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THEME マネジメント/リーダーシップ

連載・コラムこれからの組織のあり方を考える 第3回

「何をしたいのか」「なぜしたいのか」をメンバー自身が考え、発信し合う職場づくりが大切だ

「何をしたいのか」「なぜしたいのか」をメンバー自身が考え、発信し合う職場づくりが大切だ

世界でも日本でも、社会の大きなパラダイムシフトが起きています。では、その環境変化のなかで、組織はこれから、どのように変わっていけばよいのでしょうか。今後数回にわたって、「これからの組織のあり方」について連載していきます。第3回は、「メンバーの自律」に詳しい弊社HRDサービス開発部の後藤千晶と市橋直樹が、これからの個の自律について話し合いました。後藤はソリューションアーキテクトとして、日々、人事の皆さんから自律に関する相談をよく受けています。市橋はサービス開発の研究員で、特に現場中堅リーダーの課題に向き合っています。


第1回 なぜ組織に「個の自律」が必要なのか?
第2回 マネジャーは万能主義を捨てて「自分なりのマネジメントのあり方」を決めた方が楽しい
第3回 「何をしたいのか」「なぜしたいのか」をメンバー自身が考え、発信し合う職場づくりが大切だ

日本企業にはそもそも「テーマの自律」や「目的の自律」を考えたことがないメンバーが多い



対談メンバー
● 後藤 千晶(HRD統括部 HRDサービス開発部 シニアソリューションアーキテクト)
● 市橋 直樹(HRD統括部 HRDサービス開発部 研究員)
――日本企業の「メンバーの自律」についてどう感じていますか?

後藤:弊社では、メンバーの自律を3ステップで捉えています(図表1)。このステップで説明すると、これまでの日本企業に多かった管理統率型のマネジメントでは、メンバーは「やり方の自律(How)」は可能ですが、「テーマの自律(What)」や「目的の自律(Why)」は難しいのが実情です。

従来の管理統率型のマネジメントでは、正解は上司が持っており、部下は上司の基準に則って、決められた範囲内で働くスタイルが典型です。とはいえ、目標を達成する方法を自分なりに考えて行動することは任されているケースが多く、与えられた仕事をどうやったらうまくできるか、つまりHowを考えるのが得意なメンバーは少なくありません。しかし、こうしたマネジメントの下では、メンバー自身が何をしたいのか、なぜそれをしたいのかを考えることはほとんどありません。日本企業には、そもそもWhatやWhyを考えたことがないメンバーが多いのです。

実は、私自身も前職ではそうでした。私の経験では、管理統率型マネジメントの下で働くのはつらいわけではありません。目の前の仕事をうまくやることに全力を尽くし、自分なりに成功できたら、それはそれで十分に楽しいのです。しかし、今の私から見れば、それは自律とはほど遠い状態です。自律とは、自分の人生を選び取って生きていくことであり、大変面白くて楽しいことです。



<図表1>自律の3ステップ


自律の3ステップ



市橋:私が普段よく話を伺う現場の「中堅リーダー」とは、マネジャー一歩手前のメンバーのことです。今、多くの企業が中堅リーダー層に求めているのは、チーム内の組織課題を自律的に設定し、主体的に行動を起こすことです。彼らは総じて優秀な方が多いのですが、だからといって全員が自律しているとは限りません。というのは、中堅リーダーはとにかく忙しく、任された仕事を進めるのに精一杯というケースがよく見られるからです。課題は捉えていても、自分から行動を起こしたり、周囲と対話したり、新しいアイディアを出したりする余裕があまりなく、そうしたことが得意でない中堅リーダーは多いのです。メンバーの自律はなかなか難しい問題です。

後藤:今の日本では、メンバーの自律を進めるために、「WhatやWhyの思考を促すこと」の重要性が高まっていると考えます。市橋の言うとおり、中堅リーダー層も含めて、日本企業のメンバーの多くは、自分は何がしたいのか、なぜそれをしたいのかを考えることに慣れていません。ですから、WhatやWhyを考える筋力を鍛えていくことが大切です。

一人ひとりが職場に自分の考えを発信する時代



――自律への最初の一歩をどう踏み出したらよいのでしょうか?

