個人と向き合うタレントマネジメント 一人ひとりを主役に

人材マネジメントの新しい潮流として、“タレントマネジメント”が注目されています。人材育成に関する世界最大のコンベンションであるASTD(American Society for Training & Development=米国人材開発機構)国際会議において、2005年からセッションカテゴリーの一つとして登場し、毎年、そのセッション数を大きく伸ばし、活発な議論が行われています。ASTD2008の基調講演では、ASTDのCEOであるTony Bingham氏が、『タレントマネジメントは、昨今最もホットなトピックであり、組織的なアプローチが必要』であると提言しています。
日本でもHRD JAPAN2010において、ASTDジャパンから日本におけるタレントマネジメントの現状がレポートされるとともに、複数企業からタレントマネジメントの取り組み事例が発表され、多くの聴衆を集めました。
一方で、「漠然としていて何を指しているのか判らない」「従来の人材マネジメントと何が異なるのか」という感想をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか?
今回は、“タレントマネジメント”とはどのような概念なのかを簡単に振り返るとともに、従来の人材マネジメントとの違い、タレントマネジメントを実践する上でのポイントを整理したいと思います。
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは一体、どのような概念なのでしょうか?前述したASTD2008では、下記のように定義がされています。
「タレントマネジメントとは、現在、および将来の組織の目標を満たすタレントの種類を規定し、人の資質、才能を育成、維持すること」(ASTDタレントマネジメントサーティフィケート)
タレントマネジメントの概念を説明するには、2つの質問に答えなければなりません。
「タレント」とは誰か?そして「マネジメント」とはどこまでの領域を指すのか?
様々な定義づけがされていますが、上記についての最大公約数的な回答はこのようになるかと思います。
■「タレント」とは、「会社に貢献できる特性を持つ社員」、言い換えれば、一部の例外を除き「全ての社員」がタレントである。
■「マネジメントの領域」は、タレントの獲得およびリテンション、特性把握と適材適所、パフォーマンスマネジメントと報酬管理、能力開発とキャリアプランニング、サクセッションプランニングなど、包括的なもので、タレントマネジメントは企業の持続的な成長を支える人材戦略として、全社的な取り組みが欠かせないものである。
もちろん現実には、全ての企業が全社員を対象にしているわけではありません(図表1)。タレントマネジメントを実践しようとする企業が、「タレント」とは誰か、という問いに対する自らの答えを導き出し、経営者やマネジャーおよび社員のコンセンサスとコミットメントを得なければなりません。
【図表1 タレントマネジメントの主たる対象は?】
