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人も企業もクレッシェンドに生きるために

全世界2000万部のベストセラー『7つの習慣』著者 スティーブン・R・コヴィー博士来日特別インタビュー

  • 公開日:2011/08/08
  • 更新日:2024/05/07
全世界2000万部のベストセラー『7つの習慣』著者 スティーブン・R・コヴィー博士来日特別インタビュー

全世界2000万部、国内でも140万部のベストセラーとなっている書籍『7つの習慣』の著者であり、英・『エコノミスト』誌より「世界で最も大きな影響力を有する経営コンサルタント」と評されたスティーブン・R・コヴィー博士が、このたび3度目となる来日を果たしました。今回、日本で初めて開催された「7つの習慣」企業向けセミナーの立ち上げに関わり、また現在も人事・研修担当者と接し、企業の人事課題に携わっている弊社森良枝との対談が実現しました。

プロフィール
個人と組織を成功に導く4つの側面
新時代のリーダーシップの鍵となるのはボイス
人生をクレッシェンドに生きる
試される日本―この苦難をどう乗り越えるか
対談を終えて

プロフィール

スティーブン・R・コヴィー
世界38カ国に拠点を持つフランクリン・コヴィー・グループの創設者であり、執筆者、講演者、教師、コンサルタント、テレビ・ラジオのコメンテーターなど多彩な顔を持つスティーブン・R・コヴィー博士は、国際的に高い評価を受けるリーダーシップ研究の第一人者でもある。
25年間に渡り、リーダーシップの原則とマネジメント・スキルについて、ビジネスはもとより、政府や教育の現場を通して指導。
博士の提唱する原則中心のリーダーシップは、フォーチュン誌の選ぶ500社中350社以上を含めた何千もの組織に採用されている。また、彼の著作である『7つの習慣』原題『The 7 Habits of Highly Effective People』は数十カ国に翻訳され、世界20カ国で2,000万部のミリオンセラーを記録した。コヴィー博士はハーバード大学MBA、ブリガムヤング大学で博士号を取得している。

プロフィール

森 良枝
1992年 株式会社新東京リクルート企画在籍時に「7つの習慣」に出会い、日本での「7つの習慣」トレーニング・プログラムの事業化や書籍『7つの習慣-成功には原則があった』(キングベアー出版)発刊に初期より携わる。
現在は株式会社リクルートマネジメントソリューションズにおいて「7つの習慣」を始めとするフランクリン・コヴィープログラムに従事。多くの民間企業や非営利団体の人材育成支援に携わる。”個人が元気になれば組織も元気になる”を信条に受講者一人ひとりの継続的な実践支援にも力を入れている。

個人と組織を成功に導く4つの側面

森:森良枝
コヴィー博士:スティーブン・R・コヴィー博士

森:早いもので、私が「7つの習慣」に出会ってからはや18年の歳月が流れました。その間、多くの方から「『7つの習慣』の内容を一言で言うと何ですか」という質問を受けましたが、決まって私は「まずは自分自身を大切にし、その先に相手を大切にすることを教えてくれる、そういう素晴らしい考え方を分かりやすく示してくれるものです」と答えてきました。コヴィーさんだったら、同じ質問にどう答えますか。

個人と組織を成功に導く4つの側面

コヴィー博士:「自分自身の内面を変えることからすべてが始まるというインサイド・アウトの考え方を説くものだ」と答えます。私的な成功があって、はじめて公的な成功が実現するというわけです。

森:しかも、「7つの習慣」が素晴らしいのは、それが個人の成功だけでなく、組織の成功にも結びつくところですね。

コヴィー博士:はい。この考え方をとり入れ、それを組織の文化にまで高めることができた全ての企業は持続的な成功を手に入れることができるといえます。

森:今の日本企業はグローバル化という大きな課題に直面し、各社とも、グローバルで活躍できる人材の育成に力を注いでいます。そういう課題に鋭意、取り組んでいる育成担当者にメッセージをお願いいたします。