市橋:多くの会社が、従業員のエンゲージメントを重視したり、従業員にキャリア上・仕事上の自律を求めたりする方向へ変わろうとしています。ただ、問題の1つは、その変革をマネジャーが一手に担いすぎている点です。職場づくりもマネジャーが主導するケースがほとんどです。

しかし、職場づくりはチーム全員が関与することができます。自律共創型の職場とは、チーム全員で意見を出し合いながら、各々が一員として作り上げていくものです(図表2)。そうした職場づくりでは、所属する全員のメンバーの自律性を高めることに繋がっていきます。メンバー一人ひとりが自分の職場に自分なりの考えを発信して周囲に働きかけることが、自律の第一歩になるでしょう。



<図表2>管理統率型の組織行動と自律共創型の組織行動の違い


理統率型の組織行動と自律共創型の組織行動の違い



後藤:「職場での自分の影響力」を知ることも大切です。というのも、研修で多くの受講者に接して分かってきたのですが、「自分がいてもいなくても、職場は変わらない」と思っている方が実に多いんですね。しかし、決してそんなことはありません。誰もが、職場にいるだけで影響力を与えています。

例えば、新入社員は一見、職場の大きな力にはなっていないかもしれません。ですが、彼らが周囲に素朴な疑問を投げかけたり、教えてくれた先輩に「ありがとうございます!」とお礼を言ったりすることで、従来の仕事を見直すきっかけになったり、先輩社員が自分の存在意義を再認識したり、ということはよくあります。新人たちがこうして職場に良い影響を与える可能性はおおいにあるのです。

市橋:社会人歴の長さや階層によって視点は大きく違いますし、当然ながら、性格や価値観も人それぞれです。それぞれの年代や個性の人が職場に存在する意義は必ずありますよね。

後藤:多くの方は、自分が職場の人間関係のなかでどのような立場にあり、周囲にどういった影響を与えているのかをもっと自覚した方がよいと思います。誰もが職場にポジティブな働きかけをできるのですから。

大手メーカーや地方銀行も変わってきている



――自律促進に向けた企業事例を教えてください。

後藤:ある金融機関では、1on1に取り組むと同時に組織のフラット化に注力しています。その企業は、以前は行員一人ひとりがお客様のために自律的に動いていたのだそうです。しかし、組織の統制強化や硬直化によって、自律的な社風は徐々に失われていきました。そこで今、その企業は、かつての社風を取り戻すために階層をできるだけなくして、誰もが自律できる環境を作ろうとしているのです。その変革に合わせて、1on1を、メンバーが自分の成長を考えながら対話する場として活用しています。

市橋:ある大手メーカーでは、上司が部下に向き合う文化がすでに根づいています。しかし、それでも部下から上司に提言を行うのは心理的なハードルが高いそうで、なかなかメンバーからの提言が増えないと悩んでいました。ところが、ある研修施策の課題で上司に提言したところ、その上司は提言を受け入れただけでなく、親身になってとことん相談に乗ってくれたのだそうです。その部下は、上司がそれほど部下思いで深く考えているとはこれまで知らず、驚くと共に感激したといいます。こうしたエピソード、気づき・発見が周囲に共有されることで、少しずつ提言が増え、メンバーの自律的行動が目立つようになっていったと聞きました。

メンバーが自律的にならないと1on1は機能しない



――1on1にまつわる「自律」をどう見ていますか?

後藤:メンバーが自律的に業務を進めたり、今後のキャリアを考えたりすることを目的に上司との1on1を導入するケースが増えていますが、最初からうまくいかないことも多いです。

1on1におけるメンバーの参加姿勢は、自律度に照らすと大きく3層に分けられます。第1層の方たちはすでに自律しており、1on1の場を自ら積極的に活用します。第2層の方は、上司と話すのは嫌ではなく、1on1をそれなりに楽しんでいますが、自分の仕事を自律して進めているとまではいえない皆さんです。第3層の方は、そもそも上司と話すことも自律して仕事を進めることもあまり望んでいません。第1層は問題ないのですが、第2層、第3層の方々の自律度をどう高めたらよいのか、人事やマネジャーの皆さんは悩んでいます。

そこで最近は、「メンバー向け1on1研修」を導入する企業が出てきています。メンバーの皆さんに1on1の活用方法や意義をお伝えして、1on1に前向きになっていただく研修です。メンバー向け1on1研修では、受講者一人ひとりに「自分のありたい姿」を考えてもらいます。多くの受講者は、最初は自分のありたい姿がよく分かりません。しかし、研修後に「自分はどうありたいのか?」「自分はどうなったら幸せなのか?」を考え続けていくと、ありたい姿がだんだんはっきりしてくるんです。メンバーが、それを考え続ける場として1on1を活用しようとすると、1on1が機能します。

1on1がうまくいかない場合、従来は上司の対話スキルを磨くことにスポットライトが当たりがちでした。しかし、1on1は対話ですから、メンバーも自律的にならない限り、十分に機能しないのです。1on1では、メンバーが1on1の時間を自分のために使おうとする姿勢も大切です。


【text:米川 青馬】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

 
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