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おとなならではの学び方

「新年の抱負」を実現する2つの秘訣とは?

  • 公開日:2015/01/05
  • 更新日:2024/03/26
「新年の抱負」を実現する2つの秘訣とは?

あけましておめでとうございます。
新年を迎え、皆様はどのような抱負をお持ちになりましたか? 「今年こそ、○○を学ぼう/身につけよう/できるようになろう」と心に誓った方も多いのではないでしょうか?
今回のコラムでは、新年の抱負の実現を支援するべく、おとな(社会人)ならではの学び方についてご紹介します。

多くの社会人は新しいことを学ぼうとしている
「おとなの学び」は簡単ではない
「おとなならではの学び」とは?
あなたが新年の抱負を実現するために……

多くの社会人は新しいことを学ぼうとしている

「世界の変化のスピードがこれだけ速くなると、学ぶということをもう一度根本から考え直すことが必要。学ぶべきは、『何を学ぶか』ではなく、『どうやって学ぶか』なのです」

MITメディアラボ・所長の伊藤穰一氏の言葉だ。

実際に、変化の激しさを表すものとして、VUCAという言葉が使われるようになっている。VUCAとは、次の英単語の頭文字をとったものだ。

多くの社会人は新しいことを学ぼうとしている

 ・Volatility(変動性)
 ・Uncertainty(不確実性)
 ・Complexity(複雑性)
 ・Ambiguity(曖昧性)

VUCAの現代では、「新しいことを学び続けること」が社会人には欠かせない行動の1つになってきているのかもしれない……。

 1位:仕事や職種に固有な専門性の高い知識・スキル・能力(40.0%)
 2位:仕事や職種によらない共通性の高い知識・スキル・能力(36.1%) 
 3位:資格(8.8%)
 4位:語学(4.7%)
 5位:ITリテラシー(5.1%)

これは、弊社が社会人を対象に実施した調査(2012年、Webアンケート、回答者4,919名)での「この1年間に新たに学んだこと(仕事関連)」のランキングの上位5つだ。

1位は、自らの業務のパフォーマンスを高めるために必要なものだ。例えば、「接客サービス」「プログラミング力」「コンプライアンス知識」などが挙げられた。一方、2位は、どのような職種であっても求められることの多い汎用的なものだといえる。例えば「部下指導力」「プロジェクトマネジメント力」「交渉力」などだ。

そして、同じ調査では、約9割の人が「自分は今後のキャリアのために何か行動をしなければならない」と感じていることも分かった。

「おとなの学び」は簡単ではない

さて、皆様の掲げた新年の抱負は、その後、順調に実現しつつあるだろうか?

恥ずかしながら私は、これまでに何か新しいことを学ぼうとし始めたもののうち、曲がりなりにも学び切れたものは半分もないと断言できる。

前述の調査では、「新たなことを学ぼうとしたが、うまく学べなかった理由は何ですか?(複数回答可)」と尋ねたところ、上位5つは次のようになった。

「おとなの学び」は簡単ではない

 1位:時間をとれなかった(40.5%)
 2位:自分には向いていなかった(18.2%)
 3位:具体的にどうやって身につければよいのかが明確でなかった(16.4%)
 4位:楽しみながら取り組めなかった(13.8%)
 5位:取り組みやすい環境を整えられなかった(13.1%)

2位を除くと、学び方を改善すれば学び続けられた可能性がある理由が挙げられており、もったいない結果である。こどもと違っておとなは、学びへの意欲が高くても、学べない理由を捻出できる「言い訳の達人」だといえるのかもしれない。

言い訳めくが、新年に立てた誓いが必ずしも続かないのはある意味、当然とも言える。
皆様にも思い当たる節はあるだろうか?

明らかなことは、おとなの学びは学生時代の学びとは違うということだ。
おとなの学びには、

 ・解が1つとは限らない/明示的ではない
 ・学びの効果が見えにくいものが多い
 ・学びが長期にわたる
 ・ゴールが「身につけたことを活用して成果を出すこと」(≠「知ること」)

といった特徴があり、学生時代の学び方がそのまま通用するわけではない。

先述のとおり、社会人が新しいことを学ぼうとする意欲は軒並み高い。ただ、残念ながらさまざまな理由により頓挫することが多いのも、おとなの学びの現状なのである。

では、どうしたらおとなはうまく学べるのだろうか?
うまく学ぶための要因は何なのだろうか?

「おとなならではの学び」とは?

私たちは、何らかの学びに成功した社会人が取り入れている学び方を調べ、「どうしたらおとなが効率的・効果的に学べるのか」を明らかにする試みを行った。そこで得られた知見を、「おとなの学びモデル」と名付けた。

「おとなの学びモデル」には、3つの特徴がある。

「おとなならではの学び」とは?

