コラムCOLUMN
公開日:2023/12/25
更新日:2024/02/29

THEME 経営人材/次世代リーダー

連載・コラムさあ、扉をひらこう。Jammin’2023 session report vol.2

新価値創造の専門家4人から熱い言葉のシャワーを浴びた4時間〈Jammin’アップデートアワー〉

新価値創造の専門家4人から熱い言葉のシャワーを浴びた4時間〈Jammin’アップデートアワー〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」、5年目のJammin’2023がスタートした。
9月8日(金)にオンラインで開催された第1回リーダーセッションには、「41社253名」の次世代リーダーが一堂に会した。参加者たちはその後、「不」を基点に新価値を生み出すプロセスに取り組んでいる真っ最中だ。11月10日(金)には、プログラムの1つ「Jammin’アップデートアワー」を開催した。AIドリブン経営・シリコンバレー・SF思考・新規事業開発の専門家たちが次々に登場し、それぞれの最前線の状況と可能性についてオンラインで語ることで、参加者の視座をアップデートすることをねらった場である。その模様を紹介する。

 

新価値創造の最前線に触れ、考え方や行動をアップデートする場である



Jammin’アップデートアワーは、新価値創造の最前線に触れ、共創リーダーとしての考え方や行動をアップデートする場である。Jammin’2023では、専門領域の異なる4人の新価値創造の専門家に、それぞれ1時間ずつ存分にお話ししてもらった。参加者たちは4時間にわたって、4人の熱量のある言葉のシャワーを浴びつづけた。多くの刺激を受けたはずである。

AIドリブン経営
 須藤憲司氏(株式会社Kaizen Platform 代表取締役)

シリコンバレーのスタートアップの最新動向
 渡辺千賀氏(Blueshift Global Partners 代表)

SF思考
 宮本道人氏(虚構学者、可能世界小説家、空想科学コミュニケーター)

新規事業開発
 徳重徹氏(テラモーターズ株式会社 取締役会長)

それでは、専門家の皆さんが語った内容をごく簡単に紹介したい(なお、各レクチャー後には活発な質疑応答が行われたが、その内容は省略する)。

【AIドリブン経営】AIという圧倒的な労働力を統べる「個の時代」が到来した

 
須藤憲司氏の顔写真


須藤 憲司氏
株式会社Kaizen Platform 代表取締役



須藤:今日は、DXの行方を決める「AIドリブン経営」についてお話しします。DXは今、進化を求められています。ご存じのとおり、OpenAIが開発した「GPTモデル」などの生成AIが世界を席巻しているからです。日本国内でも、生成AIのビジネス活用事例が急速に増えています。世界では毎日100以上の新しいAIツールが登場し、誰でもAIを使いこなせる「AIの民主化」がすでに始まっています。そうしてAIが多くの果実をもたらす一方で、ビジネスに関わる全員が競争のルールに晒される状況が生まれました。では、AIで、世のなかは、経営はいったいどう変わるのでしょうか?

最初に、生成AIの現在地をいくつか具体的に紹介しましょう。画像生成AIは、写真級にリアルな「バーチャルモデル」を作り出せるようになり、早くもモデルの仕事を奪い始めています(画像1)。AIが人間の代わりとして、アプリなどを自動で操作するサービスの開発も進んでいます。スポーツなどの動画の内容をリアルタイムに認識して、その場で自動的に実況をつける「AI実況」技術も発表されました。これらの例で明らかですが、AIが顧客体験(CX)と業務オペレーション(DX)を接続する時代がすでに到来しています。



<画像1>AIで作成された「INAI MODEL」(イメージナビ株式会社が運営するサービス)のバーチャルモデルたち


AIで作成されたINAI MODELのバーチャルモデルたち



自治体に出生届を提出しようと思ったら、今の私たちは、自分が住む自治体のサイトを調べて出生届用紙をダウンロードし、自分で記入して提出しなくてはなりません。ところがAI時代では、AIが出生届用紙をダウンロードし、記入をサポートしてくれるようになるでしょう。それどころか、AIが出生届を自動で記入し提出してくれるようになるかもしれません。もちろん出生届だけでなく、多くのサービスやアプリが同じように自動的に動くようになります。

