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研修効果を最大限に発揮する準備とフォローのポイント

「効果があった!」と言われる研修実施のために

  • 公開日:2009/06/08
  • 更新日:2024/04/11
「効果があった!」と言われる研修実施のために

●削減される教育費

「100年に一度」といわれる未曾有の不況が、企業経営に及ぼす影響が昨年後半から際立ってきています。各企業は支出を抑えるために諸々の経費を圧縮しようとしており、その槍玉にあげられるもののひとつが教育費です。

しかし、バブル崩壊後に採用や教育を全面的にストップしたことで、悪影響が起きたという反省からなのか、今回の不況下では、教育研修をまったくやめてしまう、という思い切った意思決定まではしていないようです。したがって、限られた予算を何に振り向け、どのように効果をあげるのかが大変重要になっています。

近年、教育研修の効果測定に関心を持つ企業が増えおり、景況感の悪化が顕著になってきた昨年度以降その傾向はさらに強まり、効果を求める企業の姿勢の強まりは明らかです。

●「良い研修」から「効果の出る研修」へ

もちろん、従来も「より良い研修を実施する」ことに注力してきたと思いますが、今必要なのは「良い研修を実施する」ということにとどまらず、少しでも「効果を出す」ことです。さらに言えば、その効果を出すことを「短期で求められている」実情も強く意識する必要があります。

今月の特集では、研修効果を高めるためには、いったい何をすべきで、何ができるのか、それらのヒントについてご紹介します。

教育研修は何のために実施するのか?~具体的な研修目的の設定~
準備段階から研修はスタートしている?! ~受講者の現状把握と事前案内~
研修本番では何が起こればいいか?~求める効果と手法~
効果が出るのは職場に戻った後
今後につなげるための見直し

教育研修は何のために実施するのか?~具体的な研修目的の設定~

「効果があった!」と言うからには、その研修に期待していた効果があるはずです。何のために研修を実施するのか、研修の「目的」について具体的に考えてみましょう。

お客様からよく寄せられる課題のひとつに、「管理職のマネジメント能力を高めたい」という声があります。

しかし、その課題を踏まえた研修の目的を、そのまま「管理職のマネジメント能力を高める」とすると、あまりにも抽象的で、その効果を測定することは難しいでしょう。つまり、より具体的な目的の設定が求められるのです。そのためには、「何のために研修を実施するのか」「研修で目指しているものは何か」「研修によって何がどのようになればいいのか」を考える必要があります。

ここでは、研修の目的を具体的に決める観点として、以下の4つを提示します。

観点1:「この研修を実施しないと困ることは何か」
どのような問題解決や課題達成のためにこの研修を実施するのか。
観点2:「この研修を実施して受講者にどのような変化が起こればよいのか」
誰に対して、どのような場面で、どのような言動を期待しているのか。
観点3:「この研修を実施して職場でどのようなことが起こればよいのか」
メンバーの動きや相互の関係、あるいは顧客対応や仕事への姿勢などで期待していることは何か。
観点4:「この研修を実施することによって、仕事や業績にどのような変化が、どの程度起こればよいのか」
売上、利益、離職率、クレーム件数、提案数、歩留まり率など業績指標の何がどのように変化することを期待するのか。

この4つの観点を踏まえ、上記の「管理職のマネジメント能力を高める」という課題は、現状と目的を、例えば以下のように整理することができます。

現状:管理職が自分の業務にばかり注力し、部下の指導がおろそかになっていることで、部下が仕事上困っていることを相談できず業務が円滑に進まなかったり、モチベーションが落ちている。(観点1より)
目的:管理職が部下とのコミュニケーションに時間をかけるようになり、結果として部下が意欲的かつスムーズに業務に取り組めるようになる。(観点2~4より)

以上のように、研修の「目的」をより具体的に設定することが重要になります。

準備段階から研修はスタートしている?! ~受講者の現状把握と事前案内~

研修を実施して、期待通りの効果をあげるためには、研修内容自体の工夫はもちろんのこと、研修前の準備と研修後のフォローが重要になります。

【図表1 研修施策の全体像】

【図表1 研修施策の全体像】

研修前のポイントは、以下の2つがあげられます。

1.受講者の現状を事実ベースで把握し、研修の内容・運営に反映する。

現状をしっかり把握せずに研修を実施すると、研修が始まってから「事前に聞いていた受講者の状況と実態が違った」「受講者における課題が想定と違った」ということになり、期待通りの効果を得られない危険性があります。受講者の「現状」を把握するためには、以下の2つの観点があります。

