日々直面している現実とそのホンネを綴る 組織活性の舞台裏 〜人事責任者のホンネ〜

執筆者情報
経営企画部
部長
本合 暁詩

昨今、注目を集める「組織開発」に取り組んだ先に何があるのか……?
何が、その第一歩となるのか……?
当社人事責任者が、日々直面している現実とそのホンネを綴りました。


取材記事の向こう側

先日、オフィスの私の席がデスク2つ分、その距離3メートルほど左に移った。人事異動に伴う、座席変更が行われたのだ。そこから見える景色は、わずかだが確かに変わった。

移動して荷物を整理していると、2年前に取材を受けた専門誌が目に留まった。当社の社員総会(半期に一度全社員が集う社内イベント)に関する記事が掲載されており、そこで行われる社員表彰やナレッジ共有イベントについて私が語っているものだ。

2年前なのでそれほど懐かしくはない。それでもその記事をしばし眺めてしまったのには、理由がある。この記事は決して嘘ではないが、そこに書かれていない、その先が、裏があるのだ。

100点満点のない社員総会

期初に行われる社員総会の定例コンテンツに社員表彰がある。頑張った人、業績を挙げた人、会社に貢献した人がステージに上がり、社長から表彰状・トロフィー・賞金等が手渡される。

表彰されるのは名誉なことだし、自分の頑張りが目に見える形になるのはとてもいいことだ。満足感と達成感にあふれた顔を見るのは、掛け値なくうれしい。何度見ても感動的だ。心から称え、喜びを分かち合いたいと思う。自分も頑張らないとな、と力が湧いてくる。当然ステージに上がることを目標にする人も多い。素晴らしい機会でありイベントだと思う。

しかし、残念ながら、表彰の対象となるのは限られた人だけだ。構造上、誰かをほめるということは誰かをほめないということでもある。だから、全員が喜ぶ表彰を行うことは、ほぼ不可能だ。「オンリーワンになればいい」とうたってみても、同じ土俵で同じことをやっている限り、ナンバーはついてしまう。

選ばれなかった人にとっては屈辱だったり絶望だったりという感覚が生まれる可能性もある。奮起して次に向けて頑張ろうと思ってくれたらいいが、もしかしたら不公平感を覚える人もいるかもしれない。

そもそも表彰とは、スポットライトとドラムロールと拍手に彩られた極めて高度な経営のメッセージである。会社としてほめるということは、「これが望ましいことだ」を示唆する強力なシグナルとなる。どのような社員やどのような行動を、どのようにほめるのかを明確にすることのインパクトは、多くの人が想像するより大きい。

社員総会が難しいのは表彰だけではない。例えば開催日の選定もその一つだ。平日はお客様への対応があるので週末に開催してほしいという声がある一方で、週末は子供の学校の行事や親の介護があるので困るという声もある。

他にも、「会場での飲食を許可してほしい」「空調が効きすぎて寒い」「トイレの数が少ない」「喫煙所が遠い」と、さまざまな意見が出る。もちろん企画するメンバーは、これらを考慮して、よりよい運営を心がけてくれているが、全てを満たすことは現実的に無理である。

会社の戦略やビジョンを示した映像制作、社員の交流を促す懇親会の企画、それらの台本への落とし込みと準備、早朝からのリハーサル……意義深くそしてパワーもかかるこのようなイベントにおいて、全員から100点満点を取ることは本当に難しいのだ。

組織開発の難しさ

全員を満足させ、モチベートし、元気にさせ、一体感を醸成するのはかくも難しいが、これは、「組織開発の難しさ」をそのまま表しているのではないだろうか。

組織開発の定義は、広い。職業がら(そして事業がら)私もこの言葉に対する感度は鈍くない方だとは思っているが、あらためてその内容を平たく言ってしまえば、「組織力の向上を狙うさまざまな活動」というものだと思う。この字面からすれば、組織開発を不要だという人はあまりいないはずだ。

