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さあ、扉をひらこう。Jammin’2023 leader interview

本当にやりたいことに取り組むときは、誰だって自発的に動く〈Jammin’リーダーインタビュー〉

  • 公開日:2024/08/05
  • 更新日:2024/08/05
本当にやりたいことに取り組むときは、誰だって自発的に動く〈Jammin’リーダーインタビュー〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」を、2024年も引き続き開催する。2023年の振り返りとして、「2023 Jammin’ Award」でグランプリを受賞した食料コース「Pocket Deli Deli」チームにインタビューした。この事業案は、いったいどのように生まれたのか。ターニングポイントはどこにあったのか。彼らはなぜグランプリを獲得できたのか。Jammin’の半年間で何を得たのか。チームメンバーのうち、火ノ川 公也さん、海老原 直之さん、吉田 綾さん、市川 陽一さんにお話を伺った。

●インタビューしたのは

火ノ川 公也氏の画像

火ノ川 公也氏

キリンホールディングス株式会社

海老原 直之氏の画像

海老原 直之氏

日産自動車株式会社

吉田 綾氏の画像

吉田 綾氏

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社

市川 陽一氏の画像

市川 陽一氏

株式会社リコー

オンラインで会って1時間後には仲良くなっていた
専門家の小野さんから「小野の無駄遣い」と言われ、全員が本気になった
「本当にやりたいことは何か」をとことん話し合ったのが成功の秘訣
Jammin’のプレゼン経験が今のマーケティング職にそのまま役立っている
「配慮はするけど、遠慮はしない」ことが良いチームづくりのエッセンス

オンラインで会って1時間後には仲良くなっていた

――Jammin’2023受講のきっかけと開始当初の気持ちを教えてください。

火ノ川:私は2023年に中小企業診断士を取得したばかりで、その学びの成果をどこかで試してみたい気持ちがありました。また、自分のリーダーシップがどれだけ通用するかを確かめたいとも思っていました。そのための場としてJammin’が良いのではないかと思い、社内公募に応募しました。

海老原:私はちょうど社内で新規プロジェクトリーダーに就いたときに、上司から勧められました。現業では、これから社内外のさまざまな人を巻き込みながら、新しいことに取り組んでいく必要があったんです。その学びになると思って手を挙げました。以前から新規事業開発に興味があったことも後押しになりました。

吉田:私は以前から、Jammin’の社内公募が気になっていました。社外の人たちと長期間交わることが、自分のプラスになると思っていたからです。ただ一方で、厳しい場だとも聞いており、迷っていました。最終的には上司に背中を押してもらい、参加を決めました。

市川:私は上司からリーダーシップを学ぶ場としてJammin’を紹介されました。私は3年ほど前に研究開発からマーケティングへキャリアを変えました。Jammin’では単にリーダーシップを磨くだけでなく、マーケティング経験を補うこともできるのではないかと感じ、手を挙げました。

――チームメンバーについてどう感じましたか?

火ノ川:最初の印象は「みんな仕事ができそう」でしたが、オンライン会議にもかかわらず、初対面から1時間後にはかなり打ち解けていましたよね。

海老原:私も、みんなハキハキ話す優秀そうな人たちだなと思いました。最初だけはお互いに気を使っていましたが、火ノ川さんの言うとおり、すぐに全員仲良くなって、初日から気軽に冗談を言い合える仲になりました。

吉田:みんなやる気に満ちていて、輝いて見えました。

市川:私は、普段の仕事で一緒になるタイプではない人たちばかりで新鮮だ、というのが第一印象でした。吉田さんはすでに部下を抱えていると聞いて、自分のこれからのキャリアのお手本になる人だ、と感じました。

チームの画像

専門家の小野さんから「小野の無駄遣い」と言われ、全員が本気になった

――チーム内での関係性を教えてください。

海老原:おおざっぱにいえば、私が言いたいことを言って、吉田さんが話を拾ってくれて、今日は欠席している安部さん(もう1名のチームメンバーである安部 智史氏/三菱ケミカル株式会社)や火ノ川さんが冷静に軌道修正してくれて、市川さんがみんなの意見をまとめる、という役割分担でした。ただ、誰がリーダーということはなく、全員でアイディアを出したり、すべきことを検討したりしました。

吉田:海老原さんはムードメーカーで、プラスアルファの情報をよく追加してくれましたよね。私は、皆さんのような若い年代と普段あまり一緒に仕事をしないので、皆さんの価値観や考え方を学びながら、自分なりの意見を言うようにしていました。

市川:吉田さんは仕事経験が豊富で、具体例を示しながら、こうした方がいいのではとアドバイスをくれることが多かったと思います。いろいろと勉強になりました。私は、皆さんがどうやったら動きやすくなるかをいつも気にしていました。現業でも、その観点を大事にしながら働くようになりました。

