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今も昔も変わらないニーズがある

世代の変化をこえて求められる 新入社員導入研修とは?

  • 公開日:2006/12/01
  • 更新日:2024/04/11
世代の変化をこえて求められる 新入社員導入研修とは?

10月初旬。今年も多くの企業で、来年の入社をひかえた新入社員の内定式が行われました。
期待と不安の入りまじった彼ら・彼女らの表情に、昔のご自分の姿を重ねられた方もいらっしゃるかもしれません。

弊社には、そうした新入社員を主な対象に、この4年間で5000名もの受講をいただいた人気の研修があります。通称「8つの基本行動」と呼ばれる、ビジネスマナーや基本行動の定着をはかる新入社員向けの研修です。

この研修には、「MBA」 「キャリア」 「コンピテンシー」 など、自分の市場価値に関心が高いとされる新入社員の興味を惹きそうな内容は、一切入っていません。それどころか、彼ら・彼女らが生まれた当時、今から約20年前でも伝えられていた内容を中心に開発されています。しかし不思議なことに、昨今の新入社員、そして新入社員を受け入れる企業の双方から、最も高い支持を受けている研修の一つとなっているのです。

その秘密は、一体どこにあるのでしょうか?
この研修を題材に、
1.ビジネスマナーや基本行動が、今あらためて必要とされる背景(INDEX1~3)
2.そうした背景を踏まえて今求められる、研修のテーマと設計上の工夫(INDEX4~5)
を考えてみたいと思います。

背景 【1】 「今も昔も変わらないニーズ 入社直後の不安解消」
背景 【2】 「新入社員の志向・就業観の変化」
背景 【3】 「新入社員を受け入れる職場の変化」
求められる研修のテーマ 「姿勢そのものを育成する」
設計上の工夫 「姿勢そのものを育成する」

背景 【1】 「今も昔も変わらないニーズ 入社直後の不安解消」

ビジネスマナーや基本行動が必要とされる背景の一つには、「入社直後の不安を解消したい」という、今も昔も変わらないニーズがあります。「入社後の不安に足踏みせず、早く戦力になってもらいたい」という企業の期待と、「不安をのりこえ、早く仕事で結果を出せたら」という新入社員の期待は、時代を経ても変化していないからです。
では、今の新入社員が抱える不安とは、具体的にはどんなものなのでしょうか?

■不安は「仕事」と「人間関係」
グラフ1は、冒頭にご紹介した「8つの基本行動」の受講者、約1500名に対して実施したアンケート結果です。受講者のほぼ半数が、「仕事についていけるかどうか」や「上司や同僚など職場の人間関係」を不安と回答しています。自ら選んだ道だが、「本当についていけるのか?」 「周囲とはうまくやっていけるだろうか?」といった不安を抱えていることがうかがえます。

■理想の上司はソフトで支援的な人
そして、そんな不安を感じている新入社員が期待する上司像を示しているのが、グラフ2です。
「人間関係を大事にする上司」 「仕事を丁寧に指導してくれる上司」といった、ソフトで支援的な上司を求める結果となっています。意外なことに、「若い人の感覚を理解してくれる」といった期待は、さほど高くありません。
むしろ、未体験の仕事や新しい人間関係に対して素直に不安を感じ、周囲に支援を求めたい、という本音が見える結果となっています。

グラフ1/グラフ2

■研修での成功体験によって、不安を解消する
こうした不安に足踏みさせないために、ビジネスマナーや報・連・相といった基本的なスキルの習得はきわめて有効です。なぜならば、そうした基本的なスキルの習得は「習得した」という成功体験と自信を本人にもたらすからです。実際、受講後の新入社員からは「不安が吹き飛ばされた」 「力不足を実感したが、自信をもって職場に向かえそう」といった声が数多く寄せられています。
マナーや基本的なスキルを習得することも、当然ながら大切なことです。それに加えて、小さいながらも成功体験を積ませ、自信をもたせること、入社直後の導入教育だからこそ、こうしたポイントはより重要といえるでしょう。

