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THEME マネジメント/リーダーシップ

連載・コラムこれからの組織のあり方を考える 第2回

マネジャーは万能主義を捨てて「自分なりのマネジメントのあり方」を決めた方が楽しい

マネジャーは万能主義を捨てて「自分なりのマネジメントのあり方」を決めた方が楽しい

世界でも日本でも、社会の大きなパラダイムシフトが起きています。では、その環境変化のなかで、組織はこれからどのように変わっていけばよいのでしょうか。本連載では「これからの組織のあり方」についてお伝えしていきます。第2回は、マネジメント研修の開発や企業におけるマネジメント育成、1on1導入のサポートをしている弊社の石橋と齊藤が、「これからのマネジメント」について話し合いました。


第1回 なぜ組織に「個の自律」が必要なのか?
第2回 マネジャーは万能主義を捨てて「自分なりのマネジメントのあり方」を決めた方が楽しい
第3回 「何をしたいのか」「なぜしたいのか」をメンバー自身が考え、発信し合う職場づくりが大切だ

1on1の導入が「マネジャー依存」を引き起こすことも



対談メンバー
● 石橋 慶(HRD統括部 HRDサービス開発部 マネジャー)
● 齊藤 文人(HRD統括部HRDサービス開発部 シニアソリューションアーキテクト)
石橋:私自身がマネジャーとして感じている現状から話し始めたいと思います。弊社ではコロナ禍でテレワーク率が一気に増え、現在はテレワークの方が主流になっています。それ以来、マネジャーはメンバーと主に「オンラインでの1on1」を行っています。オフィスで働いていた頃と違って、その場で気軽にメンバーのコンディション把握や進捗把握を行えなくなったことも起因しています。現在、私はオンライン1on1が全業務の10%ほどを占めています。メンバー全員と1〜2週間に一度、1on1を行っているからです。テレワークに移行した企業では頻度はさまざまであっても、おそらく多くのマネジャーが同じような状態になっているはずです。

問題と感じているのは、オンライン1on1が増えたことで「マネジャー依存」が進んでいるのではないかということです。皆がオフィスで働いていた頃は、偶発的なコミュニケーションが起こりやすく、チーム内での支え合いや心理的サポートがありました。例えば、新人が困っていたら、周囲の先輩が助けてあげるようなことがよくあったわけです。ところがテレワークになってからはお互いの動きが見えなくなり、そうした行為が起こりにくくなってしまいました。その代わりに、マネジャーだけが1on1でメンバーをフォローする状況が起こりやすくなっています。マネジャーとメンバーが1対1の関係でつながるだけだと、どうしてもメンバーはマネジャーの意見だけを聞いてしまい、他律的になりがちです。このままマネジャー依存が進めば、組織の硬直化が起こるでしょう。良くない状況だと感じています。

齊藤:私は企業の1on1の導入や定着の支援をさせていただいていますが、日本企業の1on1ブームは、実はコロナ禍前から始まっていました。2022年1月に弊社が行った調査によると、すでに大手企業の70〜80%が1on1を導入しています。(「1on1ミーティングに関する実態調査」)現在は、単に導入するだけでなく、1on1を定着・発展させていく段階に入っています。しかし、メンバーのコンディション把握やメンバーとの関係構築はある程度できているものの、本来目指すべきメンバーのやりがい創出や成長支援まで1on1を活用できているマネジャーはまだ少ないのが現状です。石橋が話したようなテレワークへの移行による環境変化が、事態をさらに難しくしています。

優秀な若手社員の引き留めがどんどん難しくなっている



石橋:昨今のマネジャーは、他にもこれまでになかった問題を抱えています。「若手社員のエンゲージメント」問題です。

若手社員の離職自体は、特別新しい問題ではありません。日本企業の新人の約30%は3年以内に離職する、という事実は長らく変わっていません。しかし最近、その問題の質が変わってきています。簡単に言うと、優秀な若手社員の引き留めがどんどん難しくなっているのです。その大きな要因は、若者たちが大学や企業インターン、ボランティアなどで、入社前にさまざまな経験を積めるようになったことにあります。積極的に行動する優秀な若者にとって、会社だけで得られる経験やスキル、メリットは明らかに減っています。マネジャーがそうした若者たちの働く意欲を引き出し、エンゲージメントを高めるのは簡単ではありません。

齊藤:確かに若手社員の転職に対するハードルは下がっていますよね。「この会社が嫌いなわけではないですけど、新しいことを始めたいので辞めます」と言う若手が増えた、という話を耳にすることもあります。私は以前、中国駐在していましたが、中国や東南アジアでは転職によってキャリア形成を行うのが当たり前です。日本の若者たちも転職を当たり前と捉え始めているのではないでしょうか。

石橋:そうかもしれません。さらに今のマネジャーは、メンバーの自律とも向き合う必要があります。「これからの組織のあり方を考える第1回」で桑原たちが話していたように、日本企業が社員に自律を求めるようになったことが背景にあります。その流れで言うと、転職することを必ずしも阻止する必要がある、という話ではありません。エンゲージメントを高めて防げる離職を防いだり、より成果を出してもらったりすることも重要ですが、転職も見据えてキャリアを自律的に考える社員がいるなかでどう組織づくりをしていくか、というのもこれからのマネジャーに求められる視点だと思います。当然ながら、未習熟者を育てることも、組織目標を達成することも、メンバーや働き方の多様性に配慮することも、マネジャーの大切な業務です。加えて、共創型組織への変革を求められているマネジャーもいるでしょう。こう見ていくと、現代の日本企業のマネジャーは本当に大変です。