コヴィー博士:人間には、精神、知性、肉体、情緒という4つの側面があります。リーダーにせよ、育成担当者にせよ、部下やメンバーを育てようとするならば、この4つにうまく働きかけなければなりません。つまり、全人格的に個人を捉え、4つのニーズそれぞれを満たす必要があるのです。それにはグローバルとか、非グローバルといったことはあまり関係ありません。(図1)

森:4つの側面について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

コヴィー博士:最初に配慮すべきは「精神」で、リーダーは何よりメンバーから信頼される必要があります。次は「知性」に働きかける。つまり向かうべき正しい方向を示し、自分たちが働く意義を見出してあげるのです。それができたら、業務プロセスや意思決定の仕組みといったシステムを創造する必要があります。これが整備されるとメンバーは仕事がやりやすくなる。つまり、「肉体」に働きかけることになります。最後が「情緒」です。メンバーの力と情熱を解き放つエンパワーメント(権限委譲)を行うことが必要になります。

新時代のリーダーシップの鍵となるのはボイス

森:その通りだと思いますが、それをうまくやるのは至難の技です。

コヴィー博士:そうかもしれませんね。鍵となるのがボイス(内面の声)です。それは「自分のありたい姿」であり、才能、情熱、ニーズ、良心の4つが重なる中心にあります。(図2)

リーダーや人材育成担当者は自分のボイスは何かを真剣に考えながら、一方で部下やメンバーが自らのボイスを発見することができるよう、支援しなければならないのです。

森:「サーバント(奉仕型)・リーダーシップ」という言葉がありますが、同じような意味でしょうか。

コヴィー博士:その通りです。それぞれのメンバーが、自分のボイスは何かを見極めることができれば、特定の上司にだけいいところを見せようという考えを捨て、組織全体、企業全体に貢献したいと心の底から考えるようになります。
世界は狩猟採集社会、農耕社会、そして産業社会を経て、今は知識社会となっています。産業社会は決められたことを効率的にこなせば高い成果を出すことができました。そのために必要なのが上からの監視や管理でした。知識社会になると創造性や独創性が尊ばれるようになり、働く人自身のモチベーションが非常に大切になりました。監視や管理が不要になったのです。リーダーシップの定義が監視や管理を行うことではなく、メンバーを動機づけ、潜在能力を十全に発揮させることに変わったのです。

森:そうしたリーダーシップの定義が変わったことに関して、日本企業の認識はまだ低いのかもしれません。最近の日本企業ではダイバーシティも大きなテーマの一つです。また、組織における女性活躍にも取り組んでいます。これに関しても「7つの習慣」が大きな示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

コヴィー博士:おっしゃる通りです。リーダーには、部下を筆頭とし、さまざまな関係者に対する情緒面の気配りが不可欠です。そういう意味では、女性がリーダーとしても十分に活躍できる場があると私は思います。

森:その言葉は、私をはじめ、女性たちに勇気を与えてくれます。

コヴィー博士:人間にはそれぞれ強みがありますが、「7つの習慣」は、それぞれの強みにフォーカスし、その相乗効果の実現をもたらす考え方です。ソプラノ、アルト、テノール、バスの絶妙なバランスで構成される素晴らしい合唱団のように。さらに言えば、「7つの習慣」は、そうした強みを発揮させるだけではなく、弱みを補完させる考え方でもあるのです。

図1:全人格的に個人をとらえる4つの側面

人生をクレッシェンドに生きる

森:ワークライフバランスに関しても「7つの習慣」は素晴らしい考え方を与えてくれます。

コヴィー博士:はい。人生には長期的な計画が必須です。自分にとっての優先事項を明確にして、最も重要なことを最優先させるべきです。ワークライフバランスをうまく保つには優先事項の中に家族との生活も入れておき、家族のミッション・ステートメントをつくって、みんなで共有することです。私には9人の子ども、52人の孫、5人のひ孫がいて、さらに2人のひ孫がもうすぐ産まれます。

森:それはお幸せですね。

人生をクレッシェンドに生きる

コヴィー博士:はい。私は今「人生をクレッシェンドに生きる」というテーマで本を執筆しています。年を取っても可能性が広がっていく、末広がりの人生を送りましょう、という意味が込められています。