生成AIを活用したサービスやツールが普及したとき、私たちの働き方は大きく変わるでしょう。簡単にいえば、どのビジネスでも「下流」の作業はAIがカバーするようになり、人間はソリューション・営業・コンサルティング、あるいはプロデュースやプロジェクトマネジメントといった「上流」の仕事にシフトすることを求められます。AIは既存のマーケットと職を破壊するのです。あらゆるプレーヤーの変化と適応力が問われます。大げさにいえば、私たちは「適応か、死か」という選択を迫られるのです。

当然ながら、AIリテラシーは必須の武器になります。AIを知っているか知らないかが大きな差になるのです。特に、AIは労働集約型の市場を破壊し、ルールを塗り替えるでしょう。例えば、経営者がたった1人で運営する「無人のAIコールセンター」ができる可能性が十分にあります。そうやって人件費を減らすことが、儲けに直結するからです。そうした会社が増えれば、労働者側は蜂起するでしょう。実際、アメリカでは2023年に俳優や脚本家たちがAIの規制を訴えてストライキを起こしました。現代のラッダイト運動(19世紀初期、産業革命に対して起こった労働者の抗議・反乱)はすでに起き始めています。

つまり、AIという圧倒的な労働力を統べる「個の時代」が到来したのです。さて、皆さんはどう生き残りますか? どう変えていきますか? 組織を、経営を。

【シリコンバレー】テクノロジーが分からなければ滅びる

 
渡辺千賀氏の顔写真


渡辺 千賀氏
Blueshift Global Partners 代表



渡辺:日本が30年を失っている間に、世界は進歩しました。シリコンバレーの現状を知ると、世界がどう進化しているかが分かります。私は20年以上シリコンバレーで働いてきた経験をもとに、シリコンバレーのスタートアップの最前線をお伝えします。

はじめに紹介したいのは、デジタル成長企業と死闘する伝統企業の事例です。最初に取り上げるのは「ウォルマート」です。ウォルマートにとって、アマゾンは年々大きな脅威となっており、もはやウォルマートに勝機はないとすら思えていました。ところが、Amazonプライムに対抗して始めた有料会員サービス「Walmart+」がここに来て会員数を一気に伸ばしており、ついにオンライン生鮮食品販売シェアではアマゾンを上回るまでになりました。この10年ほどで無数のテック企業を買収して、エンジニアをどんどん増やし、7500名体制の「ウォルマートラボ」を作り上げた成果が出ています。ノルマンディー上陸作戦のように、毎年膨大なリソースを投下しつづけたことが、ようやく花開いたのです。

次に紹介するのは「ゼネラルモーターズ」です。自動車業界では今、テスラによる業界破壊が進んでいます。テスラは労働組合がなく人件費が安いため、製造コストを低く抑えられます。さらに頻繁なソフトウェアアップデートを行って、新規機能を随時追加し、他社との差を広げています。そこでゼネラルモーターズも、テクノロジースペシャリストなど3000人の新規雇用を進めており、2026年までにメンテナンス予測など数十のソフトウェア機能を追加する予定です。

2021年、アメリカでは、ベンチャー企業が合わせて毎月100億ドル前後(約1.5兆円)の資金調達を行っています。これでもベンチャー投資は一時期より減ったのですが、2023年には下げ止まりました。資金の行き先は、ここ10年に創業したベンチャーがほとんどで、カテゴリー魅力度は、AI・データ、ヘルスケア・治療、クリーンテックが突出しています。

アメリカのベンチャーは「未来のプレビュー」といわれており、彼らは日々、ありとあらゆるトライ&エラーを繰り返しています。優れたアイディアのほとんどは、アメリカのベンチャーがすでに試しているといってよいほどです。最近注目されている企業をいくつか紹介します(図表1)。



