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人事による「組織開発」というアプローチ

人事の新たな武器 「組織開発」とは何か?

  • 公開日:2013/07/08
  • 更新日:2024/04/11
人事の新たな武器 「組織開発」とは何か?

近年の日本企業は、「管理職の強化・候補者の選抜」「新人・若手社員の早期戦力化」「次世代経営者の育成」「人的資本経営の実現」「ジョブ型人事制度への転換」」など、さまざまな難しい人事課題を抱えています。そこで、近年注目されているのが、人事による「組織開発」という課題解決のアプローチです。
今回の特集では、この「組織開発」に焦点を当てて、「そもそも組織開発とは何か?」「人材開発とは何が違うのか?」などを、具体的な事例も交えながらご紹介いたします。

「組織開発」という聞きなれない言葉
人材開発と組織開発の違い
組織開発を実現する4つのプロセス
従来施策に、組織開発の視点を組み込んだ事例
人事に求められる3つのこと

「組織開発」という聞きなれない言葉

『……GEでは人事担当者は、社員の評価にかかわりつつ、個々の社員に対してさまざまな働きかけを行い、そのやる気を引き出そうとしています。それだけでなく、GEの人事には、組織を活性化し、組織のパフォーマンスを最大化するという役目もあります。 〔中略〕 GEでは、こうした人事部門の役割を併せて組織開発(オーガニゼーション・ディベロップメント、略称OD)と位置づけています。組織を活性化できない人事担当者は、GE社内で敬意を払ってもらえません。……』

GE出身で、元LIXILグループ執行役副社長の八木洋介氏は、人事部門が持つべき「組織開発」の役割について、著書『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書、2012、89頁)の中でこのように語っています。

人事部門に求められる「組織開発」とは、「組織パフォーマンスの向上を目指した組織内プロセスへの介入」であるといえますが、これでは抽象的で何のことなのかよく分かりませんし、実際に何をすればいいのかもイメージできません。

そもそも一般的に用いられている「人材開発」とは異なり、「組織開発」は多くの人事の方にとって聞きなれない言葉なのではないでしょうか。したがって、今回の特集では、この「組織開発」ついて、その意味や具体的な取り組み方について掘り下げていきます。

昨今、激しい環境変化に対応して、企業は機動的な事業運営を行っていくことが求められています。
経営層の多くは、自社が持続的に成長できる「組織力」を持ち得ているかに大きな問題意識を持っており、人事部門に対して、長期的に自社の強みの源泉となる「組織力」の向上という課題の解決を求め始めています。
経営層から人事部門に投げかけられる具体的な課題としては、「自社に、新たなチャレンジを起こす挑戦の風土をつくる」「多様な価値観を活かして成果をあげる組織をつくる」などが挙げられます。

通常、人事部門ではこれらの課題に対して、採用・雇用、格付(等級)、配置・異動、評価、報酬、教育、代謝といった人事管理上の主要機能を駆使して、その解決にあたります。

ところが、社内外の環境の多様化もあり、組織構成員一人ひとりにスポットを当てた従来の人事管理施策を講じるだけでは、こうした課題の十分な解決につながらないことが増えています。
例えば、挑戦の風土をつくるために、人事考課の指標を変え、マネジャー研修を行ったのにも関わらず、十分な成果を上げられない、というような現象が増えてきているのです。

このような状況の中で、従来の人事管理施策に加えて、人事の新たな武器として「組織開発」という課題解決のアプローチを持つことが、これまで以上に強く求められるようになってきています。

聞きなれた「人材開発」と聞きなれない「組織開発」。
両者では、何がどのように違うのでしょうか?

