連載・コラム
さあ、扉をひらこう。Jammin’2023 owner session report
NTTコミュニケーションズ・デンソー・三菱重工のオーナーと卒業生がホンネを語り合った〈リアルオーナーセッション〉
- 公開日:2024/03/04
- 更新日:2024/05/29
共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」、5年目のJammin’2023が終了した。41社253名の次世代リーダーたちが全15コースに分かれ、「不」を基点に新価値を生み出すプロセスに取り組んだ。その姿を終始見守っていたのが、各社のオーナー(人事・上司など)だ。実は一方で、オーナーの皆さんは全4回の「オーナーセッション」に参加し、オーナー同士で学び合っていた。この記事では、唯一のリアル開催となった第3回オーナーセッションの模様を紹介する。第3回オーナーセッションでは、NTTコミュニケーションズ、デンソー、三菱重工の3社のオーナーと卒業生、合わせて6名のパネルディスカッションを行って、Jammin’に関するホンネを遠慮なく語り合ってもらった。
- 目次
- Jammin’は「手の届きやすい越境プログラム」である
- Jammin’を経験すると「一歩踏み出せる人」になって帰ってくる
- 社内に「はみ出せる場」を用意することが大切だ
- 「本人が越境したいと思ったとき」が越境のタイミング
Jammin’は「手の届きやすい越境プログラム」である
●パネルディスカッション参加者
NTTコミュニケーションズ株式会社
オーナー:友井川 拓さん(プラットフォームサービス本部 事業推進部 主査)
卒業生:Le ManhTien(ティエン)さん(PS本部 C&A部 第一サービス部)
<2022年度グローバルコース参加>
株式会社デンソー
オーナー:新藤 幸さん(人事部 人財・組織開発室)
卒業生:廣田 彩友美さん((株)デンソーソリューション 事業戦略部 出向)
<2022年度ジェンダーコース参加>
三菱重工業株式会社
オーナー:島田 祐輔さん(HR戦略部 人材開発グループ)
卒業生:藤井 由隆さん(民間機セグメント企画管理部 事業支援G 組織風土改革T)
<2021年度地方創生@七尾(現・地方創生・中能登)コース参加>
司会
海津秀剛(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 営業統括部)
内田怜七(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRD統括部サービス共創部
――最初に、Jammin’に参加した背景や気づきを教えてください。
友井川:私たちNTTコミュニケーションズは、「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する。」という企業理念を掲げています。この理念を実現するためには、越境できるリーダーを増やすことが欠かせません。私たちは社員の越境マインドを高めるため、自己越境・社内越境・社外越境の3ステップで各施策を用意しており、Jammin’を社外越境施策の1つに据えています。
ティエン:私はJammin’2022に参加しました。社内で「Jammin’に参加してみないか」と声をかけられ、いろいろと学びたい時期だったので、良いタイミングだと思って飛び込みました。序盤は「新規事業開発とリーダーシップに何の関係があるのだろう?」と感じていたのですが、やっていくうちに、新規事業の立案がリーダーシップ開発につながることが腑に落ちました。文化やスタイルの違う企業のメンバーが集まって高度な議論を交わし合い、力を合わせて事業案を創造する経験ははじめてでした。これまで参加したなかで一番ありがたい研修です。私がJammin’で最も学びになったのは「共感」の大切さです。それまでの私はパッションとロジックを重視するタイプだったのですが、Jammin’参加以降は周囲との共感も大事にするようになりました。
新藤:デンソーには、若手社員の育成のために、一定期間、外の世界を経験してもらう「トレーニー制度」があります。社内海外拠点で学ぶ海外拠点トレーニー、国内他社に出向する社外修行トレーニーに加えて、短期共創プログラムのひとつとしてJammin’を活用しています。応募は手挙げ制で、参加が決まった社員たちは、主体的に横のつながりも作りながら参加しています。Jammin’終了後、新価値創造や変革への熱量を高めて帰ってくる社員が多く、受講効果を感じています。