当社もその規模(従業員約350名)を考えると、組織開発にまつわることを丁寧に用意している方だと思う。

前述の社員総会における表彰にとどまらず、ナレッジの発表大会、新規事業提案の場、ミッション・バリューの浸透ワークショップの全社展開、社員同士の交流を促すオフサイトミーティングや社員研修の実施、また、そのための費用の会社負担もある。

さらに、社内の情報はできるだけオープンにしており、経営層における会議の審議事項は基本的に全社員に開示している。加えて、上司・部下間だけではなく、先輩・後輩間でもなるべくかかわりあう風土を有していると思う。かなりしっかりやっている。なんといっても取材されるくらいなのだ。

しかし、このような「組織開発」の分かりやすい効果が出るまでには長い時間がかかる。組織開発は、重要度が高いが緊急度が低い取り組みの代表的なもの、と言っていいと私は思う。

これに呼応するかのように、当社には組織開発を冠した担当部署がない。もちろん組織開発という言葉の定義の広さ・あいまいさにも原因はあるだろうが、人事も総務も法務も経理もその担当部署はあるのだから、組織開発担当部署がないのは、組織開発の相対的な優先度の低さを表しているともいえる。

急に現実的な話になるが、組織開発担当部署がないと、例えば社員総会の企画・運営は総務がやることになる。何しろ「総」務なのだから。しかし、通常、社員総会は期初に行われる。

経験のある方には分かると思うが、営業活動が期末に向けてあわただしくなるのに対し、管理系スタッフ部署は期初に仕事量がピークを迎える。決算を迎える経理は言うに及ばず、入社や組織改編が重なる期初は、人事も総務も多忙を極める。

これでは業務が回らないということで、社内の各部署から担当を募ろうとしてもこれはこれで難しい。どこの部署も忙しいこともあるが、「それはうちの部署のやるべき仕事ではない」という意識があるからだ。

経営企画部という「全社」を管轄している私の立場からすると、「会社のやるべき仕事が、おたくの部署の仕事ではないというのか」と聞き返したくなるところだが、これが普通の会社の組織開発の扱われ方ではないだろうか。

組織開発は経営の腕の見せどころ

組織の一体感や相互信頼が長期的に企業の業績向上に結び付いていることは多くの研究が示している(例えば、当社組織行動研究所による『日本の持続的成長企業』など)。つまり、組織開発は重要であり有効なのだ。

しかしながら、組織開発の効果を説明して、高い納得を得ることは難しい。言うまでもなく、緊急ではないが重要なものに取り組むことは、経営判断の中でもかなり難しい部類の意思決定だ。言い換えれば経営の「腕の見せどころ」でもある。

だから、組織開発の位置づけを社内において明確にすること。これは私の大きな仕事の一つだ。組織開発の経営における優先度を上げること。そして単に上げるだけではなく、本当に重要だという意識を促すこと、である。

そのためにも、既に取り組んでいる組織開発施策の効果を最大化することが求められる。さらには、他の人事関連施策においても、組織開発の視点から改善が出来ないかを検討することも欠かせないだろう。
そして、効果の可視化が難しいとしても、日々の取り組みの中で、組織開発の視点から「今、出来ること」を重ねることが重要なのだと強く思う。



さて、次の社員総会に向けた初回のミーティングが始まる。「なんで自分が」と若干思いながらも、「仕事ならやりますよ」、そして「どうせやるなら楽しく面白くやろう」と、きっとそう考えてくれるプロジェクトメンバーに対して、プロジェクトオーナーとしての私は何を発するべきだろうか。

「社員総会の目的は」と直接的にアプローチするか、「組織開発における社員総会の位置づけは」と大上段に構えるか、はたまた「これを担当する君たちは精鋭だ」と変化球から入るか……。

決めきれないまま、わずかに景色が変わった席を立つ。
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