<図表1>資金調達中のベンチャー企業の代表例


資金調達中のベンチャー企業の代表例



特に最近伸びているのが、企業によるベンチャー投資「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)」です。グローバルCVC投資は新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの間も成長を遂げ、アメリカではもはや常識化しています。ベンチャーキャピタル並みのスピードと、強力な投資先サポート力を兼ね備えたCVCも増えています。

CVCの代表格がグーグルで、VCファンド、グロース・レイトステージに特化したPEファンド、AIに特化したファンドの3つを持ち、最近は特に、医療・バイオ系ベンチャーへの投資を強化しており、不老不死を研究するCalicoなどがグーグルの投資先として知られています。また、アマゾンはEVメーカーRivianに巨額投資を行い、10万台の電動デリバリーバンを発注したことで一躍有名になりました。このように製品を買うことでベンチャーを支援するあり方は、CVCの理想形の1つといわれています。初期に製品購入や株式投資をしてスタートアップを後押しし、利益が拡大したタイミングでエグジットやキャピタルゲインをして稼ぐのが、CVCの必勝パターンとなっています。

今後の世界では、テクノロジーが分からなければ滅びます。ウォルマートやゼネラルモーターズですら、DXをしなければ崩壊を避けられないのです。テクノロジーを知るためには、なるべく自分で新規技術を使い、トライしつづけて体感で理解することが大切です。皆さんの活躍を楽しみにしています。

【SF思考】SFのように遠い未来を想像し、人間中心起点のイノベーションを起こそう

 
宮本道人氏の顔写真


宮本 道人氏
虚構学者、可能世界小説家、空想科学コミュニケーター



宮本:私は、自分に虚構学者、可能世界小説家、空想科学コミュニケーターという肩書きをつけ、日本にSF思考を広めています。「SF思考」とは、SF(サイエンスフィクション)の力を借りて、斜め上のビジョンの試作品を創るクリエイティブな手法のことです。

ジェフ・ベゾスやビル・ゲイツなど、ビッグテックの創業者たちは皆、「SFを重視しているビジネスパーソン」です。例えば、マーク・ザッカーバーグのFacebook社はMeta社に社名を変更しましたが、Metaの語源であるメタバースは、もともとニール・スティーヴンスン『スノウ・クラッシュ』に出てくる言葉です。また、テスラが爆発的に伸びたのは、イーロン・マスクのSF的な未来思考が投資家に響いているからです。投資家の多くはSF好きで、マスクのように未来を語る力を高く評価する傾向にあるのです。実直に良いものを作っているだけでは、もはやSF思考に負けてしまう時代になりました。現代社会では「SF格差」が大きくなっています。

なぜ今、SF思考が重視されるのか。それは「先が読めない時代」だからです。SF思考はこれまでになかったタイプの思考法で、非連続かつリアリティーのある未来を描くことができます。SFは一見バカバカしい設定かもしれませんが、その設定をフックにすれば、未来社会をイキイキと想像できるのです。SF思考は、フィクションとして不確実な可能性を想像し、いろいろな可能性を提示して、先が読めない時代に人間中心起点のイノベーションを起こす手法として注目されています(図表2)。



<図表2>SF思考学の位置づけ


SF思考学の位置づけの図

出所:「SF 思考学」特別座談会・第1回において三菱総研が作成した図


SFでは、三段階の未来予測が前提になっていることがあります。(1)予想外の未来社会を想像し、(2)そこに存在する課題を想像して、(3)その解決方法を想像するのです。私は、この作劇法を活用した「未来ストーリー作成メソッド」を構築し、ワークショップなどを通じてさまざまな場に広めています。

企業向けのSF思考ワークショップもいくつも開催してきましたが、残念ながら、SF思考を間違った使い方で活用する事例が多く見受けられます。簡単にいうと、SF思考を「フォアキャスト型課題発見」に使う企業は、ことごとく失敗しています。フォアキャスト型課題発見とは、有識者ヒアリングから始めて、過去のペインや課題を洗い出し、そこからSFプロトタイピングに向かっていく方法です。このやり方では、誰でも発見できるペイン・課題しか見つけられず、結局ありきたりの未来しか想像できないのです。