廣田:私は、短期共創プログラムが新設された2022年にJammin’に参加しました。以前から社外でハッカソンやプロボノの経験があったのですが、業務としてそれらの活動に近いことができるのなら、ぜひ挑戦したいと手を挙げました。そんな私にとって、Jammin’は「手の届きやすい越境プログラム」でした。社外で参加するハッカソンやプロボノでは世代や職種などのバックグラウンドがより多様なメンバーが集まることが多く、合意形成の進め方や価値観の意識合わせが難しくてプロジェクトがうまくいかないことも少なくありません。その点、Jammin’は所属する業界や職種は違いますが、モチベーションや経験知や世代などが同じくらいのメンバーが揃うため、何かとやりやすかったのです。
島田:私たち三菱重工は、選抜研修施策の1つとしてJammin’を始めました。この藤井をはじめ数名の社員にトライアルとしてJammin’に参加してもらったところ、誰もが良い体験をして帰ってきたので、対象層を変えるなど試行錯誤しながら継続しています。2024年度からはJammin’を中核に据えて、越境施策を本格的に展開していきます。
藤井:島田から紹介があったとおり、私は「三菱重工が今後Jammin’を活用すべきかどうかを実際に体験して判断してほしい」と言われ、2021年に参加しました。地方創生@七尾コースに参加したのですが、チームメンバーと現地を訪問したら、事前に考えていた事業案が七尾に全然マッチしないことが分かり、ガラリと方向転換する経験をしました。その後、私たちは現地で得た感覚や見方を大事にしながら、「本音・本気・本質の、“3つの本”を大切に取り組む」をチームポリシーに掲げて議論を重ね、スクラップ・アンド・ビルドを何度も繰り返して事業案を創り上げました。最終的には、チーム全員で「アワードをねらおう!」と言い合うほど仲良くなり、熱量を高めていました。そうやって越境し、チーム一丸となって価値創造する経験を積んだことが、私にとって大きな学びになりました。
――私たちは、Jammin’を「自律共創型の次世代リーダー開発プログラム」と紹介しているのですが、面白いことに3社とも「越境」がキーワードになっていましたね。Jammin’が越境という文脈のなかで活用されていることがよく分かりました。
Jammin’を経験すると「一歩踏み出せる人」になって帰ってくる
――次の質問です。越境後の変化や挑戦、兆しなどについて教えてください。
ティエン:面白いことに、私のチームメンバーは、私も含めて5人全員、Jammin’終了後に自ら手を挙げて出向したり異動したりしてポジションを変えました。Jammin’だけでなく、実際の仕事でも越境したわけです。それが最も明確な変化ですね。
友井川:NTTコミュニケーションズでは、ティエンのようにすでにリーダーとして活躍する人材がJammin’に参加しています。それでも、参加者の多くが「Jammin’で気づきを得た」と語り、熱意を高めて帰ってくるのです。効果を実感しています。
藤井:私たち三菱重工は製造業ですから、ルールどおりに動くこと、間違わないことを重視する文化が長年根づいています。踏み出したりはみ出したりしてはいけない、とどうしても考えがちなのです。ところが、Jammin’を経験すると「一歩踏み出せる人」になって帰ってきます。実際、Jammin’に参加したメンバーが「新しい取り組みをしようと思うのですが、藤井さんも参加しませんか?」とよく声をかけてくれます。これは私たちにとって大きな変化です。
島田:私たちはこれまで、40代から20代まで、選抜も手挙げも含めた多種多様な社員をJammin’に送り込んできました。結果的に分かったのは、Jammin’では誰もがそれぞれに学ぶことがあるということです。意外とマネジメント経験豊富な40代課長がつまずいたり、一方でマネジメント経験のない20代の若手社員がイキイキと活躍したりしていますが、誰もがJammin’から帰ってくると、主体的に行動したり提案したりするようになるのです。
廣田:デンソーは大規模・長期間のプロジェクトが多く、プロジェクトの立ち上げから終わりまですべてに関われることはなかなかありません。ですから、私はJammin’でリーダーとして仲間と共にプロジェクトを立ち上げ、半年間で最後まで走りきる経験を積めたことが大きな学びになりました。今は、Jammin’での経験を参考に、メンバー全員がゴールを共有し、一致団結して楽しみながらゴールに向かっていけるチームづくりを心がけています。
新藤:デンソーの場合、役職に就く前のメンバーがJammin'に参加しますが、終了後にチームやプロジェクトをリードするアサインを推奨しています。Jammin'を経て、自分から周囲を巻き込んだり、何か仕掛けたりするマインドに変わっているのは嬉しいことです。それから、社内にJammin’経験者が増えることで、会社全体が少しずつ外向きになっている兆しも感じます。
社内に「はみ出せる場」を用意することが大切だ
――経営や人事は、現場の変革推進に向けてどのようなサポートをしているのでしょうか?
