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公開日:2024/03/04
更新日:2024/03/04

THEME 新人/若手

連載・コラムヤクルト本社が語る強固な組織づくりのカギ セミナー

未来を担う新人・若手社員の成長を支える

未来を担う新人・若手社員の成長を支える

新人・若手育成の難しさに関するお悩みが年々増しています。「若手世代の考えが分からず、コミュニケーションが取りにくい」「育成担当になったが自信がない。1人で対応することに限界を感じる」「現場の負荷が大きくなるなかで、何から始めればよいのかが分からない」といった声をよく伺います。いったい何が難しさを生んでいるのでしょうか。どのようにしたら新人・若手社員がイキイキと仕事をする環境をつくれるのでしょうか。

私たちは2023年12月に「未来を担う新人・若手社員の成長を支える」セミナーを開催しました。本セミナーでは、新人・若手育成に積極的に取り組み、自走する強固な組織に向けた職場環境づくりを推進しているヤクルト本社様を招き、新人・若手育成で生じやすい今日的な問題と、職場ぐるみで行う新人・若手育成のあり方について、ともに考えを深めていきました。本セミナーでお伝えした内容をご紹介します。

 

新人・若手の成長鈍化・メンタル不調・早期離職が問題になっている



進行担当
リクルートマネジメントソリューションズ
HRD統括部トレーニングマネジメント部
主任研究員 桑原 正義
研究員 武石 美有紀
研究員 関根 彩夏


講師
金谷さん写真

ヤクルト本社 人材開発センター所長
金谷 範人(かなや のりひと)様

木村さん写真

ヤクルト本社 人材開発センター係長
木村 和也(きむら かずや)様

千葉さん写真

ヤクルト本社 人材開発センター主任
千葉 さやこ(ちば さやこ)様

桑原:私たちはお客様から、新人・若手育成について次のような声をよく耳にします。「新人・若手社員の主体性が物足りない」「自己完結していて、仕事の幅が広がらずもったいない」「仕事が思うようにできず、落ち込む新人・若手が見られる」「本音が分からず、どう支援すればよいか分からない」。一方で、悩みを抱えている新人・若手社員もいます。「仕事の意味を感じられず、やる気が出ない」「成長実感がなく、自分に自信が持てない」「周囲の人との関係をうまく築けない」「このままずっとここにいてよいのか不安だ」といった声が上がっているのです。これだけでも、上司・育成担当者と新人・若手の間のコミュニケーションがあまりうまくいっていないことが分かります。

結果として、多くの企業で、新人・若手の成長鈍化・メンタル不調・早期離職が問題になっています。人事の皆さんからは、「一生懸命やっているが、うまくいかないことが多く困っている」という声がたくさん届いています。新人・若手育成は間違いなく難しくなっています。

結論をいえば、今日の環境では「Z世代にフィットした新たな育成方法」が求められています。特に、「自律・学習の力」にフォーカスすることが肝要です。なぜなら、現代の職場では自律・学習の力が重要になっている一方で、Z世代の新人・若手はVUCA的な環境での経験が積みにくく、自律への苦手意識を抱く傾向があるからです。

武石:さらに、Z世代特有の価値観の変化も影響しています。図表1は、2013年と2023年の新入社員の考え方を比較したデータです。10年間で、明らかに伸びた項目と下がった項目があることが分かります。簡単にまとめれば、Z世代は個性の尊重や丁寧な指導、助け合いを重視するようになった一方で、厳しさや鍛え合い、情熱、活気、強力なリーダーのもとで1つの目標を共有する姿勢に対する期待は縮小しています。これは単なる世代間ギャップではありません。Z世代を中心として、従来とは異なる新たな価値観が生まれてきたと考えられます。こうしたZ世代の価値観にフィットした育成方法が求められているのです。さらにいえば、単に育てるだけでなく、新人・若手社員の強みやプラスの変化を生かしながら、私たちも、新人・若手から学べることがあるというスタンスを持つことも必要です。


<図表1>理想の職場・上司像

理想の職場・上司像の図
出典:リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査」の2013年と2023年を比較

今日の環境では「自律的に学習・成長していく力」が重要になる



武石:繰り返しになりますが、私たちは、正解がなく複雑性が増す今日の環境では、「自律的に学習・成長していく力」が重要になると考えています(図表2)。Z世代の新人・若手にとって、言われたことをしっかりできる力よりも、「自分で考え、動き、学んでいく力」がプラスになるのです。


