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入社年代比較編

「経験から学ぶ」自ら育つ新入社員を育てるには?

  • 公開日:2011/06/10
  • 更新日:2024/04/11
「経験から学ぶ」自ら育つ新入社員を育てるには?

弊社では、この度、「職場での経験学習」に影響を与えうる新入社員の思考や行動特徴についてのアンケートを実施しました。このアンケートを通じ、「仕事を通じて新入社員はどのように学ぶ傾向にあるのか?」「周囲のどのような関わりが、仕事を通じた学習を促進するのか?」を明らかにしようとしました。

今回は、アンケート結果を元に、入社年代での比較と国別の比較を行い、本特集ではそのうち、入社世代比較についてお伝えします。日本、中国、韓国の国別の新卒社員との比較は、「経験から学ぶ」自ら育つ新入社員を育てるには?~グローバル比較編~にてお伝えしています。
今回の報告は速報版であり、今後詳細の分析・検証を行っていく予定ですが、ここから、職場での経験学習を促進するヒントを少しでもご提供できればと思います。

目次
新入社員に対する受け入れ側の「現場の声」
「経験学習」とは何か?
2011新入社員の特徴
何があれば新入社員は「経験から学ぶ」のか?
さいごに

新入社員に対する受け入れ側の「現場の声」

今年も新入社員が研修期間を終え、各職場でOJTがスタートした頃ではないでしょうか。それと同時に、現場の上司や先輩社員から、このような声が聞こえ始めていませんか?
「今年の新入社員は一度注意したことはすぐに直すがまた繰り返す。積み上がっていかない」
「素直なために言われたことはやるが、指示待ちで主体性に欠ける」など……

研修期間とは違い、配属後の職場で期待されるのは、新入社員自ら仕事を経験し、その経験から学習すること、すなわち各自が「経験学習」をすることです。どんなに効果的な研修を実施しても、日々の経験から新入社員本人が学び取らなければ、継続的な成長は期待できません。しかしながら、昨今の厳しいビジネス環境は、新入社員のレベルに見合った仕事を計画的・段階的にアサインしたり、失敗しても上司や先輩がフォローしたり、といった余裕を職場になかなか与えません。また、新入社員本人側の育ってきた環境、学生時代の経験なども変化しています。上記のような職場の声から推測しても、職場での経験学習はかつてよりも難しくなってきているかのように思われます。

「経験学習」とは何か?

本アンケートは、2011年3月に実施しました。新入社員(大卒・大学院修了1年目)の特徴を明らかにするため異なる3世代との比較を行い、韓国と中国については、従業員数1000名以上の企業に所属する大卒・大学院修了1年目を対象としました。

【アンケート概要】
調査形式:インターネットアンケート
調査対象:大学もしくは大学院卒業、転職経験なし

<日本>
新卒1年目社員500名(うち300名が従業員数1000名以上企業に所属)
新卒3~5年目(2006年~2008年入社)社員300名
氷河期世代(1997年~2002年入社)社員300名
バブル世代(1987年~1991年入社)社員300名
<韓国>
新卒1年目社員123名(全員が従業員数1000名以上企業に所属)
<中国>
新卒1年目社員338名(全員が従業員数1000名以上企業に所属)

「経験学習」に関するアンケートを行うため、弊社では、学習スタイルに関する各種の先行研究を参照しながら、経験学習を構成し促進する要素として、「前提となる3つの要素」と「プロセスを構成する5つの要素」を整理し、アンケート設計を行いました。(図表1)

8つの要素を、経験学習を促進・構成するものとして仮定しました。その仮説の概要イメージと、各要素の具体的な項目例を以下に示します。(図表2)

「経験学習」とは何か?

ここからは、実際のアンケート結果の内容に触れていきます。本アンケートでは、それぞれの要素を構成する思考や行動について、「全くあてはまらない」~「強くあてはまる」の7段階で回答を得ました。加えて、職場での経験学習に影響するであろう本人の内的要因(仕事に対する意識、適応感、キャリア志向、これまでの経験など)と外的要因(上司や職場の関わり、仕事の特性など)を項目化し、職場での経験学習との関係を把握しました。

それでは最初に、他世代と比較した、新入社員の傾向を見てみましょう。

2011新入社員の特徴

各世代別に「経験学習」の8つの要素を比較すると次のグラフのようになりました。

【図表3. 世代別「経験学習」の8つの要素】

【図表3. 世代別「経験学習」の8つの要素】

各項目に以下の7段階で回答したものを要素ごとに集計
7. 強くあてはまる
6. あてはまる
5. どちらかというとあてはまる
4. どちらともいえない
3. どちらかというとあてはまらない
2. あてはまらない
1. 全くあてはまらない

この結果から読み取れる2011年卒新入社員の特徴は次の5点です。

~成長欲求が強い~
経験学習の前提となる3要素の中では、全ての世代で「必然性の認識」がもっとも高い数値となっています。また、世代間で一番差が大きいのが「成長欲求」で、若い世代ほど高い傾向にあります。「積極性に欠ける」「安定志向」などと評される昨今の若手も、自己の成長に対するこだわりは他世代より人一倍強いようです。 一方、「目標の存在」は全体的に他の2つの要素に比べて低い数値が出ています。成長欲求はしっかりと存在しているものの、その欲求を方向付ける目標は定まっていないといえるかもしれません。

~周囲の期待に応えたい~
個別のアンケート項目において、2011年卒新入社員が全体に比べて有意に高い項目を以下に順番にあげます。

 ―「与えられた仕事には気乗りがしなくても取り組む」(必然性の認識)
 ―「やるべきことを果たすことに喜びを感じる」(必然性の認識)
 ―「さまざまな人と知り合う機会をつくるよう心がけている」(他者と関わる)
 ―「人と出会うことが好きだ」(他者と関わる)

