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ジョブ型雇用とは? メンバーシップ型雇用との違いやメリット・デメリットを解説
- 公開日:2021/04/06
- 更新日:2025/05/26
ジョブ型雇用とは、企業のなかで必要な職務内容に対して、その職務に適したスキルや経験を持った人を採用する雇用方法のことをいいます。従来の日本企業の新卒採用では、あらかじめ職務を決めずに、採用後に導入研修を行い、そのなかで本人の志望や適性を見て配属先を決める、というメンバーシップ型雇用が主流でした。その場合、本人の志向と違う職種に配属されるケースもありました。本人自身が気づいていない能力が開花される可能性もある一方、本人の志向が反映されずに、モチベーションが下がることもあります。昨今は企業を取り巻く環境変化のスピードも高まり、デジタル技術など専門性を持った人材をいち早く採用する必要性が出てきているため、ジョブ型雇用が注目されています。
ジョブ型雇用は本当にすべての企業や業界に適しているのか? 導入にあたってのメリット・デメリットにはどういったものがあるのか? この記事では、ジョブ型雇用の特徴から導入するポイントまで詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

ジョブ型雇用と対照的な考え方で行われる採用手法に「メンバーシップ型雇用」があります。ここでは、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いについてご説明します。
メンバーシップ型雇用とは
メンバーシップ型雇用とは、従来日本の企業において採用活動の主流だった手法です。採用の時点では職種を限定せず、企業が求める人材像にマッチするか、長く働けそうか、という観点を重視します。そのうえで、入社してから適性などを判断して担当職務を決定する雇用の手法を指します。
メンバーシップ型雇用の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 担当職種を決めない採用を実施し、実務にあたってから適職を見極めていく
- 一般的には勤続年数に応じた昇給制度や、退職金制度が設けられている
ジョブ型雇用の特徴
ジョブ型雇用における採用基準のなかで、もっとも重要視されるのは特定の業務に関するスキルや実務能力です。採用活動の時点で任せる職種を決め、それに適した専門性の高い人材を募集します。「スペシャリスト志向」「即戦力採用」の考え方に基づいた手法といえます。
ジョブ型雇用の主な特徴には、以下のような点が挙げられます。
- 企業が求める特定の業務を遂行できることを最優先にして人材を採用する
- 年齢や学歴よりも、求めるスキルを有していることを評価する
- 給与報酬は業務であげた成果に対する評価で決定されることが多い
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の主な違い
| ジョブ型雇用 | メンバーシップ型雇用 |
---|---|---|
業務の範囲 | 明確 | 総合的かつ流動的 |
転勤の可能性 | 低い | あり |
給与の評価基準 | 業務における成果 | 年齢や勤続年数、担当する役割や業務における成果 |
採用方法 | 中途採用・新卒採用 | 主に新卒一括採用 |
ジョブ型雇用が注目されている背景
近年、日本でもジョブ型雇用が注目されていることには、どのような社会的背景があるのでしょうか。ここでは、日本でもジョブ型雇用が取り入れられつつあることの背景についてご紹介します。
経団連会長によるジョブ型雇用推進の流れ
2018年から2019年にかけ、経団連第14代会長の中西宏明氏が従来型であるメンバーシップ型雇用の手法の限界を唱えたことで、日本でもジョブ型雇用を推進する流れが生まれました。
実際に、中西氏が会長を務めていた日立製作所でも2020年よりジョブ型雇用の採用手法が取り入れられるなど、さまざまな企業で導入が始まっています。
テレワークの普及の影響
2020年に日本でも流行が広がった新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの企業で在宅勤務やテレワークが導入されました。その結果、アフターコロナ時代を見据えた新たな働き方の有用性が立証されつつあります。
