資源ベース戦略の側面から考察 事業戦略実現における人材マネジメント 〜知的資本の観点から〜

公開日:2005/11/01
更新日:2017/11/08

ある人事部門の声

我々は声を大にして言いたい。
人材採用、人材育成、従業員満足、マネジメント、これらのダイナミズムこそが、企業の持続的競争優位性の源泉である。技術、製品そのものが、競争優位の源泉ではない。しかし現実は、企業業績が下がれば一番先に採用、教育、人件費が削られる。


この、ある人事部門の声に、わが意を得たりと感じた方も多いと思います。
何故、このようなことがおきるのでしょうか。それは、

人材、組織文化、マネジメントなどの「見えざる資本」(=以下、知的資本)が、
(1)企業のビジネスモデルにどう影響するのかという観点から、人事施策が考えられていないこと
(2)そもそも、その成果を具体的に示すことができていないこと
が、大きな要因と考えられます。

そこで、今月の特集では、資源ベース戦略(resource based view)の側面から、事業戦略実現における人材マネジメントについて考えてみたいと思います。


自社の強みを視野に入れた人事施策になっているか

 

自社の儲けの構造、コアとなる経営資源を明確にし、それが競争力を持たなくなったら、経営資源を組み直して新たな価値を生み出すこと。これを「コンピタンス経営(知的資本経営)」といいます。

自社の強みを明確に認識できるのであれば、環境変化があっても経営資源を組み直して生き延びることができます。
環境の変化に即して自分たちの市場におけるポジションを変える企業もあります。
最近では、環境が変化したら、自社のコアとなる経営資源だけを残して、他は自由に外部にある経営資源と組み合わせる企業も出てきています。
つまり企業の儲けの構造は絶えず変化しており、それに合わせた経営資源の組み合わせと活用が必要になります。

何故新卒採用、中途採用をするのでしょうか。何故従業員教育をするのでしょうか。それは自社の事業戦略とどのように関係するのでしょうか。「人が足りないから採用、人を育てることが大事だから教育」だとすると、事業戦略と人事施策の関係は不明確です。自社の儲けの構造(コアの経営資源)との関係で人事戦略を考えることが重要です。

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