<図表2>自律的に学習・成長していく力

自律的に学習・成長していく力の図

関根:そのためのポイントは、「安心と信頼」の土壌を作り、自律を引き出すことです。なぜなら、自律行動の壁は、やる気や能力よりも「不安と恐れ」だからです。Z世代は、「これをしたらどう思われるだろう」「ダメな人と思われたらどうしよう」といった不安・恐れをより強く抱く傾向にあります。会社という新たな環境に飛び込むとき、その不安・恐れは一層強くなる可能性があります。

だからこそ、人事や上司の皆さんが「安心と信頼」を与えられるような支援をすることが大事です。例えば、否定せずに受け止めること。一緒に考えて伴走すること。新人・若手のよくなりたい気持ちを信じること。経験を積めばきっとできるようになると信じること。こうした言動や姿勢が、新人・若手に安心感や信頼感を与えるのです。多くの新人・若手は、安心・信頼を感じられれば、思いきって一歩を踏み出して経験を積み、本来の意欲と力を発揮していくでしょう。 Z世代に安心と信頼を与えるうえでは、「職場ぐるみ」での育成が効果的です(図表3)。育成担当者任せにせず、上司・同僚・社内のプロフェッショナル・メンター・ロールモデル・同期の新人などがつながり学び合う機会を設けて、全体でともに育てる場をつくっていくのです。その際、職場の全員が新人・若手からも学び、ともに成長する姿勢で関わると、よりよい成果を生み出せるでしょう。

桑原:これからお話しするヤクルト本社様は、こうした「自律的に学習・成長していく力の向上」と「職場ぐるみでの育成」をまさに実践しています。ぜひ参考にしてください。


<図表3>職場ぐるみの育成

職場ぐるみの育成の図

研修は職場で活用・実践され、成果が生み出されないと意味がない



金谷:私たちヤクルト本社は、2021年に、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」の達成に向けて、企業価値の持続的な向上を目指し、人材基本戦略を再構築しました。本日は、その再構築に合わせた新人・若手育成プログラムの見直しについてお話しします。

Yakult Group Global Vision 2030では、人事戦略上の重点課題として「コア事業の成長に寄与する人材開発」「個人と企業がともに成長できる組織づくり」「新しい価値を創造できる企業風土の醸成」の3つを掲げました。それを受けて、人材基本戦略では「成長エンジンの確立に向けた人材育成の実施」「多様な個の成長を支援する人材育成の実施」「共有すべき価値観を体現できる人材育成の実施」の3本の柱を立てました(図表4)。また、教育テーマとして「『個』が成長、活躍できる組織への進化」を打ち出し、「自分を知る」「外部に触れる」「実践と連動する」を重点テーマとしました。

この人材基本戦略で最も大事なポイントは、「研修は職場で活用・実践され、成果が生み出されないと意味がない」ということです。究極的にいえば、全員が職場で業務に挑み、それぞれの課題を認識し、知識・スキルを身につけられる環境があれば、研修や人材開発センターは必要ありません。私たちは、人材開発センターをなくすことを最終目的に置いて、「教える」のではなく「気づき・動く」教育への進化を図っています。


<図表4>人材戦略基本方針 〜3つの柱〜

人材戦略基本方針 〜3つの柱〜

「自律的な人材」を育てるために新入社員研修カリキュラムを大幅変更



木村:私たちは、人材戦略基本方針を実行するにあたって、まず新人・若手育成プログラムの刷新から着手しました。2019年までの新人・若手育成プログラムは、ヤクルト社員として「一人前」になることを目指した座学中心・インプット中心の研修でした。しかし、これだけでは自由な発想や自発性を生み出すことは難しく、新たな人材基本戦略にはそぐわないと考えました。また、従来のOJT教育では、各部署の育成意識の差が顕著に表れており、新入社員の成長やモチベーションに差が生まれていました。そこで私たちは、新人・若手育成プログラムの抜本的な見直しに入ったのです。

千葉:そうして私たちは、2021年度に「新入社員研修カリキュラムの大幅変更」と「OJT教育プログラムの新設」を行いました。新たな新入社員研修カリキュラムでは、「自律的な人材」を目指す姿に掲げ、学ぶべきものとして従来の「3つの基本(ヤクルトの基本・社会人の基本・仕事の基本)」だけでなく、新たに「3つの力(自律挑戦の力・チームで働く力・考え抜く力)」も提示しました。