マネジャーがすべてを引き受ける必要はない



石橋:そこで、私たちがマネジャーの皆さんに勧めたいのは、「マネジャー万能主義を捨てること」と「自分なりのマネジメントのあり方を自ら決めること」です。

はっきり言えば、マネジャーがすべてを引き受ける必要はありませんし、時間的にも難しいのが現実です。マネジャーが万能選手である必要はないのです。チームの特性や自分の特性を踏まえながら、自分なりのマネジメントのあり方、メンバーとの関わり方を自ら決めてかまわないのです。時には、マネジメント業務の一部をメンバーに割り振ってもよいのです。若手の育成をリーダーに任せてもいいし、戦略立案は自分より業務に精通しているメンバーに任せてもいい。そうやって自分の負荷を減らしつつ、自分が目指すべきマネジャー像に向かっていくのが、これからのマネジャーのスタイルだ、というのが私たちの見方です。

齊藤:最近は共創型のマネジメントスタイルが注目されていますよね。そういったスタイルは予測不能で成功パターンが効かない環境で力を発揮します。ただ、すべてのマネジャーの理想が一律に共創型というわけではありません。新人中心のチームを任されているマネジャーは、むしろティーチングを重視した管理・統率型マネジメントの方がよいかもしれません。チームの特性によって、求められるマネジャー像は異なります。

石橋:自律についてもまったく同じことが言えます。メンバーに決めたことをしっかりとやってもらう必要がある組織が、どの会社にもあるはずです。そうした組織のメンバーに自律的な目標設定や新価値創造を求めるかといえば、必ずしもそうではないでしょう。むしろ、定型業務にいかにイキイキと取り組んでもらうかを考える方が先決です。

齊藤:マネジメントは本来、個別性が高いものです。マネジャーが置かれている状況は多種多様で、マネジャーの持ち味も人それぞれです。流行に振り回されず、自分のチームはどのような特性があるのか、マネジャーとしてすべきことは何かを見定めて、自分なりのマネジメントのあり方を決めることが最も大切です。

「やってみると意外と楽しい」のがマネジャーの仕事



石橋:マネジメント業務の一部をメンバーに割り振るのは、これからのマネジャーにとって有効な手段でしょう。マネジャーが全メンバーを管理するのではなく、ある部分ではメンバー同士で進捗管理をしてもらったり、先輩に後輩の成長支援をしてもらったりするのです。マネジャーの機能を相対化するのですね。上手に行えば、マネジャー依存を解消したり、チーム内の協働を促したりすることにもつながるはずです。ただし、マネジメント業務をメンバーに割り振る際には、メンバーとよく話し合って、チーム内の合意を得ることが重要です。マネジメント業務の割り振りには丁寧なコミュニケーションが欠かせません。

齊藤:そのときにお勧めしたいのが、「横の1on1」です。つまり、メンバー同士で1on1をしてもらうのですね。横の1on1を上手に活用すれば、テレワークでもチーム内での支え合いや心理的サポートを生み出すことができます。私のチームでは、公式の会議の場では話さないような中長期的な組織構想について自主的にメンバー同士で話すこともあります。

石橋:1on1だけでなく、皆で集まって気軽に話し合う場を設定してもよいのではないでしょうか。特にテレワークに移行してから、チーム全員で話し合う場がない会社が多いのではないかと思います。

齊藤:その点で言えば、日本企業には、オンライン会議の場づくりやファシリテーションの手法がまだあまり浸透していません。オンライン会議でどうやって心理的安全性を確保すればよいのか、多数かつ多様な意見をどう扱えばよいのか、といったことを研究している日本企業は、それほど多くないと感じます。今後の課題の1つですね。

一方で、1on1にもまだまだ可能性が秘められています。例えば若手のメンバーとは、一人前のビジネスパーソンに向けた育成課題を軸に会話を進めることもできますし、仕事への意欲に焦点を絞った会話も可能です。ベテランメンバーとの1on1では人生における仕事のやりがいや組織貢献のあり方について話すことができますし、中堅の次世代リーダーとは事業の未来についてブレスト的に話すこともできます。マネジャーとしては、メンバーの状況に合わせ一人ひとりに徹底して向き合える貴重な機会なのです。

石橋:最後に強調しておきたいのは、マネジャーの仕事はやってみると意外と楽しい、ということです。「自分にはマネジャーは務まらない」「マネジャーなんてやりたくない」という気持ちの大半は先入観です。実際、マネジャーをやってみたら、いろんなメンバーと話ができて楽しい、メンバーのことを深く知ることができて嬉しい、という声をよく耳にしますここまでは現代のマネジャーの大変な面をお伝えしてきましたが、多くの方にマネジャーの楽しさを体感してほしいと考えています。

齊藤:マネジャーは楽しいですよね。マネジャーは、いろんなことにチャレンジできる可能性にあふれたポジションです。私自身、マネジャーをやって世界が一気に広がりました。皆さんも、マネジャー万能主義を捨てて、自分なりのマネジメントのあり方を自ら決めれば、きっとマネジャーを楽しむことができるはずです。


【text:米川 青馬】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

 
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