あなたにとって人事とは? 第3回 経営と社員のつなぎ役となり、攻め勝つ組織を創りたい

自動家計簿・資産管理サービスやビジネス向けのクラウドサービスを提供する株式会社マネーフォワードの人事部門トップを務める服部穂住(はっとり ほづみ)さん。リクルートグループで営業やチームマネジメントを学び、転職後はIT企業大手グリー株式会社の人事部門で社員教育や人事評価、福利厚生の構築などを担当。紆余曲折を経て現在地にたどり着きました。彼は今、どんなことを心に留めながら人事の役目を果たしているのでしょうか。

PROFILE
服部 穂住(はっとり ほづみ)氏
新卒でリクルートHRマーケティング東海(現リクルートジョブズ)に入社。採用支援の仕事をするなか、「採用後の人と環境の最適化をしたい」という思いが芽生え、グリー株式会社に転職。人事業務を幅広く担ったのち、株式会社マネーフォワードに入社。社長室付きの人事部長として、経営と社員をつなぐことを意識しながら、各種人事業務を進めている。


新人のみの営業チームで会社トップの成績を残す

リクルートとIT企業を経てマネーフォワードに転職し、入社4ヶ月目で人事部長に抜擢された服部さん。年齢は34歳。とても物腰が柔らかく、出てくる言葉は理知的である。20代前半の経験が、彼の人事としてのスタンスに大きく影響を与えているという。

「リクルートでは、求人広告を活用した企業の採用支援をしていました。地域の経営者と向き合い、痛みや想いを汲んで考える仕事は自分に合っていました。7年間在籍したのですが、そのなかで一番の思い出は、入社3年目にその年の新卒メンバー10名を率いて、会社トップの成績を残して表彰されたことです」

そのチームのミッションは新規開拓。見込み客も仲間のキャリアもゼロからのスタート。社内で数字を争う意味では、有利な条件は1つもない。

「僕は営業が得意なタイプだったんです。だから同じやり方を後輩に教えればできると思っていたんですが、大失敗でした。自分のやり方を押し付けてはダメなんですよね。そう気付いてからは、一人ひとりと向き合って個性を生かす営業の仕方を一緒に考えていきました」

それが結果につながったわけだが、それでも新卒入社3年目のリーダーが新人メンバーだけ、しかも新規開拓のみでトップをとるのは並大抵のことではない。

「実は学生結婚、学生出産だったので、22歳から子育てをしています。親の助けなしでは何もできず、言葉も話せない赤ちゃんと向き合い、辛抱強く成長を見守るのは大変。その経験があったから、新卒の子たちと根気よく向き合い、背中を押してあげられたのかもしれません」

人と会社の幸せな関係が続く環境を創りたい

「個人よりもチームでものごとに取り組んだ方が、世の中に大きな影響を与えられる。何より、チームで1つのことを成し遂げる方が面白い」

服部さんはそんな想いを抱きながら、リクルート時代を過ごしていた。一方で、人と会社をつなぐ仕事に限界を感じることもあったという。人と会社の幸せなマッチングを実現したように見えても、その後ずっとその人がそこで働き続けるとは限らない。入った後の環境づくりも重要である。それは分かっているが、自分にはどうすることもできない。そんな歯がゆさがあったそうだ。

「組織全体を強くしたいという気持ちはぼんやりともっていました。それが人事と直接つながるかどうかは分からなかったけれど、とにかく、『会社組織全体で勝つ』という経験をしたかったんです」

そんな想いを胸に、服部さんは、リクルートからIT企業に転職。そのときの社員数は1000名だったが、わずか1年で2000名に膨らんだ。教育や研修に関わる仕事を希望し、育成・活性化チームという部門に配属される。ところが、当時はその会社に研修制度がなく、どんな育成が必要か考えるところからのスタートだった。

「『研修をやりたいよね』っていう話はあるけど、詳細を詰めるのに時間が必要でした。具体的に動き出すまでの1年間は、こぼれ落ちた仕事を拾いまくる状態。例えば、社員総会の準備とか、そこで着るユニフォームを決めて手配したりとか……。あとは研修を企画してそれをひたすら経営陣に提案する毎日でした」

激動の3年を振り返り、「一番の学び」と思えること

2年目からは育成に注力する方向性が打ち出される。服部さんは全社的な研修体系を構築する役割を担った。

「教育研修に関する業務を集中的にしました。想像以上に研修の運用が大変で……。研修の講師が社員と合っているかとか、研修の効果が薄い部門がないかとか、ヒアリングしながら調整を重ねました。全社規模で研修を実施するのは難しいなと実感しました」

これからというタイミングで、またしても大幅な組織変更があり、教育研修に関しても軌道修正が必要になる。

「組織変更で僕の所属していたチームは解散したのですが、僕個人が担当する領域は増えました。教育研修だけではなく、人事評価や福利厚生なども見るようになったんです。さらに、役員の選任に関わる仕事から、ファミリーデーの企画運営などまでやりましたね」

IT企業で過ごした激動の3年間。そのなかで一番の学びは、多様性への対応だ。

「職種も経歴も国籍も違う人たちがそこにいました。自分なりに経営陣が何を求めているのか、社員が何を望んでいるのか考えながらやるんですが、すべてがうまくいくわけではない。例えば、新卒のフォロー研修でも、『やる意味が分からない。目的が分からないものよりは業務が優先ですよね』と言われたことがありました。提出物を期限内に出さなかったエンジニアに、『なんでリマインドがないんですか?』と責められたこともあります。本当にいろんなことが起こりましたが、人を動かせなかったら、それは僕の失敗ですから」