観点1:受講者の置かれている現実の状況という客観的な事実
観点2:受講者の悩みや切実な問題という心理的な事実

そのための具体的な方法としては、インタビュー、観察、サーベイ・テスト、事前課題の結果などがあります。

2.受講者とその上司に対して働きかけ、研修目的への理解を促し、受講者の研修への期待感を高める。

驚くことに多くの受講者が研修目的を理解せずに研修会場に来ます。
今回の研修が仕事や職場、受講者本人にとってどのような意味があるのか、受講者とその上司が事前に認識することがまず必要です。
さらに、受講者に対しては、研修を通じて学んでほしいこと、身につけてほしいことなどの周囲からの期待を(主に上司から)明確に伝え、研修参加への動機づけを図ることが必要です。
事前案内を効果的に伝えないと、「受講者が研修参加に対して前向きでない」「上司が受講者の研修参加について知らない、関心が薄い」という状況に陥り、研修受講後の実践行動の障害になる危険性もあります。

研修本番では何が起こればいいか?~求める効果と手法~

さあ、いよいよ研修当日です。この限られた時間内で、受講者にどのようなことが起これば望ましい効果につながるのでしょうか。
どのような目的を設定したとしても、それは受講者の「行動」の実践なくしては達成できません。したがって、研修の終了時には、受講者が研修で意図した行動を実践したい、という意識や意欲を少しでも強く持つことが望まれます。

【図表2 研修中における受講者んの気付き】

【図表2 研修中における受講者んの気付き】

まず受講者は、望ましい行動やそのための知識・スキルなど、「あるべき像」を理解します。また同時に、これまでの経験を振り返り、考え方や行動の特徴など、自分の現状を把握します。その「あるべき像」と「現状」を、トレーナー(講師)の適切な助言や、研修グループ内の交流を通じて対比することにより、まず意識や行動の「変化の必要性を理解」します。これらのことはいわば「頭でわかる」と表現できます。

その上で、具体的に何から実行すればよいのかわかることで、実践に向けての意欲が向上し、意識や行動をかえることにつながります。つまり、研修で学んだことを職場で実践できそうだとか、意識や行動を変えることで業務がうまくいくと思えてくるということです。このことは、上記の「頭でわかる」に対して、いわば「心でわかる」といえます。

効果が出るのは職場に戻った後

研修の効果は、研修当日にはわかりません。効果が出るのは、受講者が職場に戻って何らかの行動を実践してからということになります。ここでは、職場に戻ってからの実践行動の障害とその対策、ならびに効果を把握する方法を考えます。

●実践行動の障害とその対策
3つが障害として想定され、それぞれに対策が必要です。

障害1:忘却
⇒ 対策:フォロー研修など、受けた研修内容を思い出してもらう機会を設ける。
障害2:上司の理解不足
⇒ 対策:上司に同様の研修を実施、あるいはガイダンスを行うなどして上司の理解を促進する。
障害3:周囲からの承認の不足
⇒ 対策:受講者の行動に対する承認・支援・賛同を得られる場を設定する。特に上司とはきちんと面談をする。

●効果を把握する方法
具体的な研修効果の測定方法としては、1959年に発表されたカーク・パトリックの4段階モデルが著名です。

【図表3 研修効果測定の4段階】

【図表3 研修効果測定の4段階】

このモデルで紹介されている、段階4には、研修要因以外の変数も関係してくるため、段階3の「行動レベル」まで研修効果として把握していくことが現実的です。「どのような行動が業績を向上させるのか」という、段階4での成果に結びつくであろう「行動」をしっかりと定義し、その行動がどのように変化したのかを確認することが重要となります。
その意味から、弊社では研修実施の3ヵ月後を目途に、研修内容の理解度や職場での実践度を確認する、研修フォローアップアンケートを実施しています。

今後につなげるための見直し

今まで述べてきたような効果を出すための工夫や方法に加え、研修をやりっぱなしにしないためには、「フォロー研修」が極めて効果的です。研修後の実践行動を振り返り、うまくいったこと、うまくいかなかったことやその理由を明らかにしたり、受講者同士で発表することでノウハウを共有し、それ以後のさらなる実践行動を促進することができます。
加えて、講師からの研修報告の内容は、研修担当者にとって効果の向上や定着に向けての貴重な情報になります。また、環境変化の中でより高い研修効果を目指すには、毎回の見直しが欠かせません。そのためには、ご紹介したフォローアップアンケートはもちろん役に立つでしょうし、それ以外にも受講者本人や上司からのヒアリング(面談)も効果的です。
この厳しい経営環境下においては、限られた予算の中で実施できた研修について、できるだけ大きな効果を出すことがこれまで以上に望まれております。
日々試行錯誤を繰り返す皆様に、この特集が少しでもお役に立てれば幸いです。

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