人材開発と組織開発の違い

通常の人事管理の対象が「人」であるのに対し、組織開発の対象は人と人の「関係性」や「相互作用」です。
組織開発とは、組織に内在するエネルギーや主体性を引き出す機能であり、人と人の「関係性」の変化や「相互作用」が、組織を変化させていくという考え方であるといえます。

組織開発とよく対比される人材開発との違いを通じて、その内容をより具体的に見ていきましょう。

例えば、「若手社員の早期戦力化」という課題があったとします。

人材開発アプローチでは、まず若手社員本人に問題があると捉えます。そのため、本人に対する育成施策を講じるのが一般的です。あるいは、もう一歩踏み込んで、その上司の部下育成に問題があると捉えて、教育を施すかもしれません。

これに対して、組織開発アプローチでは、本人と上司や職場メンバーとの「関係性」に問題があると捉えます。そして、その関係性の改善を図ります。このような場合、本人と上司の間で期待する役割認識や成長課題がすりあっていなかったり、本人と職場メンバーの間で十分な協力関係が築けていなかったりすることが多いためです。

そして、個人への育成施策ではなく、本人と上司で相互に期待をすり合わせるようなミーティングをコーディネートすることや、職場メンバー全員参加のワークショップをファシリテートすることなどを通じて、関係性に良い変化を起こそうとします。これが、組織開発アプローチの特徴です。

図表1. 人材開発と組織開発の違い

図表1. 人材開発と組織開発の違い

つまり、「人の育成を通じた早期戦力化」と「早期戦力化ができる職場づくり」というように、同じ「若手社員の早期戦力化」という課題であっても、アプローチの違いが異なる解決策を生むのです。

ただし、ここで重要なのは、「どちらのアプローチが正しいかを考えること」ではなく、「どちらのアプローチも使える」ことであり、「どちらも柔軟に組み合わせられる」ことです。なぜなら、複雑な課題であればあるほど、どちらかのアプローチだけでは解決できないことが多いためです。

では、どのようなプロセスをたどれば、組織開発を実現できるのでしょうか?

組織開発を実現する4つのプロセス

組織開発のプロセスの要点は、「意図を持って場を創り、情報を還流させる」ことです。
「組織内の協働を強化したい」「新たなチャレンジを促進したい」など、組織開発を通じて解決したい課題は各社の状況によってさまざまです。しかし、取り組む課題の違いにかかわらず、組織開発の定石として、以下の4つのプロセスが不可欠であると考えています。

1. 目指す姿に照らし、事実をもとに組織の現状を把握する
組織の問題は、例えば、「最近、職場が疲弊してきているのではないか?」など、漠然とした「印象」で語られることがよくあります。
そのため、関係者と課題の合意に向けて、インタビューやサーベイなどを活用して「事実」をもとに現状を把握することが出発点となります。

2. キーパーソンを巻き込み、課題解決の必要性を合意する
人と人の「関係性」の変化に影響を与えて成果を生み出そうとする組織開発においては、職場の関係者を広く施策に巻き込んでいく必要があります。
そのため、早い段階から影響力のあるキーパーソンを巻き込み、課題解決の必要性について合意を得ておくことが望ましいでしょう。

3. 早期の成果獲得のため、スモールスタートで施策を講じる
関係者間のリアルな議論の「場」を通して相互作用を起こし、施策の成果を上げていこうとする組織開発においては、想定外の状況が起こることは少なくありません。
そのため、特定の部門や拠点に絞ってワークショップを展開するなど、パイロットケースを作って成果を出した上で、全社展開を行うといったように「小さな成果を早期に上げる」ことに注力することが望ましいでしょう。

4. 施策を拡大し、組織が「自走」するプロセスを整える
全社・全体への展開を効果的に実現するためには、パイロットケースでの成功のポイントを分析しておく必要があります。
そして、現場での自立的な取り組みを支援するために、ファシリテーター向けの議論の進め方の設計や必要なツールを整備したり、関係者間で施策の成果をタイムリーに共有するための仕組みやプロセスを整えたりする必要もあります。

以上が、組織開発の定石となる4つのプロセスです。

ただし、ここまで読み進めていただいた人事部門の方々の中には、「人事として、組織力向上の課題解決に、直接手を出すのは難しい」「今のところ、人事にはそこまでの役割を求められていない」「今の仕事に手いっぱいで、新しい施策に取り組む時間も余力もない」と感じられた方もいらっしゃると思います。

