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パレートの法則(80:20の法則)とは? 活用方法を解説
- 公開日:2024/12/20
- 更新日:2024/12/20
パレートの法則とは、ある少数の要因(20%)が全体の結果(80%)に大きな影響を与えるという理論です。この法則は、単なる統計上の規則にとどまらず、私たちの行動や選択を見直す手がかりを提供してくれます。本記事では、パレートの法則について以下の点を中心にご紹介します。
- パレートの法則について
- パレートの法則の活用方法
- パレートの法則の注意点
パレートの法則について理解するためにも参考にいただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
パレートの法則(80:20の法則)とは
パレートの法則は、実は私たちの日常生活に大きく影響しています。そして、ビジネスや学習においても応用できるため、重要な意思決定ツールとして活用されています。ここでは、パレートの法則の歴史や2:6:2の法則との違いについて解説します。
パレートの法則の歴史
パレートの法則(80:20の法則)は、1896年にイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって初めて提唱されました。彼がイタリア社会の財産所有の分析を行ったところ、全土地の約80%が人口のわずか20%によって所有されていることを発見しました。さらに、自身の庭の観察から、植物の約20%が収穫の80%を生み出していることも確認しました。少数の原因が多数の結果を生み出す傾向があることを示すこの法則は、経済学だけでなく、ビジネス管理や品質管理など多岐にわたる分野で応用されています。
2:6:2の法則との違い
パレートの法則と2:6:2の法則は、共に組織や集団内の貢献度に焦点を合わせていますが、その分析の仕方に違いがあります。パレートの法則では、全体の80%の成果が20%の要因によって生み出されるという点に注目します。一方、2:6:2の法則では、全体を3つのグループに分類し、上位2割が高い成果を出し、中間6割が平均的な成果を、下位2割が少ない成果を出すか怠けていると考えます。この法則は、特に組織内の個人の貢献のばらつきを詳細に描写しており、各グループの特性理解に役立ちます。
パレートの法則の具体例
パレートの法則は、私たちの日常生活のなかでもよくみられます。例えば、着る服の選択において、クローゼットにある一部の服、約20%を頻繁に着用し、これが全着用の80%を占めるとされています。また、自宅での生活では、リビングルームやキッチンなど限られたエリアで過ごす時間が全体の大部分を占めている傾向にあります。さらに、私たちがスマートフォンで使用するアプリも、インストールしているもののうちほんの20%で大半の使用時間が消費されるとされています。このように、日常のあらゆる面で少数の要素が大きな影響を与える傾向に気づくと、生活の質を高めるための効率的な調整が行えるようになります。
ビジネスにおけるパレートの法則の例
ここでは、ビジネスにおけるパレートの法則の例について解説します。
会社利益の8割は2割の従業員によりつくられている
実は、多くの企業で全従業員の約20%が会社の利益の約80%を生み出しているといわれています。この20%は、会社の業績を大きく左右する重要な役割を担っている従業員たちです。この事実を理解することで、企業はこのグループの従業員に焦点を合わせ、さらに支援を行うことができます。
売上の8割は2割の顧客によりつくられている
顧客売上において、この法則は数字として明確に表れ、全顧客のわずか20%が全売上の約80%を生み出している傾向にあります。この現象を踏まえると、企業はこの貴重な顧客層に特化した戦略を展開する必要があります。
全商品の売上の8割は上位2割の商品によりつくられている
パレートの法則は、ビジネスの商品売上においても顕著にみられます。多くの企業では、商品ラインアップのうち限られた20%の商品群が、全体の売上の約80%を占めるとされています。この現象を理解することは、マーケティング戦略や在庫管理において重要です。
パレートの法則の活用方法
ビジネスシーンにおけるパレートの法則の活用方法について、以下に詳しく解説します。
分布予測
パレートの法則は、新商品やサービスを市場に投入する際に、売上の予測に役立ちます。この法則によると、顧客の上位20%が全売上の約80%を生み出すことが予想されます。この予測をもとに、重要な顧客層に焦点を合わせたマーケティング戦略を計画できます。
例えば、これらの重要顧客に対しては、優先的なサービス、カスタマイズされた製品オファー、特別な割引やロイヤルティプログラムを提供することで、顧客満足度を高め、長期的な関係を築けるでしょう。さらに、これらの顧客からの紹介を活用して新たな顧客を獲得し、売上の基盤を強固なものにすることも重要です。その他の顧客に対しても、彼らを上位グループに引き上げるための戦略を考慮したりすることが求められます。
