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新人・若手意識調査のタイプ別分析より

若手の「安定志向」の正体

  • 公開日:2014/03/19
  • 更新日:2024/04/11
若手の「安定志向」の正体

弊社では、2010年に続き、新人・若手の意識調査を実施しました。この調査は、入社1・4・7年目の社員それぞれ400名を対象として、働き方の志向・価値観やキャリア意識の傾向を把握するためにインターネットにて実施しました。本稿では、この調査・分析の中から、主に働き方の志向をタイプ別に分析した結果に焦点を当ててご報告します。
若手の「安定志向」が強くなっているといわれていますが、実態はどうなのでしょうか?
調査・分析の中から見えてきたのは、意外な「背景」でした。

3割強が「自分は安定志向」
タイプで異なる管理職志向の強さ
7割が終身雇用を望む背景
二分される勤続意向
「安定志向」の理由にヒントあり

3割強が「自分は安定志向」

「今年の新入社員は○○だ」
「最近の若手は○○だから、……」
このような言葉を、職場や各種調査発表などで耳にすることも多いでしょう。

昨年9月に公表された「平成25年版厚生労働白書」でも、第1部のテーマとして初めて「若者」が取り上げられましたが、若者の働く目的は、「経済的豊かさよりも楽しい生活を重視」し、会社の選択に際しては、「能力・個性の発揮を求め、長期雇用の下でのキャリア形成を志向している」と述べられていました。

これらは、長期間にわたり継続的に実施された有用な調査結果に基づいているため、全体的な傾向としてはそのとおりなのだと思います。一方で、働く人々の価値観の多様化が進んでいるのであれば、もう少し細やかにその実態を把握していくことも必要になるのではないでしょうか。

そこで、新人・若手に対する意識調査の結果をタイプ別に掘り下げることにしました。タイプ別分析は、仕事観やキャリア観に影響を及ぼすと考えられるものから2つを組み合わせて行いました。
一つ目は、これからの働き方を考える上でも重要な視点となるであろう“個人と組織の関係性”に関する志向(「組織志向」or「仕事志向」)です。
もう一つは、近年の若者の特徴として表現されることの多い “仕事に対する取り組み姿勢”に関する志向(「変化志向」or「安定志向」)を用いました。
なお、「組織志向」「仕事志向」および「変化志向」「安定志向」のいずれかの傾向が顕著でない場合は、中間層として分析対象外としました。各タイプの出現率は図表1のとおりです。

図表1.各タイプの特徴と出現率

自らを「安定志向」だと考える若手は、全体の3割強という結果となりました。次ページ以降で、若手の「安定志向」と関連して話題に上がりがちな「管理職志向」「終身雇用志向」について、タイプ別の傾向とその背景を掘り下げてみます。

タイプで異なる管理職志向の強さ

身近にいる管理職の働き方を見て、「管理職になりたくない」若手が増えてきているという声も聞かれます。その実態を知りたいために、管理職志向は、さまざまな調査においてよく用いられるテーマの一つであるといえます。

「今年の新入社員の管理職志向は上がった/下がった」などという調査結果をご覧になったことも多いでしょう。それでは、タイプ別に見た管理職志向はどのような傾向になっているのでしょうか。

図表2のとおり、タイプによって、管理職志向の高低に違いがあることが分かります。最も高いのは、Cタイプ(変化‐仕事)であり、「なりたい」「どちらかといえばなりたい」を合わせると6割強の人が管理職になりたいと回答しています。そして、Bタイプ(変化‐組織)、Dタイプ(安定‐仕事)と続き、管理職志向の最も低いAタイプ(安定‐組織)では、管理職になりたくない人が3分の2弱を占めます。

図表2.タイプ別の管理職志向の比率/図表3.タイプ別の管理職志向の理由

さらに、管理職になりたいと回答した人に対してたずねたその理由についても、タイプによる違いが確認されました(図表3)。例えば、安定志向のA・Dタイプは「多くの報酬がもらえるから」「会社から自分が評価されたと思えるから」、変化志向のB・Cタイプは「自分が成長できるから」の選択率が高くなっています。また、仕事志向のC・Dタイプでは「より大きな影響力を周囲に及ぼすことができるから」の選択率も高くなっています。管理職になることの意味合いが、安定・安心につながるもの、自分がやりたいことを実現するための手段的なものなど、志向によって異なるものであることが示唆されました。

このような志向のタイプ別の違いが、「終身雇用」に対する考え方では、どのような傾向の違いになっているのかを探っていきましょう。

7割が終身雇用を望む背景

冒頭でも述べたとおり、最近の若者を表すキーワードの一つとしてよくあげられるのが「安定志向」です。働く価値観を考えたときに、安定志向を象徴するものとして「終身雇用を望む」ということがあげられます。