まだまだ社会人経験も1年に満たない新入社員であり、まずは、必然性にかられ、期待されたこと、与えられたことをやり遂げようという意気込みがうかがえます。また、「内向き」などと称される昨今の新入社員ですが、人との関わりに対しても、他世代に比べて積極的なようです。

~ルールやマニュアルを欲しがる~
意欲は高い一方で、「前例やルールの無い中でも、自分で考えて物事を進めることが得意だ」(自分で考える)が低くなっています。加えて、「自分への要望や期待を明確に伝えられたほうが仕事がしやすい」「手順や選択肢が明示されていたほうが安心する」などの項目は高くなっています。<指示待ち><主体性に欠ける>などと評される昨今の新入社員、本人たちも自分たちのことをそのように認識しているようです。

~やり始めればこっちのもの?!~
一方、「どのようなことでも、取り組んでいるうちに「面白い」と感じることがある」(没入する)が他世代に比べ有意に高いことからは、まずはやってみさせ、本人がわずかでも面白みを感じれば自走する可能性を感じさせます。「今年の新入社員は指示待ちで……」とぼやかず、まずは明確に指示を出すことが、新入社員の経験学習を進める近道かもしれません。

~やるかやらないか、基準は「自分が成長できるか?」~
とはいえ、注意したいのは「自分の成長につながらないと思うことはやりたくない」という項目が高い点です。成長欲求の高さゆえでしょうか。取り組む業務が「自分の成長につながるか?」を重視する傾向にあるようです。仕事を指示したり、期待を伝える上では、本人の成長欲求を尊重し、業務がどのように成長につながるのかを伝えるなどの関わりがポイントになりそうです。

いかがでしょう。やはり今年の新入社員は周囲の期待に応え、経験を通じて成長していきたいという欲求が強い傾向にあるといえるのではないでしょうか?では次に、「何があれば経験学習が進むのか?」を紐解いていきましょう。

何があれば新入社員は「経験から学ぶ」のか?

実際に、経験学習が進んでいる人がどのような思考・行動特徴をもっているのか?どのような環境にある人が経験学習が進んでいるのか?を明らかにするためには、今回のアンケート結果を人事考課との相関、上司や同僚からの多面観察などとの組み合わせから検証する必要があります。本アンケートでは、暫定的に「今の仕事を通じて成長している実感がある」との項目を<経験学習が進んでいる>結果指標として、この項目の回答結果との相関をみていきました。

~目標が明確であるほど、経験学習が促進される~
その結果わかったのは、「目標の存在」が、経験学習の促進と最も相関が高いということです。どの世代においても「成長欲求」や「必然性の認識」よりも低かった「目標の存在」ですが、経験学習が進んでいる人ほど達成したい目標が明確であったり、その目標が強く意識されていることがわかります。

~やってみなければ経験学習ははじまらない~
また、プロセスにおいては「やってみる」が最も経験学習の促進と相関が高いことがわかりました。2011年卒新入社員の特徴から、まず「やってみる」気にさせることがポイントであることは先にも確認した通りです。

では、何があれば「やってみる」が起こりやすいのでしょうか?
ここでは「やってみる」と相関の高い内的要因(本人の意識や経験)・外的要因(職場や仕事の特性など)を抽出しました。すると以下の表のようになります。

【図表4. 2011年卒新入社員「やってみる」と相関の高い内的要因と外的要因 上位5項目

【図表4. 2011年卒新入社員「やってみる」と相関の高い内的要因と外的要因 上位5項目

この結果より次のようなことがわかります。

~経験が自己信頼を生み、自己信頼が経験を生む~
内的要因の上位2項目は、いわば<自己信頼>に関連するものといえそうです。続く2項目は<やり遂げた経験>の有無です。何かをやり遂げた経験から自己信頼が芽生え、自己信頼があるがゆえに新たな経験にもチャレンジできる、という循環がここから想起されます。新入社員には「やり遂げた」と感じられる経験を早期に積ませることが重要と考えられます。

~「良好な人間関係」が新入社員を動かす~
では、経験学習に影響を与える外的要因はどのようなものでしょうか?1位は「職場の同僚との人間関係は良好である」、2~4位はいずれも<周囲からの承認>に関わる項目です。本アンケートではこれ以外に、「職場では、「やらない」ことよりも「やって失敗する」ことのほうが奨励されている」、「個人が目標達成することが強く求められる職場に属している」などの職場風土についても回答を得ました。しかし、これらの項目と経験学習の促進には、高い相関は見られませんでした。

新入社員を動かすには、チャレンジの奨励や目標に対するプレッシャーよりも、良好な人間関係と、「自分は職場で認められている」という安心感のほうが重要だということがここからわかります。

さいごに

今回のアンケートは、「新入社員の職場での経験学習が、かつてよりも難しくなっているのではないか?」という仮説をもとに実施しました。確かにアンケートの結果からは、世代間での違いが明らかになりました。だからといって、OJTのポイントが変わるかといえば、決してそうではありません。成長欲求を尊重する、安心感のある職場を作るなど、人材育成の基本をおさえた関わりによって新入社員は自ら経験し、自ら成長できるのです。

なお、中国、韓国の新卒社員との比較は、 「経験から学ぶ自ら育つ新入社員を育てるには?~グローバル比較編~をご覧ください。昨今増えている外国籍新卒社員の採用や育成を考える上でも、ヒントになれば幸いです。

弊社では引き続き、学習スタイルについての研究、外国籍社員のマネジメントについての研究などを進めていく予定です。今後も関連するトピックスをお伝えしていきますので、ご期待ください。

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