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特集

人材マネジメント実態調査」からの考察

人・組織のグローバル化のトレンド

  • 公開日:2011/12/16
  • 更新日:2024/04/11
人・組織のグローバル化のトレンド

「新卒採用エントリーの条件は、TOEIC730点以上」「若手社員は原則、入社後3年以内に海外赴任」「海外大学からの新卒学生採用を本格化」「英語の社内公用語化」「世界共通の評価制度の導入」。

日本企業の海外展開がますます活発になる中、M&Aや拠点展開のニュースのみならず、「人材のグローバル化」、「職場のグローバル化」、また「人材マネジメントのグローバル化」に関するニュースを目にすることが多くなりました。

このようなニュースに対して、「ウチと同じだ!」のように身近に感じる方もいらっしゃれば、「ウチにはまだ関係ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

実際のところ、人・組織に関するグローバル化の波は私たちにとって、どの程度身近なものになっているのでしょうか?

今月の特集では、本年弊社にて実施した「グローバル人材マネジメント実態調査2011」の結果をご紹介します。皆様ご自身が人・組織のグローバル化の今後について考えるヒントを得ていただければと思います。

調査概要
「日本人のグローバル化」と「ヒトの現地化」、双方で高い課題意識
「異なる考え方の人との相互理解」がグローバルに活躍する鍵?
英語教育に取り組む企業は、実に9割!
人材マネジメントの世界共通化は今後加速?

調査概要

まずはじめに、調査の概要をご紹介します。

【調査概要】

【調査概要】

今回の調査では、189社の企業よりご回答をいただきました。189社の内訳は、海外に現地法人を持つ企業が9割に上り、業種については製造業:製造業以外=7:3、海外売上比率については10%未満:10%以上50%未満:50%以上=4:4:2となっています。
グローバル人材マネジメントに関する調査であったため、海外に現地法人を持つ企業が占める割合が高くなっていますが、業種や海外売上比率については大きな偏りのないデータといえます。

それでは、次のページで日本企業の抱えるグローバルマネジメント課題の実態を見てみましょう。

「日本人のグローバル化」と「ヒトの現地化」、双方で高い課題意識

まずはグローバル人材マネジメント課題について、日本本社での取り組みテーマと海外現地法人での取り組みテーマ、それぞれの傾向をご紹介します。

【日本車かにおける課題(複数選択形式)】 【海外現地法人における課題(複数選択形式)】

■日本本社で喫緊の課題は、「日本人のグローバル化」
日本本社のテーマに着目すると、語学教育、グローバルビジネススキル教育、海外赴任者選抜・育成、グローバル共通の次世代リーダーの選抜・育成など、課題としての選択率が6割~8割と高くなっていました。
語学教育やグローバルビジネススキル教育については、その対象者が海外赴任者や一部の選抜されたリーダー人材のみではなく、日常の業務で海外との接点を持つ人材にも及ぶと考えられます。急速に加速するビジネスのグローバル化にキャッチアップすべく、「日本人のグローバル化」に急ピッチで取り組んでいる状況が、この結果に反映されているようです。

■海外現地法人で喫緊の課題は、「ヒトの現地化」
続いて、海外現地法人のテーマに着目してみましょう。7割程度と最も選択率が高かったのは「ローカルスタッフ(マネジメント層)育成」でした。
経営の現地化に伴う「ヒトの現地化」、そのための現地人材の管理職への登用、登用のための候補者の選抜・育成、また登用後の能力開発に各社が力を入れ、そこで多くの問題に直面していることが窺えます。

グラフをご覧いただくと、その他の多くの課題も一定以上の割合で選択されていることが確認できます。
人・組織のグローバル化に関連するさまざまな課題にチャレンジしている状況は、海外でビジネスを展開する日本企業にとって決して特殊な状況ではないようです。

「異なる考え方の人との相互理解」がグローバルに活躍する鍵?

次に、「日本人のグローバル化」を考える際に必要な観点である、「グローバル人材に求められる特徴」と「グローバル人材として活躍できなかった人材の特徴」を比較しながら確認してみましょう。

【グローバル人材に求められる特徴(複数選択形式)】 【グローバル人材として活躍できなかった人材の特徴(複数選択形式)】

■「グローバル人材に求める特徴」と「グローバル人材として活躍できなかった人材の特徴」の間にギャップ
グローバル人材に求められる特徴として選択率が最も高かったのは「異なる考え方の人と理解しあえる」であり、グローバル人材として活躍できなかった人材の特徴として選択率が最も高かったのは「異なる考え方の人と理解しあえない」と、両者が一致していました。
一方で、グローバル人材に求められる特徴として「仕事のPDCAスキルが高い」の選択率が高かったにもかかわらず、グローバル人材として活躍できなかった人材の特徴として「仕事のPDCAスキルが低い」の選択率はそれほど高くありませんでした。

■仕事の第一歩はコミュニケーション、その基盤は相互理解
このように両者を確認していくと、異文化コミュニケーション力とビジネススキルの双方がグローバル人材に求められる一方、活躍できなかった人材の特徴として際立つものは、異文化コミュニケーション力に関するものとなっていました。
「リーダーシップは影響力」といわれることがありますが、組織・集団で仕事を進める上では、国内・海外を問わず、やはり相互理解に基づいた双方向の円滑なコミュニケーションは欠かすことができないようです。そのことが如実に表れた結果といえるのではないでしょうか。

英語教育に取り組む企業は、実に9割!

