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THEME 経営人材/次世代リーダー

連載・コラム共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’2020インタビュー vol.2

「現場」で自分たちのアイディアが机上の空論 だと思い知った日が転機

「現場」で自分たちのアイディアが机上の空論 だと思い知った日が転機

2019年からスタートした共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」は、2021年に第3期を開催する。Jammin’2021を始めるにあたって、Jammin’2020の参加者・関係者にインタビューを行っていく。
今回は、Jammin’2020で見事にグランプリを獲得したチームの座談会だ。丹野氏・大池氏・張氏・福島氏の4名のチームは、文化コースで伝統工芸品アプリ「SAKURA」の事業案を企画し、審査員・参加者の両方から高い評価を受けた。参加当時を振り返りながら、「SAKURA」を企画するに至った経緯やJammin’2020での学び・気づきなどを語っていただいた。

●文化コース/Bチーム
丹野裕介氏/日立GEニュークリア・エナジー株式会社
大池研司氏/三菱商事株式会社
張宇佳氏/日産自動車株式会社
福島渚氏/清水建設株式会社

※所属はJammin’2020参加当時のもの


Jammin’とは:
さまざまな企業から派遣される若手リーダーたちがチームを組み、社会の「不」に向き合って新規事業開発プロセスを体験するリーダーシップ開発プログラム。参加者は、社会課題をテーマにしたコースに分かれて、新規事業案の立案に取り組む。Jammin'2020は2020年9月から2021年2月にかけて行われた。詳細はこちら

最初からグランプリを狙っていた


――皆さんの参加当初の気持ちを教えてください。

丹野裕介氏

丹野:参加のきっかけは、部長から「Jammin’というものがあるから参加しないか」と言われたことです。参加前は、期待と不安が半々でしたね。新たな引き出しを作れそうだと思う一方で、いろんな業界の参加者がいるなかでやっていけるだろうか、という気持ちもありました。普段は社内や業界内の人たちとしか会いませんから。
丹野裕介氏/日立GEニュークリア・エナジー株式会社

大池研司氏

大池:さまざまなタイプの研修を受けてきましたが、社外の仲間たちと一緒に何かを作るのは初めてで、社内にはない考え方を知ることができる、面白そうだ、と思いました。初めてオンライン上でチームメンバーと出会ったとき、私は、「やるからには勝ちたい!」と宣言しました。最初からグランプリを狙っていました。そのくらい本気で取り組むことで、結果的にやりきったと感じられたらいいな、という気持ちも強かったです。
大池研司氏/三菱商事株式会社

張宇佳氏

張:いずれは新規事業の立ち上げにチャレンジしたいという気持ちがあり、Jammin’は力を試す良い機会でした。社外の方々と一緒に取り組めるのも楽しみでした。実際、みんな仕事の進め方が違うし、自分では思いつかないようなアイディアを思いつくメンバーばかりで面白かったです。
張宇佳氏/日産自動車株式会社

福島渚氏

福島:私は実務で新事業を担当しているのですが、1→10や10→100のプロジェクトが大半です。Jammin’では「0→1」に取りかかれると知って、ワクワクしました。実際は0→1どころか「0→0.1」を何回も行ったり来たりしながら、何の縛りもないところで共創することができて本当に良かったです。
福島渚氏/清水建設株式会社

ワクワクしないと、たいしたものは作れない

――Jammin’2020では、どのような学び・気づきがありましたか?

大池:実は最初に考えた案は、空き家問題を解決しようとするアイディアでした。インターネットや本を調べながら頻繁に話し合ったのですが、今思えば、私たちはひたすら空中戦を繰り広げただけでしたね。すべてが「机上の空論」だったんです。現場の視点がまったく入っていませんでした。

丹野:空き家問題を取り上げて、議論している間は良かったのですが、フィールドワークをしてみたら、その案が全然ダメだ、ということが分かってきたのです。ある板橋区の不動産会社の方にお話を伺いに行った日、ついに「この案はダメだ」となって、次の日から別の案を考え始めました。現場で「手触り感」を知ることの大事さを思い知った日です。大きな学びでしたね。