海老原:市川さんは、まとめ役として力を発揮してくれました。例えば、議論の最中、全員がよく分からなくなって、話が前に進まなくなったことがあったんですが、そのとき市川さんが議論の内容をビジュアル化してくれたことで、皆が考えを整理できた、ということがありました。

――皆さんのターニングポイントを教えてください。

火ノ川:今回、私たちが最終的に提案したのは、「Pocket Deli Deli ムスリム向けインスタント日本食 旅のお供にこれ一個、旅の思い出にこれ一個」という事業案でした。ムスリムの皆さんは、宗教上食べられないものが多くあります。そこで、訪日観光客のムスリムの方々が食べられるハラルフードのインスタント日本食「Pocket Deli Deli」を開発しよう、というアイディアです。

実は、ムスリムの皆さんにフォーカスすることは、比較的早く決まりました。ただ、最初はもっとこぢんまりとした企画案だったんです。ところが、食料コースの専門家・小野邦彦さん(株式会社坂ノ途中 代表取締役)にその案を見せたところ、「これくらいの事業案なら専門家は不要で、小野の無駄遣いになってしまいます」と言われたんですね。これで全員が本気になりました。大きなターニングポイントの1つです。

海老原:そのとき、全員が「小野さんを見返してやろう!」という気持ちになりました。その第一歩として、全員でとことんアイディアを出し合って、アイディア総選挙をしたんです。そうして全員に選ばれたのが「Pocket Deli Deli」の事業アイディアでした。

▼「Pocket Deli Deli」の事業案のプレゼン資料

プレゼン資料
プレゼン資料

「本当にやりたいことは何か」をとことん話し合ったのが成功の秘訣

――良い事業アイディアが出たら、次はフィールドワークが鍵になります。フィールドワークはどうでしたか?

吉田:あるとき、市川さんがフィールドワークの取材先候補をリスト化してくれたことで、皆が後押しされましたよね。そのリストに載っていたイスラム関係の協会長や社長に当たってみたら、意外と多くの方々が応じてくれたのが印象的でした。こうしていけば、現業でも意外と簡単にフィールドワークを行えるのかもしれない、と感じました。

火ノ川:私は現業で飲食店の飛び込み営業をした経験があるので、その経験を生かして、行列のできるムスリム料理店を次々に回りました。そうやってムスリム料理をいくつも食べて、「ムスリムの人に“これが日本食だ”と自信をもって言えるものを作りたい」と感じたことが、Pocket Deli Deliに踏み切った決め手の1つでした。

吉田:私はムスリムの祈祷所に突撃取材を敢行しました。こうやってフィールドワークをすることで、「ムスリムの人たちは熱い食べ物に息を吹きかけて冷ますことをしない」といった細かい情報まで仕入れることができました。

海老原:私の地域にはムスリム向け飲食店がほとんどなく、フィールドワークは皆さんにお任せする形になりました。ただ、皆さんがフィールドワークのなかで、「Pocket Deli Deliを楽しみにしている」というムスリムの皆さんの声を多く拾ってきてくれて、やる気が高まりました。

――Jammin’は、世の中の「不」を基点に新価値を生み出すことを大事にしています。その点はどう感じましたか?

火ノ川:「不」の追求はフィールドワークに尽きると感じましたね。実際に「不」を感じているムスリムの皆さんに話を聞くことで、アイディアを磨くことができました。

吉田:議論の最中、専門家の小野さんから「皆さんの言っている『不』は、本当の『不』ですか?」と何度も問われました。本当の「不」かどうかは、フィールドワークで現場の皆さんに確かめない限りは分かりません。フィールドワークをしない限り、小野さんに自信を持って「本当の『不』です」と答えることはできないんですね。今回はそのことがよく分かりました。

市川:フィールドワークをやって分かったことの1つは、「食料コースには、世の中の『不』が山のように存在している」ということです。それが分かったときに、「自分たちが本当にやりたいことは何か」をあらためてとことん話し合ったのがよかったと思います。成功の秘訣といってもよいかもしれません。

▼ 2023 Jammin’ Awardのプレゼンテーションの様子

Jammin’のプレゼン経験が今のマーケティング職にそのまま役立っている

――プレゼンテーションはどうでしたか?