在宅勤務やテレワークの特徴の1つとして、業務における社員個々の生産性が明確に測りやすい点が挙げられます。働き方の見直しによって、業務生産性向上のために「適した人材を適職に配置する」という流れが強まっているとも考えられます。
専門職・業種の人手不足
AIやIoT事業など、今後あらゆる業種で取り組むべき新しい事業には、高い専門性を有する人材の獲得が欠かせません。専門的分野に関わる人材を募るには、仕事内容や求めるスキルを明確にし、かつ細分化された求人を行うことが有効です。
特にIT関連など、専門性の高い職種では慢性的に人材が不足している現状があります。最適な人材の獲得には、スキルや業務内容に特化したジョブ型雇用の手法がマッチするという考え方が浸透しつつあることも、ジョブ型雇用導入拡大の一因と考えられます。
IT業界におけるジョブ型雇用について、こちらのコラムではIT/WEB エンジニア向けの転職サービスなどを展開するファインディ・CEOの山田裕一朗氏から伺ったお話を紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
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大手企業におけるジョブ型雇用の導入
先述のとおり、日立製作所に加えカゴメ、資生堂といった日本の有力企業がジョブ型雇用の導入を本格化させたことで、国内企業全体の関心が一層高まっています。これらの企業では、職務記述書(ジョブディスクリプション)の整備、評価制度の見直し、柔軟な社内異動制度の構築など、人事制度全体を見直す取り組みが進められてきました。さらに、人的資本経営やグローバル人材戦略を視野に入れ、国際水準に準拠した人材マネジメントへの転換も加速しており、日本企業の人事制度は今、重要な転換期を迎えています。
【企業側】ジョブ型雇用のメリット・デメリット
欧米の人材採用の形式と同様に、日本でもジョブ型雇用を取り入れることの有用性が認識されつつあります。ジョブ型雇用の導入には数々のメリットがありますが、同時にデメリットもあるため両者を意識して導入を検討することが重要です。
ここでは主に企業側における、ジョブ型雇用導入のメリット・デメリットをご紹介します。
企業側のメリット
- スキルや技術のある人材を確保できる
- 業務であげた成果に応じて正当に社員を評価できる
企業側のデメリット
- 自社より好条件の他社に早期転職されてしまう可能性がある
- ある部署で急に人手が足りなくなったときに他の部署から異動できないなど流動的な対処が困難
- メンバーシップ型雇用から転換する場合、給与体系や社員の評価項目などの抜本的な見直しが必要
ジョブ型雇用の企業におけるメリットには、求める業務スキルを持ち即戦力となる人材をすぐに採用できる点や、結果を出した社員を評価できる点が挙げられます。その一方で、年功序列制など長く働くことでの利点がないため、転職のハードルが低く人材流出の可能性が高い点や、会社都合での転勤が難しい点はデメリットとなり得ます。
【求職者側】ジョブ型雇用のメリット・デメリット

ジョブ型雇用には、求職者(応募者)側にもメリットとデメリットがそれぞれあります。
求職者側のメリット
- 自分が得意とする専門分野で業務に携われるため、成果をあげやすい
- 仕事そのものが自身のスキルアップ手段になる
- 成果に応じて給与が決められるため、モチベーション向上につながる
求職者側のデメリット
- 自分でスキルアップの研修を受けるなどの自己研鑽が必要
- 携わる業務が自社で行われなくなった場合、失職のリスクがある
求職者のメリットは、適職に就ける点にあります。専門性のある業務で成果をあげ、それが評価され給与にも反映されることは、スペシャリスト志向の方にとってはこの上ない利点となるでしょう。
その一方で、業務の変化に合わせ自身で新しい知識や技能を習得していく勉強熱心さが必要です。
また、担当業務が会社の方針転換や景気の影響でなくなってしまったときは失職のリスクもあるため、それに備えたキャリアプランの形成についても考慮しておかなければなりません。
ジョブ型雇用が人事評価に与える影響