張:あのときは、メンバー全員が、本当の不を見極めることの大切さを痛感しましたよね。振り返ると、最初の案にはワクワクを感じていませんでした。ワクワク感がない企画会議には、何か問題があるのだと思います。

福島:張さんの言うとおり、私たちは「ワクワクしないと、たいしたものは作れない」ということを学びました。空き家問題はメディアでもよく話題になる社会課題ですが、そういうマスコミが報じるような大きな「不」※ではなく、現地で本当に誰かが困っている個別の「不」を捉えることの大事さも知りました。それからもう1つ、「やってみないと分からない」という気づきもありました。実は事業案「SAKURA」のアイディアは抽象的で、最初は半信半疑だったんです。ところが、具体的にしていったらどんどんワクワクが増してきた。そういうこともあるんですよね。

不便、不安・不満・不公平など、「世のなかにある誰かのお困りごと」を指す。特定のステークホルダーの不を解消しながら、そのインパクトを広げ、社会課題の解決につながるよう事業をデザインすることが、Jammin’流の新価値創造プロセス

100点を目指すから、空き家問題をやめる

――空き家問題からの方向転換の検討プロセスを、もう少し詳しく教えてください。

大池:空き家問題の不の解決を諦めるという意思決定をしたのは、板橋区でのフィールドワークの後でしたが、私たちはその前に、長野県で空き家問題に取り組む方にインタビューしています。長野から東京への帰りの車中、4人で6時間侃々諤々議論しつづけたんです。そのなかで、空き家問題は難しいかもしれない、と思い始めていました。

張:ただそのときは、まだやめるというところまではいきませんでした。最後のひと押しはやはり板橋区の不動産会社の方のお話で、感じていた「難しいかもしれない」が確信に変わりました。それで、私はみんなに「やめよう」と素直に言いました。今振り返ると、それまでずっと話し合って信頼関係ができていたからこそ、素直にやめようと言えたんだな、と思います。

丹野:やめると決めた時点で、「そもそも、なんで文化コースで空き家問題に取り組もうとしたんだっけ」とか、「じゃあ、文化って何?」といったことをとことん話し合いました。私は今でも、空き家という着眼点自体は良かったと感じています。私たちにとって、この失敗は必要でした。この失敗があったからこそ、グランプリが獲れたのだと思います。

福島:私は当初、空き家問題をやめるのは反対でした。ただ一方で、私たち4人は大池さんの「やるからには勝ちたい!」という宣言に乗って、「100点を目指す」というゴールをあらかじめ共有していたんですね。私の見立てでは、空き家問題に取り組めば70点は出せました。けれど、100点を目指すなら、変えた方がいい。最終的にはそれが決め手になりました。最初にゴールを共有していたことが、意思決定をしやすくしました。

――伝統工芸品アプリ「SAKURA」は、ユーザーが伝統工芸品を自分の好みでカスタマイズできるというアイディアですが、その案はどうやって生みだしたのですか?

張:私たちはまず、「伝統工芸品」の問題を扱おうと決めました。次に前回の反省を生かし、伝統工芸品を作る職人の方々の生の声を集めて、具体的な不の見極めに取り組みました。そうしたら、「指物(さしもの)」の困りごとを発見したんです。指物とは、外側に組み手を見せず、金釘も使わずに木と木を組み合わせて作る木工品のことです。指物職人は高齢化が進み、若者のニーズが見えずに困っていることが分かりました。それで最終的に、ユーザーが自分でデザインを作って発注する伝統工芸品アプリ「SAKURA」というアイディアにたどり着いたんです。

丹野:工芸館や工房に伺って、伝統工芸の職人さんたちにインタビューして回りました。Jammin’2020が始まって3カ月目の12月に空き家問題から伝統工芸へと方向転換し、年末まではひたすら職人の方々に会いに行きましたね。終盤は、2日に1回はオンライン会議で話し合い、共通認識を深めていきました。

