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営業における包括的な経営制度の構築

営業担当者の業務と企業価値

  • 公開日:2005/05/01
  • 更新日:2024/03/25
営業担当者の業務と企業価値
営業担当者の業務とは?
営業の評価と企業価値
営業における包括的な経営制度の構築

営業担当者の業務とは?

営業担当者は、顧客に自社の製品の紹介や、その活用方法などを提案し、契約を締結し、納品するということのみならず、需要に合わせた適切な製品の製造依頼や、売掛金の回収も同様に確実に行わなければならない、ということは理解されていると思います

例えば機械部品メーカーの営業担当の業務は、顧客企業の資材調達の担当者に対して、製品の説明を行い、契約を締結します。そして、その契約したお客様の要望に合わせて製造依頼を出し、納品し、顧客からきちんと売掛金を回収することで、業務のサイクルが一巡します。

営業担当者の業務イメージ

営業担当者の業務イメージ

営業の評価と企業価値

一方、営業担当者の「成績」「業績」というのは、売上高のみを指していることが一般的ではないでしょうか。より大きな売上高は、単純に多くの契約を取ってきて、たくさん納品すれば達成されます。大きな売上を上げるためには、売掛金の回収や、顧客の需要に合わせた適切な製品の製造依頼は必要ありません。しかし、この「成績」、「業績」は、そういった要素をカバーしなくてもいいのでしょうか?

スターン・スチュワート社のジョエル・スターン他著『EVA価値創造への企業変革』に、営業活動と、それによって引き起こされる事象について、次のような一節があります

「(米国食品企業、クエーカー・オーツの)前CEOのウィリアム・スミスバーグは、スターン・スチュワート社の別の円卓討論会で次のように言った。『押し込み販売は、われわれの製品需要に人工的な山や谷を作り出すが、裏を返せば、過度なインフラや余分な在庫費用を発生させている。本当はやめたいと考えながら業界全体に普及している慣行だ』。そして、クエーカー・オーツはついにこの慣行をやめた。『この変更は一時的に四半期利益を落ち込ませたが、明らかにわが社の経済的価値を増大させた』とスミスバーグは付け加えた。」

売上だけを見て、営業担当の「成績」「業績」を評価すると、以上のような押し込み販売が引き起こされる可能性があります。こうしたことは、無駄な在庫の積み上げにつながり、また、売掛金の貸し倒れを誘発します。
営業担当者が適切な製品説明を行い、契約締結をし、納品するということはもちろん重要ですが、顧客の要求に合わせた妥当な水準の製品製造依頼や、確実な代金回収も同様に重要であり、このすべてを適切に遂行することで企業がその役割を果たす、つまり企業価値を創造する、ということがいえます。ゆえに、こうした営業担当者の業務をきちんと網羅して評価することが重要となります。

営業における包括的な経営制度の構築

「そうは言いますが、営業活動は結局、売上高で評価するのが一番わかりやすいでしょう」とおっしゃるかもしれません。そもそも営業担当者そのものが、売上成績以外の要素を管理され、評価されることを望んでいないかもしれません。確かに営業担当者にとっても、売上高を上げる、というのは最も興味のわくところです。お客様の顔を見ながら営業活動を行い、その結果、売上の数字が上がっていくというのは気持ちの良いものかもしれません。やはり、その気持ちよさ、というのは、明確にその改善が「見える」というところから来るのでしょうか。一方、営業担当者が関わる、製造依頼や、売掛金回収などの業務については、なかなかその成果が数字であらわれるような体制になっていないことがほとんどでしょう。成果の見えないものに対する積極的な関与はなかなかできないものです。

しかし、本当にそれでいいのでしょうか。売上高だけを見るような評価制度が整備されているということは、営業における活動の一部分のみを評価しているということになります。営業担当者の責任範囲における製造依頼の状況や、売掛金の回収情報が「見える」ような、営業業務を網羅する経営基盤の構築を行うことにより、営業担当者の企業価値創造への積極的な関与を促すことが必要です。これを放置し、売上高のみを至上のものとして業績を把握することは、重大な企業価値破壊を看過することと同義といっても過言ではありません。これは企業全体の価値創造にかかわる重要な経営問題です。

営業の業務を価値創造の観点に基づいて網羅した営業プロセスの構築、さらに、それを測定、フォローするための経営の仕組みづくりは、企業価値創造のための必須事項です。無論、こうしたことを行うためには、トップマネジメントから営業現場まで、全社で「企業価値とは何か?」ということを適切に理解し、部門間、あるいは上司、部下との間で侃々諤々の議論を行わなければなりません。そうしたプロセスを乗り越えることにより、本質的な問題点の把握と、それを解決する経営の仕組みを構築することが可能となります。こうしたことを実現することで、それぞれの企業のおける「あるべき営業の姿」が完成することになります。

参考文献
タイトル:EVA 価値創造への企業変革
著者:ジョエル・M. スターン(著), アーヴィン ロス(著), ジョン・S. シーリー(著), 伊藤 邦雄(翻訳)

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