1つ目は、「学ぶ内容ごとに有効な要因が異なること」を明らかにした点である。
例えば、新入社員が社会人としての基礎的な考え方や知識・技術を学ぶ場合と、管理職が組織マネジメントを学ぶ場合とでは有効な要因が異なる。同様に、英語を学ぶ場合とファシリテーションスキルを身につける場合の要因も異なる。

2つ目は、有効な要因を「学び行動」と「学び環境」とに分けて、提示した点にある。
「学び行動」は、学ぼうとする本人の学びに関する行動であり、次の4つのカテゴリから構成される。これらは互いに関係しており、すべてが学びに欠かせないことが分かった。

 ・Design(計画):学ぶ目的や具体的な内容を決めるなど、「計画」に関する行動
 ・Practice(実行):理解や思考、周囲への支援要請など、「実行」に関する行動
 ・Monitor(観察):理解や成長の度合いなど、学習状況の「観察」に関する行動
 ・Adjust(調整):学び方の修正や自分の意識の再認識など、「調整」に関する行動

これら4つのカテゴリは、さらに詳細な要素(具体的な要因)に分かれ、全部で41個の要素で構成されている。例えば、Designには身につける目的を明確にする(目的明確化)、Practiceには実際の出来事や問題について学習したことを用いて考える(実例思考)、Monitorには学習したことによって自分自身が成長・変化しているかを確認する(成長モニタ)などがある。

「学び環境」は、学びにあたり、本人が置かれている環境の特徴を表す。これには、学びあうことを奨励する雰囲気がある(相互成長の風土)、認めてくれたり相談に乗ってくれたりする支えとなる人がいる(承認・精神的支援)など6つの要素がある。

「学び行動」と比較すると、「学び環境」は、本人が独力で変えたり選択したりすることが難しい場合もあるが、有効な学びには「学ぶ環境」も欠かせないことが分かった。

3つ目の特徴は、有効な要因を「効果の程度」と「利用の程度」の観点から次の3つに分類した点にある。

 ・H要因(High):有効な要因であり、かつよく利用される要因
 ・S要因(Special):効果は高いが、あまり利用されていない要因
 ・L要因(Low):一見有効に見えてよく使われるが、実は効果が小さい要因

この中で、特に注目すべきは、効果は高いのに多くの人があまり利用していないS要因である。S要因をうまく利用することができれば、学びの効果が飛躍的に高まる可能性があるためだ。

例えば、英語を身につける場合ならば、全41個の要因のうち実際に有効なものが28個ある。そのうちH要因に該当するのは、「何のために英語を学ぶかを明らかにする(目的明確化)」と「繰り返して練習する(反復)」の2要素のみであることも分かった。

それに対して、残る26要素はS要因、つまり効果があるにもかかわらず、あまり利用されていないことが分かった。具体的には、「どこまで身につけるのかという目標を設定する(目標設定)」「実際の出来事や問題を、英語を使って考える(実例思考)」「英語の何が身についたかを、まとめて整理する(まとめ整理)」「自分自身の変化を実感する(効果実感)」などが挙げられる。

英語学習においては、多くの人が「目的明確化」と「反復」のみに依存した学び方をしており、他の有効な学び方を活用することが少ない。S要因の要素をうまく活用できれば、もっと効果的に英語を学べる可能性が高いといえるだろう。

あなたが新年の抱負を実現するために……

おとなならではの学び方を駆使して効率的に学ぶことができれば、新年の抱負の実現も近づくだろう。最後に「おとなの学びモデル」から導き出した、2つの学びの「秘訣」を紹介したい。

秘訣1:学びは、振り返り(Monitor)から着手する
学びの計画(Design)を立てることはもちろん重要だが、実はその前に振り返りをしておくことが非常に有効なのである。
これまでに自分は「何をしてきたのか?」「何を成功して、何を失敗したのか?」「どのようなときに、何が成長したのか?」……振り返る観点は数多くあるが、まずは振り返りからである。つまり、自分の特徴を知り、自分に合った学びの方法や順序を考えることが、より効果的な学びの計画を立てることにつながるのだ。

あなたが新年の抱負を実現するために……

秘訣2:学びのサポーターをつくる
学びには「学び環境」、特に他者の存在が欠かせない。学びにおける自律性の重要性は言うまでもないが、学びの達人は必ず周囲にサポーターをつくっている。
「相互に成長しあえる人」「自分を承認してくれる人」「アドバイスをくれる人」「内省を促してくれる人」など、さまざまなサポーターがありえるが、学ぶ同志をつくることが重要である。「言い訳の達人」にならないためにも。

「振り返って、学ぶ仲間をつくる」ところから、学びを始められてはいかがだろうか?
今年こそ、毎年繰り返しがちな「今年こそ」から脱却して、学び続けられるおとなに近づけるように。

【text:ビジネス・テクノロジーデザイン部 部長 山岸 建太郎】

※記事の内容および所属等は掲載時点のものとなります。

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