大池:伝統工芸のなかでも、指物は不が大きいと感じました。なぜなら、指物職人は基本的に一人親方なので、一人ひとりが得られる情報が限られており、流行への対応が総じて遅かったのです。年末に、この不を解決できたら面白いんじゃないか、ということで意見がまとまり、全員で「SAKURA」へ向かっていきました。

みんながリーダーとなってお互いを生かし合うチーム

――お互いについて感じたことを教えてください。

大池:このチームは、私と張さんと福島さんの3人は自分の意見をどんどん話すタイプで、丹野さんが一歩引いて見ている、という関係でした。丹野さんの存在は重要でしたね。議論がどれだけヒートアップしても、冷静沈着な丹野さんがどこかで収めてくれるから大丈夫、という安心感がありました。

丹野:私は、お互いがみんなを生かそうとするところがあるな、といつも感じていました。

福島:みんながリーダーとなってお互いを生かし合うチームで、何事もどんどん先へ進んでいきました。

張:全員キャラクターが違うのですが、それぞれのスキルを発揮してバランス良く取り組めたと思います。

丹野:大池さんはストーリー作りが上手でしたね。

福島:物語化して企画してくれたのが大池さんで、工程を細かく管理して効率的に進めてくれたのが丹野さんで、張さんは最後に財務計画まで作ってくれました。

大池:福島さんは行動力がすさまじかったですね。率先してアポを取り、現場への道を切り開いてくれたのは福島さんでした。

福島:伝統工芸の職人の方々へのインタビューでは、張さんが大活躍でしたよね。

丹野:そうそう。張さんが工芸館で根掘り葉掘りヒアリングしてくれたからこそ、私たちは指物にたどり着けたんです。

張:大池さんは職人の方々に企画を説明するのが上手で、勉強になりました。

大池:あのときは実はものすごく緊張しました。

福島:大池さんと張さんが度胸とプレゼン力で突破して、職人の方々を口説いてくれたから、「SAKURA」のアイディアが形になったんです。

張:福島さんはチームビルディングが上手ですよね。おかげで4人の間に強い信頼関係が生まれました。

全員がワクワクすることを目指すのがリーダーシップ

――皆さんにとってリーダーシップとは何ですか?

丹野:お互いに働きかけ合いながら、チームづくりに貢献することです。

大池:福島さんは、自分の意見をどんどん展開していくんですが、一方でチーム全体を見渡して、別の方の意見の方がより良いと判断されたら一歩引くんです。常に前に立ち続けるのではなく、臨機応変に、時には周りを生かす。私はこれもリーダーシップだと思います。

張:こうやってキャラクターの違うメンバーが集ったとき、ポテンシャルを発揮できる組み合わせを考えるのもリーダーシップですよね。

福島:目的達成のためにチーム全員がワクワクすることを目指すのもリーダーシップではないでしょうか。みんなでゴールを共有し、自分のやりたいことをぶつけ合い、過程に納得しながら進めるのです。

――この経験を実際の仕事にどう生かしていきますか?

福島:Jammin’を通して、仕事でもやはりワクワクが大事なんだという考え方に変わりました。チーム全員が熱狂できる事業をつくっていきたいですね。

張:Jammin’では、現場に寄り添うことがいかに大事かを学びました。私は財務・経理担当なのですが、現場の皆さんの話を聞いて、現場で何が起きているかを見極めたうえで対応する姿勢をこれまで以上に大切にするようになりました。

大池:部下がいなくても発揮できるリーダーシップがある、と分かったのは大きな学びでした。

丹野:今後は仕事でもチームにもっと積極的に働きかけ、より良い成果を出していきたいと思っています。

――読者にメッセージをお願いします。

丹野:Jammin’は仕事と違い、好きなように行動できる場です。ぜひやりたいことに挑戦してください。

大池:チャンスを生かすも殺すも、参加者次第です。貪欲に、1つでも多くのことを得ようと強い気持ちで臨んでいただけたらと思います。

張:Jammin’は、コンフォートゾーンから出て可能性を広げる絶好のチャンスです。

福島:全力で取り組まないなら、時間のムダになってしまいます。思いきってぶつかっていけば楽しい時間になるはずです。


【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】


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