HRカンファレンス2011特別講演より 事業のサステナビリティを高める次世代リーダー選抜・育成

公開日:2011/07/11
更新日:2017/11/08

弊社が昨年実施した「人材マネジメント実態調査2010」において、実に8割以上の企業が、「次世代経営人材の育成・登用」は、現在および5年後における人材マネジメント課題であると回答しています。一方、別の機関が実施した調査(※)によると、リーダーの成長を促す上で、非常に重要な要素である「困難な業務への意図的な配置」が「上手くできている」、「ある程度上手くできている」と回答した企業の割合は、約1割にすぎません。昨今、リーダーシップ開発において、「実際の経験を通じた学習」の重要性がクローズアップされていますが、経験の付与そのものが、リーダー選抜・育成のボトルネックとなっている状況がうかがわれます。

5月25日に開催された「HRカンファレンス2011(日本の人事部主催)」 (※)において、弊社は「事業のサステナビリティを高める次世代リーダー選抜・育成」という演題で、このテーマを取り上げた講演を行いました。今回は、その講演内容のダイジェスト版をご紹介します。

※(出所)「2009年度 当面する企業経営課題に関する調査(社団法人 日本能率協会)」
※「HRカンファレンス2011(日本の人事部主催)」URL:http://jinjibu.jp/hrc07/index.html


リーダー選抜・育成の理想とありがちな現実

1)思うように進まない「経験」のアサイン
弊社が実施した「人材マネジメント実態調査2010」では、「次世代経営人材の育成・登用」が、現在および5年後における人材マネジメント課題であると回答した企業が8割を超えました。一方で企業経営課題に関する別の調査では、次世代経営人材の育成についてポジティブな回答をした企業は、約1/3に留まっています。またプロセスに注目すると、「研修実施後の困難な業務への意図的な配置」ができているという回答は、1割強と極めて厳しい結果となっています。
「リーダー選抜・育成」は極めてポピュラーで、かつ重要な人材マネジメント課題でありながら、大半の企業が思うように対応できていないテーマだといえるでしょう。

2)リーダー選抜・育成における3つの壁
「70_20_10」という数字をご存じでしょうか?リーダーシップ育成機関として有名な米国のロミンガー社が、経営幹部として成功しているリーダーにインタビューを実施し、「リーダーとして成長するための学びをどこから得たのか」をレポートしたのですが、その結果は「業務での経験」が70%、「他者からのフィードバック」が20%、「研修」が10%というものでした。

リーダー育成において、実際の経験からの学びがいかに重要なのかを示唆するレポートですが、現実には先にご紹介した調査結果が示すように、「困難な業務への意図的な配置」ができている企業は、ごく少数です。その背景には、「組織の壁」、「マッチングの壁」、「共通言語の壁」という、リーダー育成が思うように進まない企業に共通した問題が存在します。

「組織の壁」とは、中長期的な視点から候補者の成長を考える人事部門と、目の前の事業推進を優先したいラインとの間で発生する、協働を阻害する壁を指します。「マッチングの壁」とは、リーダー育成の機会として望ましい「困難な業務」やポジションが整理できておらず、候補者の育成が場当たり的になることです。

最後に「共通言語の壁」とは、次世代リーダーの要件に関する「共通のモノサシ」に関する課題です。「共通のモノサシ」がなければ、組織横断で候補者を比較することができず、育成における課題設定もバラバラになりがちです。
この3つの壁をクリアし、リーダー育成において最も大きなウエイトを占める「経験の付与」を意図的にアサインできている状況を作り出さない限り、企業にとって最大の人材マネジメント課題である「リーダー選抜・育成」は難航し、事業そのもののサステナビリティを脅かすことになります。


【リーダー選抜・育成における3つの壁】

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