このようにして、パレートの法則を活用することで、より戦略的で効率的なビジネス運営が実現できるのです。
経営へ応用
パレートの法則を経営戦略に応用することで、企業は人材管理の効率を向上させることができます。この法則に基づくと、従業員の約20%が全売上の80%を生み出していると考えられます。このような高パフォーマンスを示す人材は、企業にとって価値が高く、彼らの能力をできる限り活用することが経営成功の鍵となります。
例えば、企業はこの重要な20%の社員を特定し、彼らが持つポテンシャルを維持・拡大するために必要な支援を提供することで業績を伸ばすことができるかもしれません。具体的には、適切な研修プログラムの提供、労働環境の改善、そして公正で魅力的な報酬システムの確立などが考えられます。
さらに、こうした従業員の離職防止策を講じることも重要であり、彼らが長期にわたり企業にとどまり続けるような環境を整えることが重要です。
予測分布から施策を立案
パレートの法則を利用して効果的なマーケティング施策や営業戦略を策定することは、企業にとって大きな利点をもたらします。前述したとおり、顧客の上位約20%が全売上の大部分を占めているという知見を生かして、その20%の顧客に対して、より緊密な関係構築を図る戦略を取ることもできます。これにより顧客の満足度を高め、長期的な顧客生涯価値(LTV)を向上させることが可能とされています。
一方で、残る80%の顧客には、デジタルマーケティングや自動化ツールを活用した一斉コミュニケーションを行うことで、効率的にアプローチします。これにより、限られたリソースを活用しつつ、広範囲の顧客層にリーチすることができます。
また、レストラン業界などでは、メニューの一部の人気メニューが注文の大部分を占める傾向があります。これらの人気商品に焦点を合わせ、質の向上や効果的なプロモーションを行うことで、さらなる売上の増加が期待できます。また、人気商品の裏に隠れた潜在的なヒット商品を見つけ出し、新たな売れ筋を開発することにもつながります。
このようにパレートの法則をもとにした顧客セグメンテーションとターゲティングは、企業がリソースを適切に配分し、より戦略的なマーケティングと営業活動を展開するうえで有効な手段となります。
パレートの法則の注意点
パレートの法則は、多くの分野で役立つ有用なツールですが、その使用には注意が必要です。パレートの法則の注意点について、以下に詳しく解説します。
パレートの法則は経験則である
パレートの法則は統計的な根拠に基づくものではなく、観察によって得られた経験則です。したがって、80:20という比率がすべての状況にあてはまるわけではありません。実際には、この比率が異なる場合もあり、まったく異なる結果が得られることがあります。そのため、具体的な状況分析をもとに適切な調整を加えることが求められます。
パレートの法則を利用する際に注意すべきは、それが指し示すのは「重要な少数の要素」と「多数の非重要な要素」との間に偏りが存在するという点です。この偏りを認識することで、リソースの配分、戦略の優先順位付け、効率の改善などに役立てることができます。
ロングテールビジネスを理解しておく
前述したとおり、すべてのビジネス環境や市場条件で80:20の割合が適用されるわけではありません。実際には、多数存在するニッチな商品やサービスが長期にわたり累積的に価値を生み出す「ロングテール」と呼ばれるケースも多々あります。
ロングテールの法則は、デジタル商品やオンラインサービスの分野でその力を発揮します。ここでは、少数のヒット商品だけでなく、広範囲にわたるさまざまな商品が少しずつでも売れることが全体の収益に大きく貢献することがあります。このため、パレートの法則に頼るだけではなく、ロングテール市場の動向も考慮に入れることが、戦略的な意思決定には不可欠です。
したがって、パレートの法則を活用する際には、その他の市場理論と組み合わせて考え、状況に応じた適切なビジネス戦略を展開する柔軟性が求められます。
8割の存在を忘れない
パレートの法則は効率的な資源配分を助けるツールとして広く認識されていますが、この法則を適用する際には全体のバランスを見失わないことが重要です。実際に、組織やプロジェクトにおいては、残りの80%が基盤を支え、日常の運営を滑らかにする役割を果たしています。例えば、企業における売上の大部分を生み出す上位の社員が効果的に機能するのは、その他の80%の社員がさまざまな支援や補助的な業務を担っているからです。これらの貢献を軽視すれば、全体としての成果は下がる可能性があります。
したがって、パレートの法則を活用する際には、戦略的に焦点を絞ることと同時に、組織全体のバランスと調和を保つことが求められます。全員が一体となって働くことで、組織全体の目標達成につながるのです。この視点を忘れず、全員が価値を生み出せるような環境づくりに努めることが、長期的な成功や安定につながります。
パレートの法則に関するよくある質問
最後に、パレートの法則に関するよくある質問に回答します。
パレートの法則と2:6:2の法則にはどのような関係がありますか?
