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経営理念を現場で実践していくためには

事例から見る管理職がリードする経営理念の共有・実践法!

  • 公開日:2012/07/09
  • 更新日:2024/04/11
事例から見る管理職がリードする経営理念の共有・実践法!

「経営理念」とは何でしょうか?
経営理念とは、「自社の目指す姿やその実現のために、組織として共有したい価値観や行動基準」を指しています。それらは、組織の中で共有・実践されていくことで、強みの源泉となり、企業が価値を創造し続けることに繋がります。
(※文中での「経営理念」とは、ミッション、ビジョン、バリューなど類似の概念を含む総称として表記します。)
経営理念を共有・実践していくためには、さまざまな社内の取り組みを継続していく必要があります。
今回は、より具体的に経営理念を現場で実践していくためにはどうすれば良いのか、事業推進・価値創造に繋げていくにはどうしたら良いのかということについて、特に「管理職がリードしながら、日常で実践し続けていくこと」に焦点をあてて最新事例と共にご紹介していきます。

なぜ経営理念を共有・実践するのか?
共有・実践において管理職に求められる2つの行動とは?
事例1. IT産業A社 ~経営理念をマネジメント行動に活かす
事例2. 外食産業B社 ~経営理念をオペレーションに活かす
さいごに

なぜ経営理念を共有・実践するのか?

経営理念とは、コンプライアンスのために作られる行動規範のように「やってはいけない」という『OBゾーン』を示すものではなく、「示された中であれば各自の自律的な判断・行動を尊重する」という『フェアウェイ』のようなものであり、そこに「自社がどのようになりたいか」という『ストーリー』が加えられたものです。
経営理念が共有・実践されると、社員は業務推進上の大義を得ることで、自信を持って行動できるようになります。また管理職は、判断の拠り所を得ることで、スピーディーに効果的な判断ができるようになります。
そして経営理念が継続的に実践されることで、組織としての強みの源泉となり、企業が価値を創造し続けることに繋がっていきます。
しかし、一般的に経営理念は端的な短い言葉で表現されていることが多く、解釈の余地が残されています。そのため、人によって受け止め方にばらつきが出やすいものです。
そのような経営理念を定着させるために大事なことは、各階層、各部門においてそれぞれが自分事として具体的に解釈し、実践することをくり返していくことです。そのために、組織の中で継続的な取り組みが必要となります。

図表1.共有・実践に向けた継続的な取り組み

共有・実践において管理職に求められる2つの行動とは?

通常、経営理念は、組織の中で上位層から下位層へ語り継がれることで共有されていくものです。特に、管理職とメンバーとの日常の接点は、経営理念を組織内で共有していく上で重要な場面となります。
ではその重要な場面において、管理職には一体どのような行動が求められているのでしょうか。
管理職に求められる行動は主に2つあります。

(1)経営理念を日々の判断や部下とのコミュニケーションに取り入れる
(2)経営理念と業務を接続し、活動指標や目標管理などのオペレーションに反映させる

上記の行動が管理職には求められるわけですが、現実ではスムーズにいかないことも多々あります。
起こりがちなケースとして、(1)については、経営理念を実践する土台となるマネジメントに対する共通理解が不足しているケースです。(2)については、事業において既にさまざまな指標が用いられているものの、それが経営理念や最終的な価値創造にどのように繋がっているのかが曖昧なケースです。
ではそれぞれのケースにおいて、経営理念をどのように共有・実践していけばよいのでしょうか。それぞれのケースにおける、2つの最新事例を見ていきたいと思います。

事例1. IT産業A社 ~経営理念をマネジメント行動に活かす

【置かれた状況】急成長により、従業員100名から600名へと拡大
IT業界で急成長を遂げてきたA社では、成長とあわせて組織規模も急拡大してきていました。従業員数100名前後までは社長と従業員の距離も近く、大事にしている価値観・行動基準は"あうんの呼吸"で理解されていましたが、600名前後の規模になった現在、社長はじめ創業メンバーが大事にしていることが伝わらなくなっていました。そこで、役員を中心に大事にしていることを経営理念としてあらためて明文化し、さらなる事業発展に向けたマネジメントに活かしていこうとしていました。しかし、管理職は部長クラスでも30代前後と若く、それぞれの経験と勘に頼ったマネジメントがなされていました。そうした属人的なマネジメントは、現場での瞬発力を生み出してきたという面では従来の成長を支えてきた強みでもありました。一方で、共通の経営理念をマネジメントに活かすための目線が揃っているとは言えず、基本に照らして自身のマネジメントを棚卸しすることから手をつける必要がありました。

