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リボン結びができますか?

多面評価で広がる人材育成の可能性

  • 公開日:2008/03/10
  • 更新日:2024/03/25
多面評価で広がる人材育成の可能性

この春息子が小学校に入学する。その半年ほど前に小学校入学前の現状調査と題して、保育園で20項目くらいの行動項目にチェックをさせられた。小学校入学前に出来れば全ての項目をクリアした状態で入学してほしいという意図があるらしい。

「リボン結びができますか」
「自宅の住所や電話番号、親の名前が言えますか」
「困った時にことばで状況を伝えられますか」
「歯磨き・洗顔・用便をひとりでできますか」などなど・・・

親としては、「自分の名前が書ける」「トイレにひとりで行ける」「他の人の話を聞ける」くらいでよいと思っていたのに、リボン結びや住所まで要望されるとは、思ってもいなかった。

会社からの期待を知る
セルフマネジメントとして生かす
マネジメントツールとして生かす
会社からの期待を浸透させる

会社からの期待を知る

成果主義導入後、プレイングマネジャーが増え、なかなか部下のマネジメントに時間を割くことが難しくなってきている。自分の仕事で手一杯なのに、部下の育成までやらなければならない。今までマネジャーとして業績は追い続けてきたものの、部下のマネジメントについては、意識してこなかった人もいるだろう。

このような状況で、もし、クレドなど「自社の社員としてベースとなる大切にしたい思いや行動」や「自社の管理職としての心構えや押さえておくべきこと」が行動項目としてまとまっていたらどうだろう。

会社の一員としての自分を改めて認識し、自分が大事にしていた思いを再確認することができ、見落としていたことにも気づくことができる。
部下に対するマネジメントに関しても、今まで自分なりに試行錯誤しながら不安の中でやっていたことが「あぁ、これでよかったのだ」「あ、こういうことにも気をつけなければならないのか」など、会社からの期待を理解し、行動を変化させることができるのではないだろうか。

セルフマネジメントとして生かす

一覧化されたこれらの項目を上司・同僚・部下からチェックしてもらうと同時に、自己チェックもする。これが「多面評価」だ。

自分だけで項目を眺めるのと比べれば、その効果の違いは歴然としている。自分が勝手に思い込んでいる「つもりの自分」と、周囲のチェックから「つまびらかになる自分」。そのギャップや、情報から得られる周囲から自身に向けられた期待を読み取りつつ、次の改善点を見つけていくのである。

行動項目はある程度抽象的な記述をされているのが普通なので、項目を読みながら、現在の会社の方針・自分の職場や仕事の状況などを考慮し、どのような行動が該当するのか、想像を膨らませることも忘れてはならない。

マネジメントツールとして生かす

では、マネジャーである自分が、部下の多面評価を活用する立場になったら、どう使うのか。

正直に言って、日常マネジメント場面では部下一人ひとりの状況をしっかりと把握することは難しいだろう。しかし、「多面評価」によって、上司(自分を含む)・同僚・部下それぞれが、対象者である部下をどう見ているかを把握することで、自分自身の評価の癖やこだわりの視点を確認することができる。

もちろん多面評価の仕組みとして設定項目の範囲でしか理解できないことは前提であるし、妄信的に使うものでもない。しかし、普段から接している彼・彼女のことが、より広く、深く見えてくるだろう。
その人を全く知らないわけではないし、接しながらなんとなく漠然と感じることはあるのだが・・・それが多面評価を通して「立体的」に見えてくる、というイメージだろうか。

各項目の得点の高低の背景をイメージしながら、普段の仕事の様子、例えば「段取り良く仕事をしている姿」「なかなか積極的に発言できない様子」「後輩の面倒見が良く、声をかけている姿」・・・と、状況を重ね合わせるうちに、「仕事は堅実にこなしてくれるし、後輩の面倒見も良い、でももうすこし○○してくれたら・・・」と、自ずと要望まで浮かんできたりするものだ。

それを日常のやりとりの中で伝えていくと良い。評価のフィードバック面談という場面であれば、マネジャーが自身の結果から振り返ったように、部下自身の「つもりの自分」とのギャップや、情報から得られる「周囲から自身に向けられた期待」を話し合っても良いと思う。

会社からの期待を浸透させる

多面評価の効果は、チェックされる本人に対してのみではない。実は周囲でチェックをする回答者にも影響があるのだ。

会社からの期待が込められた項目を読み進めながら回答をしていけば、自ずと対象者に求められている行動を認知していく。会社として大事にしたい思いや行動であれば、あたかも自分に求められているかのように感じるかもしれない。

例えば、マネジャーに対する項目であれば、いずれ自分が同じ立場に立ったときのことをイメージし、行動までも意識する社員もいるだろう。
当たり前だが、会社が社員に期待していることは、伝えていかないと理解してもらえない。その伝え方の一つが「多面評価」である。
「多面評価」に関わり、その有効感を感じているひとりとして、今後もさまざまなメッセージを伝えられたらと思う。

さて、来月に息子の入学式が迫ってきた。
半年前から「リボン結び」を教えてはいるものの、いまだに曲がって変なリボン結びになっている。
でも、期待を伝えるからこそ、そこに成長がある。小学校入学を控えた子供にも、企業で働く社会人にも相通ずるものがあるのではないだろうか?
これからも適度の期待をかけて息子の成長を見守っていきたいと思う。

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