そこで、組織開発に取り組む第一歩としてお勧めしたいのが、「従来の人事課題の解決に、組織開発の視点を組み込む」ことです。
それは具体的にはどのようなことでしょうか? 次のページで、事例をもとにご紹介します。

従来施策に、組織開発の視点を組み込んだ事例

ある企業が「次期マネジャー候補として、職場リーダー層を育成する」という人事課題の解決に、組織開発の視点を組み込んだ事例を、先ほどの4つのプロセスに沿ってご紹介します。
この事例は、単に対象である職場リーダー層に対する教育施策に留まらず、組織開発の意図を持って一工夫することで、「組織力向上」に貢献できたというものです。

1. 目指す姿に照らし、事実をもとに組織の現状を把握する
まず、現場へのインタビュー調査を重ねて、顧客志向を持って高業績を上げているマネジャーに共通する要素を抽出しました。
結果として、「職場リーダー時代の仕事の任され方」や「視野を広げる擬似マネジャー経験」など、上司と部下の関わりが、マネジャー就任後の立ち上がりを大きく左右することが明らかになりました。
そのため、本人を対象とした教育施策だけでは十分な効果が得られないと考え、現場を巻き込んだ施策を企画することにしました。

2. キーパーソンを巻き込み、課題解決の必要性を合意する
次に、教育施策を実施する前に、各地域の営業部門長に加えて、影響力の大きな営業企画マネジャーや営業マネジャーも巻き込み、調査結果をもとに議論する場を設けました。
この場での議論を通じて、問題の重要性が共有され、取り組みに対する合意を得ることができました。

3. 早期の成果獲得のため、スモールスタートで施策を講じる
そして、問題意識が強く、全社的な影響力も大きな地域をパイロットケースとして、営業マネジャー間あるいはマネジャー・リーダー層を交えたワークショップを重層的に展開しました。
ワークショップでは、上司と部下の間で期待のズレが発見できたとともに、マネジャー間では普段おもてに出ない効果的な仕事の任せ方のナレッジなども共有しました。

4. 施策を拡大し、組織が「自走」するプロセスを整える
さらに、営業企画マネジャーを通じて、他地域にも上記のナレッジの共有を図りました。そうすると、社内の評判を聞きつけて、同様の取り組みをしたいと名乗り出る地域が続出したのです。
加えて、施策の展開に必要なツール類および、ファシリテーター向けのマニュアルなどを整備し、段階的に他地域に展開し、各地域の独自の工夫なども全社で還流される取り組みとしました。

図表2. 事例のポイント

図表2. 事例のポイント

得られた成果は、当初のねらいであった「マネジャー候補の育成」をはるかに超えたものでした。
職場のコミュニケーションが改善されたことで、上司からの仕事の任され方や、本人の仕事の取り組み方に変化が見られるようになりました。いくつかの職場では、実際に顧客からの評価が高まり、組織業績の向上にもつながったのです。

それでは、このような組織開発を仕掛けられるようになるために、人事には何が求められるのでしょうか?

人事に求められる3つのこと

人と組織の課題解決に縦横無尽に取り組み、経営・現場の双方に貢献していく人事部門へと進化を遂げていくためには、次の3つのことに取り組む必要があると考えています。

1. 組織のパフォーマンス向上に貢献するために、組織開発が人事の新たな役割であると捉え直すこと

2. 現場の事実を収集するために、インタビューや意識調査など複数の情報収集手段を活用できるよう備えること

3. 職場や組織にダイレクトに介入する場面に備え、コーチングやファシリテーションスキルを強化すること

そして、第一歩として「組織開発の意図と視点を持って、既存の人事施策を捉え直し、一工夫を加えること」をお勧めして、今回の特集を終えることにします。
人事のさらなる進化は、「組織開発」へのチャレンジから始まるのではないでしょうか。

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