そのうえで、「自己認識→意識転換→知識習得→実践」の4ステップで進む研修カリキュラムを用意しました(図表5)。Step0:自分軸を探究して自己認識を深める、Step1・2:「3つの基本」を習得しながら学生から社会人へと意識を転換する、Step3:「3つの基本」を発揮し「3つの力」を習得する、です。

特に、自分軸を探究する際には、まず自分が何を大切にしてきたか、実際に何をしてきたかを振り返ることから始めてもらいます。そのうえで、自分軸と会社軸をすり合わせていくのです。こうして個人と組織の接点を見つけることが、個人と企業がともに成長できる組織づくりにつながると考えています。


<図表5>新たな新入社員研修カリキュラムの4ステップ

新たな新入社員研修カリキュラムの4ステップ

「職場ぐるみの育成」をするためにOJT教育プログラムを新設



千葉:OJT教育プログラムは、職場全体で、人材を育てる環境が当たり前になっている状態を醸成するために導入しました。図表3のように、育成担当者任せにせず、上司・同僚・社内のプロフェッショナル・メンター・ロールモデルなどが職場ぐるみで新人をともに育てていくための施策です。組織の風土づくり、新入社員能力向上、OJTリーダー能力向上の3つの目的があります。

新設にあたっては、まずは全課長にアンケートで育成意識調査を行いました。その結果、新人・若手を育成担当者任せにしている傾向が明らかになると同時に、新人・若手の成長に期待する声が多く上がりました。こうした結果を反映させて、OJT教育の取り組み内容を設計しました。そしてできあがったプログラムの全体像が、図表6です。


<図表6>OJT教育プログラム全体像

OJT教育プログラム全体像

木村:OJT教育プログラムを展開する際、私たちは3種類の支援ツールと施策を用意しました。「一人前マップ」「OJTサポートガイドブック」「OJT上司・リーダー向け研修」の3つです(図表7)。

一人前マップでは、入社1年目終了時までの成長目標を具体的に定義づけし、OJTリーダーによく意識してもらうようにしました。新入社員にどのような仕事をアサインすべきか、どのように周囲と関わってもらうべきか、といったことも提示しています。並行して、人材開発センターでは、新人たちに定期メールを送り、一人前マップの進捗状況や心情を継続的に確認しています。また、6カ月目・1年目フォロー研修を実施して、状況を確認すると共に新人同士の交流機会をつくる取り組みもしています。そのうえでOJTリーダーと密に情報を共有して、新人の成長をサポートしています。

OJTサポートガイドブックは、人材開発計画の方針や「OJT教育」の全体像・ゴールについて、全社的に共通認識を持ってもらうために作成した冊子です。上司とOJTリーダーに配布しています。また単に配布するだけでなく、OJT上司研修・OJTリーダー研修とそれぞれのフォロー研修も実施し、職場ぐるみの育成に対する理解を深めてもらっています。さらに、新人が配属されていない部署の課長にもOJT教育プログラムの概要を伝え、全社理解を高めています。


<図表7>OJT教育プログラムの支援ツール・支援施策

OJT教育プログラムの支援ツール・支援施策

金谷:新たな新入社員研修カリキュラムとOJT教育プログラムを導入して、約3年が経ちました。この3年で、新入社員育成を体系化し、職場ぐるみの育成を定着化させ、職場全体で人を育てる意識を醸成することについては、ある程度の成果を上げることができました。OJTリーダーも全体的に順調に成長しています。

ただ、当然ながら課題も数多くあります。例えば、現在は入社1年目終了時までの成長目標にとどまっていますが、今後は入社3年目終了時までの成長目標を新たに設定し、より長期視点で新人・若手を育成する体制を整えたい、と考えています。また、新入社員が配属されていない部署に、職場ぐるみの育成風土を普及させることも課題の1つです。新入社員研修・育成にただ1つの正解はありません。私たちは今後も、自走する強固な組織、人を育てる環境が当たり前になっている状態をつくる、という大きな目標に向けて、日々模索を続けていきます。

未来を担う新人・若手社員の成長を支える
新人・若手の成長鈍化・メンタル不調・早期離職が問題になっている
今日の環境では「自律的に学習・成長していく力」が重要になる
研修は職場で活用・実践され、成果が生み出されないと意味がない
「自律的な人材」を育てるために新入社員研修カリキュラムを大幅変更
「職場ぐるみの育成」をするためにOJT教育プログラムを新設
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