのです。(図表3)

自ら中心となって指導を進めるOJT担当を育てる

●「新人をよろしく頼む」だけでは、OJT担当は動かない

一方、OJT担当となる中堅社員は実務の中心を担っていることが多く、上司と同じく忙しい日々を過ごしています。
また、新人を育てた経験のない OJT担当にとっては、指導育成はもちろん、そもそも新人とどう接すればよいか、分からないこともあるでしょう。
こうした中で、「じゃあ、○○さん。新人が来たからその世話を頼むよ」と伝えるだけでは、「どうして忙しい自分が……」「どうやって育てればいいんだ……」といった反応におわり、OJT担当を中心に指導を進めてもらう、という動きを期待することは難しいといえます。

●自ら中心となって指導を進めるOJT担当を育てるポイント

自ら中心となって指導を進めるOJT担当を育てるには、大きく3つのポイントがあります。
これらを実践することではじめて、OJT担当は前向きに、かつ自信をもって新人に向き合うことができるようになります。(図表4)

育成計画の策定と目線あわせ

3つ目のポイントは、「育成計画の策定と目線あわせ」です。

●場当たり的になってしまいやすいOJT

集合研修やeラーニングといったOff-JT施策を企画設計する際には、「受講者にどんな学習効果をもたらし、受講後どんな状態に至らせるか」、を定義づけることがほとんどです。
しかし、OJTは状況が刻々と変化する日常の中で実施されるため、「目の前にいる新人に何を伝え、どんな状態にするか」は、そのつど指導側によって判断されることになります。 その時の状況にあわせて柔軟に指導できるメリットがある反面、

・「自分の指導は、本当に本人の成長のためになっているのか」(指導側)
・「人によって教えられることが違うけれど、何が正しいのだろうか」(新人)

と、指導の有効性や一貫性に不安を抱えたまま、場当たり的に育成が進んでしまいかねないという弱みがあります。育成の進捗や課題を特定し、必要な対応を図ることも容易ではなく、「思っていたほど育たなかった・・・」ということにもなりかねません。

●育成計画の策定と目線あわせを進めるポイント

こうした状況を防ぎつつ、OJTの柔軟さを最大限生かすための主なポイントは次の通りです。

育成計画の策定と目線あわせ

新人育成OJTの実践支援サービス

最後に、ご紹介したポイントを実践するための弊社の支援サービスをご紹介いたします。

●弊社の実践支援サービスの概要

これまで述べてきた現状認識のもと、弊社では新人のOJT担当に任命された若手~中堅社員(弊社呼称:「OJTリーダー」)と、そのマネジャーに対して、必要な知識・スキル・姿勢を習得するための集合研修を提供しています。
また、OJTリーダーの任命基準や育成に関与するメンバー間のコミュニケーション・パスなど、御社の状況にあわせた制度の設計も行っています。確実な制度の運用に向けても、育成計画表やその活用ガイド、制度理解の浸透ツールの作成等、OJTの実践を強力にバックアップします。

新人育成OJTソリューション

人を育てる力がコアコンピタンスになる時代

さて、今回の特集はいかがでしたでしょうか?

2006年11月、厚生労働省は2030年の労働力人口が06年と比べ約1070万人減少、5584万人に落ち込む との推計を公表しました。とりわけ、29歳以下の若年層は1000万人に満たないことが明らかになっています。 採用にかける予算やスタッフを潤沢に用意できる企業や、知名度が高く志望者の多い一部企業をのぞき、 若い優秀な人材の獲得は今後さらに熾烈になることが予想されます。

将来的には、「優秀な人を採用できる企業」ではなく、「採用した人を優秀にしていける企業」が生き残っていく、 そんな時代が到来するのかもしれません。育成のしくみや風土を今から少しずつ整え、OJTを通じた人の育成 を自社のコアコンピタンスにまで高めていく。これからの人事セクションに求められるのは、こうした問題意識と、 現場への粘り強い支援といえるでしょう。

「OJTが機能しなくなった……」 「昔はよかった……」と嘆くのではなく、互いに学び、ともに成長するしかけと風土を一歩ずつでも醸成していく。

「新人育成」は、その取り組みのチャンスになるのではないでしょうか?

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