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連載・コラム

シリーズ『人事のチカラ』vol.4

ハーブティーから広がった顧客期待

  • 公開日:2010/02/08
  • 更新日:2024/03/25
ハーブティーから広がった顧客期待

今私達のまわりには、さまざまなBtoCサービス(お店)が溢れています。
スーパーマーケット・コンビニエンスストア・薬局・書店と、あげればキリがありません。

このようにたくさんのサービス(お店)がある中で、みなさんは何を基準にお店を選ばれますか?

「○○という商品が好き」「会社に行く途中にあるから」など、基準も人それぞれだと思いますし、「そんなことは特に考えたことがない」という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、「あのお店にはあの店員さんがいるから」「あのお店のサービスがいい」という理由でお店を選んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このように、サービス(お店)のどこに価値を感じるかは人それぞれだと思います。
では、誰にどのようなサービスを提供し続ければ、長く愛され、リピート顧客を獲得し続ける店舗となるのか・・・。今回は、私の体験談を元に、そのヒントを見つけ出してみたいと思います。

最高のホテルサービス
「最高のサービス」は、続けられるか?
「当たり前」の土台作り

最高のホテルサービス

ここで、あるホテルのサービスで私が感じた価値をご紹介します。

ある離島のホテルに宿泊した時、私は非常に行き届いたサービスを受けました。
フェリーを使って移動したのですが、フェリー降り場へ着くとホテルの方が出迎えてくれて、ホテルへ着くとハーブの小瓶をプレゼントしてくれました。
そして、部屋では良い香りのお香がたかれており、テラスで私が仕事をしている時もさりげないタイミングでハーブティーを出してくれました。さらに、後から気付いたのですが、毎回出してくれるお茶の種類が違っていました。
また、私が備え付けの灰皿で煙草を吸っていると、それをどこかで見ていたのだと思いますが、次回からはお茶と一緒に、新しい灰皿も持ってきてくれるようになりました。
従業員も常に笑顔で応対してくれるだけでなく、ある従業員に話した私の予定を別の従業員も知っており、その予定について話しかけてくれるのです。

私は「何で知っているんだろう?」と疑問に思い、尋ねてみました。
すると、従業員間で「お客様ノート」というものをつけているのだと教えてくれました。
内容は「このお客様には○○というお茶を出しました」とか「●●様はこれから▲▲に行かれるそうです」といったような、いわゆる連絡帳のようなものです。
お客様の見えないところで従業員同士がこのようなことを行い、常にお客様が期待することを先読みして動いていたのです。

このほかに、食事もおいしいだけでなく、私が好きだと言ったものをちょっと多めにしてくれたり、バーで飲んでいても従業員がその土地の話や自分自身のことを楽しく話してくれたりと、さり気ないサービスが非常に心地よいホテルでした。
あまりにも気に入った私は、宿泊を1泊延ばし、大満足で帰ることができました。

帰った後も、私は会社の同僚や友人にこのホテルを紹介しました。
私が味わったサービス価値を、ぜひ皆にも体感してほしかったからです。そして、私自身も、近いうちにまた行こうと心に決めていました。

2ヵ月ほど経って、早速2回目の宿泊をすることにしました。
私は旅行することよりも、ホテルでの宿泊を楽しみにしてその島に向かいました。

しかし、ホテルに到着すると、前回のようなさり気ないサービスがないのです。
確かにお茶は出してくれます。話しかけてもくれます。でも何かが違うのです。
前回ほどの良いタイミングではサービスが行われていないのです。
よく観察してみると、従業員はほかの初めて宿泊されるお客様へのサービスに追われて、リピーターである私にまで手が回っていなかったのです。

確かにサービスはしてくれています。恐らくほかのホテル以上のサービスレベルだったと思います。
しかし、私は満足感を感じることができませんでした。
それはなぜだったのでしょうか。

「最高のサービス」は、続けられるか?

恐らく、私は無意識のうちに1回目以上のサービスを期待してしまっていたのです。
1回目は、あんなに驚き、感動したサービスの数々が、2回目は私にとって「当たり前」のサービスになってしまっていたのです。

読者のみなさんもこのように感じた経験はないでしょうか?
では、なぜこのように感じてしまったのでしょうか。

まず、1回目と2回目のサービスの違いで考えてみましょう。
1回目の滞在時は何もかもが新鮮で、素晴らしいサービス=私にとっての価値と受け取ります。
そこで私は「このサービスは当然次もやってもらえるんだ」と思い、知らず知らずのうちにその価値を基準に置いてしまうのです。
そして、2回目以降は、一度置いた基準でホテルのサービスを見てしまいます。1回目以上のサービスだと感じれば、「また行こう!」と思い、1回目より劣るサービスであればがっかりし、「ほかのホテルへ行こう」と判断してしまうのです。

現に私もこのホテルに「また行こう!」と思わなくなりましたし、友人に紹介もしなくなりました。
このホテルは初回のお客様へのサービスに注力することで、リピートのお客様を確保したかったのでしょうが、せっかくリピートで2回目に利用いただけても、そのサービスレベルが3回目・4回目と安定的に続かなければ全く意味がありません。

つまり、初回のサービスレベルをしっかり守った上で、それを超え続けないとお客様を満足させることはできないのです。

「当たり前」の土台作り

ではそのような期待を持つお客様に、サービス提供側はどう対応すればよいのでしょうか。

ポイントは、繰り返しになりますが、一度最高のサービスをお客様に提供すると、2回目がそれより劣るだけで、たとえ一般的には高いサービスレベルだったとしても、お客様は満足してくれないということです。

最高のサービスを提供できることは大変素晴らしいことです。
しかし、それが常に確実に再現できないサービスでは意味がなくなってしまいます。
例えば、1人素晴しいおもてなしができる社員がいても、他の社員が常に再現し続けられないと、リピーターによいサービスを継続できず、全体としてお客様の満足度を下げてしまいかねないのです。
つまり、まずは社員が誰でも「再現できる」サービスを、安定的に提供し続けることが何よりもまず重要です。

そこで、サービス提供責任者が大切にしたいことは、個人の能力・才能任せにしたり、店舗の繁閑に左右されることなく、組織として従業員であれば、誰でもいつでも対応できる「当たり前」のサービスレベルを設定し、それを従業員一人ひとりに徹底することです。
それが、「再現できる」サービスの提供につながります。

では、この、「当たり前」サービスをどのようなレベルに設定するのがよいのでしょうか。
全員がいつでも体現でき、かつ、お客様が満足する、絶妙なレベルに設定することがキーになります。そしてそれは、各店舗にとってのお客様、各店舗の状況、組織などによって異なります。
弊社がお手伝いさせていただく際、まず各店舗にとっての「当たり前」レベルの土台を作ることからはじめています。

世の中では同業他社が、様々なサービスを展開しています。個人のサービス力で対応していては、とても太刀打ちできません。
組織として、どのターゲットのお客様に、どのようなサービスを提供するのか。そのサービスは「当たり前」レベルとして再現できるサービスレベルなのかを、今一度振り返ってみるのはいかがでしょうか。

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