変化するコンサルタントに求められるもの 社会人21年目のスタートライン

執筆者情報
企画開発部
主任研究員
桑原 正義

長く続いた景気の低迷や競争環境の変化により、企業は施策の費用対効果を重視する傾向が強くなっています。人事・人材開発の領域でも、担当者が施策の実効性(実際に現場に良い変化が起こせたのか)を問われることが増えています。さまざまな施策を支援する外部コンサルタントに求められるものも変化しています。
今回のコラムは、コンサルタントがその変化にどのように向き合い、どのような葛藤を抱え、乗り越えていったのかに焦点を当てたいと思います。


コンサルタント、生き残りをかけたサバイバルの時代

「コンサルタントって、普段何をしているんですか?」と、よく聞かれる。世間、特に学生には、スマートで華やかなイメージもあるようだが、現実は別世界だ。私がコンサルタントをしていて思い浮かぶのは、「ごまかしのきかない真剣勝負」という言葉だ。

かつては的確な分析と課題抽出、そして解決策の提示がコンサルタントの価値であった。今は、それではお客さまにご満足いただけない。いくら良い解決策を提示しようが、「それって本当に実行できるのか?」「成果につながるのか?」という視線をひしひしと感じるようになった。

先日も、ある企業で新人育成に関するマネジャー向けのワークショップを行っていると、途中で社長がお越しになり、しばらく様子を見て帰られた。後で伺うと「外部のコンサルタントなんかに現場の育成が分かるのか?」と疑問を持たれ、確かめにいらしたとのことだった。

コンサルタントは今、自らの分析や提案の先の成果にまで責任を持つことが求められている。提案が実行され、変化を起こせるかどうかが、自身の生き残りを左右する、サバイバルの時代であると痛感している。

コンサルタントとして直面した壁

最初は考える仕事が好きで飛び込んだ世界だったが、しばらくやっていると、非常にもどかしい思いにかられるようになった。私の得意領域は「新人・若手の育成」で、多くの企業の支援をしてきた。しかし渾身の提案をしても、さまざまな理由で実行に至らないケースもあった。

このような経験を重ねるうちに、提案をするだけでなく、「実行に関わりたい」「実際に成果を出すところまで関わりたい」という気持ちが沸々とわいてくるようになった。私が目指しているのは、現場の人の役に立ち、新人・若手がいきいきと育つ職場が増えていくことだったからだ。

そこで、これまでのコンサルタントの枠にとらわれず、提案後の実行や成果を出すことにコミットして、可能な限り現場実践の領域に踏み込んで仕事をしていくと決めた。

最初は、セミナーを企画した。これまでの経験をもとに「これからの時代の新人・若手育成はこうですよ」という内容をまとめた。当時、新人・若手育成は様々な企業で課題になっており、セミナーは好反応だった。出だしは順調だった。

その頃、A社に対して新人育成をテーマに講演をすることになった。A社は日本を代表する企業であり、優秀な人材が非常に多いことで有名であった。その根幹は新入社員に対して育成担当者が1年間徹底的にOJTにあたる制度にあった。それも数十年続く同社が誇る伝統の制度だ。

その育成担当者400名に対し、「これからの新人育成のポイント」を語ることになったのだ。当然、A社が求める水準は非常に高く、参加者は現場の精鋭ばかりで、与えられた時間は20分と厳しい条件ではあった。しかし、現場の育成担当者に直接話ができる絶好の機会と思い引き受けた。

講演に対する参加者アンケートの満足度は低くはなかったが、私は落胆した。私の前後に講演したのは、有名な元ラグビー日本代表監督と学校再生で有名なカリスマ教師であり、両者のアンケート満足度は私と比べて突出して高かったのだ。コメントも、今後の実践に向けて大きな学びを得たことが明らかであった。

逆に、私へのアンケートコメントからは、「あなたの話にはなるほどと思うこともあるけれど、実際に活用していくイメージが十分に持てなかった」という意見が散見された。「あなたは現場を分かっているの?」と言われている気がした。

この結果に、私は恥ずかしくなった。いかにカリスマの2人とはいえ、企業の新人育成については私の方が専門家だ。にもかかわらず、参加者に後々まで残る価値を届けられなかった自分がもどかしかった。もっと現場の人に役立てるコンサルタントになるという思いは、ここでより強く、はっきりと固まった。

私に足りないものは、圧倒的な現場経験だと感じた。現場で育成に関わる人たちの苦労や直面している厳しい現実を肌感覚で分かり、それをどう乗り越えて新人を育てていくのかという「現場で使える育成論」の確立が必要だと考えた。