【取り組み】「マネジメント道場」を起点とした習得・実践・内省のサイクル
経営理念を事業発展に向けたマネジメントに活かすために、3年かけて取り組んでいく計画を立て、初年度を「マネジメントの確立」と位置づけました。具体的な施策として、本部長・部長を対象に毎月1回、半年かけて「マネジメント道場」と称した研修をくり返し、その間「マネジメント概念の習得」「職場での実践」「周囲のフィードバックを踏まえた内省」というサイクルを通じて、経営理念を体現したマネジメントを体感し、身につけていきました。
特に、マネジメント習得と経営理念の共有を分けて施策展開せず、自分たちのマネジメントに経営理念を一つ一つ落とし込んでいったことがポイントです。

図表2.A社の取り組みの全体像

【成果】職場における経営理念の共通言語化
管理職は従来の属人的なマネジメントから脱却し、経営理念に基づいた共通の言語・判断基準でマネジメントするようになりました。また、そうした管理職の影響を受け、職場内でも「理念で掲げていることは、意外と既に実践しているものだね」 「それは理念で大事にしていることと一致するよね」など、経営理念をベースとした共通の言語で会話される場面が増えてきました。
現在も、評価制度や育成体系などの制度・仕組み面を整えたり、事業における指標への展開など、より事業の発展に寄与するための取り組みが継続されています。

事例2. 外食産業B社 ~経営理念をオペレーションに活かす

【置かれた状況】事業部長が「いかにやりきるか」に一生懸命
複数の業態で外食店舗ビジネスを展開するB社では、「より多くのお客様満足を生み出す」という経営理念に向けて、今後3年以内に主力業態を大幅に拡大していくという目標を掲げていました。特に社長は、今後の事業を担う人材として、各事業部長に着目していました。彼らは、お客様を第一に考える経営理念への共感性が既に高く、日々お客様と接している事業部(現場)の中心的役割を担っていたからです。事業部長が、経営理念を実現するために必要な活動を、日々現場の中で自ら主体的に考え、実践し続けていくことを期待していたのです。
しかし各事業部長は、本部が策定した戦略に従って「やりきること」に重点を置いた、オペレーショナルなマネジメントに慣れていました。それゆえ、設定されたさまざまな目標指標についても「いかにやりきるか」は考えられても、「なぜやるか」「経営理念にどのよう繋がっているのか」「さらに事業を発展させるために何をすべきか」などを解釈・設定することは苦手でした。

図表3.取り組みの全体像

【取り組み】経営理念と業務を繋げ、KPIを再定義・活用する
まずは、お客様満足を体現した店舗の仕組みを明らかにし、モニタリングすべき指標(KPI)を再定義することを通じて、経営理念を実現するために必要なことを明らかにすることから始めました。
具体的には、「現行指標の確認」「お客様満足を体現した店舗の見える化」「今後の環境認識」「指標の再定義」という取り組みを半年にわたり展開していきました。特に、「お客様満足を体現した店舗の見える化」においては、事業において顧客価値を生み出すまでのプロセス、ポイントとなる場面を具体的に描くことで、経営理念と業務を繋げて解釈することを重視しました。
そして、再定義された指標を用いて現場での活動を点検し、継続的な改善・実践に繋げていきました。

【成果】KPIを活用した現場での改善・実践の定着
事業部長にとって、これまでは「本部から言われて徹底する」だけだった指標が、「主体的に活用し、改善につなげる」ものに変化しました。「事業における指標は、業績のためだけではなく、お客様満足に繋がっているものなのだと再認識できた」「経営理念で大事にしているお客様満足のために重要ないくつかの場面を、現場が重視するようになった」などの声があがっており、今後の経営理念の実現に向けた足固めができたと言えます。
現在も、指標に基づいた現場での実践、ふり返り、改善のサイクルは継続しており、さらなる事業発展・経営理念の実現に向けた重要な取り組みとして根づいています。

さいごに

「組織としての強みの源泉となる価値観・行動基準が、組織内に根づき、企業の価値創造に繋がっていくこと」、それが経営理念を共有・実践する最大の意義であると私たちは考えます。 それゆえ、「単なる言葉の共有」に留まらず「具体的な戦略と結びつける」ことで事業の推進に活かしていくことが重要だと考えます。
そのために、組織内で事業推進に強い影響力を持つ管理職に何を期待し、必要な支援は何かを見極めて適切に展開していくことが必要となります。

本特集が貴社の経営理念の共有・実践に、少しでもお役に立てれば幸いです。

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