森:すてきな言葉ですね。

コヴィー博士:クレッシェンドの人生を生きるのに大切なのは、先ほども述べたように、自らのボイスに耳を傾けることです。自分のボイスが分からないという人に対しては、「小さい頃に大好きだったこと、得意だったことは何だったか、もう一度考えてみてください」という助言が効果的です。

森:人間にとって本当に大切なものは幼少期に既に形成されているのですね。私は「7つの習慣」で目指す最終ゴールは第六の習慣、つまり、他者との相乗効果を発揮することだと思うのですが、いかがでしょうか。

コヴィー博士:その通りです。そのためには、相手を理解してはじめて自分が理解されるという第五の習慣を身につけることが大前提ですが、私は時々、これで苦しめられます。うまく感情移入しながら、人の話を傾聴することが難しい場合があるのです。

森:コヴィーさんほどの方がそうだとは驚きです。

コヴィー博士:それを身につけないと、お互いがいつまで経っても分かり合えません。そういう場合、一人がA、もう一方がBの案を出した場合、結局、どっちつかずの妥協案に落ち着いてしまう。ところが、第五の習慣を身につけた二人の場合、最初はA,Bという水と油のような案だったとしても、対話を繰り返すうち、そのどちらでもない、しかも完成度の高いC案が出てくるのです。

森:それは第一の習慣である「主体性を発揮する」にも通じるわけですね。

コヴィー博士:その通りです。アメリカに約50店舗を展開するスーパーマーケットのチェーンがあります。ここが「7つの習慣」を取り入れ、経営陣が従業員一人ひとりを大切にし、彼らの主体性を最大限に尊重するエンパワーメントを行った。そうしたら、従業員たちが自分たちのお客様が何を欲しているかを真剣に考え、仕事をするようになり、その結果、ナンバーワン・チェーンの座を獲得することができました。鍵となったのは、自分たちはお客様に食品を販売しているのではない、かけがえのない食事を提供しているのだ、という意識の転換だったそうです。

森:いいお話ですね。その基礎にあったのは従業員同士の信頼関係だったといえそうですね。

試される日本―この苦難をどう乗り越えるか

森:3/11の東日本大震災は人と人との信頼関係の大切さを改めて実感した出来事でした。

コヴィー博士:私もニュースを見て驚きました。地震のみならず、大津波、それに原発の事故が立て続けに起こり、お悔やみの言葉を申し上げようがありません。ただ一つ確実なことは、私の心はいつも日本の皆様とともにあるということです。

森:「日本の皆様へ」と題された、コヴィーさんの日本に向けてのメッセージがインターネット上にアップされましたが、私も拝見し、非常に勇気づけられました。先日、被災地の東北で「7つの習慣」のセミナーを行った際、参加者の皆さんを同じく勇気づけたくて、会場でそのメッセージを流させていただきました。

試される日本―この苦難をどう乗り越えるか

コヴィー博士:今回、私は日本人がもっている、素晴らしい相互依存(相互協力)の考え方や行動に目を見張らされました。大切なのは、何が起こったか、ではありません。起こった出来事に対して、どう受け止めて行動したか、ということなのです。われわれ人間は、出来事と反応の間で、無限の選択肢を取り得るという特権をもっています。日本の皆様がこの苦難を乗り越えることが、より素晴らしい社会をつくるきっかけになることを私は確信しています。

対談を終えて

私を支えそして成長させてくれた大切な宝物、それが「7つの習慣」です。この度「7つの習慣」の生みの親であるコヴィー博士と、じっくりお話しする機会に恵まれました。
コヴィー博士の誠実さを物語っている澄んだ瞳に吸い込まれそうになり、お話しされる一言ひとことは私の心に沁み、穏やかな時と空間を過ごすことができました。 読者の皆さん、「7つの習慣」の米国の父と、日本の母(※)の対談はいかがでしたでしょうか? 皆さんのお仕事やプライベートにおいて‘より良く生きるための小さなヒント’をつかんでいただけたら幸いです。
※昨年、ある週刊誌で「7つの習慣の母」として紹介される。

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