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特集

研修プログラム選定のポイント

続・「効果があった!」と言われる研修実施のために

  • 公開日:2009/08/03
  • 更新日:2024/04/11
続・「効果があった!」と言われる研修実施のために

社員の能力開発や組織力の向上などの必要性が高まっている一方、昨今の厳しい経営環境下においては教育研修費用の削減、抑制がすすんでいます。したがって、限られた予算を効果的に活用することが求められ、実施する研修の効果を最大限に発揮させることがますます重要になってきています。

つまり、「良い研修」を実施するにとどまらず、「効果が出る研修」が求められています。そして、その「効果」とは、研修目的につながる受講者の職場での「行動変容」を起すことといえます。

6月号の特集では、研修効果を高めるためには、いったい何をすべきか、何ができるのか、中でも研修のプレ(実施前)と、ポスト(実施後)の工夫についてご説明しました。

今月は、研修のプレ・オン・ポストのうちの「オン」、すなわち研修自体について考えてみます。具体的には、「効果が出る研修」の選定・設計のポイント、つまりその研修で受講者の「行動変容」につながる仕掛けがあるかどうかについて特集します。

「行動変容」の全体像とチェックポイント
「頭でわかる」とは
「心でわかる」とは
行動計画の実践・継続に必要なポイント
求められる「実効性」

「行動変容」の全体像とチェックポイント

研修を受講して「行動変容」を起こすまでの全体像と、そのためのチェックポイントは以下のとおりです。

【図表1 「行動変容」の全体像とポイント】

【図表1 「行動変容」の全体像とポイント】

●6つのチェックポイント ~こんな研修になっていますか?~

(1)あるべき姿を描き、理解出来ているか?
(2)自らの現状(日常の行動・考え方)を把握出来ているか?
(3)(1)あるべき姿と(2)現状を対比し、変化の必要性・方向性を認識出来ているか?
(4)望ましい変化の方向性に意思や希望を重ねているか?(WILL)
(5)望ましい変化の方向性に向けて実践・成功の見通し・可能性を認識出来ているか?(CAN)
(6)職場実践の障害への対策はとられているか?

(1)~(3)のチェックポイントにより、受講生は研修で学んでいる内容を「頭で理解」し、(4)~(5)のチェックポイントにより、「心で理解」します。
そして最後にその理解した行動を職場で実践するために(6)のチェックが必要になってくるのです。

「頭でわかる」とは

「頭でわかる」ための3つのポイント

「頭でわかる」ためのチェックポイントは以下の通りです。

(1)あるべき姿を描き、理解出来ているか?
(2)自らの現状(日常の行動・考え方)を把握出来ているか?
(3)(1)あるべき姿と(2)現状を対比し、変化の必要性・方向性を認識出来ているか?

トレーナーからの講義や解説を通して「知識」を単に理解するだけでは、受講者の行動変容にはつながりません。「あるべき姿」を知識としてではなく、本当に「頭でわかる」ためには、「(1)あるべき姿」と「(2)自らの現状(日常の行動・考え方)」について以下のステップで考える必要があります。

【1】あるべき姿と自らの現状それぞれを明らかにする。(チェックポイント(1)(2))
【2】それぞれを対比する。(チェックポイント(3))
【3】自分なりにどうあるべきかを実感する。(チェックポイント(3))

上記ステップを実現するためには、「グループ討議」と「トレーナーと受講者のやりとり」が重要になります。そして、それらの質を向上するためには、「トレーナーの介入」による影響が大きいといえます。(図表2)

例えば、グループ討議や解説で「マネジメントとしての基本的なあり方はこうなのか」と単に知識的に理解するだけでは、職場での実践は難しいでしょう。必要なのは、トレーナーからの問いかけによって、受講者自身が自らの考えやその根拠を改めて自覚したり、受講者同士の議論を促進して、意見の違いやその理由を明らかにしていくことです。そのことにより、受講者は自分自身の考えや経験と「あるべき姿」を結び付けて考えることができ、そこでの学習ポイントをより深く腹に落としていけるわけです。

また、受講者は印象や推測でグループ討議を行いがちです。トレーナーがあくまでも事実を元に議論を行うよう働きかけていくことも、「頭でわかる」ための重要な要素になります。

「頭でわかる」とは

「頭でわかる」ための受講者とトレーナーのやりとり

それでは、この「頭でわかる」ということを、実際の研修の中でどのように実現しているのか、その運営についてのポイントを、具体的な事例でご紹介しましょう。

●CCT(理解促進演習~Concept Clarification Test)
これは弊社の管理職向け研修の代表的なプログラムのひとつである「MBC」で用いられている手法です。
「MBC」は「Management Basic Course」、つまり「管理者基礎研修」で、管理者として必要なマネジメントについての基本的な知識を習得する研修です。
「CCT」とは四肢選択の演習問題で、マネジメントにおける基本的な考え方や知識について、受講者に答えていただき、それに基づいてメンバー間で議論を展開した上で、トレーナーによる解説を行います。

したがって、そこでのトレーナーの関わり方は、単なる講義や解説ということではなく、受講者との「やりとり」が重要になります。具体的な「やりとり」の一例を図表3に紹介していますので、チェックポイントと照らし合わせてみてください。

「心でわかる」とは

「心でわかる」ための2つのポイント

「心でわかる」とは、研修で学んだことを職場で実践したいと思い、成功の見通しを持つことが出来ることです。
変化の必要性を理解し(頭でわかり)、どうなればいいのかを描くだけでは、残念ながら実際にはなかなか行動変容にはつながりません。できれば、「 MUST~そうしなければならない」 (=あるべき姿の理解)だけでなく、「WILL~そうなりたい、そうしたい」、また「CAN~そうできる、できそうだ」と思えるようになれば、行動変容につながる可能性は格段に強くなります。

