仕事過多、情報過多に悩まされるマネジャーたち マネジャー受難の時代こそ他流試合でマネジメントの基本を

執筆者情報
人材開発トレーナー
中村 敬

仕事過多、情報過多に悩まされるマネジャーたち

私はある大手企業で中堅社員を対象にした研修を毎年担当しています。研修内容として「上司の補佐」という項目があり、これには「確定情報だけでなく、曖昧な情報も上司にあげる必要がある。その際、曖昧なものは曖昧なまま報告しなければならない」という原則があります。受講者に聞くと、実際の職場ではあまり守られていない“原則“なのですが、興味深いことに、受講者が答える「守られない理由」が6、7年前と今では、まるで違ってきています。以前の答えは「曖昧な情報を上司にあげると、“もっと調べてくれ”という指示が来て、ただでさえ忙しい自分の仕事が増えてしまうから」でしたが、現在はこうです。「情報が多すぎて処理できず、上司が混乱してしまうから」。こうした状況が表すように、確かに今は上司やマネジャー受難の時代なのでしょう。

理由は簡単に想像がつくはずです。業績圧力が強まり、単純に一人当たりの仕事の負荷が増大しました。人減らしで組織の年齢構成もいびつになり、プレイヤーを兼務させられるマネジャーも増えています。一方で、年功序列制度の崩壊により、年上の部下ができたり、パートや派遣など正社員以外の人たちが増えたり、マネジメントも一筋縄ではいかなくなっています。職場環境も変わりました。メールやパソコンの普及で生身の人間同士の対話が激減、“飲みニケーション”の場もぐっと減りました。その結果、笑えない話ですが、各職場で、上下関係を超えた最も濃密なコミュニケーションの場となっているのが喫煙スペースになっているようです。

航海に際して、海図の読み方、コンパスの使い方を伝授

マネジャー向け研修でも、自信満々で、講師の言葉に堂々と反論してくる人が昔はいたのですが、今はほとんどいなくなりました。以前と違って、マネジャーとしての成功体験や実感をもちにくくなっていると感じます。自己流、自社流の今のやり方でいいのかなあ、と迷っている人が多いのではないでしょうか。

私たちが提供している、マネジメントの原理原則を公開研修という形で学んでいただくMBC(Management Basic Course)というプログラムがあります。マネジメントを航海にたとえれば、今は悪天候で海が大荒れという状態です。しかし、いくら波が荒くても、航海の基本は昔から変わりません。そこで、航海に際しての“海図の読み方”、“コンパスの使い方”といった基本中の基本を扱うのがこの研修なのです。ここでは、マネジメントを「職場の目標達成のために、ヒト、モノ、カネを上手にやり繰りすること」と定義します。ところが、「モノ」「カネ」を扱うのも結局「ヒト」に他なりません。マネジメントの本質はつまり、「ヒト(この場合は部下)を通じて成果を上げること」なのです。
忘れてはいけないのは、たとえ新任マネジャーであっても、マネジメントという航海の素人ではありません。彼らがこれまで経験してきた家庭や学校生活においても、「目標達成のために、ヒト、モノ、カネをやり繰りする」点は同じなのですから。

グループワークを重視、他社の話で視野が広がる

この研修ではグループ討議を最も重視し、耳から知識を入れるだけの座学の時間はほとんどありません。「ヒトを通じて成果を上げる」術を身につけるには、個々のケースに基づき、自分で考えるしかないからです。そこでは「マネジャーの役割」「部下への権限委譲の実際」「仕事を通じた部下育成の心構え」といったテーマを、グループで話し合ってもらいます。あらかじめ用意した答えを講師が教えるのではなく、自分の経験や考えをもとに、受講者同士が本音の議論を繰り広げます。

公開研修のメリットは、さまざまな業界の、さまざまな会社の人たちと話ができることです。普段は接する機会がない人たちと3日間、それぞれの経験に基づいた本音の話を互いにすることで、「どこの社のマネジャーも同じような悩みを抱えているんだ」と安心したり、「そんなやり方があったんだ」と思わぬヒントが見つかったりもします。受講した結果、これまで気づかなかった自分の組織の長所や短所がわかったり、「A君にはもっと期待して仕事を任せていいんだ」と部下に対する見方を一新させたりする人も多いようです。

昨今、これ1冊でマネジメントは万全とでも言いたげな本がたくさん書店に並んでいますが、マネジメントに特効薬はないのです。この公開講座で学んでも、肝心の船はモーターボートがもらえるわけではありません。手漕ぎボートか、せいぜい風の力で動く帆船といえるでしょう。

「講師は風車であれ」

風といえば、研修の講師を担当する際、私はいつも自分が「風車」でありたいと願っています。できるだけフラットに、力を抜いた自然体で受講者に向き合いたいと考えています。風車は「風」を受けなければ回ることができません。この場合の風とは、受講者一人ひとりの言葉であり、表情であり、仕草であり、さらにいえば、その場全体の雰囲気でもあります。受講者と私はいつもシンクロしていたい。こちらから一方的に知識や情報を押し付けるのではなく、受講者の思いや自発的な行動を察知して、私の思考が巡りだし、言葉を発するようでありたい。私の言葉、あるいは他の受講者の言葉によって、自ら気づきを得てもらえたら最高です。

私も全身の力を抜いて受講者の前に立ちます。どんな「風」に出会えるか、いつも楽しみにして研修に出かけます。風車は回るだけの存在ではありません。それによってエネルギーを蓄えるのです。「私という風車」が風を受けて勢いよく回り、エネルギーを蓄える。蓄えられたエネルギーはいつしかほとばしり、受講者に伝播し、更に大きなエネルギーを生み出す。そうありたいものです。
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