パレートの法則と2:6:2の法則は、両者ともに集団内の成果分布を説明する点で関連がありますが、それぞれ異なる側面を強調しています。パレートの法則は、全体の成果の大部分が集団のごく一部から生じるという観点から、主に上位20%が成果の80%を生み出すと述べます。この法則はビジネスや経済学など幅広い分野で応用されています。
一方で、2:6:2の法則は、この上位20%とは別に、中間60%と下位20%を明確に区分して考えるという点で異なります。この法則によると、集団の大多数を占める中間60%が安定的ながらも平均的な成果を提供し、下位20%が小さな成果を出すか、場合によっては交代要員としての役割を果たすとされています。このように2:6:2の法則は、パレートの法則が指摘する上位20%の重要性を認めつつも、残りの80%の役割にも焦点を合わせ、より詳細な人的資源の分析や組織運営に役立てることを可能にしています。
両法則は、組織や社会内での個々の寄与や役割を理解するうえで有用ですが、それぞれの法則が提供する視点を活用することで、よりバランスの取れた戦略的アプローチが可能なります。
パレートの法則のメリットは何ですか?
パレートの法則を活用するメリットは、効率的なリソース配分により、労力を抑えつつ成果を達成できる点にあります。この法則により、個人やチームは取り組むべき重要なタスクを識別し、それに集中することで全体の生産性を向上させます。さらに、日常の業務においても優先すべき点が明確になり、仕事を効率的に進めるための戦略を立てて、無駄な時間を削減し、全体のタスク処理能力が向上します。また、仕事の進め方をシンプルにセグメント化し、それぞれのセグメントに適切なリソースを割り当てるスキルが身につきます。
343の法則との違いは何ですか?
パレートの法則と343の法則は、どちらも集団内の分布を分析する際に使用される原則ですが、対象とする分布の性質が異なります。パレートの法則は、特定の要因や活動が全体の結果に与える影響の大きさを示し、「20%の要因が80%の結果を生み出す」としています。
一方、343の法則は、ある事象やテーマに対する関心度を分類することに焦点を合わせています。この法則によると、対象に対して「30%が好意的で関心が高い」「40%は無関心」「残りの30%が好意的でない」という割合で意見が分かれるとされます。この法則は、市場調査や公共の意見分析など、ユーザーの態度や反応を理解するときに活用されます。
したがって、パレートの法則が生産性や効率の観点から影響力のある少数を識別するのに対し、343の法則は感情や意見の分布を見るために使われ、両者はビジネス戦略や意思決定において異なるアプローチを提供します。
おわりに
ここまでパレートの法則についてお伝えしてきました。パレートの法則の要点をまとめると以下のとおりです。
- パレートの法則は、1896年にイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱された考え方で、全体の80%の成果が20%の要因によって生み出される傾向があることを示す法則のこと
- パレートの法則は、日常生活においては日常のあらゆる場面で少数の要素が大きな影響を与えている傾向に気づくことで生活の質を高める調整が行えるようになり、ビジネスの面では、予測分布から施策を立案しより戦略的なマーケティングと営業活動を展開することなどに活用されている
- パレートの法則の注意点は、統計的な根拠に基づくものではなく経験則であること、ロングテールビジネスを理解してそちらの動向も考慮に入れること、日常の運営を滑らかにする役割を果たしている残り80%の基盤を忘れないこと
パレートの法則を理解することは、人生のさまざまな場面で的確に選択を行うための鍵となり、効率的な問題解決や優先順位の設定に役立ちます。
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