現場に出て真剣勝負に挑み続ける

それからは、現場で育成に関わっている人と接する仕事を意図的に増やした。現場の上司や育成担当者向けのワークショップを開発し、様々な業界や職種の育成現場の悩みや知恵を取り入れていった。人が育つ職場づくりに取り組む現場参画型プロジェクトを重ね、一般論ではない「現場で使える育成論」を磨き続けた。

A社の講演から7年が経った昨年、再びその門をくぐることになった。

A社が誇る育成担当者制度であったが、思うように新人が育たないケースが増え、今までどおりの方法に限界を感じはじめていた。そこで同制度を抜本的に見直し、一緒に再生させていくことのできるパートナーを探していた。

まず、企画の中心人物である課長にお会いした。

「この育成担当者制度は当社の生命線です。ここを再生することができなければ、私たちの会社は終わってしまうと本気で思っています。絶対に成功させなければなりませんし、私たちも現場に丸投げせず責任を持ってやっていきます」

一切ぶれのない、課長の力強い言葉に、私は心を打たれた。ぜひ私たちにお手伝いをさせてほしいと、心の奥から強い気持ちがわいてきた。

同時に、大変なプレッシャーも感じた。A社の中では誰もが注目する重要プロジェクトであり、失敗は許されない。この仕事を引き受けることは、自らの退路を完全に断つことを意味しているのだ。

しかし、「かつてない大変な仕事だが、やろう」と心は決まっていた。不思議とためらいは感じなかった。この仕事こそが、現場に飛び出した目的であり、成果が試される最大の機会だと思ったからだ。

幸い7年かけて磨いてきた「現場で使える育成論」はA社に認められ、プロジェクトが結成された。多くの現場取材を重ねながら、プロジェクトメンバーの方々と企画を徹底的に考え抜いた。

このプロジェクトの最大のテーマは、「育成者側の変革」であった。育成が上手くいかないのは、新人だけに要因があるのではなく、育てる側の意識や関わり方が時代の変化に適合できていないことが本質的な要因だからだ。

従って、プロジェクトの成否は、育成担当者たちの意識転換ができるかどうかにかかっていた。ご自身の成功体験や育成論に自負を持つ方々だからこそ、下手をすると反発が出て、研修が成り立たなくなるおそれも十分にあった。

「現場で使える育成論」が、A社の現場にも通用するかが試される時がきた。

ひるまず折れず、参加者と向き合う

250人が一同に集まる大会場で、2日間に渡る研修を一人で運営した。
セッションが始まるやいなや、例によって「なんでこんな大事なことを外部講師に頼むんだ」「俺たちの仕事の厳しさを分かって言っているのか」という視線を痛いほど浴びた。だが、ひるまず折れずに参加者の前に立ち続けた。参加者が育成の大切さを本気で考えているからこその厳しい視線であり、私も本気でメッセージを伝えた。

「育たないのは新人の問題と言われるが、私たちには責任はないのでしょうか?」
「時代に取り残されているのは、むしろ私たちの方なのではないでしょうか?」

粘り強い対話を通じて、私の本気と覚悟が伝わり始めた。
参加者は、次第に私の話に耳を傾け、本音で話し始めた。

「時間がないことを言い訳にしていた。どうすればできるかを考えたい。」
「自分たちの時代とは違う。自分のやり方を押しつけていたから上手くいかないのかもしれない」

育成担当者として何が大事なのか、どう関わっていくか、250人の真剣なディスカッションが続いた。私も、それぞれが抱える難しい現実を人ごとにせず、参加者に徹底的に向き合った。

怒濤の2日間が終わった。かつてない重圧を受けながらセッションをしている時、「ああ、私は今生きているんだ」という感覚が駆けめぐった。建前のない本音のやりとり、上手く伝えられないときの痛み、できたときの喜び。喜怒哀楽を体で、五感で感じる瞬間だった。

ただ解決策を提案するだけでは決して感じられなかったもの。現場という厳しい現実の中で戦っている方々から、真価が問われ、すぐに反応が表れる場。この真剣勝負の場に立ち、実際に役立つ支援をしていくことこそが、コンサルタントとして私の生きていく道なのだと実感した。

思えば、現場に出ようと決めてから、コンサルタント人生の第2幕が開けた気がする。厳しくもやりがいのある仕事、奥深く底の見えない仕事。社会人21年目、43歳にして、スタートラインに立っている感覚。

後日、A社の課長からは「まずは上々のスタートが切れました。これから1年よろしくお願いします」とのお言葉をいただいた。高い期待からすれば、まだ満足はできないし、全ての人の役に立てたわけでもない。現場の役に立つコンサルタント人生は、まだ始まったばかりだ。

新人であっても、10年目であっても、目の前の仕事や顧客に対して、勇気を持って一歩踏み出せば、そこにはきっとやりがいのある仕事が待っている。1人でも多くの人が、その感覚を持てるようになることを願い、私は目の前のお客さまに向かい続けたい。
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