海老原:プレゼンに関しては、私が出しゃばって頑張りました。事前にアウトプットイメージをつくって、足りないところを穴埋めしていく形を取りました。

吉田:海老原さんの作ってくれたフレームのおかげで、ブレの少ない、すばらしいプレゼン資料を作ることができましたね。

火ノ川:資料の一言一言にこだわりました。

市川:プレゼンの準備に1カ月はかけましたよね。私はその全プロセスが勉強になりました。今回のプレゼンの準備や発表を通じて経験したことが、今のマーケティング職にそのまま役立っています。

海老原:私は、安部さんが最後の最後まで「ムスリムの皆さんはPocket Deli Deliを本当にホテルで食べるのか?」にこだわっていたのが印象的でした。安部さんに納得してもらうために、ムスリムの皆さんにアンケートを取り、さらに日本人にも「外国旅行のとき、ホテルで日本食を食べた経験がありますか?」というアンケートを取って、プレゼン資料に加えました。これが最終的な説得力につながったと思います。

火ノ川:小野さんに完成したビジネスプランを見せたときに「実際にプロダクトを作った方が、説得力が出る」と言われて、資料を作るだけでなく、プロダクト開発まで進めたのもよかったですよね。

海老原:プレゼンのためにお揃いで作ったパーカーのデザインも、桜の花びらの色を一つひとつ微妙に変えたりして、こだわりましたよね。

吉田:食料コースの代表に選ばれてからは、食料コースの皆さんに発表練習に付き合ってもらいました。これも嬉しい出来事でした。

海老原:さらに最後は他コースの皆さんにも協力してもらって、アイディアを磨くことができました。多くのJammin’参加者と交流できたことも、私たちの財産です。

▼ 2023 Jammin’ Awardでグランプリが決まった瞬間

「配慮はするけど、遠慮はしない」ことが良いチームづくりのエッセンス

――Jammin’は、「ひきつける」「いかしきる」「やってみる」というリーダーに求められる3つの行動を重視しています。やってみて、どうでしたか?

市川:私がそのなかで一番弱いのは「いかしきる」だったので、Jammin’では自分の想いを共有し、その想いに共感してもらうことで、周りを生かすことにチャレンジしました。

吉田:Jammin’に参加して、これまでの自分の「やってみる」では足りないことがよく分かりました。そこでJammin’では「やってみる」を伸ばそうと思い、次に自分のしたいこと、できること、すべきことを考えながら、どんどんやってみるようにしていました。

海老原:Jammin’を通じて、自分は周囲を「いかしきる」ための雰囲気づくりが得意だということを発見できました。メンバーの皆が、「海老原さんは冗談を飛ばしながら、気軽に話しやすい空気をつくるのが上手だ」と褒めてくれたからです。想像以上に、自分の言葉に「ひきつける」影響力があることも分かりました。自信になりました。

火ノ川:もともと人と話すのは好きなのですが、今回のJammin’で意外だったのは、相手を「いかしきる」ために必要なフィードバックが上手だ、と皆に言われたことです。相手をモチベートしようとするフィードバックの姿勢がいい、と褒められました。それから、私はフィールドワークもプロダクトづくりも経験がまったくなかったのですが、やってみたら意外とできました。「やってみる」ことの大事さがよく分かりました。

――リーダーとして得られたことは何ですか?

海老原:ダントツで学びになったと思うのは、「楽しむこと」の大切さです。私たちはムスリム向けの飲食店に食べに行ったり、ムスリムの人たちに会って話したり、プレゼン資料やプロダクトやパーカーを作ったりするのが楽しくて、どんどん自発的になっていきました。ワクワクが熱意になって、好循環を生んでいったんです。本当にやりたいことに取り組むときは、誰だって自発的に動くんですね。この学びを受けて、職場では「これからリーダーとして、みんなが楽しんで働けるチームを作りたい」と宣言しました。

吉田:実は、私たちは遠方のメンバーも多いため、チーム活動はリモート会議で行っていたので、対面で会うのは今日がまだ3回目なんです。それにもかかわらず、チームづくりは本当にうまくいきました。ところが世の中では、リモートワーク下でのチームづくりが大きな課題になっています。なぜJammin’ではうまくいって、職場ではうまくいかないケースがあるのでしょうか。私の仮説では、Jammin’のオンラインでのチームづくりが成功したのは、最終ゴールの認識合わせができたからではないかと思っています。この学びを生かし、職場でもより良いチームづくりを進めていきます。

市川:私は今回のJammin’を通じて、「言語化することの大切さ」を学びました。私たちのチームがうまくいった要因の1つは、とことん話し合って、徹底的に言葉にしたことだと思うんです。そこで今職場でも、メンバー一人ひとりに何を思っているのか、何を考えているのかをどんどん話してもらうようにしています。

火ノ川:私が今現業で意識しているのは、周囲と「遠慮せずにホンネで対話すること」です。今回のJammin’では、「必要な配慮はするけど、遠慮はしない」ことが良いチームづくりのエッセンスだったからです。

――最後に、これからJammin’に参加する人にメッセージをお願いします。

火ノ川:配慮はしても、遠慮はしないでください。そうすれば良い事業案を創れると思います。

海老原:楽しむことが新しい価値を生みます。とにかく楽しんでください。

吉田:気づきは現場にあります。フィールドワーク、頑張ってください。

市川:日々の業務との両立は大変だと思いますが、この経験が役に立ちますから、思い残すことなくやりきってください!

【text:米川 青馬、illustration:長縄 美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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