背景 【2】 「新入社員の志向・就業観の変化」

背景の2つめに、新入社員の志向や就業観の変化があげられます。
ビジネスマナーや報・連・相といった基本的なスキルは、ビジネスのさまざまな場面で求められる「相手の期待を考えて行動する」姿勢を形にしたものといえます。しかし、現在の若い世代は、「自分の価値観やらしさを大切にする志向」が強まっていると指摘されており、ビジネスマナーや基本行動の習得がこれまで以上に重要となりつつあるのです。

■ 新入社員の志向の変化
具体的に見ていきましょう。昨今、政府系機関や財団法人、マスメディアを中心に、若い世代の志向や就業観を扱った各種の調査研究や報道がさかんに行われています。それらを整理すると、おおむね参考資料の領域のどこか(あるいは複数)を扱っているようです。

社会環境と、若い世代の就業観との関係を明らかにしようとする試みといえます。なかでも、数多く指摘されているのが、自分のやりたいこと・自分らしさなど、「自分の“価値観”や“らしさ”を大切にする志向」への変化です。

■ 新入社員の就業観の変化
こうした変化を示すデータとして、就職先を選ぶ基準の変化があります。10年前と今の新入社員を比較すると、「自分の能力・個性が活かせるから」 「仕事がおもしろいから」といった、自分の志向に合うかどうかを重視した回答が10%前後増えており、逆に「会社の将来性を考えて」という現実的な理由は減少しています。

【図表1 就職先の企業を選ぶ基準】

図表1 就職先の企業を選ぶ基準

期待される成果を生み出すことによって対価を得る、それはビジネスの常識です。しかし、「自分らしさを発揮できたか」といった点を重視するあまり、今の新入社員は、顧客や会社から期待される成果よりも「らしさ」を重視してしまい、成果を生み出せない可能性があるのです。
新入社員のこうした就業観を否定することは簡単です。しかしそれでは、彼らのモチベーション低下、ひいては成果、業績の低下にもつながりかねません。
彼らの就業観を理解・尊重しつつ、いかに期待される成果を出してもらうか?その鍵を握るのが、ビジネスマナーや基本行動にこめられた、「相手の期待を考える」姿勢といえます。

背景 【3】 「新入社員を受け入れる職場の変化」

■ 余裕のない上司・先輩社員
新入社員を受け入れる企業にも変化が見られ、職場でOJT(On-the-Job Training) を実践していくことが容易でない、という現実も存在しています。以前なら、新入社員の育成にかかわる余裕のあった上司、先輩社員ですが、現在では下図のような現実に直面し、育成にかける時間を確保するのもままならないからです。
育成の余裕がない中、日常のコミュニケーションや仕事を進める上で、最低限必要となるビジネスマナーや報・連・相、といった基本的なスキルは、配属前にきちんと身につけておいてほしい、というのが上司や先輩社員の本音でしょう。

【典型的なかつて、と現在】

典型的なかつて、と現在

逆に新入社員は、上司・先輩であっても対応の難しい職場環境に適応していかなくてはなりません。また、求められる成果や期待も、以前に比べ大きくなっています。ビジネスマナーや基本行動をしっかり身につけていないと、ビジネス人生のスタートからつまづくことにもなりかねないのです。

求められる研修のテーマ 「姿勢そのものを育成する」

ここでは、背景【1】~【3】までを踏まえて設計された、「8つの基本行動」研修の掲げる研修のテーマを紹介いたします。導入研修をご実施される際、参考にしていただければ幸いです。

■ 姿勢を育成する大切さ
前節まで、「ビジネスマナー」や「報・連・相」、といった基本的なスキルや、そこにこめられた「相手の期待を考える」姿勢を早期に育成することが大切である、と述べました。いいかえると、知識やスキルに比べ、一般的に育成が難しいとされるこの領域をいかに育成するか、それが研修のテーマになります。

一般に、人が何らかの成果(Ex.営業活動で受注する)、あるいはそれに必要な行動(Ex.1日5件訪社する)をとるためには、知識やスキルと、行動へのエネルギーのもととなる姿勢・資質・価値観などが必要になります。(下図参照)