SF思考を最大限に活用するためには、「バックキャスト型課題発見」が必須です。バックキャスト型課題発見とは、SFプロトタイピングから入り、斜め上かつ解像度の高い未来像を生み出して、未来シナリオを細かく描いてから、現実的な事業案やビジョンに落とし込んでいくやり方です。例えば、「50年後の飲食店」を想像してから、20年後、10年後、5年後の飲食店はどうなるとよいか、そのためには何が必要かをバックキャストで考えていくのです。

ぜひ皆さんにも、SF思考を活用してもらえたらと思います。詳細を知りたい方は、拙著『古びた未来をどう壊す? 世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方』(光文社)をお読みください。

【新規事業開発】新産業で、世界で勝つにはどうしたらよいのか?

 
徳重徹氏の顔写真


徳重 徹氏
テラモーターズ株式会社 取締役会長



徳重:私は今、テラモーターズ、テラドローン、テラDX Solutionsの3社を経営しています。Jammin’では主にテラドローンの話をしてきましたが、今日は、テラモーターズが2022年に立ち上げた四輪向けEV充電サービス「Terra Charge」をどのように事業開発したか、そのストーリーをかいつまんでお話しします。皆さんが「新産業で、世界で勝つにはどうしたらよいのか」を考えるうえで、きっとヒントになるはずです。

Terra Chargeは2022年に始めた日本最後発のEVインフラ事業でありながら、一気に国内業界トップに躍り出て、社員は1年で3人から150人超になりました。現在の目標は圧倒的国内No.1ですが、その先は世界を見据えています。



<図表3>Terra Chargeの受注数


Terra Chargeの受注数の表

出所:テラモーターズ社


私がテラモーターズを立ち上げたのは2010年でしたが、EV二輪を市場に紹介するタイミングが早すぎて、日本や他国ではなかなかうまくいきませんでした。ただ、EV先進国であるインドだけはビジネスが軌道に乗ったのです。そこで、私たちはテラモーターズの事業展開をインドに絞りこみ、私はしばらく経営を他の経営陣に任せていました。しかし2〜3年前から、私たちはふたたびEV事業でのリベンジを考え始めたのです。

私はしばらく自動車事業から離れていましたから、ゼロベースで徹底的に研究を始めました。書籍だけでなく雑誌のバックナンバーもすべて取り寄せ、キーパーソンに会いまくりました。新規事業案を山のように創案し、熟考を重ねていたある日、私は1つの小さな雑誌記事にたどり着きました。普通の人ならばスルーするようなちょっとした記事でしたが、私の脳内では多種多様な情報がスパークし、「これだ!」と直感したのです。それが、四輪向けEV充電サービスでした。このとき、私が大事にした基準は、成長産業であること、市場規模が大きいこと、プラットフォーム事業であること、リカーリングモデル(販売後も取引があって継続的に収益が期待できるビジネスモデル)であること、大手企業と協調できること、競争が少ないことでした。当然ながら、これらの全基準を満たす事業案はなかなか見つかりませんでした。ところが、ほんの小さな記事にアイディアの種が眠っていたのです。新規事業は神の領域だとつくづく感じます。

こうした新規事業開発では、リーダーの熱量がすべてです。熱量の高いリーダーがチームにコミットして、メンバーの視座や目線を強烈に高める必要があります。例えば、私がTerra Chargeの事業案をテラモーターズの役員たちに説明したときは、300ページの資料を用意し、100分のプレゼンテーションを行いました。その私の熱量が彼らを動かし、結果的にTerra Chargeの成功に結びついたのです。「結果を出すというリーダーの強烈な意識」が、新規事業開発のすべての源泉であると認識すべきです。

私は、EVもバイクも、ドローンも土木測量も建築業界も、いずれも最初はド素人でした。しかし、自らが徹底的に学び、優秀な人材を獲得して組織カルチャーを育み、ここまで説明してきたように「当たり」を発見して、熱意で周囲を動かしていけば、このような大きな成功をつかむことも十分に可能です。


【text:米川 青馬、illustration:長縄 美紀】



※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。



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