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特集

価値提供型の営業スタイルへの転換を図る近道

営業部門におけるプロセスマネジメントのすすめ

  • 公開日:2011/08/08
  • 更新日:2024/05/31
営業部門におけるプロセスマネジメントのすすめ

昨今の営業部門を取り巻く環境は大きく変化し、営業にとって売り難い環境であることは言うまでもありません。従来の営業のやり方では通用せず、「御用聞き営業からソリューション営業へ」「個人力ではなく組織力を生かした営業」など、さまざまな言葉で営業スタイルの転換の必要性が叫ばれています。それを営業担当一人ひとりに感じ取らせ、個々人の努力に任せるのは非効率です。厳しい競争に勝ち抜き、継続的な業績向上を実現するには、組織的な取り組みにより営業スタイルの転換を図り、営業活動の質を高めていくことが求められます。

今月の特集では、営業部門におけるプロセスマネジメントの推進による営業スタイルの転換を、テーマとして取り上げたいと思います。

そもそも「営業」とは何をする人か?
「顧客価値」という考え方
「顧客価値」を最大化する営業プロセスの構築~Value Delivery Process
VDPを用いた営業マネジャーのためのプロセスマネジメント
さいごに

そもそも「営業」とは何をする人か?

「営業とは何をする人?」と質問されたら、皆さんはどう答えるでしょうか?「自社の商品を売る人」「契約を取ってくる人」「稼いでくる人」など答えはさまざまあるでしょう。あらためて問われると、答えに詰まる方もいるかもしれません。
弊社においては、営業とは「“価値”を顧客に認めてもらうことで対価を受け取る人(図1)」と捉えています。

【図1:営業の役割】

【図1:営業の役割】

従来の営業においては、「価値=商品」というシンプルな構造で、営業とは「商品を売る人」といっても何ら違和感がなかったのかもしれません。しかし、昨今の複雑化する競争環境の中、商品による差別化も難しくなり、営業が顧客に届けなければならない「価値」が多様化しています。
「価値」を感じるかどうかは受け取り手(顧客)次第です。つまり、価値は顧客によって変わるものですし、その時々の状況・タイミングによっても変わるものなのです。提供する「価値」が変われば、価値を認めてもらうための営業活動のやり方も変えていかなければなりません。顧客が求めているものが、商品そのものから問題の解決やニーズの実現に変化しているということは多くの営業現場で感じていることでしょう。
「自社の営業が顧客に届ける価値とは何か?」そこを明確にすることが、営業スタイルの転換を進める第一歩になります。
では、次に「顧客価値」について考えてみましょう。

「顧客価値」という考え方

営業行為が顧客への価値提供と考えた場合、顧客側は、営業により提供される価値(顧客価値)から、負担に感ずるようなもの(顧客コスト)を差し引いたうえで、最終的に取引・購買するかどうかの意思決定をするといえます。その場合、営業は提供できる顧客価値を最大化するか、顧客が負担するコストを最小化するかのどちらかを選ばなければなりません。

【顧客価値と顧客コスト】

【顧客価値と顧客コスト】

今後の厳しい競争環境を勝ち抜くには、「顧客価値」を意識した営業活動をすることが重要となります。ここでは、顧客価値を「顧客が相応のコストを負担してでも手に入れたいと感じる価値」と定義しておきます。
営業は、顧客の立場に立って「顧客が本当に解決したい課題」を考えると同時に、「いろいろな選択肢がある中で、なぜ自社を選んだのか?」という問いかけに対する顧客の返答、つまり「顧客の購買理由」を徹底的に考え抜く必要があります。
顧客価値を明らかにするには、顧客に直接聞いて確かめることが一番の近道です。自社と取引するきっかけになった最初の悩み・ニーズは何だったのか?取引先選定の際の評価基準にはどんなものがあったのか?取引先決定の一番の決め手は何だったのか?実際取引してみての満足度はどうか?などの情報を営業活動を通じて集めていきます。
さらにはチーム全体で集めた顧客の声をもとに、自社が提供すべき顧客価値とは何かをチームメンバー全員で考えていきます。
そして、自社が取引したい顧客に対して提供すべき「顧客価値」をあらかじめ計画するのです。

「顧客価値」を最大化する営業プロセスの構築~Value Delivery Process

自社が取引したい顧客に対して提供すべき「顧客価値」を計画したら、営業担当にはその「顧客価値」を届けられるような営業活動を促す必要があります。
あらかじめ計画した顧客価値を実現するためには、「営業プロセスの段階ごとに、どんな行動を実践すればよいのか」、営業活動の基準を具体化しておく必要があります。
弊社では、このような顧客に高い価値を提供し、高い業績を実現する営業活動プロセスのことをVDP(Value Delivery Process)と呼んでいます(図2)。