人事にはたくましい「想像力」が必要

同じ営業として、共通の価値観をもっていたリクルート時代の組織とは違い、さまざまな個性がぶつかり合う環境で失敗を重ねたことが、たくましい「想像力」を育てる1つのきっかけになった。

研修を「やる意味が分からない」と言った社員や、「なんでリマインドがないんですか?」と責めてきた社員の気持ちは、すぐには理解できない。けれど、自分と異なる考えや価値観を受け入れ、それぞれの立場をイメージすることができて初めて、組織の多様性を力に変えることができる。拒否したら、ただ溝が深まっていくだけだ。

人事未経験からスタートし、これといった手本もないなかで、数々の気付きを胸に抱きながら、服部さんは人事業務を構築していった。

「困ったことはたくさんありましたけれど、安易に人に頼らず自分で答えを見つける努力をしてきました。一度、リクルート時代の先輩に『マネジャーになってから相談できる人が減りました』と言ったら、『それが商売だから』と言われたんです。ロジックはどうあれ、僕には腹落ちした。その先輩の言葉を胸に、僕は自ら答えを見つけて、結果を出すことが仕事だと思ってやっています」

自分で答えを探しながら行動していると、不思議とそのヒントが目の前に現れることがあるのだという。例えば、書店で何気なく手を伸ばした書籍に、答えが書いてあった、というように。

マネーフォワードに入社した瞬間から評価制度を作る

IT企業での激動の毎日がひと段落したとき、マネーフォワードの辻社長と出会う。リクルート時代から服部さんは、経営者のパートナーとして事業を進めることに喜びを感じていた。社員の声にしっかりと耳を傾ける辻社長と親睦を深めるうちに、この人と同じ方向を目指してやっていきたいという気持ちが芽生える。

「リクルート入社3年目、チームで勝った経験が僕の充実曲線の頂点です。それを超える経験をしたいと常々考えてきました。それを実現するために、マネーフォワードというベンチャーで、大きな目標を掲げてやっていきたい。マネーフォワードという組織で攻め勝ちたいと思いました」

そんな経緯があり、2015年8月、マネーフォワードに人事として入社。最初の仕事は評価制度を作って、フィードバックするというものだった。

「普通はフィードバックって、評価制度があって、それを運用しながらおこなうものですよね。でも僕は入社した瞬間から、社員のグレードや評価体系を1ヶ月で整備し、新しい評価制度をつくりながら、同時並行でやりました。最初からベストを目指すのではなく、作りながらベストに近づけていくという考えのもと、代表の辻と合意しながら進めたんです」

評価制度の構築に関しては、前職の同僚や退職した人のアドバイスも聞いた。

「人と人のつながりは僕の財産。彼らには今も助けられっぱなしです。前職で、何もかも手さぐり状態ななか、彼らと一緒にミッション・ビジョン・バリューを考えたことも思い出深いですね。当時考えたミッション・ビジョン・バリューは、今も僕の心のよりどころになっています」

「人事はなぜ必要なのか?」と自分に問いかける

その後も、評価をメインに新卒採用や社員総会、リモートワークの検討などもおこなっている。福利厚生を充実させるために、前職時代のツテをつかってベビーシッターや家事代行サービスの社割などもはじめた。

「現在は360度評価の導入を検討中です。実験的に1度実施してみたところ、開発の現場からは前向きな声が上がっています。エンジニアは社内の他メンバーや世界中のエンジニアからレビューを受ける文化があります。フィードバックを生かして成長したいという意欲を持っている。だから、360度評価との親和性が高いはず。彼らの能力開発を促進し、マネーフォワードをより強くしていきたいです」

細かな施策を挙げたらキリがないほど、さまざまなプロジェクトを動かしている服部さん。すべての施策は、1つのテーマでつながっている。

「『あることを疑え』というのはリクルート時代の上司の言葉。当たり前のようにある人事の仕事が、もしなかったらどうなるか考えてみるんです。本当は、部下のことをよく知る部門の上長が人事業務をおこなうのがベストだと思います。なのに、なぜ人事があるのか。その1つの答えが『経営と社員をつなぐため』だと思う。つなぎ役の意識をもって経営と社員に向き合っています」

経営ニーズと社員のウィルをつなぎ、事業を前へ前へと進めていく。経営者と一緒になって悩み、考えながら世の中へ与える影響を大きくしていく。人事の仕事は人を採用して、育てることだけではない。組織を動かし、会社のミッションを達成するという「目的志向」をもって、先手を打つことが大事なのである。

多様性が高まるほど想像力が重要になる

服部さんが、これまでの人事にまつわる経験を通じて、大切だと感じた力を3つ紹介してくれた。

「ここでお伝えしたい想像力というのは、例えば家族の介護など、自分が経験したことがないことでも、イメージを膨らませて当事者の置かれている状況をリアルに理解しようとする力のことです。人事はさまざまなルールを作り、現場に適用します。その際に、どれだけ、一人ひとりの顔を想像できるか。自分とは異なる考え方や境遇の人のことでも、相手の身になって心から寄り添うことが大事なのです。意外とこれができず、会社のルールだからと社員を突き放してしまう人もいる。そうではなく、先手を打ってケアに努めたいと思っています」

価値観やライフスタイル、もしくは抱えている問題が異なる仲間と同じ船に乗り、目的地に向かうためには、「思いやり」が欠かせない。人事に心があってこそ、経営と社員がつながり、組織の推進力を高められるのだ。

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