(4)望ましい変化の方向性に意思や希望を重ねているか?(WILL)
(5)望ましい変化の方向性に向けて実践・成功の見通し・可能性を確認できているか?(CAN)

それでは、この「心でわかる」ということを、実際の研修の中でどのように実現しているのか、その運営についてのポイントを、具体的な事例でご紹介しましょう。

●LDP(Leadership Development Program)
これは弊社の管理職向け研修の代表的なプログラムのひとつであり、管理者としてのリーダーシップを開発するための研修です。
そこでは、研修のアウトプットとして、今後のより望ましいリーダーシップを発揮するための「行動計画」を、MUSTだけでなく、WILLやCANも踏まえて作成しています。そして、その作成に向けて研修で学んだことを職場で実践したい、できそう」だと思える、すなわち「心でわかる」を後押しする要素は次の4つです。

「心でわかる」とは

「心でわかる」を後押しする4つの要素

1.具体的で実践しやすい行動計画を作成する
行動計画作成の際の「行動」は、変化の方向性に向けた「半歩」とか「一歩」とも言うべき、具体的かつ実践しやすく、できたかできなかったか、結果がはっきりするものを設定するようにします。

例えば、「部下育成のできる管理者になる」というような抽象的で大きいイメージのものでは、実際の職場で具体的に行動しようがありません。この場合「部下の目を見て挨拶をする」「週に一度は、部下のそれぞれに対して業務状況の報告を求めるメールを投げかける」というようなものが望ましいでしょう。

2.職場メンバーからのメッセージ
上司や部下、同僚などの職場メンバ-の期待や思いを具体的な言葉で伝えてもらいます。行動をイメージしやすくなるだけでなく、その気持ちに応えたいという感情が湧き起こり、実践への動機付けになります。

例えば、部下からの「○○課長とはもっと話をしたいと思っています。○○課長の経験談や、私に対してどんな期待や要望をお持ちなのか、ぜひお聞かせください。」というようなコメントがあれば、受講者は「ぜひ、応えたい」と強く思うでしょう。
LDPでは、研修の事前に職場メンバーに研修の趣旨を説明し、アンケートとサーベイを記入してもらった上で回収し、そのメッセージを研修の中で受講者に渡します。

3.受講者メンバーによる承認・アドバイス
作成した「行動計画」の内容が妥当か、実際に職場に戻って行動できるのかという点は、受講者本人が最も不安に感じるところです。
そのため、その内容や職場に戻ってからの行動の仕方について、受講者同士でアドバイスをし合ったり、「これでいいはず」とOKサインを出し合ったりすることは、実際の行動に向けて力強い後押しになります。

例えば、「それは絶対いいよ。ぜひやるべきだよ」「だとしたら、こうしたらもっといいんじゃない?」というような、同じ立場に立つ受講者からのコメントやアドバイスは、まさに集合研修ならではの効果をもたらします。

4.トレーナーの関わり
受講者本人の意思決定の背景にある「状況の捉え方」や「腹決めの度合い」などを問いかけたり、実践への可能性を確認、本人の決意や自信を引き出します。また、上記「受講者メンバー同士の承認・アドバイス」が効果的になされるために、そのグループの相互交流や場づくりのための介入を適切に行います。

例えば、「○○さんはそれを本気で実行しようと思ってますか?」「職場実践のためには○○さんのこの強みが生かせますね?」という問いかけや、「○○さんに対して△△さんは何か言ってあげたいことはないですか?」という投げかけを、個人やグループ全体の状況に応じて適宜繰り出します。
こうした効果的な介入を行うためにも、弊社ではトレーナーの基礎的な養成に1年間を費やしています。

行動計画の実践・継続に必要なポイント

MUST・WILL・CANを統合した、取り組みやすく実践度の高い行動計画を設定し、職場に戻ったらぜひ取り組んでみようと決意してみても、実際職場に戻ってそのことを実践するのは、極めて勇気がいることであり、そう簡単にできることではありません。
仮に取り組み始めたとしても、いろいろな障害が日々発生・存在することから、それを継続していくことはさらに難しいことだと言わざるをえません。
受講者が職場に戻った後、自ら設定した行動計画を実践・継続していってもらうためにも重要な、実践を妨げる障害への対策が必要です。

(6)職場実践の障害への対策はとられているか?

6月号で、職場での実践行動の障害として想定されるのは、「忘却」「上司の理解不足」「周囲からの承認の不足」とご紹介しました。
以下に、上記に加えてさらに新しい「本人の悩み・戸惑い」も含めた障害の対策をご紹介します。

【図表5 実践を妨げる障害に対しての対策例とポイント】

【図表5 実践を妨げる障害に対しての対策例とポイント】

求められる「実効性」

以上、研修効果をあげるためのオン(研修自体)の工夫をいろいろご紹介してきました。とはいえ最も大切なことは、まずはプレ(研修前)段階で、目的を具体的に描き、設定することです。そこを起点に、研修内容や運営のポイントを考え、またその前後の施策を設定することが重要です。

この厳しい経営環境下においては、限られた予算の中で実施できる研修について、できるだけ大きな効果を出すことがこれまで以上に望まれます。受講者一人ひとりの行動が変化し、組織の活力が高まる実際の効果のことを、弊社では「実効性」と呼んでおります。研修においては、今まさにこの「実効性」が求められているのではないでしょうか。

日々試行錯誤を繰り返す皆様に、この特集が少しでもお役に立てれば幸いです。

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