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特集

「人材マネジメント実態調査2010」からの考察

グローバル人材の獲得・育成の実態

  • 公開日:2010/10/28
  • 更新日:2024/04/11
グローバル人材の獲得・育成の実態

「国内市場が飽和し、過当競争に巻き込まれている……」
「国内市場が縮小し、業績が低下の一途をたどっている……」
「フラット化・バウンダリーレス化する世界において、市場を世界全体ととらえている!」
「国内でも成功しているが、さらなる規模拡大を目指して世界進出を試みている!」

企業によって理由はさまざまですが、安価な労働力を求めての海外拠点の設置ではなく、ビジネスのグローバル展開において、それを担うグローバル人材の獲得や育成が重要な経営課題となっている企業は増加傾向にあります。実際、われわれはビジネスと人材のグローバル化に関する報道や記事を日々目にしています。しかし、実際にグローバル人材の獲得や育成に着手はしているものの、なかなかうまく進まないという企業が多いのではないでしょうか。

今月の特集では、企業のグローバル人材の獲得・育成の実態について、2010年5~6月に240社にご回答いただいた「人材マネジメント実態調査2010」の結果を元に、ご確認いただければと思います。

経営課題としての重視度がますます高まるグローバル展開
人材マネジメント課題としての注目が高まる「人材のグローバル化」
徐々に導入されつつある海外赴任者のパフォーマンス向上支援
海外進出が進展している企業で重視するストレスマネジメント
計画的なグローバル人材育成のためのタレントマネジメント

経営課題としての重視度がますます高まるグローバル展開

まず、企業にとって、海外事業の展開、すなわちビジネスのグローバル展開はどの程度重要な経営課題として認識されているのでしょうか。人材マネジメント実態調査の中で、現在と5年後のそれぞれについて最大3つまで重要な経営課題をあげていただいた回答結果は、以下の図表のようになっております。

【現在ならびに5年後の経営課題 選択率TOP10】

【現在ならびに5年後の経営課題 選択率TOP10】

現在と5年後の双方において、重要な課題としての選択率がもっとも高かったのは、「利益の拡大」です。「利益は企業存続の条件」とも言われておりますので、これは当然の結果かもしれません。この「利益の拡大」に続いて選択率が高かった経営課題は、現在では「人的資源の強化」、5年後では「海外事業の展開」となっています。「海外事業の展開」の選択率に着目すると、現状の課題としては20.4%なのに対し、5年後の課題としては27.1%と、選択率が上昇をしています。なお、「海外事業の展開」の選択率については、高業績企業群(※1)においても低業績企業群(※1)についても選択率に大きな違いはありませんでした。このことから、「海外事業の展開」は今よりも一層あらゆる企業にとって重要な課題として認識されているようです。

次に、「グローバル化」が人材マネジメント課題として、どのような位置づけにあるのかを見てみたいと思います。

※1 営業利益成長率と売上成長率の双方について、「業界平均と比べて高い/どちらかといえば業界平均と比べて高い」と選択した企業を「高業績企業群」、「業界平均と比べて低い/どちらかといえば業界平均と比べて低い」と選択した企業を「低業績企業群」としてデータを集計しています。

人材マネジメント課題としての注目が高まる「人材のグローバル化」

本調査では、人材マネジメント課題についても、現在と5年後の課題について、どのようなものがあてはまるのかについて回答を頂いています。5年後の人材マネジメント課題としての選択率と現在の人材マネジメント課題としての選択率との間で、差が大きな上位10項目をピックアップしたのが以下の図表になります。

【現在ならびに5年後の人材マネジメト課題 (「5年後の課題としての選択率」-「現在の課題としての選択率」の差分が大きいものTOP10)】

【現在ならびに5年後の人材マネジメト課題 (「5年後の課題としての選択率」-「現在の課題としての選択率」の差分が大きいものTOP10)】

現在の課題としての選択率が高く、さらに5年後高くなるのが、「グローバル人材(日本人を含む)の採用・育成の強化」です。また、現在と比較して、5年後の課題としての選択率が極めて高くなるのは、「海外での人材採用の強化」、「国内での人材採用(日本人以外)の強化」です。

