「MBC」改訂に寄せて いま問われる職場力

執筆者情報
人材開発トレーナー
櫻井 俊邦

職場の崩壊が叫ばれるいま、マネジャーにはメンバーと緊密にコミュニケーションをとりながら共通の目標に向かって協働していく、いわば「職場の再生と向上」の担い手としての役割が求められています。弊社では2008年10月、こうした第一線のマネジャーを支援していくために従来よりご提供している研修プログラムである『MBC』を改訂し、新たにサービスを開始しました。今回は、この改訂プロジェクトに関わり、マネジメント領域の研修経験も豊富なトレーナーからのメッセージです。


現代のマネジャーのために。あぶり出したキーワードは“職場力”。

改訂版『MBC』では、“職場力の向上”をプログラムの主眼に置いています。なぜ職場力なのか? その背景には、私たちトレーナーがここ最近直面している組織やマネジメントの現実が関係しています。いわゆる職場崩壊という言葉で表現されるように、昨今の組織はかつてとはいろんな意味で違ってきています。そもそも職場そのものに対する意識が世代間では大きく異なります。例えば、二十代の社員に「職場ってどういうところ?」と尋ねると、「机とパソコンが置いてあるところ」という答えが多いのです。彼らにとって職場とは単なる場所であり、チームという意識や特定の文化を持った場という意識は希薄なようです。ベテランはベテランでかつての職場の良さを後輩に伝えきれず、“昔は良かった”的な話になってしまう。その結果、自分のやるべき領域を狭く捉えてしまい、三遊間の簡単なゴロを誰も取りに行かないという状況が起こってしまう。一見連携しているように見える組織の多くも、内部ではこのような悩みを抱えています。

一方マネジメントの領域では、組織の中心的な役割を担うマネジャーの負荷は増し、本来求められる仕事の管理と人材育成の両立がますます難しくなり、悩みを抱え込んでしまうようになっています。私たちは日々の研修の中で垣間見られるそうした現実に危機感を感じていましたし、多くの企業もまた同様のことを感じていました。現在のプログラムで、マネジャーが直面する現状に対応できているのだろうか。応え切れていないなら、どのようにすれば組織やマネジャーの生き生きとした活動に貢献できるだろうか。議論を重ねていく中で出てきたキーワードが「職場力」でした。

職場力とは、「職場が本来発揮すべき力の総和であり、メンバー一人ひとりが持つ能力が開発されて最大限に発揮されるとともに、メンバー相互間の緊密な交流によって大きな相乗効果が生み出されるときに最大になるもの。そしてメンバーの成長と協働の発展によって、不断に進歩向上を続けるものである」。

私たちは、職場力をこのように定義し、マネジャーが職場力を向上させるためのプログラムを組み立てていったのです。

仮想職場で変わる。実践につながる3日間。

改訂版『MBC』では、研修の中で学んだ“職場力”を現実の職場にどうつなげていくかに注力しました。職場に対して危機感は感じているものの、原因と対処法がわからなくて悩んでいるマネジャーが具体的に動き出せるプログラムにしたかったのです。「いい勉強にはなったけれど、実践では使えないね」では意味がありませんからね。

3日間にわたるプログラムの基本構成は、日常の自分の考え方や行動をマネジメントの原理原則と照らし合わせていくことです。まず「管理の基礎」から始め、「仕事の管理」や「部下育成」といった領域へと関係性を広げ、さらにマネジメントの全体像の中で自己の特徴を明らかにしていきます。とくに最終日となる3日目は、マネジメント全体像の中に自分自身の姿や職場を置いてみるマッピング作業を行います。自分の行動をマネジメントの原理原則と比較することで、自分のマネジメントに対する考え方や行動が、職場にどんな影響を与えており、職場力向上のためには何が足りないかを具体的につかむことができます。

このプロセスを後押ししていくのが、グループによる演習やディスカッションです。研修は、受講者の皆さんが4〜5人のグループに分かれ、このグループ自体を実際の職場(チーム)として想定しながら進行していきます。職場はどんなふうに機能しているのか。いい職場にするにはどんなプロセスを歩んだらいいのか。グループの場で起きた変化や成長がヒントになって自分の職場とリンクしていくような仕組みにしています。最初は遠慮していたメンバーが、衝突を恐れずに意見を交わすことで劇的に変化していくようなケースもあり、これも3日間という濃密な時間が引き起こす反応ではないかと思います。

改訂版『MBC』はまだスタートしたばかりですが、クライアントへのインタビューや受講者の皆さんからのアンケートによって、私たちが研修に込めたねらいと思いは確実に届いているという実感を持っています。研修後に、受講者が経営層に対して今後の行動計画をプレゼンテーションしているあるクライアントからは、「以前の発表は自分のことを中心にした内容が多かったが、今回はチームの意識やメンバーとの一体感を感じさせるものが多かった」という感想をいただいています。また別のクライアントからは、「職場での実践に役立ちそうですか?」というアンケート項目に対して、受講者全員から「YES」とご回答いただきました。つまり、単なる知識学習レベルではなく、確実に実践への見通しを立てて帰っていただいている受講者の方が増えていると実感しています。私自身も、従来の『MBC』では得られなかった、受講者の皆さんの「職場力向上に向けての前向きな姿勢や、腹の据わり方」に手応えを感じています。

先生ではなく、受講者と同じ感覚を持ったトレーナーとして研修に臨みたい。

この研修において私たちトレーナーは、PRE(研修前)、ON(研修中)、POST(研修後)、それぞれで受講者の皆さんとかかわっていきます。その中で、私がとくに大切にしているのは、研修の場に私自身がマネジメントの現場の実感値を持って臨むということです。

つまり時代とともにマネジャーの置かれる環境は大きく変化しているだけに、できる限り同じ感覚を持っていたいということです。そのために事前の情報収集には精いっぱい力を注ぐようにしています。受講者の皆さんが置かれている職場がいまどのような状況で、どこに課題を抱えているのか。関係者へのインタビューや実際の職場を拝見しながら、私自身がマネジャーになったつもりで、職場力を向上させるにはどうしたら良いかを考えます。事前アンケートの実施と読み込みも、重要な準備の一つです。マネジャー一人ひとりが何年に入社して、これまでどんな会社員人生を送ってこられたのか、そしていまどんな気持ちでマネジャーをやっているのか、どんなことで悩んでいるのか。アンケートに書かれていない部分にも自分自身の経験を参考にしながら想像を巡らします。想像した通りだったこともあれば、まったく外れてしまうこともあります。でも、それがマネジャーという重責を担っている皆さんに対するトレーナーとしての誠意なのではないかと思っています。単なる研修の先生ではなく、いまを生きるマネジャーたちにとって力になれる人、そういう存在でありたいですね。
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