【図2:VDPとは】 【図3:VDPの具体例(一部抜粋)】

VDPをつくるには、自社が提供したい「顧客価値」を明らかにすることからスタートします。そして、その価値を届けるためには、どんな営業プロセスを踏む必要があるのかを明確にします。営業プロセスが明らかになったら、そのプロセスは何のためにあるのか意味づけをし、そのプロセスにおけるゴール像(プロセス目標)を定めます。
その上で、プロセス目標を達成するための、重要な行動を具体化します(図3)。
顧客価値が異なれば、VDPも変わってきますので、より具体的なものを目指すのであれば、顧客価値が同質の営業単位ごとに作成するのが有効です。

VDPは自社のターゲット顧客が期待する顧客価値を届ける営業プロセスを示すものですから、自社の営業活動の競争優位性を具現化したものであり、営業戦略そのものともいえます。
つまり、VDPによりバラバラになりがちな営業活動に基準性を備える役割を果たすのです。そして、VDPを拠り所とした営業活動をチーム全体で展開することによって、メンバーの意識や行動を短期視点の個人戦から中長期視点の組織戦へとシフトすることができ、求められる営業スタイルへの転換を図ることにつながるのです。

VDPを用いた営業マネジャーのためのプロセスマネジメント

ところで、この特集を読んでいる方は、「プロセスマネジメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
プロセスマネジメントとは、営業活動の結果である業績数字の要因となる営業活動プロセスを適切にマネジメントすることで、顧客価値の実現・業績の達成とともに、メンバー・チームの成長を同時に実現するための期中の営業マネジメントのことです。
今や営業活動を個人任せにし、あとは結果だけを見てマネジメントするというスタイルでは、安定した業績をあげることはできません。もちろん、営業部門は最終的な業績数字の結果に対して責任を問われる部門ですから、結果をしっかりと見て、マネジメントすることは基本です。しかし、結果として出てきた数字を見てから手を打つのでは、後手となり、スピードが勝負の競争環境では、勝ち抜くことはできません。結果数字としてあらわれる前段階の営業活動に問題がないかをタイムリーに把握し、問題があれば素早く手を打ち、業績数字面での問題発生を未然に防ぐことこそが、営業マネジャーが担う重要な役割です。
営業マネジャーが、営業プロセスを基準としたマネジメントをしてこそ、営業スタイルの転換が図れるのです。

【プロセスを基準としたマネジメント】

【プロセスを基準としたマネジメント】

また、VDPは営業プロセスとそのプロセスにおける重要行動を明らかにしていますが、さらにその行動を取るためのスキル・マインドなどもあわせて具体化しておけば、メンバー個々の育成上の課題もつかみやすくなります。これは営業マネジャーがメンバー自身の指導・育成をしていくためのツールとなりますが、一方で、VDPがチーム内での共有言語になれば、メンバーが自分自身で現状とあるべき姿のギャップを把握することができ、セルフマネジメント力の向上にもつながることになります。つまり、営業マネジャーにとっても、営業担当個々の営業力アップを考えやすくなるとともに、チーム全体の底上げを図ることもしやすくなるのです。

VDPを用いたプロセスマネジメントのメリットをまとめると以下の事柄があげられます。
 ○顧客価値を意識した営業スタイルへの転換が図れる。
 ○結果数字だけの基準ではなく、要因に目を向けた先行管理ができる。
 ○メンバーは自分の営業活動を自分自身でコントロールすることができる。
 ○望ましい営業活動の再現性が高まり、営業力のボトムアップにつながる。
 ○ 営業活動プロセスをチームで振り返り、内容を常にブラッシュアップしていくことでチーム学習が促進される。

さいごに

「顧客価値を決め、営業プロセスを定める。それに沿った営業活動ができるよう、プロセスをマネジメントする」と、言うは易しですが、実際に進めるとなると煩雑だったり、このような考え方に賛同しない人たちも出てきたりするでしょう。営業マネジャーには、それらを乗り越えてまでも、進めていく覚悟が必要です。
ただし、今回ご紹介してきた考え方は、営業マネジャーが孤軍奮闘して進めるものではありません。営業部門としての意志を持って、営業マネジャー同士が協力しメンバーを巻き込みながら進めることが大切です。
弊社では、営業組織強化に向けた各種トレーニング・コンサルティングを提供しております。今回ご紹介いたしましたVDPの策定、それを用いたプロセスマネジメントの推進の支援も行っております。少しでも興味・関心をお持ちの方は、こちらから弊社ソリューションについてお問い合わせください。
貴社営業部門の強化に、本特集がお役に立てれば幸いです。

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