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評価する側とされる側が主体的に関わる

上司任せの限界 〜評価制度の新しい潮流〜

  • 公開日:2006/11/01
  • 更新日:2024/03/25
上司任せの限界 〜評価制度の新しい潮流〜
評価する側とされる側が主体的に関わることで、人事制度は真価を発揮する。
「目標って、自分で立てていいんだ。評価って、自分でしていいんだ」

評価する側とされる側が主体的に関わることで、人事制度は真価を発揮する。

【 広瀬 】 トレーナーの立場から見て、被評価者研修が有効だと思われるのはどういうところでしょう。

【 津坂 】 大きく2つあると思いますね。1つは会社として組織としての土俵を整えられるということです。

【 広瀬 】 土俵というのは?

【 津坂 】 自分たちの会社がどういうビジョンの実現を目指して、どういう戦略やルールで戦っているのか。これらは管理職だけではなく、メンバーも理解しておかなくてはならないことです。被評価者研修を行うことによって、このこと、すなわち組織全体の意識の統一を図ることができるという意味です。

【 広瀬 】 なるほど。評価者研修を行ったすべての管理職が、職場に帰ってきちんと伝えられるわけではないですからね。

【 津坂 】 2つめは、MBOやコンピテンシー評価に代表されるような最近の制度が、一人ひとりの成果や成長に直結するものになってきているということです。メンバーもそのことをきちんと理解しておくべきですし、またそうすることで会社の利益、組織貢献にもつながっていきます。

【 広瀬 】 成果主義の時代になって、評価制度そのものの持つ意味合いが以前とは違ってきています。

【 津坂 】 かつての評価制度というのは基本的に結果論でした。目標を設定するのは処遇のためとか、結果のための道具として使われていました。今は結果のためにではなく、目的志向なんですよ。

【 広瀬 】 目的志向という捉え方には大賛成ですね。評価者研修も、評価制度という会社が勝手に決めた仕組みに従うために行うのではなく、部下の育成、業績向上に活かせるものであるということを理解してもらうことを大切にしています。被評価者研修も全く同じで、上司から一方的に押し付けられるものでも、賃金を決めるためだけのものでもなく、自分自身の成長であったり、仕事をきちんと回していくために有効であることを理解してもらうためにあるのです。

【 津坂 】 成果主義人事における評価制度とは、本来そういうものですよね。人事制度が企業の戦略の軸の1つになっている中で、その部分が見過ごされがちなのは非常にもったいない話です。評価制度を目的のために活用し、一人ひとりが戦略的に動いていく。今の時代はそういうふうにしていかないと企業の中で生きていけないでしょう。評価というものに主体的に関わることがいい意味で自己防衛でもあり、自分を高めていくことになると思いますね。

「目標って、自分で立てていいんだ。評価って、自分でしていいんだ」

【 広瀬 】 評価する側とされる側の双方が主体的にマネジメントサイクルを回して、組織を動かしていく。これは理想の形に思えますが、受講者である被評価者(メンバー)の中には戸惑いもあります。「目標は上司が立ててくれるもの」「評価は上司にされるもの」という他責的な思考に慣れていますから・・・。

【 津坂 】 まだまだ実態はそうですね。被評価者の皆さんにインタービューをして、「新しい制度についてどう受け止めましたか? 何がどう変わると思いましたか?」とお聞きすると、「手続きが変わったんじゃないですか」という方が多い。ルールが変わったことで、仕事はどう変わるのか、新しい制度は自分の成長にどういった変化を与えるものなのか。そんなお話をすると、「え、制度と仕事や成長って関係あるんですか?」というリアクションをされる方がほとんどです。制度そのものの影響力が認識できていないんですね。皆さん第一線で頑張っている人たちなのですから、会社を支えるという視点で見ると非常に残念です。

【 広瀬 】 その意識を変えていくことが被評価者研修には求められます。

【 津坂 】 重要なポイントの1つでしょうね。例えば、目標設定にしても「やりたいという思い」だけあれば決められるわけではありません。まずきちんとした仕事の振り返りが必要です。何ができて、何ができそうで、何ができなかったのか。自分の持ち味を考えてみることも必要でしょう。自分のこだわりは何で、他の人に負けない部分はどこか。自分への期待を捉えることも必要です。それも上司だけではなく、お客様、関連部署といったいろいろな視点からの期待を考えていかなければならない。「仕事の振り返り」「自分の持ち味」「期待」、これら3つの要素を整理してはじめて、目標は上司に立ててもらうものではなく、自分で立てられるものであることを理解できる。今はいずれかに偏っている企業が多いのではないでしょうか。単純なフレームでは多様化するマネジメントニーズに対応できないと思いますね。

【 広瀬 】 弊社は現在、コンサルタントとトレーナーが協力しながら、さまざまなケースでの被評価者研修のトライアルを重ねていますが、企業の皆さんからは私たちの予想をはるかに超える反響をいただいています。

【 津坂 】 評価者研修だけで評価制度を回していくことに手詰まり感を感じていた企業が、非常に多かったのではないでしょうか。受講後のアンケートもなかなか興味深いものがあります。

【 広瀬 】 「評価する側の苦労がよくわかりました」という感想は多いですね。

【 津坂 】 評価者、被評価者それぞれの立場になってロールプレイングを行うプログラムがあるのですが、自分が評価する立場になると、「精一杯がんばりました」という面談での話だけでは、上司も評価できないことがよくわかるからでしょうね。

【 広瀬 】 「自分で自分の仕事を考えることって大切だと思った」「マネジャーが完璧な評価をし、目標設定するものだと思っていましたが、自分もしっかりと事実や思いを伝え、目標設定の材料を集めないといけないと思った」「目標って、自分で設定していいんですね」「評価って、人事制度って、面談の意味って、こういうことだったんですね!」いやー、嬉しいですね。中には、研修が終わってすぐに「目標について、早く上司と話をしたい」と言って、ほんとに会いに行った方もいらっしゃいましたからね。商品化へ向けて、私たちも大きな手ごたえを感じています。

【 津坂 】 成果主義人事や評価制度の真意を本当に理解し、会社、あるいは個人の主体性を本気で引き出したいと考えている企業にとっては、被評価者研修は非常に興味あるテーマだと思います。私たちもぜひそうした企業の力になっていきたいですね。

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