【成果創出モデル】

成果創出モデル

とりわけ、新入社員~若手のうちは、仕事を進めるために必要な知識・スキルをあまり持ち合わせておらず、むしろ下段の姿勢が本人の成長や成果の創出にとって重要だとされています。仕事や自分の置かれた状況、顧客や周囲の上司・先輩社員との関係をどう捉え、判断し、行動するか、その方向性を決めるのがこの姿勢だからです。弓道にたとえれば、矢を標的にあてるための「そもそもの体の向き」が姿勢、「矢を標的に届かせる力」が知識・スキルといえるでしょう。向きがおかしければ、どんなに技術をみがいても、矢は標的にあたりません。

■ 「相手の期待を考える」姿勢がポイント
ここが大切なポイントです。
ビジネスにおいて、この「標的」を決めるのは自分だけではありません。相手(顧客や、仕事を一緒にすすめる協働者)の立場に立ち、その期待を考えて行動し、成果を生み出すことは、いかなる場面でも目指す「標的」となりえます。たしかに、自分の価値観やらしさを大切にする志向は、他者には難しい、オリジナリティあふれる成果を生む可能性を秘めています。しかしそれは、「相手の期待を考える」姿勢があってこそ、初めて捉えられる標的なのです。
自分を大切にする新入社員だからこそ、入社後のできるだけ早い段階でこうした姿勢を身につけてもらいたい、その秘めたるポテンシャルを最大限発揮してもらいたい、そうした受け入れ側の想いを形にしているのが、この「8つの基本行動」研修ともいえるでしょう。

設計上の工夫 「姿勢そのものを育成する」

最後に、「相手の期待を考える」姿勢の育成にむけて盛り込まれた、プログラム設計上の工夫を2つ紹介いたします。ビジネスマナーをはじめ、導入研修を設計する際、参考にしていただければ幸いです。

【8つの基本行動】

8つの基本行動

【 工夫1 典型的なシーンでの型のトレーニング】
華道や茶道では、最初に「型」を学ばせ、一つひとつの作法がなぜ今の型をとっているのか、その機能性や、美しさを自分で体感させるといいます。ビジネスマナーも同様、型どおりの知識やスキルの理解だけでは実践につながらず、徹底的に「体に覚え」させ、「姿勢として根づかせる」ことが重要です。
そこで、「8つの基本行動」研修では、スタートしてから2日目の夕方まで、徹底的な基本行動のロールプレイングを行います。「あいさつ」 「自己紹介」 「電話応対」にはじまり、「報・連・相の進め方」 「顧客の出迎え・訪問」まで、入社後身の回りに起こる典型的な10のシーンについて、繰り返し練習をします。
その様子は、まさに本番さながら。初日の朝と、2日目の夕方ではまるで別人、というお客様の声もあがるほどです。

【 工夫2 複雑なシーンでの総合演習】
典型的なシーンでのトレーニング後、こんどは「電話応対」だけ、「報・連・相」だけ、ではなく、それらを組み合わせた複雑なシーンを用意しています。

例えば、
●お客様からの伝言・依頼~クレーム対応にいたるまで、「相手の期待を考え」ながら、どう解決していくか
●あるいは顧客を訪問し、上司から依頼された指示をどうやって遂行するか、など、
総合演習を行い、実践に向けた総仕上げを行います。

この演習を通じて、頭と体で覚えた基本行動とそれらが必要とされる場面をつなげ、また、何度も練習することで、職場での再現性を高めることをねらっています。「相手の期待を考えて」行動することが、相手にとっても、自分にとっても心地よいと感じてもらえればしめたもの。工夫1で根づきはじめた姿勢が、自分のものとして定着しはじめた証拠です。

まとめ

さて、今回の特集はいかがでしたでしょうか?

新入社員の志向・就業観や、受け入れる職場環境の変化にともない、「相手の期待を考える」姿勢の習得は、難しさを増しています。したがって、これまで効果のあった導入研修が今後も通用するかどうか、改めて点検する段階にきたといえるでしょう。
また、激しい環境変化や情報技術の発展によって、知識・スキルの陳腐化するスピードが速まっているからこそ、模倣の難しい、時代をこえて通用する姿勢をいかに育成するかが重要になります。「相手の期待を考える」姿勢の習得は、古くて新しいテーマなのです。
導入研修のあるべき姿を再考する、今回の特集がその参考となれば幸いです。

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