女性活躍支援を巡る現状と課題を対談形式で語る 多様性を生かす女性活躍支援の時代 〜一人ひとりの個性を組織の力に〜

執筆者情報
フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 ファシリテーター
武藤 たか江

企業のグローバル化やダイバーシティマネジメントが進むにつれ、女性活躍の場が確実に増え、女性に対する企業からの期待と要望も高まり、広い視野を持って活躍してほしいと期待する企業が増えています。一方で、肝心の女性たちの意識がこのような環境変化に追いついていないのでは、という指摘も聞かれます。

今回のコラムでは、フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社で『7つの習慣』やそれを女性向けにアレンジしたプログラム『ビジョナリー・ウーマン』のファシリテーターである武藤たか江さんと、企業の女性活躍支援や一人ひとりのセルフリーダーシップ強化などの人事課題に携わっている、弊社森良枝に、女性活躍支援を巡る現状と課題を対談形式で語ってもらいました。


高まる女性への期待とコミュニケーション上の「すれ違い」

森:女性社員のマインドアップを目的とした『ビジョナリー・ウーマン』をリリースして3年。武藤さんはこれまで1000人以上の受講者と接してこられました。その間、企業のニーズや女性に対する意識はどのように変化してきましたか?

武藤:3年前に「女性活躍支援」というと、言葉はあっても具体的に何をしたらいいか分からないと困っておられる企業の方が多かったように思います。現在はもっと要望は切実です。企業のグローバル化に伴い、基幹職の男性たちには国内よりも海外で活躍してもらいたいと考える企業が多くなりました。同時に、これまで男性のサポート役に徹してきた女性たちにも単なるアシスタント業務ではなく、事務なら事務の専門家として、あるいはリーダーとしての役割を担ってほしいと考える企業が増えてきました。

森:入社時の新入社員研修を除けばこの『ビジョナリー・ウーマン』が初めて受講する研修だという方も多いですね。

武藤:そうですね。ですから最初はみなさん、緊張感でいっぱい。ところが、いったんディスカッションが始まると、こちらが「ストップ」と言っても止まらない。ふだん仕事で接することのない他部門の女性たちとも出会い、「自分はこんなに狭い視野で物事を見ていたのか」ということに気づいたり、「ありたい自分」にも気づく。ですから、終わった後はみなさん、晴れ晴れとした表情で職場に帰っていきます。研修ではふだん言えないことを口にして、出せない自分を解放できているということだと思います。

森:逆に言うと、ふだんの職場ではなかなか本音を話せていないということでしょうか?

武藤:愚痴はこぼしても、お互いを理解したりされたりという経験は乏しいのではないかと思います。研修中にある女性が「本音を言ってもいいですか?」と手を挙げて、こうおっしゃったことがありました。「自分は働きながら小学生の娘を育て、介護もしている。こうやって研修に参加できるのはチャンスが巡ってきたようでとても嬉しいけれど、これ以上、わたしは頑張れません。どうしたらいいのでしょうか?」と。私が「あなたは、上司にそういう話をしていますか?」と聞いたところ、「していません」と答えられました。なぜかとその女性に聞くと、「上司に理解してもらえるとは思えないから」と言うのです。聞く側にまず、相手に感情移入しながら傾聴する姿勢がないと、話す方もなかなか本音を話せないものです。これは単なるスキルやテクニックだけの問題ではありません。

森:そういう「すれ違い」は見えないだけで、実は組織のいたるところで起きているということでしょうね。

武藤:そうですね。女性活躍支援は女性だけが頑張ってもなかなか継続的な成果に結びつかない。上司や組織、あるいは男性側の意識も同時に変わっていかないと、女性側の意識や期待が高くなった分、逆にモチベーションが下がってしまうこともあります。それは、会社にとっても女性にとっても非常に残念なことだと思います。

制度は充実しても、なぜか増えない女性管理職

森:1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、育児休業が制度化されたり、復職支援のプログラムができたりと、女性が働き続けるための制度や仕組みは随分と整ってきました。女性管理職をもっと増やすべきだという社会的要請も強くなってきているようですが、一方で、そのための母集団がなかなか大きくなっていかないという現実もあります。女性の意識を変えていくことでこの母集団を大きくしたいと期待されている企業も多いのではないでしょうか?

武藤:そのようなニーズは確かにあると思います。新人研修では圧倒的に女性の方が元気なのに、マネジャークラスの研修になると女性の姿はほとんど見なくなってしまいますから。「まだ自信がない」という理由で、昇進・昇格の機会を断るのは、圧倒的に女性の方が多いと聞きます。これをなんとかしたいと考えている企業は多いと思います。

森:企業の中でロールモデルになれる女性というのは往々にしてスーパーウーマンのような人になってしまって、後輩の女性たちがなかなかついていけないという話もよく聞きます。「あの人だからできた」「自分には無理」と思ってしまうのでしょうか?