これらの結果を重ねてみると、海外での事業を積極的に進めるための海外での人材採用、海外と日本とのハブ人材としての国内での日本人以外の人材採用を進めながら、それらの人材と日本人の双方から、グローバルに通用する人材を登用・育成していこうという企業の意図が見て取れます。急速に海外展開を進める企業において、グローバルに活躍できる人材を確保するための外国人採用のニュースなどが取り上げられていますが、これはごく一部の企業で例外的に行わることではなく、今後ますます多くの企業で行われていくことだと予想されます。

ちなみに、“Developing Global Executives” (Morgan McCall, 2002)によると、海外赴任はグローバル・リーダーシップを開発するための経験として、非常に重要なものとされています。次に、この海外赴任の経験を成功に導くために、どのような教育施策がとられているのかを確認してみます。

徐々に導入されつつある海外赴任者のパフォーマンス向上支援

異なる文化圏においてリーダーシップを発揮する経験は、多様な国籍の人材を束ねるグローバル・リーダーの第一歩として、貴重な経験だと考えられます。この貴重な経験を生かすために、企業は海外赴任者にどのような教育を行っているのでしょうか。
海外赴任者教育の導入状況についての調査結果は、以下の図表となります。

【海外赴任者教育の導入状況】

【海外赴任者教育の導入状況】

現在多くの企業が導入しているのは、「語学力」、「任国事情の基礎知識」、「異文化コミュニケーション力」など、海外赴任者の異文化適応支援であることが見て取れます。また、今後の教育プログラムの導入意向に目を向けると、「人材育成スキル」、「ストレスマネジメント」、「職場運営スキル」など、パフォーマンス、特にマネジメント・パフォーマンスの向上に注目が集まっていることが分かります。
企業の海外進出の進展に伴い、これらの教育施策がどのように変化していくかを予測するものとして、企業の海外売上比率による海外赴任者教育の導入状況の比較が有効と考えられます。続いて、海外売上比率別の赴任者教育の導入状況を見てみます。

海外進出が進展している企業で重視するストレスマネジメント

海外赴任者に対する教育施策の導入率を海外売上比率が「50%以上」と「0%より大きく50%未満」の企業で比較したものが以下の図表となります。

【海外赴任者教育導入率の差】

【海外赴任者教育導入率の差】

海外売上比率「0%より大きく50%未満」の企業より「50%以上」の企業において導入率が高いものの中でその差が大きいのは順に、「ストレスマネジメント」、続いて「職場運営スキル」、「自社の価値観の理解」となっていました。今後の導入意向が高かった教育施策は、「人材育成スキル」、「ストレスマネジメント」、「職場運営スキル」であったことと、この結果はおおむね一致します。
企業の海外売上比率が上がる、すなわち海外進出ステージが上がるにつれ、海外赴任者が現地で着任するポジションが向上することも一つの要因かもしれませんが、海外赴任者に対して、単なる海外駐在員ではなく、海外で通用するリーダー、すなわち将来のグローバル・リーダー候補という認識で教育が行われていること、そして、今後海外進出を進める企業もこのような教育を推進していくだろうことがこの結果からは予測されます。

計画的なグローバル人材育成のためのタレントマネジメント

調査の結果から、日本人であるか否かを問わず、企業においてグローバル人材の重要度が高まっていることがあらためて確認されました。しかし、企業がグローバル化を進めれば進めるほど、ビジネスの対象となる市場、またマネジメントの対象となる従業員は、ますます多様になっていきます。このような複雑な環境の中では、不確実性の中での意思決定が求められます。さらには多様な人材をリードしていくための人間的な魅力、また自社の競争優位の源泉でもあるコアとなる価値観を体現することが求められます。このような人材を外部から獲得することは容易ではありませんし、内部で育成することも容易ではありません。

グローバル化が進む現在だからこそ、さまざまな人にとって魅力的な会社となること、また長期的な視点で人材育成をしていくこと、このようなタレントマネジメントが必要になるともいえます。人材のグローバル化を成功させるためには、単にその獲得方法を考えるだけではなく、魅力的な組織・マネジメントのありかたを見つめなおすことが非常に重要であるといえるかもしれません。

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