ここまで、「グローバル人材マネジメント課題」、「グローバル人材に求められる特徴」、「グローバル人材として活躍できなかった人材の特徴」を確認してきました。
続いて、人材マネジメント上の課題に対して、どのような施策がとられているのか、その傾向を確認したいと思います。まずは、日本人のグローバル化に関するテーマの結果です。

【日本人のグローバル化に関する施策実施状況】

■英語学習は、もはや必須?
前のページでご紹介したとおり、グローバル人材として活躍するためには語学力(英語力)と異文化コミュニケーション力が必要だと認識されており、その教育が必要だと考えられています。そして、実際に多くの企業で英語教育への取り組みがなされていることが確認されました(現在取り組んでいる企業が88.6%)。
英語教育については、「誰を対象とするのか」、「どのレベルを目指すのか」など効果や効率を巡った議論も多いかと思いますが、今後も多くの日本企業が取り組みを続けることが予測されます。

■日本人のグローバルリーダー育成にまずは着手
また、グローバルリーダー育成に関する課題意識も高く、特に日本人を対象にした育成プログラムの実施率が高いことが確認されました(現在取り組んでいる企業が63.6%)。
一方で、日本人と海外の人材の両者を合同して育成するプログラムの実施率は、まだそれほど高くないようです。ただし、別途海外売上比率別に選択率を確認すると、海外売上比率が高くなるほど、その実施率が高くなっていました。
国籍を問わず、また働いている場所を問わず、さまざまな人材を融合した育成プログラムを実施することが、「日本人のグローバル化」と「ヒトの現地化」、双方を実現する一つの鍵となるかもしれません。

人材マネジメントの世界共通化は今後加速?

最後に、人材マネジメントや人材育成上の課題に対して、どのような施策がとられているのか、ヒトの現地化ならびにグローバル共通基盤の構築に関して、その傾向を確認したいと思います。

■海外人材の採用は一般化
外国人新卒採用については、課題意識に比べ、その実施率が高くなっています(現在取り組んでいる企業が73.3%)。「国籍を問わず、優秀な人材を採用する」「日本人と留学生の選考プロセスは特に変えていない」企業も多いことが、この実施率と課題意識の差を生み出しているのかもしれません。
一方で、海外の優秀な人材を十分に惹きつけられない、外国人が職場に定着しないという話も耳にしますので、今後、現在以上に課題意識が高まる可能性があります。

■人事制度の世界共通化はこれから
グローバル共通の等級・評価・処遇制度については、課題意識も導入率も、現状ではそれほど高くありませんでした(現在取り組んでいる企業が20.9%)。ただし、別途海外売上比率別に選択率を確認すると、海外売上比率が高くなるほど、その導入率が高くなっていました。
企業が海外進出を進めるほど、優秀な人材のリテンション、優秀な人材の世界最適配置の現実に直面し、それを実現するインフラとして、人事制度のグローバル共通化やグローバル共通の意識調査に取り組むことになるようです。

■経営理念の浸透
グローバル共通の経営理念・バリュー浸透については、課題意識に比べ、その実施率が高くなっていました(現在取り組んでいる企業が61.7%)。こちらも別途分析したところ、海外売上比率が高い企業ほど、課題意識が高くなっていることが確認されました。
企業が海外進出を推進し、拠点数が増えたり、拠点を展開する地域が広くなるにつれ、理念浸透の難易度が上がり、困難な課題を感じる企業が今以上に増えると予想されます。

さいごに
日本企業同様、欧米企業、そして新興国企業までもが海外進出を進めています。その結果、世界中の企業が国境を超えて活躍できる優秀な人材の育成、また高いポテンシャルを持った人材の採用に力を入れることとなります。
日本企業は、世界での熾烈な競争を勝ち抜くために、これまで以上に人材育成、また人材採用に注力していく必要があります。そして、優秀な人材を引き止めるためには、彼/彼女らを惹きつけるための魅力的な人材マネジメントを行う必要があります。海外に進出している日本企業が、まさにこのようなチャレンジに取り組んでいる状況が、今回の調査結果にも表れていました。

事業戦略と「世界中の優秀な人々がいきいきと働き、成長を続ける職場」づくりを高い次元で統合していくチャレンジのために、本特集がわずかでもお役に立てば幸いです。

人材マネジメントの世界共通化は今後加速?
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