新藤:「越境」の価値を広げる・高める工夫として、私たちは社内で「越境」という言葉を使っていません。どう成長できるのか理解するのが難しいからです。「社外から学ぼう」「社内で学べないスキルや専門性を獲得しよう」と説明し、上司層にも参加者層にも有用性を感じてもらう工夫をしています。結果的に越境経験を通じ、スキル・専門性に加え、リーダーシップなど人間面の成長を実感し、越境の良さが少しずつ浸透すればと思っています。
廣田:Jammin’も含めて、会社が越境の選択肢をいくつも用意することが大切ではないでしょうか。社員一人ひとりが、仕事やプライベートの状況に合わせて、そのときどきに最適なプログラムを利用できるようにすることが、越境人財を増やすことにつながるはずです。また、参加者の上司へのフォローやサポートも重要だと思います。上司から応援してもらえることは本人にとって安心感と励みになるので、プログラムの進捗状況や、チームメンバーとの連携に悩みを抱えているかもしれないこと等を経営・人事部門から情報提供することで、上司と本人のコミュニケーションを後押ししてあげることもポイントではないでしょうか。
友井川:結局は、Jammin’を継続してJammin’卒業生を増やし、彼らに活躍してもらうことが、越境文化や新価値創造文化を醸成する一番の近道だと考えています。そのためには、人事がJammin’がいかに有意義かを社内に広め、Jammin’参加者を継続的に募る必要があります。実は私たちも、社内広報施策の正解はまだ見つけられていません。今後も試行錯誤しながら、社内のJammin’認知を高めていこうと思っています。
ティエン:実は、私はこれまで「社内アルバイト」をきっかけに、2回異動しています。社内アルバイトとは、本業とは別に手伝いで関わっていた社内業務です。つまり、私は社内越境を経て異動する経験をしてきたのです。どちらのケースも、上司が許してくれたからこそ社内アルバイトが可能でした。私の上司たちは、越境の重要性をよく理解していたのです。廣田さんも話していましたが、越境する際には上司の理解が極めて大切です。
島田:三菱重工では、藤井も含めた有志メンバーが「EKKYO BASE」という社内コミュニティを立ち上げ、越境に関する社内講演会や学びの場を展開しています。あるオンライン社内講演会は、実に1600名もの社員が視聴しました。越境への関心が高まっていることは間違いありません。とはいえ、実際に越境を体験した者はまだまだ少ないのが現状です。廣田さんのおっしゃるとおり、さまざまな越境プログラムのラインアップを用意して、できるだけ多くの人に体験してもらう必要があります。
藤井:Jammin’からは離れますが、例えば1週間の越境プログラムなら参加できる、というメンバーもいるわけです。もっと身近なところでは、社内の別部署やグループ会社と交流したいといった越境ニーズもあります。こうした多様なニーズに網羅的にアプローチして、越境の底上げを図っていくことにも効果があるはずです。
それから、実は昨年、40代後半の課長がJammin’に参加したのですが、終了後、彼は部下に越境を強く勧めるようになり、彼の部下が次々に越境プログラムに参加するようになりました。ティエンさんや廣田さんのおっしゃるとおりで、上司が越境を応援すれば、越境はどんどん進むのです。その延長線上で考えると、役員や幹部社員が越境経験を積むことが、会社全体の越境文化を大きく変える可能性があります。
「本人が越境したいと思ったとき」が越境のタイミング
――では、質疑応答に移りましょう。
質問1:参加者間の社内のつながりをどのようにつくっていますか?
新藤:人事は事前研修で参加者間の顔合わせの場を作る、社内SNSにコミュニティをセットするだけで、あとの場づくりは参加者に任せています。ただ、あまり盛り上がっていないコミュニティには顔を出して刺激することもありますね。
廣田:デンソーは卒業生有志が主体になってコミュニティを動かしていますが、それが難しそうなら、人事とJammin’卒業生が一緒にコミュニティをつくっていくとよいのではないでしょうか。
質問2:越境するのはどのような人がよいでしょうか?
藤井:「本人が越境したいと思ったとき」が越境のタイミングです。本人が希望したのなら、たとえ越境先で失敗しても、それがプラスの経験になるので大丈夫です。
友井川:NTTコミュニケーションズでは、Jammin’はリーダー層が対象で、それより下の層は社内越境を経験してもらっています。さまざまなデザインの仕方があると思います。
質問3:Jammin’の期中フォローをしたいと思っているのですが、効果的な施策はありますか?
ティエン:Jammin’はそれ自体の負担が大きいので、人によってはフォローがむしろ過重負担になってしまう可能性があります。ただ、若手社員が参加している場合には、期中フォローが有効ではないかと思います。
質問4:Jammin’の事後のキャリアへの影響を高めるにはどうしたらよいと思いますか?
島田:比較的簡単で効果的なのが、社内に向けてJammin’の経験談を話してもらう場をつくることです。そうすると、自分の体験や学びを言語化することになります。その言語化が、Jammin’の体験や学びを自分のキャリアに反映する第一歩になるのです。
質疑応答の輪は、後半の対話セッションでの活発なやり取りへと広がっていった。
所属企業の枠を超えたオーナー同士の「越境」的対話が、各社のリーダーの活躍を力強く支えていくことだろう。
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