若者はどれくらい終身雇用を望んでいるのか、そしてそれは本当に「安定志向」から来るものなのかどうか、を明らかにすべく定年まで雇用を保証すべきであると考えるかどうか、と、その理由について聞いてみました。

図表4のとおり、8割以上が支持しているAタイプ(安定‐組織)を最多として、最もその割合が少ないCタイプ(変化‐仕事)でも5割以上と、どのタイプも、過半数が終身雇用を支持していることが分かります。

図表4.タイプ別の終身雇用への考えの比率/図表5.タイプ別の終身雇用への考えの理由

では、どうして終身雇用を支持するのでしょうか。そこにはタイプによる違いが見られます(図表5)。

安定志向のA・Dタイプは、「解雇の不安がなく安心して働けるから」が過半数を占め、保守的な理由からそれを望んでいることが分かります。
一方、変化志向のB・Cタイプでは、「人生設計が立てやすいから」が4割近くいること、「失敗を恐れずに挑戦できるから」の選択率が、A・Dタイプの3倍以上であることから、終身雇用を能動的に活用しようという積極的な姿勢がうかがえます。

つまり、終身雇用を望む理由はタイプによって違い、それは必ずしも「安定志向」からのみ来るものではないということが言えます。

終身雇用の意向に加えて、定年まで現在の会社で働く意向があるかどうか、という自身の意思についても聞いたところ、新たな示唆が得られました。

二分される勤続意向

定年まで現在の会社に勤続する意向については、組織志向のA・Bタイプで過半数が定年まで勤続する意思があると言っていますが、仕事志向のC・Dタイプでは、いずれも勤続意思がある層は2割に達しません。つまり、組織志向か仕事志向かによって、勤続意向の有無は大きく二分されていることが分かります。(図表6)

前述の終身雇用に対する考え方と比較すると、どのタイプも終身雇用を支持する割合よりも自身の勤続意向は低く、会社に対して保証を望むものの自分自身のこととなるとそれは分からないという傾向が見られます。

図表6.タイプ別の今の会社への勤続意向の比率/図表7.タイプ別今の会社への勤続意向の理由

定年まで現在の会社で勤続したい理由の上位2項目は、「解雇の不安がなく安心して働けるから」「人生設計が立てやすいから」であることは共通性が高いですが、その他の項目の選択率に着目すると、タイプによる傾向がいくつかあることが分かります(図表7)。

仕事志向のC・Dタイプについては、「興味関心のある仕事なのでじっくり腰をすえて仕事がしたいから」という、仕事に対する前向きなコミットを理由とした項目の選択率が高いようです。
また、変化志向のB・Cタイプについては、「一つの会社でどこまで自分が挑戦できるかを試したいから」という積極的な理由の選択率が高く、「転職するのは大変そうだから」という消極的な理由の選択率が低いという特徴が見られます。変化を前向きに捉えるという変化志向の特性がある一方で、一つの会社で挑戦し続けるという方向性でのチャレンジ精神も持ち合わせていることがうかがえます。

このように、定年まで勤続することを望む理由は、変化志向であるかどうか、仕事志向か組織志向か、の両方によって違いが生じていることが分かります。

このような若手の傾向と背景は、職場や人事の方にとって何を意味しているのでしょうか?

「安定志向」の理由にヒントあり

ここまで、管理職志向、終身雇用に対する考え方に光を当てて、安定-変化、組織-仕事の2つの軸で分類した4つのタイプ別に見てきました。その結果、それぞれについて、志向の有無や、その志向の背景にある理由にはそれぞれタイプ別に違いがあることが示唆されました。

前述のように、「管理職になりたい」、「終身雇用を保証してほしい」と新人や若手が望んでいたとしても、従業員の高齢化が進む中で、企業がそのポストや雇用を保証することは難しくなっているのは周知のとおりです。このような状況下において、企業と個人は新しい関係性を探る必要に迫られており、今後ますますその必要性は増すでしょう。

社内外を問わず、個人が能力を開発し自ら責任をもってキャリアを形成していくことを考えた場合、企業はそのサポートをすることが求められることになります。キャリアの浅い新人や若手であれば、なおさら有効なサポートが求められるでしょう。

働く個人の考え方が多様化している今、人事としてさまざまな施策を考えていく上で、これまでのように年次、年齢、性別、階層などといった一律の属性だけに判断の基準をおくことは望ましいとはいえません。だからといって、一人ひとりのキャリア意識に対応できるような施策を講じること(「個のマネジメント」)は非常に手間がかかり、こちらは現実的ではないと感じられるのではないでしょうか。

その際に、本レポートで見てきたように、新人・若手の意向だけでなく、その背景にある考え方や価値観について着目することはマネジメントにおける有効なヒントとなりうるでしょう。

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