武藤:企業のマネジャークラスの女性たちを思い浮かべると、確かに似たようなタイプの方が多いですね。仕事がものすごくできて、真面目。逆に言うと、日本では企業の中で出世できる女性のバリエーションがまだ圧倒的に少ないということだと思います。ですから、現状はものすごく狭い「○○せねばならない」という役割意識にハマろうとし過ぎて苦しい思いをしている方もいると思います。そして、後輩の女性たちも「あそこまではできない」と思ってしまっているのです。

森:企業のグローバル化の波に乗ってどんどん活躍していく女性マネジャーもいれば、例えば“肝っ玉母さん”的な商店街のおかみさんタイプのマネジャーがいてもいい。むしろ、さまざまなタイプの女性マネジャーがいても良いかもしれませんね。

武藤:そういえばある企業の研修に参加された看護師さんが、他の一般職の女性受講者たちの信望をあっという間に集めてしまったことがありました。いったい何が違うのかと思ったら、ミッションなんです。看護師さんたちは「自分が何のために仕事をしているか」がすごく明確で、迷いがない。だから、優先順位を決める時でも仕事は最も大事な第1領域(※1)、子どもの運動着を買いに行くのは少し優先順位を下げて第3領域(※2)、とパッパッパッと決めていく。仕事でもプライベートでも、ビジョンが明確で目的を持って生きている人は魅力的ですよね。ですから、そういう女性のリーダーたちがもっとたくさん増えてくるといいなと思います。


(注釈)※1、※2・・・『7つの習慣』『ビジョナリー・ウーマン』などフランクリン・コヴィー・ジャパンの研修プログラムで紹介している考え方。活動領域を重要度と緊急度に分けたマトリックスで「緊急かつ重要な領域=第1領域」「緊急だが重要でない領域=第3領域」を指す。

「ありたい姿」をベースに主体性を引き出す

森:ところで、武藤さんご自身もこれまでキャリアウーマンとして仕事をしながら結婚・出産・育児・介護とすべてご経験されてきましたが、ご自身の人生を振り返って、どうしてそんなにたくさんのことをこなしてこられたと思いますか?

武藤:人生って、いつも何か「ドキドキハラハラ」することが起こりますよね。すごくシンプルな言葉で表現すると、それをなんとか「ドキドキわくわく」に変えたい、と思って生きてきたような気がします。というのも、私は「ドキドキハラハラ」してしまうのは、外部環境によって自分自身が振り回されているからだと考えているんです。それを「ドキドキわくわく」に変えていくのは、ほかでもない自分自身なんです。まさに、インサイドアウト(※3)の発想ですよね。

(注釈) ※3・・・例えば組織改革において、組織構造や業務プロセスといった仕組みやハード面からの変革ではなく、組織の構成員である個人から始まる変革を「インサイドアウト」と呼んでいます。

森:それって、とても重要なヒントだと思います。どんなに制度を整えて、周囲の意識を変えていっても、自分自身の意識が他者依存のままだと何も変わらない。「自分はこうしたい」という主体性がないと、事態は何も好転していかないわけですから。

武藤:実は、『ビジョナリー・ウーマン』が目指しているのもそこなんです。つまり、「自分らしい自分で生きること」。こんなに変化の激しい時代に「自分らしく生きるなんて無理だ」と思われる方も多いんですけれど、私はむしろ、こんな時代だからこそ「あるべき姿」に囚われず、「ありたい姿」を大事にした方がいいと思っています。「自分らしさとは何か」が見えてくると、それを軸にすべてを選択することができますし、「やらされ感」が「やっている感」に変わってきて、ものすごく元気になります。

森:武藤さんは「ワークライフバランス」ではなく「ワークライフハーモニー」が大事だということもおっしゃっていましたね。

武藤:これはある銀行の方に聞いた話です。ワークライフバランスと聞くとどうしても、「仕事もそこそこ、家庭もそこそこ」と思ってしまうが、そうじゃないでしょう、と。むしろ、その時々でどちらに軸足を置くかを自分で選択しながら生きていく「ワークライフハーモニー」が大事じゃないか、というお話です。この軸足を決める際に必要不可欠なのが、先ほどから話に出ている人生の目的を持つことであり、自分で選択しながら主体的に生きるということだと思うんです。

森:『ビジョナリー・ウーマン』はまさにそのマインドをつくっていくものだと思います。主体的に自分の人生を選択していく女性が増え、その能力を尊重して生かす風土をつくれれば、女性たちはおのずと活躍していく。ダイバーシティにも通じる考え方だと思いますね。

武藤:女性活躍支援で難しいのは、本当に企業で活躍したいと思っている女性は、あまり「支援されたい」とは思っていないことなんです。余裕がないと思われたくない、と発言する女性もいます。その意味でも、企業の方々には是非、女性をひとくくりに捉えるのではなく、一人ひとりの持つ個性や生き方の多様性を認め、力を引き出し、共により自分らしく、相互協力しながら組織の力に変えていく、という発想で臨んでいただきたいですね。

プロフィール

武藤 たか江プロフィール
大学卒業後、チェース・マンハッタン銀行にて人事全般を担当後、1988年、人事部スーパーバイザーとしてサン・マイクロシステムズの日本における立ち上げに携わる。主に採用・研修を担当し、企画・プログラム作成・講師を自ら務め、社内教育体系を確立する。
1996年、人事コンサルタントとして独立し、さまざまな業種の企業において、新入社員から経営層まで幅広く人材開発に従事する。
その一方で、2006年よりフランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社ファシリテーターとして主に『7つの習慣』をはじめとするリーダーシップトレーニングや女性活躍支援プログラムに携わる。
また、大学講師として、次世代の人材育成にも力を注いでいる。

森 良枝プロフィール
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 1992年 株式会社新東京リクルート企画在籍時に『7つの習慣』に出会い、 日本での『7つの習慣』トレーニング・プログラムの事業化や書籍『7つの習慣−成功には原則があった』(キングベアー出版)発刊に初期より携わる。
現在は株式会社リクルートマネジメントソリューションズにおいて女性活躍支援テーマや、『7つの習慣』を始めとするフランクリン・コヴィープログラムに従事。多くの民間企業や非営利団体の人材育成支援に携わる。
"個人が元気になれば組織も元気になる"を信条に受講者一人ひとりの継続的な実践支援にも力を入れている。
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