ジョブ型雇用の導入により、人事評価のあり方が大きく変わりつつあります。従来の年功序列や職能重視から脱却し、業務成果や役割遂行度に基づく評価が求められるようになっています。
評価基準の明確化がより求められるようになる
ジョブ型雇用では、職務内容や期待される成果が明確に定義されるため、それに基づいた評価基準の透明性が必要です。従来のメンバーシップ型雇用のように、勤続年数や年齢、学歴に基づいた評価ではなく、業務ごとに求められる成果や達成度を定量的に測る指標が重要となります。これにより、社員は自分の職務に対する期待や評価基準が明確になり、納得感のある評価システムを構築できます。
新たなマネジメント手法の導入が不可欠になる
職務に基づく明確な役割分担がされるジョブ型では、従来の一括指示型マネジメントでは対応しきれません。個々の専門性や自主性を尊重した「目標管理型」や「1on1面談」などのマネジメント手法が求められます。マネジャーは、部下の業務遂行状況を定期的に観察し、フィードバックやサポートを継続的に行う体制を構築する必要があります。
成果と役割評価のバランス調整が重要になる
ジョブ型では成果を中心に評価される傾向がありますが、それだけでは一人ひとりの貢献を十分に反映できないこともあります。職種や業界によって求められる役割も違うため、すべての社員に同じ評価基準をあてはめるのは難しい面もあります。評価の際には、定量的な成果だけでなく、役割における「影響力」や「プロセスでの貢献度」など、定性的な観点もバランスよく取り入れることが求められます。
ジョブ型雇用を導入するポイント
ジョブ型雇用を企業に根付かせるためには、単なる制度変更にとどまらず、組織文化や人材戦略全体との連動が欠かせません。キャリアの自律支援やD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)との連携、経営層のリーダーシップ、そして透明性の高い評価制度の整備といった要素が成功の鍵となります。
ジョブ型雇用・キャリア自律・D&Iはセットで捉える
ジョブ型雇用はポジション重視であるため、従来のメンバーシップ型雇用とは異なり、キャリア形成における組織と個人の対応が変わります。働く個人が自らキャリアを考え、企業はその自律性を前提に人的資源管理を行う必要があります。また、ジョブ型雇用では人材の流動性が高くなるため、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の視点も重要となり、ジョブ型雇用・キャリア自律・D&Iはセットで考えるべき関係です。
経営層が主体となり導入を推進する
ジョブ型雇用の定着には、現場任せではなく、経営層の強いリーダーシップの存在が重要です。経営トップ自らが理念や方針を社内外に発信し、なぜジョブ型が必要なのかを明確に示すことで、組織全体の理解と納得を得やすくなります。また、部門ごとのばらつきを防ぎ、制度の形骸化を防ぐためにも、全社的なガバナンスを意識した導入戦略が求められます。
公平で透明性の高い評価基準を整備する
ジョブ型雇用を導入する際には、職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成、整備が不可欠です。この職務記述書には、職務内容、勤務地、労働時間、報酬に加えて、求められるスキルや資格、過去の経験などが詳細に記載されます。さらに、職務ごとに責任範囲や権限、評価基準を明確にし、それに基づいて契約を結ぶことが求められます。これにより、社員は自分の役割や期待される成果が明確になり、公平で透明性の高い評価基準のもとで働けます。
おわりに
専門職の人材不足が叫ばれている昨今、ジョブ型雇用の導入によるスペシャリストの採用は今後もより有用になると考えられます。
またコロナ禍以降の多様な働き方にもジョブ型雇用の採用手法はマッチしており、就業形態の変革にもスペシャリスト志向の人材確保で対応することができます。
しかし、メンバーシップ型雇用からの転換には企業内のさまざまな制度改革が求められます。何を変え、何を維持するかをよく検討し明確にしたうえで導入を図っていくと良いでしょう。
ジョブ型雇用の導入など人事施策についてこちらのコラムでもご案内しています。 ぜひこちらもご覧ください。
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