連載・コラム
中小企業の人材育成を考える 第2回
管理職育成を考える際に検討すべきポイント
- 公開日:2023/03/06
- 更新日:2024/05/16
■ プロローグ
弊社ではこれから初めて本格的に人材育成に取り組む、という中小企業の皆様からもご相談をいただいています。 本コラムではそのようなご相談を年間約1000件お受けしている、インサイドセールス部門の担当者から人事の方に向けて、お役立ていただける情報を発信していきます。
マネジメントにおける「仕事の管理」と「人の管理」とは
中川 和明(なかがわ かずあき)
HRD・OD事業推進部 営業推進グループ
企画スタッフ
弊社の人材育成、組織開発部門でインサイドセールスを担当している中川和明と申します。
人事の皆様からいただくお悩みとそれに対してお答えしている内容をもとに、主に中小・中堅企業の方が人材育成について考える時にヒントになる情報を発信したく前回からこのコラムシリーズをスタートしました。
本コラムシリーズの趣旨ついては第1回に記載していますので、ご参照ください。
◆中小企業の人材育成を考える 第1回
人材育成のよくあるお悩み「マネジメントを強化したい」はなぜダメなのか?
第2回となる今回のテーマは、人事の方から非常にご相談をいただくことが多い「管理職育成」についてです。今回もテーマに沿ってよくいただくご相談内容と、それに対して私たちがどのようにお答えや課題整理をさせていただいているかをお伝えしていきます。貴社の人材育成施策の検討にぜひ活用ください。
まず、管理職の課題としてよく伺うのは「仕事(業績)の管理はできているが、人の管理ができていない/意識できていない」というお悩みです。
このようなお話を伺って私が感じるのは、管理職に求められる「仕事の管理」と「人の管理」という2つの役割は別々のテーマとして認識されがちである、ということです。
しかし、順を追って考えていくと、この2つは決して別の課題ではないことが見えてきます。
「人の管理ができていない/意識できていない」管理職の方の職場において何が問題になっているかを伺うと具体的には下記のようなお悩みが出てきます。
・目標の達成に向けて進捗管理はしているが部下の育成ができていない
・部下と仕事の話はしているが一人ひとりが日々考えていることや今後の成長に向けての会話ができていない
その結果として、
・管理職自身がプレイヤー化しているか、仕事ができる特定の人にだけ重要な業務を任せてしまっていて組織として成長する兆しが見えない
・部下の気持ちが離れてしまい離職やモチベーションダウンにつながっている。そのため業務が回らなくなっている
といった状況が起こっているというお悩みも伺います。
このように職場で具体的な問題が発生すると短期的な目標は達成できたとしても、中長期的には業績や仕事の遂行に影響が及び、「仕事(業績)の管理はできている」ともいえない状態になります。逆にいうと管理職として「仕事の管理」ができている方は「人の管理」の重要性を理解して部下に効果的に働きかけている、ともいえます。
弊社の管理職研修でもお伝えしていますが、「仕事の管理」と「人の管理」は本来別々のものではなく表裏一体の関係にあります。管理職は組織目標の達成のために両方に手を打っていく必要がありますし、時には一石二鳥をねらった方がいい場面もあります。
もし貴社の管理職の方が「人の管理」ができていない、意識が薄いと感じられる場合は、そもそも管理職の役割を正しく認識できていない可能性がありますので、そのようなインプットをする機会の提供を検討されることをお薦めします。
◆ マネジメントの基本知識を実践を通して学ぶWEB併用型マネジメント研修|M-BT
管理職のビジネススキル向上を考える
もう1つ多くいただくご相談としては「管理職のビジネススキルを強化したい」というテーマです。そのなかでもよく出てくるスキルは「コーチング」「問題解決力」「ロジカルシンキング」などです。
「コーチング」を学ばせる目的としては、部下育成力を強化したいというケースが大半です。
ただ、詳しくお話を伺っていくと、「そもそも管理職が部下育成を必要だと思っていない。業績マネジメントをしているからいいだろう、と考えている節がある」というようなお話が出てくる場合もあります。
そのようなお話が出た際には、初めに「コーチング」のスキルを学ぶことはお薦めしていません。必要性を感じていないのにノウハウだけを学んでもコーチングを使えるようになる可能性が低いためです。すでにお伝えしたように、管理職の役割とその役割を十分に果たすためのコーチングの必要性を認識いただいてからスキルを身につけるというステップがお薦めです。
一方、管理職の方の「問題解決力」や「ロジカルシンキング」に課題があるとお考えの場合は、スキルのインプットをすることが必要と考えます。自社の課題解決をしていくうえで要となる管理職の方が効果的に問題解決する力をつけることは重要なことだからです。部下の課題設定や課題解決をサポートしていくためにも求められる力です。
ただ、この場合も実際に問題と感じられている事象が「スキル不足」から来るものなのか、「役割認識のずれ」から来るものなのかは、事前に見極めていく必要があります。そこで昨今よく活用されるのが現状把握ツールとしての360度サーベイです。
360度サーベイの活用
昨今はマネジメント育成を考える際に、360度サーベイを活用いただくケースも増えています。サーベイ結果から、上司や部下から見た自身の現状を知ることで、自分では認識できていなかった自身のマネジメント行動を具体的に認識でき、研修への参加の動機付けにつながるためです。360度サーベイは研修後の効果測定にも有用なツールです。
管理職研修に限ったことではありませんが、研修だけを実施するのではなく前後の施策(プレ・オン・ポスト)を含めて設計し、職場で実践できる育成プランにすることが育成施策において重要なポイントです。
下図は弊社でお薦めしているマネジャー育成のプランになりますのでぜひ参考にしてください。
研修の実施形態の選択肢が増えている
2020年以降、企業研修のオンラインでの実施が急速に進んでいます。中小・中堅企業の場合は、全国に受講者が散らばっている大手企業に比べると比較的対面での研修を希望されるケースが多いのですが、それでも多忙な管理職を対象とした研修となるとオンラインにチャレンジしてみたい、というお話をいただくことも増えました。
また、「連続して2、3日職場を離れるのは難しいため、事前学習はWEBで行って集合研修を短くしたい」「日程を分散して行いたい」というようなご要望も増えてきました。
弊社でも、事前学習はWEBで行い、さらに集合研修後の職場実践についてもWEBを使ってフォローしていくことをセットにした実践型の管理職研修の引き合いが増えています。
昔に比べて研修の実施形態の選択肢は増えていますので、中身と共に自社に合った実施方法を検討いただくことをお薦めしたいと思います。
最後に
コラムシリーズ第2回となる今回は、よくご相談をいただくテーマである「管理職育成」について検討すべきポイントをお伝えしてきました。貴社の課題解決の一助になると幸いです。
マネジメントやその他のテーマについて、中小・中堅企業向け無料オンラインセミナーも定期的に開催していますので、併せてご活用ください。
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